2022.6.22 |
サッポロビール株式会社
全国規模の営業活動で発生する伝票処理をペーパーレス化し、経理業務を円滑に
証憑のスキャンで電帳法「スキャナ保存制度」に対応し年間415万円の書類管理コストを削減
サッポロビール株式会社 経理部 エリアサポートグループ主任の加藤賢人さん。
東京・恵比寿の本社にて。
サッポロビール株式会社 経理部 エリアサポートグループ主任の加藤賢人さん。
東京・恵比寿の本社にて。
業務効率化に取り組むサッポロビール株式会社では、全国15か所の営業拠点が起票する支払伝票を、本社経理部に集約して処理するフローのペーパーレス化に取り組んでいます。2022年には電子帳簿保存法の要件緩和を機に請求書の「スキャナ保存制度」対応を進め、営業拠点への「fi-7160」導入によって大きなコスト削減を実現しました。東京都渋谷区恵比寿の本社経理部を訪ねて、現在の具体的なフロー内容と削減されたコストなどについてうかがいました。
サッポロビール株式会社 経理部
業務:経理/財務
営業拠点数:15(令和4年5月現在)
- 課題
- 全国の営業拠点で発生する大量の伝票処理を紙で運用。書類の配送や保管にまつわるコストが発生し、起票や承認にも工数を要していたため、電子帳簿保存法に準拠したペーパーレス化が急がれた。
- 解決法
- 電子帳簿保存法「スキャナ保存制度」への対応を進め、2022年からはPFUのスキャナー「fi-7160」を全国の営業拠点に配置し請求書のデジタル化ならびにワークフローシステムとの連携を開始。
- 効果
- 伝票の保管等にかかるコスト415万円が削減されたほか、処理が迅速になり3,300時間の工数削減も実現。また営業・経理ともにテレワークでの起票や承認が可能になって働きやすさが向上し、支払処理漏れリスクも軽減された。
1. 大量の請求書を「fi-7160」で電帳法対応の画像データにしてシステムと連携
経理部エリアサポートグループ主任の加藤賢人さんにうかがいます。このたびサッポロビール株式会社で実現されたペーパーレス化の概要を教えてください。
加藤さん 全国の営業拠点が起票する支払伝票を本社の経理部に集約して確認と支払いを行うにあたり、伝票の起票から支払いまでをスキャナーとワークフローシステムによってデジタル化しました。申請に必要な領収書や請求書などの証憑は、電子帳簿保存法「スキャナ保存制度」(以下、電帳法)に対応した画像データにして伝票システム内で添付する方式です。これによって紙の伝票や証憑を営業拠点から本社に送る必要がなくなりました。
電帳法に準拠したペーパーレス化の取り組みは、いつからスタートしたのでしょうか。
加藤さん 2020年です。営業拠点の社員が経費精算のために伝票を起こす際、証憑となる領収書をスマートフォン撮影によって画像データ化し、ワークフローシステムと連携させる形でスタートしました。ビールメーカーの営業部隊は営業先の飲食店などで支払った経費の精算を頻繁に行うため、領収書の量が膨大になります。そこでまずは領収書をデジタル化しようということになったのです。
ただ、20年当時は電帳法の満たすべき要件がまだ厳しく、手間がかかりすぎるところがありました。そこに折よく22年から要件が緩和されることが決まったので、21年初頭から本格的な運用設計を始め、22年1月からはほぼすべての証憑をPDF保存に切り替えました。現在は一部を除くほとんどの伝票処理で電帳法対応の会計処理を行っています。
22年1月に全国15か所の営業拠点に「fi-7160」を導入されたのは、領収書のデジタル化をスムーズにするためでしょうか。
加藤さん いえ、「fi-7160」は領収書ではなく、請求書をスキャンするために導入しました。経費精算の場合は個人単位の申請で領収書が一般的に小さいため、受け取ってすぐに撮影できるスマートフォンが便利なのですが、請求書の場合は社内でデジタル化を行います。ただ、受領する紙の性質の問題で、一般的な複合機ではスキャンが難しいのです。
請求書はどのような形態なのでしょうか。
加藤さん 営業拠点が受領するのは、スーパーや酒販店などで使うPOPの製作費や販売報奨金など、販促に関わる経費の請求書です。これらの多くは明細数が多く、請求書の枚数も多くなっています。そのほか、取引先によってはカーボン複写式の手書きで1枚が非常に薄いこともありますし、サイズもかなりまちまちです。
そうなると既存の複合機では少々荷が重く、一式100枚単位の請求書ではスキャンに時間がかかる上にPDFが分割保存されてしまったり、薄い紙の請求書がローラーに絡まって紙詰まりを起こしてしまったりと、トラブルが発生していました。そこでスキャン専用機が必要になり、検討した結果、さまざまな規格の紙を高速で、紙詰まりを起こすことなくスキャンできるPFUの業務用スキャナーを採用することにしました。
経費精算の証憑である領収書はスマートフォンで撮影し、支払伝票の証憑である請求書は「fi-7160」でスキャンするという棲み分けを行っているのですね。後者の場合、どのような業務フローで起票以降の処理を行っているのでしょうか。
加藤さん 営業拠点に請求書が届くと、営業担当者や請求書処理をサポートする内勤の社員が「fi-7160」でスキャンして画像データにします。次にワークフローシステムに勘定科目・日付・金額・支払先などを入力して伝票データを作成し、そこに請求書の画像データを添付して起票ボタンを押します。システムがそれを通した時点で、電帳法の要件を満たしていることが確認されます。
起票ボタンを押すと本社の経理部にデータが送られるのでしょうか。
加藤さん その前に承認が必要ですので、まず上長に送られます。上長はデータを開いて、伝票と証憑の内容が合っているか、支払先が正しく指定されているかなどを確認し、承認ボタンを押します。すると本社経理部にデータが送られるので、そこで最終確認を行います。ダブルチェックをかけるような形ですね。
ワークフローシステムによって、起票から支払いまでのすべてを行えるのですね。
加藤さん そうです。このシステムは営業活動における帳簿と決済の両方を管理するもので、起票から支払いまでを確実に行うことができます。
2. 保管等のコスト「約415万円」、伝票処理工数「約3,300時間」を削減
証憑のデジタル化が実現する前は伝票をどのように処理していたのでしょうか。担当の方が起票してからの、当時のフローを教えてください。
加藤さん システムで起票した伝票を紙に出力して、請求書と一緒に上長に提出し、上長の承認後に内勤社員が伝票と証憑を重ねて製本していました。このフローには内勤社員の手間がかかるという問題がありました。
製本後、それを本社の経理部に運んでいたのでしょうか。
加藤さん そうです。全国で走っている社内便の車両に載せて、営業拠点から本社に送っていました。そのため配送と本社での保管・廃棄のコストがかかり、トラック便ですから天候による遅れなどのタイムロスも発生していました。また、受け取った本社の経理部では伝票のデータと紙の証憑を突き合わせて金額検証をしていたため、こちらでもかなりの手間がかかっていました。
各営業拠点から本社に送られる書類は、どの程度の量だったのでしょう。
加藤さん 請求書だけでも月に段ボール20箱から30箱に達していました。領収書も紙だった頃はもっと多く、優にその2~3倍はありました。
それだけの量をどのように保管していたのでしょうか。
加藤さん 本社の地下倉庫に、会議室3つ相当のスペースをつぶして置いていました。時間が経過したものから工場に移していましたが、そちらでも場所を取りますから、自社のスペースとはいえお金をかけているのと変わりません。さらに、法定保存年限を経過したものは業者に廃棄を依頼しますので、ここでもコストがかかります。それに紙代を加えた紙運用コストは以前からのネックになっていました。
それが現在、どのように変化しましたか。
加藤さん 今は紙の伝票がなくなったほか、証憑の原本は決められたタイミングで廃棄するようになりました。
紙運用の頃と比べてどのくらいのコストが削減されたのか、もし数字で表すことができたらお聞かせください。
加藤さん 配送や保管に関わるコストは、伝票保管の業務工数、紙代などの物品費、配送費、倉庫移出作業工数などを合計して約415万円が削減されています。
また、営業担当者や内勤社員による起票、上長の承認、製本、経理部の確認、すべて合わせた工数で試算すると、時間にして年間3,300時間の削減になります。
書類保管等のコスト合計約415万円、ならびに工数3,300時間の削減は、ペーパーレス化の効果の大きさを如実に表していますね。
3. 時間と場所の制約がなくなり、テレワーク中でも起票と承認ができるようになった
コロナ禍との関わりという点ではいかがでしょう。ペーパーレス化によるメリットがあればお聞かせください。
加藤さん 領収書の電子化を始めた頃は、営業先の飲食店などで支払った経費の精算が手早くできて楽になるという点が主なメリットでしたが、コロナ禍の現在は、営業拠点の社員や上長は起票や承認を、経理部の社員は確認と検証を、それぞれ在宅でも行えることも大きなメリットになっています。当社では現在も出社率30~50%(2022年4月中旬の取材時)のテレワーク体制を取っていますので、ペーパーレス化が有効に機能していると思います。
もちろん営業拠点では、まず請求書を受け取ることが必要になりますが、担当者本人でなくとも、そのとき出社している誰かが受け取ってスキャンすれば、担当者は在宅のまま、手元にある会社のノートPCを使って起票することができます。
テレワーク中でもチームワークによって処理できるのですね。
加藤さん そうです。また在宅でも会社のPCで承認ができるので、上長は机の上に置かれた伝票を見るためだけに出社したり、外出先から直帰せずに帰社したりする必要がなくなりました。このメリットはかなり大きいと思います。また、紙運用の頃は社内便を送付し忘れることによるタイムラグでワークフローが止まってしまい、支払漏れにつながることもありましたが、現在は発生確率が極めて低くなりました。これは統制上のメリットといえます。
4. 各拠点での「fi-7160」設定はスムーズに完了。スピードと使い勝手のよさに高評価
御社は規模が大きく、営業拠点が全国各地にあります。「fi-7160」の導入とシステム連携がスムーズに進むよう工夫されたことがあれば教えてください。
加藤さん 各営業拠点の現場感覚としては、ペーパーレス化で便利になることはわかっていても、請求書をスキャンするという工程が一つ増えることになります。しかも、手慣れた製本方式からワークフローシステムへの移行という、業務が大きく変化する中でのスキャナー導入ですから、負荷が大きくなるのではないかという不安や懸念を、あらかじめ払拭する必要がありました。
そこで周囲の助言を得ながら、営業拠点に実機を事前配備して、スキャナーを頻繁に使うことになるキーマンの人たちに向けてデモや説明会を行いました。これによって理解を得られたほか、「ここはこうしたほうがいい」といったニーズや課題を抽出して対応することもでき、スムーズな導入につながりました。
18台の「fi-7160」を加藤さん自ら設定されたのでしょうか。
加藤さん いえ、事前配備のときにインストール方法のマニュアルを作成し、それを送って拠点で設定をしてもらったところ、15分から20分で完了しました。また、各現場の担当者がそれぞれ協力・工夫して、稼働方法についてのマニュアルを作成してくれ、そのおかげで早期に準備することができました。
22年1月の稼働開始以降、営業拠点からの問い合わせはありましたか。
加藤さん 初めてスキャナーに触るという人もいましたから、やはり1月には細かい問い合わせがたくさんありました。それでも4か月経った現在(取材時)、問い合わせは1週間か2週間に一度といった頻度に落ち着いています。まだまだ運用上の課題は残っていますが、徐々に改善していき、さらによい環境になるよう努めたいと思います。
スキャン速度などに関するご感想があればお聞かせください。
加藤さん その点に関しては早い時期から声が聞こえてきており、やはり1分間に60枚という速さには誰もが好印象を抱いているようです。また、紙詰まりが起こらないことと、小型でどこでも必要なところに置ける点も好評です。
今後の見通しとして、営業拠点が取引先からPDFの請求書を受領するようにして、そのままシステムに添付するということも視野に入れているのでしょうか。
加藤さん はい、それがまさにペーパーレス化の最終的に目指すところですから、請求書はできるだけPDFでもらうよう、かねがね推奨しています。ただ、これは先方の事情によるところが大きく、とても一朝一夕には実現しません。現時点では未だ65%が紙の請求書で、FAXで届く場合もあります。この状況はすぐには変わりませんから、当分の間はスキャナーが欠かせないと思います。
「fi-7160」が御社のペーパーレス化に貢献できて何よりです。本日はありがとうございました。