1. 株式会社北國フィナンシャルホールディングス
2024.4.1

株式会社北國フィナンシャルホールディングス

口座振替依頼書をスキャンしてAI-OCRで読み取り、システム入力を効率化
北國銀行「口座振替依頼書登録システム」で「fiシリーズ」とAI-OCRソフトウェア「DynaEye 11」が活躍

左から、能戸千佳夫さん、中川貴博さん、南秀明さん。北國銀行本店営業部にて。

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株式会社北國フィナンシャルホールディングスの中核をなす株式会社北國銀行では、人の手による入力作業が不可欠だった口座振替依頼書の登録業務を効率化するため、業務用スキャナー「fiシリーズ」でスキャンした依頼書の文字をAI-OCRソフトウェア「DynaEye 11」で自動認識する「口座振替依頼書登録システム」を開発し、運用を開始しました。当システムの導入によってレガシー業務の一つである口座振替依頼書登録が低コストで刷新されるほか、金融機関を悩ませる人手不足問題の解決にも光が差します。石川県金沢市の北國銀行本店を訪ね、販売も予定される当システムの詳細についてお話をうかがいました。

課題
口座振替依頼書を登録する旧来のシステムが更改の時期を迎えたが、業務の抜本的な効率化が望まれながらも、レガシー業務のため大きなコストをかけるのが困難だった。
解決法
会社の方針に沿って新しいシステムを内製することにし、依頼書を「fiシリーズ」でスキャンしてAI-OCRソフトウェア「DynaEye 11」で文字を自動認識する「口座振替依頼書登録システム」を自社で開発。
効果
従来の手入力作業がなくなり、25%の作業量削減、30%の作業時間短縮が実現したほか、ランニングコストも低減。今後は他の金融機関へ向けてシステムの販売も行う予定。

事例ご紹介動画(再生時間 5:00)

1. AI-OCRによる自動認識に活路を見出し、自社開発システムでレガシー業務を効率化

株式会社北國フィナンシャルホールディングスより、株式会社北國銀行 オペレーション部 オペレーション企画グループの中川貴博さん、同じくオペレーション部 オペレーションセンター センター長の南秀明さん、株式会社CCイノベーション シニア・コンサルタントの能戸千佳夫さんにお話をうかがいます。このたび北國銀行では業務用スキャナー「fi-7460」とAI-OCRソフトウェア「DynaEye 11」を活用した「口座振替依頼書登録システム」を内製されたとうかがっています。どのようなシステムなのか、概要をお聞かせください。

株式会社北國銀行前の写真

北國フィナンシャルホールディングスは北國銀行やCCイノベーションなどの企業を統括しています。

インタビューの様子

左から中川さん、南さん、能戸さん。北國銀行本店の会議室でお話をうかがいました。

中川さん口座振替依頼書登録システムは、さまざまな料金や税金等の口座振替において、間違いのない状態で引き落としが完了するよう正しく登録し、管理することを目的としています。

口座振替のご利用にあたっては、お客様に紙の依頼書をお書きいただいて銀行に提出していただくことが前提となります。銀行ではこの依頼書の内容をシステムに登録し、収納先の企業や自治体から請求があったとき、確実に引き落とせるようにします。当行では従来、この登録作業をベンダー製のシステム(以下、旧システムと表記)で行ってきましたが、オペレーターによる手入力が必要だったため、入力作業・確認作業ともに大きな手間を要していました。

これを効率化するために手入力からの脱却を図ったのが新しい口座振替依頼書登録システムで、スキャナーで読み込んだ依頼書のイメージデータからAI-OCRソフトウェアでテキストを抽出し、入力までを自動で行うことを骨子としています。

南さん実は旧システムにも専用のスキャナーがあり、依頼書のスキャンは行っていました。ただ、その目的は入力以降の作業を画面上でイメージデータを見て行えるようにすることと、システムにイメージデータを保存することでしたので、OCR処理によってテキストを抽出するといった使い方はいっさいしておらず、入力はあくまでも人の手で行うものでした。

そのため旧システムでは、登録の一次エントリーとしてオペレーターによる手入力があり、次に二次エントリーとして別の者による確認作業がある、という流れになっていました。それが口座振替依頼書登録システムへの置換によって、AI-OCRで読み取った依頼書に関しては従来の確認に相当する作業だけで済むようになります。人が担当していた作業の一部をAI-OCRに代替させ、手間の削減と時短を実現しようという狙いです。

旧システムとのフロー比較図

旧システム(上段)と口座振替依頼書登録システム(下段)のフロー比較図。約30パーセントの時短が実現しています。

スキャナーで書類を読み込む様子
読み取り結果を確認する様子

「fi-7460」で依頼書をスキャンし()、「DynaEye 11」による文字情報の読み取り結果を確認()。負担の大きい手入力の工程が省かれています。

このシステムを内製で開発した背景を教えてください。

中川さん旧システムのサポート期限が切れるタイミングで問題になったのが、口座振替にまつわる業務自体、極めてレガシーなものであるということでした。口座振替は現在も代金回収のメインツールの一つですが、いずれはクレジット決済やインターネットバンキングによる振込などに取って代わられるものと見られています。また、口座振替の依頼を書面ではなくWeb上で行う、通称「Web口振(こうふり)」も広まってきました。

つまり口座振替依頼書登録は、今後イノベーションが起こるような業務ではないことが確定しています。そこを考慮した結果、我々としては従来のように大きなコストをかけてベンダーに更改してもらうのではなく、必要最小限のコストで内製しようという結論に達しました。

南さんより根底には、ベンダー任せにすることなく自分たちで開発することで、社員のITスキルや知見を蓄積していこうという会社の方針があります。これは15年ほど前から全社的に掲げているもので、できるところは自分たちでやるというマインドが育っています。口座振替依頼書登録システムの開発も、この方針を前提にしたものです。

中川さんそこで従来よりも効率的な方法がないだろうかと探ったところ、AI-OCRに活路が見出されたため、「fi-7460」と「DynaEye 11」の導入に至りました。

スキャナーの導入について話す中川さん

株式会社北國銀行 オペレーション部オペレーション企画グループの中川貴博さん。口座振替依頼書登録システム内製プロジェクトをマネージャーの立場で主導しました。

会社の方針について話す南さん

株式会社北國銀行 オペレーション部 オペレーションセンター センター長の南秀明さん。センターで日々遂行される多数の業務を統括しています。

口座振替依頼書登録システムの出来がよいため、他の金融機関への販売も考えておられるとか。

能戸さんコンサルタントの立場で全国を回っていると、多くの金融機関が口座振替依頼書登録のようなレガシー業務に対して当行と同じような悩みを抱えていることがわかります。そうした金融機関にとって当システムは業務の助けになり得ると考えられるので、今後は外販も積極的に進めていく予定です。

今後は外販について話す能戸さん

株式会社CCイノベーション シニア・コンサルタントの能戸千佳夫さん。コンサルティングのため全国の金融機関を訪れています。

口座振替依頼書登録システムについて話す三人

社内の綿密なコミュニケーションを経て、口座振替依頼書登録システムは理想的なサブシステムとして誕生しました。

2. 書式がバラバラの依頼書が平常時に一日1,000枚、ピーク時には一日4,000枚届く

口座振替依頼書登録システムを活用した依頼書登録の具体的なフローを、旧システムとの比較も交えてお聞かせください。まず、スキャン対象となる依頼書について、さまざまな書式が存在すると聞いています。実際には何種類あるのでしょう。

中川さん統一フォーマットがなく、企業や自治体などが独自に作っているため、どれほどの種類があるのかわからないほど数多くの書式が存在します。

南さんサイズもA4だけではなく、A3、B5、ハガキ大など、非常にばらつきがあります。紙質についても同様で、普通紙やカーボンコピー紙もあれば、新聞や雑誌のページを切り取って依頼書にしたものまであります。

オペレーションセンターに集まった依頼書の写真
さまざまなサイズの依頼書の写真

オペレーションセンターに集まった依頼書の一部。種類ごとにフォーマットや紙質が異なっています。

書式や紙質がバラバラである一方、利用者が記入する項目、すなわちAI-OCRで読み取るべき項目は決まっているということになるのでしょうか。

中川さんそうです。基本的にはお客様の口座情報、つまり店名・科目・口座番号がメインで、これに収納企業の情報を加えた4項目が基本になります。収納先が自治体の場合は税の種別などが加わるので、もう少し増えます。

登録に必要なそれらの項目を「DynaEye 11」でさまざまなフォーマットの依頼書から読み取るために、フォーマットごとに読み取る箇所を指定する書式定義を行い、登録されていることと思います。何種類の定義を登録していますか。

中川さん口座振替依頼書登録システムの運用を開始した2023年12月までに約800種類を登録しました。それ以降、新しいフォーマットが見つかるたびに書式定義を増やしており、現在(2024年1月下旬の取材時点)の登録件数は約1,000種類です。

今回、AI-OCRソフトウェアとして「DynaEye 11」を選択した大きな理由の一つが、書式定義が簡単にできるという使い勝手のよさでした。口座振替依頼書の登録はオペレーションセンターのパートの方を中心に構成された8人の「口振チーム」が行っており、新しいフォーマットが出たときも同じチームが書式定義をします。ですから、ITスキルがことさらに高いわけではないスタッフでも簡単に扱えることがソフトウェア選びの要件でした。

南さんシステムの稼働に先んじて、口振チームは当行のシステム部で簡単な研修を受け、「DynaEye 11」での書式定義作成スキルを身につけました。そのあとすぐに新しい書式の定義も含めた実務に入っています。

スキャン作業を行う様子

口振チームがスキャン作業を行う、オペレーションセンターの一角。

書式定義をする様子

「DynaEye 11」は操作がシンプルなため、IT熟練者でなくても簡単に書式定義ができます。

現在、口振チームは一日に何枚の依頼書をスキャンして登録しているのでしょうか。

南さん通常、約1,000枚をスキャンしています。ただ毎年3月から5月にかけての繁忙期には、新しい学校への授業料納付や新しい住居の家賃引き落とし、新規の保険加入、固定資産税の納税といった理由で口座振替の依頼が倍増するため、平均すると一日約2,000枚、ピーク時にはさらに倍の4,000枚を扱うことになります。

それらの依頼書は毎日どのようにしてオペレーションセンターに届くのでしょうか。

南さん2つの経路に大別されます。まず、当行のお客様が各支店にお越しになって申し込まれたものに関しては、窓口で依頼書の記入内容と印鑑を確認したのち、各支店とオペレーションセンターの間を毎日行き来している行内メール便に載せます。これは当日の夜間にセンターに到着するので、お客様が申し込まれた翌日に登録作業を行います。

もう1つは、大手の収納代行会社が直接送ってくる依頼書で、オペレーションセンターに毎日、郵便で届きます。こちらは開封などの作業を当日に行い、その翌日にスキャンして登録します。

それぞれの量的な比率と、もし2系統に質的な違いがあれば教えてください。

南さん平常時の約1,000枚のうち、支店で受け付ける依頼書が600枚、大手収納会社から届く依頼書が400枚というところです。それぞれの特徴として、前者の場合は収納先に地域の企業や自治体が多く、新しいフォーマットの依頼書はさほど多く出ないという傾向があります。一方、後者は収納先が全国規模ですから、初めて見るようなフォーマットの依頼書もしばしば出てきます。

オペレーションセンターの全景写真

オペレーションセンター(石川県金沢市)の全景。

依頼書を入れるオレンジ色のバッグの写真

各支店で受け付けた依頼書はオレンジ色のバッグに入れられ、行内メール便でオペレーションセンターに届きます(後述)。

3. 依頼書を混載してスキャンしても自動で書式を判別、スムーズにOCR処理

スキャン前の準備として、依頼書の仕分けなどをなさるのでしょうか。

南さん 各支店から届く依頼書を例に、大まかな流れを説明します。毎日およそ100の支店から依頼書がオレンジ色のバッグ、通称オレンジバッグに入って届くので、一斉に取り出し、「あ・か・さ・た・な」の記号を振った収納先別の束に分けていきます。そのあと、各束の枚数を確認する、2枚綴りで1枚を収納先に返すタイプの依頼書は2枚を1枚に分ける、目視して文字が薄すぎる項目があればスキャン後の修正に備えてその文字を欄外に書き込んでおくといった準備作業を行います。そのあと束単位で「fi-7460」にセットし、次々にスキャンします。

バッグを仕分ける様子

ここでは各支店から届く依頼書の登録作業の様子を紹介します。約100の支店からオレンジバッグが届いたら、まずバッグを仕分けします。

依頼書を仕分けする様子

次にバッグを開封し、依頼書の種類別に仕分けしてトレーに入れます。これが「あ・か・さ・た・な」の各束になります。支店経由の依頼書の場合は新規のフォーマットは少なく、登録済みのものがほとんどです。

依頼書の枚数を数える様子

束にした依頼書の枚数を正確に数えます。

スキャン前の準備の様子

束ごとに頭紙を付けてクリップ留めし、スキャンに備えます。頭紙には必要事項と枚数が書き込まれます。

「fi-7460」は何台を導入されたのでしょうか。

中川さん2台です。「fiシリーズ」に関しては先年、手形・小切手の電子交換に対応するためにA3大容量スキャナー「fi-7900」を4台導入し、運用に成功した実績があります。今回は口座振替依頼書登録システムに適した機種としてPFUからA3コンパクトスキャナー「fi-7460」の提案を受け、試用したところ好ましい性能だったので2台の導入を決め、2人体制で同時に稼働させることにしました。

スキャンする依頼書について、たとえば「あ・か・さ・た・な」の束にはそれぞれに対応する書式定義が「DynaEye 11」に保存されているので、「fi-7460」に束をセットしたら定義を選んでスキャンするという流れでしょうか。

南さん「DynaEye 11」はソフトウェア上の「キャビネット」にいくつもの書式定義を登録できるので、現在約1,000ある定義を分類して複数のキャビネットに収めています。たとえば、「あ行」のキャビネットに数十種類の書式定義が入っており、「あ行」に分類された依頼書を混載してスキャンすると、ソフトウェアが定義を自動で判別して読み取ってくれます。ですので「あ・か・さ・た・な」で仕分けした依頼書を、「あ・か・さ・た・な」の各キャビネットを選んで順番にスキャンすればよく、依頼書ごとに定義を選ぶ手間と時間が削減されます。

専用スペースに「fi-7460」と専用PCが設置されている様子

スキャン用スペースに、インプリンタ(後述)を装備した「fi-7460」と専用PCが2セット、設置されています。「fi-7460」はインプリンタを取り付けても十分にコンパクトなので、デスク上のスペースには余裕があります。

依頼書を「fi-7460」でスキャンする様子

依頼書の束を「fi-7460」にセットし、次々にスキャンします。

登録済みの書式定義が並ぶ「DynaEye 11」の画面
小さい依頼書が混在していることがわかる画面

キャビネットに登録済みの書式定義が並ぶ「DynaEye 11」の運用画面。1つのキャビネットに550までの定義を登録でき、スキャンすると自動で判別します。サイズの小さい依頼書のフォーマットも混在していることがわかります。

スキャン作業の次は「DynaEye 11」による読み取り結果の確認作業ですね。これに関しては、ワークフローを複数の端末で共有できる「DynaEye 11」のマルチステーション機能を活用しておられるとうかがっています。チームの方々が全員で分担して確認するのでしょうか。

中川さん はい、10人で10台の端末を使って確認作業を同時進行します。旧システムの頃から複数人で同時に確認したいという要望があったので、マルチステーション機能を持つソフトウェアの導入を決めました。言うまでもなく、確認作業に要する時間は短縮されています。

読み取り結果を確認する様子
読み取り結果を確認する画面

「DynaEye 11」のマルチステーション端末で読み取り結果を確認し、必要があれば修正します。

この作業は旧システムの二次エントリーに相当するものですが、読み取りエラーがあった場合の修正もここで行うのでしょうか。

中川さん そうですね、確認と修正を行います。それらの作業は現場のスタッフ同士で「これは自分がやります」というように声をかけながら進めています。

南さん 旧システムでは一次エントリーの入力者と二次エントリーの検証者の2人が、依頼書と登録画面を見比べる作業を重ねていたともいえます。AI-OCRの導入によって、基本的にはそうした重複は最小限に抑えられるようになりました。なにより、読み取りが完全にできた依頼書に関しては確認だけで終わるようになったのが大きいですね。

未登録の新しいフォーマットはどのくらいの頻度で発生しますか。また、発生した場合はその都度、書式定義を行うのでしょうか。

南さん 一日に約10件、未登録のフォーマットが見つかります。このときは作業全体の流れを逐一止めることはせず、いったん手入力で登録自体を済ませてしまい、その日の登録が終わった段階で書式定義を行います。

口座振替依頼書登録システムへの登録後、データを上位のシステムに送るのでしょうか。

南さん そうです。登録の最終工程として画面上での印鑑照合があり、そこまで終了したらデータを勘定系のメインシステムに送信し、入力して保存します。これも口振チームが行っています。

このとき、送ったデータにもし不備があればPC画面にメッセージが出る仕組みも内製しました。メッセージが出たら帳票を特定し、不備の内容を確認します。入力ミスによる不備であれば修正で済みますが、多くは記入内容そのものが不足していたり、印影がなかったりするものです。この場合はお客様に依頼書をお返しし、再度お申し込みいただくことになります。

進行状況別により色が変わっているところ

「DynaEye 11」で読み取ったファイルは進行状況別に色を変えて表示されるので、チーム内で状況の認識を共有できます。

確認作業を行うスペースの様子

確認作業を行うスペース。マルチステーション機能により、全員が進捗状況をリアルタイムで共有しながらチームワークでスムーズに処理していきます。

2台の「fi-7460」には、読み取った書類原稿に連番を印字できるオプションのインプリンタが装着されています。どのような目的で導入されたのでしょうか。

中川さん まさにその不備メッセージが出たときに問題の帳票を特定するためです。インプリンタでスキャン時に連番を印字し、同じ番号をCSVファイルで出力しておくことで、イメージデータに紐づけられた番号をもとに、帳票を効率的に抜き出すことができます。

南さん 口座振替依頼書は、1つの商品等に対して1枚ずつ提出していただく必要があるため、同じお名前で2枚、3枚の依頼書が届くこともあります。その中の1枚に不備があるような場合は特に注意して抜き出さなければなりません。インプリンタがあれば、1,000枚以上ある中からでもスムーズに1枚を特定できます。

インプリンタが取り付けた「fi-7460」

「fi-7460」の下部にインプリンタが取り付けられています。

インプリンタで印字された文字列

スキャンした依頼書にインプリンタで文字列を印字します。印字された文字列はスキャンのインデックス情報としてCSVで出力されます。

現在、依頼書の開封から口座振替依頼書登録システムへの登録までをどのくらいの時間で終えているのでしょう。

南さん 約1,000枚の平常時であれば、10人のチームが1時間半ほど作業すれば終わります。これは旧システムの頃に比べて約30パーセントの時短です。

4. 旧システムと比較して作業量が25%減少。人手不足に悩む金融機関への外販も予定

口座振替依頼書登録システム導入の効果と「fi-7460」「DynaEye 11」に対する評価、ならびに当システムの外販についてうかがいます。まず現時点での導入効果についてお聞かせください。

南さん 現在、口座振替依頼書登録の作業量は旧システムの頃の4分の3ほどになっています。AI-OCRの導入によって作業量が減った分、システムを内製したことで増えた手間もあるので、それを差し引いたトータルとしての25パーセント減ということになります。ただ、今後AI-OCRによる読み取り精度が高まれば、効率はより向上するはずです。

では現時点での「DynaEye 11」の読み取り精度はいかがでしょうか。

中川さん 「DynaEye 11」は手書き文字の読み取り能力がかなり高く、精度は問題のないレベルです。一方、たとえば、多くの場合に手書きされる項目にスタンプが捺されている場合、読み取り精度が落ちることがあります。また、依頼書にはほぼ同じフォーマットでありながら、ごく一部が微妙に異なっているものがあり、その判別がうまくいかないケースがあります。

「DynaEye 11」の画面
文字認識されている様子

「DynaEye 11」の手書き文字読み取り精度を中川さんは高く評価しています。

中川さん また、前述のように書式定義が簡単にできる点を当行では高く評価しています。別のAI-OCRソフトウェアとの比較検討もしましたが、扱い方が難しいものが多く、長期の研修を有料で受けなければ使いこなせないものもありました。それに対して「DynaEye 11」は使い勝手が非常によく、こちらの要望を叶えてくれるソフトウェアでした。

「fi-7460」に対するご評価をお聞かせください。

南さん 旧システムの専用スキャナーはサイズが大きく、占有面積が「fi-7460」の2倍はありました。また、原稿を詰まらせるトラブルが頻発していたほか、原稿を重なったまま送って1枚を飛ばしてしまったこともあります。この場合は引き落としが実行されない事態にもなりかねませんから、非常に神経をつかいました。

その点、「fi-7460」は原稿を送る際のトラブルがほぼ皆無ですから、作業を止めたり後戻りさせたりする必要がありません。これは本当に素晴らしいと思いますね。

旧システムの頃とランニングコストを比較するといかがでしょう。

中川さん 以前と比べて安くなりました。旧システムは保守料がかかっていたので、それがなくなったことを含めての比較です。

南さん ランニングコストもさることながら、以前は口座振替の決済が誤入力などのミスで実行されないというリスクが常に内在していましたが、データ入力をAI-OCRに任せることでリスクを限りなくゼロに近づける筋道ができたと考えています。スタートして間がないため読み取り精度の向上など、改善の余地や課題はまだありますが、一次エントリーの入力が人の手から離れることには大きな意味があります。

口座振替依頼書登録システムの内製をマネージャーの立場で主導された中川さんから見て、システムの出来栄えを評価すると何点になるでしょうか。

中川さん 新しい書式が毎日発生するので難しい部分もありますが、期待値の最大限が実現した状態を100とすると、現状での評価は80点というところでしょう。残りの20点は今後のチューニングにかかっていますが、先は見えています。

当システムの外販について能戸さんにうかがいます。能戸さんは北國フィナンシャルホールディングスでコンサルティングを手がける会社、CCイノベーションのコンサルタントとして全国の金融機関を訪問しておられるとうかがっています。金融機関を取り巻く現況と、当システムが他の金融機関にとっても役立つと考えられる理由などについてお聞かせください。

能戸さん 当行のような地方銀行をはじめとする中規模・小規模の金融機関にとって、目下いちばんの問題は作業に従事してくれる人材が慢性的に不足しているということです。もちろん人手不足は全業種共通の問題ですが、金融機関は硬いイメージがあるのか特に人が集まりにくくなっています。言うまでもなく、この問題は一朝一夕に解決するものではありません。

そこで金融機関が積極的に取るべき道は機械化・自動化です。実際、せっかくAIというものが実用化されているのだから使っていこうと考え始めた金融機関は増えています。その点で今回の口座振替依頼書登録システムは、本当によい商品になったと実感しています。

特にAI-OCRを活用したデータ入力の効率化は「機械にできることは機械に任せ、人は人にしかできないことに集中すればよい」という考え方にフィットしますね。

能戸さん 当行としても、まずオペレーターによる手入力の部分をなくすことを主眼にシステムを内製しました。これに付随して、熟練者でなくとも書式定義ができるという「DynaEye 11」の特長は大きな力になりました。すでに言及がありましたが、どれだけハイレベルなソフトウェアであっても、使いこなすために長期の研修が必要だったり、何かあるたびにシステム部の手を借りなければならなかったりすると、業務を回しにくいだけではなく、結局は熟練担当者が必要になって業務が属人化し、人手不足の解決につながりません。それだけは避けなければならないと当初から考えていたところにPFU様から「DynaEye 11」の紹介を受け、「これならいける」と判断しました。

また、中規模・小規模の金融機関に共通する悩みの一つに、ベンダー製の非常に優秀なシステムは機能面・コスト面ともに少々オーバースペックな面もあります。口座振替依頼書登録システムはこの問題に対してシステムを内製することで切り込んだもので、当行と同規模、あるいはより小規模の金融機関にとって価値のある商品であろうと考えています。

オペレーションセンターのエントランスでの一枚

オペレーションセンターのエントランスにて。

口座振替依頼書登録システムを販売されるとき、どこからどこまでを商品として扱うご予定ですか。

能戸さん そこはいろいろ考えられます。各金融機関のメインシステムへの接続までをパッケージで全部というケースもあれば、スキャナーとAI-OCRソフトウェアを活用する部分だけを販売することもあり得ます。

中川さん その場合は「fi-7460」など「fiシリーズ」がシステムの推奨スキャナー、「DynaEye 11」が同じく推奨AI-OCRソフトウェアということになるでしょう。

能戸さん 中にはメインシステムに踏み込むのが難しい場合もあるかもしれませんが、スキャナーとAI-OCRソフトウェアのコンビネーションに限っては、どの金融機関にも活用していただけるのではないかと思います。

すでに登録してある書式定義も販売対象になるのでしょうか。

能戸さん そういうことになると思います。せっかく時間をかけて登録してきた定義ですから、お役立ていただくのが好ましいでしょう。

販売開始の時期など、具体的に決まっていることがあれば教えてください。

能戸さん 声をかけていただければ今すぐにでもうかがいますが、前述の通り当行の中でもう少しチューニングを施したいタイミングですので、半年後を目安に本格的な展開を開始したいと考えています。

「fiシリーズ」と「DynaEye 11」が全国の金融機関のお力になれれば幸いです。本日は詳しくお聞かせくださり、ありがとうございました。

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