2025.9.4 |
豊見城市役所
応募用紙の手書き文字を読み取ってテキスト化。手入力が不要になり業務効率がアップ
「PaperStream Capture Pro Premium」の導入でAI-OCR運用のスモールスタートに成功

右から、デジタル推進課 課長の後間(こしま)大輔さん、DX推進班 班長の知花厳さん、DX推進班 主査の赤嶺貴一さん。記事では知花さんと赤嶺さんにお話をうかがいました。
沖縄県の豊見城市役所では、毎年開催する「豊見城市男女共同参画に関するキャッチフレーズ・ポスター募集」にあたり、小・中・高等学校の児童・生徒が手書きしたキャッチフレーズ応募用紙約400枚を手入力でデータ化していましたが、手間を排して負担を軽減するために「PaperStream Capture Pro Premium」を導入し、応募用紙のイメージデータからテキストを抽出する運用を可能にしました。これは同ソフトウェアのAI-OCR機能を活用するもので、現在手入力しているさまざまな書類への活用が見込まれています。また、大きなコストをかけることなくAI-OCRを活用するための手段としても注目されます。同市役所を訪ね、詳しいお話をうかがいました。
豊見城市役所
業種:自治体
人口:6万5766人(令和7年6月末)
総面積:19.33km2
- 課題
- 児童・生徒が手書きした応募用紙約400枚の手入力に手間と時間がかかり、負担が大きかった。また、そうした負担を排除し業務効率を上げるためにAI-OCRソフトウェアの導入が望まれたが、コストの問題によりなかなか実現できなかった。
- 解決法
- 有償のイメージキャプチャリングソフトウェア「PaperStream Capture Pro Premium」を導入。
- 効果
- 「PaperStream Capture Pro Premium」のAI-OCR機能を活用することにより、AI-OCR運用のスモールスタートに成功。応募用紙のOCR処理が可能になったほか、市役所内のさまざまな書類への活用も見込まれている。

1. 児童・生徒が手書きしたキャッチフレーズを読み取り、テキストデータを抽出
豊見城市役所 企画部 デジタル推進課 DX推進班 班長の知花厳さんと、同じく主査の赤嶺貴一さんにお話をうかがいます。豊見城市では令和7年3月に有償のイメージキャプチャリングソフトウェア「PaperStream Capture Pro Premium」を導入されました。その背景や具体的な活用法についてお聞かせいただくにあたり、はじめにデジタル推進課 DX推進班の位置づけや業務内容を教えてください。
知花さん 当班は名称のとおり、豊見城市におけるDXを推進する立場です。対外的なDXとしては、市民の利便性向上のためにオンライン申請を推進する、豊見城市公式LINEのメニューを拡充する、デジタルデバイス対策としてシニア層向けにスマホ教室を開催するといった業務を行っています。
一方、庁内のDXでは職員にとっての業務効率化や高度化を目的に、VBAツールでプログラムを作る、生成AIや議事録作成システムなどの導入済みツールを周知普及するといった業務を担当します。
これら内外のDXは当班だけで推進するのではなく、原課(担当課)の協力があって初めて可能になるものです。そのため原課から相談や要請があったとき適切に対応できるよう、役立ちそうなデジタルツールの情報をキャッチして調べておき、利用の機会が訪れたときに導入するのも当班の仕事です。

企画部 デジタル推進課 DX推進班 班長の知花厳さん。

企画部 デジタル推進課 DX推進班 主査の赤嶺貴一さん。


沖縄本島南部に位置する豊見城市は、那覇市のベッドタウンとして発展を遂げている自治体です。那覇空港に近く利便性が高いこと、海浜エリアの開発が進んでいることなどから人口は増加傾向にあり、住民の平均年齢が低いことでも常に全国の上位にランキングされています。
「PaperStream Capture Pro Premium」は何を目的に導入されたのでしょうか。
知花さん まだ導入したばかりで本格的な運用はこれからですが、まず我々DX推進班がAI-OCRソフトウェアの必要性を感じていたという背景があります。そこに重なったのが、令和5年に市民部 協働のまち推進課から寄せられた要望です。
赤嶺さん 協働のまち推進課では年に1回、「豊見城市男女共同参画に関するキャッチフレーズ・ポスター募集」を行っており、キャッチフレーズは毎年約600件が集まります。そのうち約200件は電子申請システムを利用したWeb経由の一般応募ですが、残りの約400件は市内の小・中・高等学校の児童・生徒が応募用紙に手書きしたものです。この応募用紙400枚をAI-OCRソフトウェアで読み取り、記載内容をテキストデータ化したいというのが協働のまち推進課の要望でした。


キャッチフレーズの応募用紙。サイズはA4で、キャッチフレーズ・氏名・フリガナ・年齢・学校名・住所・電話番号の記入欄と、自由記述の欄が設けられています。
(参考リンク)
令和6年度「豊見城市男女共同参画に関するキャッチフレーズ・ポスター募集」入賞作品について
データ化は保存の便を考慮してのことでしょうか。
知花さん それもありますが、主目的は審査の円滑化です。キャッチフレーズを選定する審査員の方々に400枚の紙をめくりながらご覧いただくわけにはいかないので、原課である協働のまち推進課では毎年、400枚分を課内で手入力してテキストデータにしています。その入力作業が非常に大変なので、デジタルツールで解決できないだろうかと考えたようです。
ちょうどその頃、当班では手書きの文字をテキストデータ化したり、PDFファイルからテキストデータを抽出したりするために汎用のAI-OCRソフトウェアを探し始めており、その一環としていくつかの高機能AI-OCRソフトウェアを試用していました。それを用いて原課の要望に対応できるかどうか試してみたところ、応募用紙の読み取り結果は良好で、原課の反応も上々でした。
今回の「PaperStream Capture Pro Premium」導入も、AI-OCRソフトウェア探しの延長線上にあります。「PaperStream Capture Pro Premium」を活用して応募用紙を読み取り、原課の要望に引き続き応えていこうという狙いです。
2. 複合機で用紙をイメージデータ化し、「ファイルインポート」機能でOCR処理
「PaperStream Capture Pro Premium」導入までの経緯と、導入によって協働のまち推進課のキャッチフレーズ関連業務がどのように効率化されるのかを具体的にうかがいます。きっかけとなった令和5年当時の状況からお聞かせください。
赤嶺さん 令和5年はデジタル推進課にDX推進班ができた年でもあり、班の成立を機に本腰を入れてAI-OCRソフトウェアを探し始め、個人情報保護の観点からオンプレミス型かLGWAN(総合行政ネットワーク)対応型の数種類に絞って試用を開始しました。その結果、前述のように協働のまち推進課の要望にも応えることができたので、当班としてはAI-OCRが必要であるという思いをいっそう強くしました。
ところが残念ながら、令和5年と令和6年に関してはAI-OCRの導入を果たすことができませんでした。理由は予算です。高機能AI-OCRソフトウェアは比較的大きな支出を要するため、「どこかで必ず便利に使えます」という理由だけで予算を取るのは少々難しいという事情があります。
では、なぜ「PaperStream Capture Pro Premium」の導入が実現したのでしょう。
赤嶺さん 導入にかかる費用が比較的小さく、スモールスタートでAI-OCRの恩恵を得られるからです。令和7年1月にPFUから「PaperStream Capture Pro Premium」のリリースを受け取り、「これならコスト要件を満たせるのでは」と、すぐに当班でのホットな話題になりました。探していたものが見つかったという思いでした。
知花さん あのときは「我々のための商品ではないか」と本気で思いましたね。協働のまち推進課からの要望には、令和5年度・6年度ともに試用していたAI-OCRソフトウェアで対応しましたが、令和7年度からは「PaperStream Capture Pro Premium」でいけるのではないかと期待がふくらみました。
「PaperStream Capture Pro Premium」の発売は渡りに舟だったのですね。性能面での不安はなかったのでしょうか。
知花さん 「PaperStream Capture Pro Premium」に無償評価版があるので試用させてもらい、実際に触ってみて確認しました。読み取り箇所が100までという制限はありますが、読み取り精度に関しては期待通りの出力を得ることができました。
赤嶺さん 少なくともキャッチフレーズ応募用紙の読み取りに関しては、これまでに試用した高機能AI-OCRソフトウェアと比較してもほとんど遜色がないとわかったので、財政部門と相談し、令和6年度のうちに急ぎ足で導入しました。

「PaperStream Capture Pro Premium」は手書き文字・活字・バーコード・チェックマークなどを認識し、さまざまなデータ抽出に対応しています。データ抽出は1帳票あたり100項目まで指定できます。
キャッチフレーズ応募用紙読み取りの、想定されるフローをうかがいます。応募用紙は学校から市役所に届くのですね。
知花さん そうです。キャッチフレーズは一般の方々にも応募していただけますが、原課としては若い世代の方々にも周知したいということで、市内の小学校8校、中学校4校、高等学校3校に紙を配り、児童・生徒の方々にキャッチフレーズの発案をお願いしています。その結果が400枚の紙として市役所に集約されます。
赤嶺さん 小学校が多いことは、読み取る上での一つのポイントです。小学生の皆さんが手書きしているので、手書き文字の読み取りが得意なAI-OCRソフトウェアが求められます。

令和6年度分の応募用紙。分厚いバインダー1冊分のボリュームです。

豊見城市役所では応募用紙のイメージデータ化に複合機を使用しています。
令和6年度分キャッチフレーズ応募用紙の束を拝見するとかなりのボリュームで、やはり手入力は避けたいところですね。これらをどのくらいの期間でデータ化するのでしょうか。
赤嶺さん 毎年9月1日から10月末までを募集期間としており、原課によると締切後の1か月でデータ化するそうです。一見余裕がありそうですが、日々の通常業務に追われる中で発生する季節業務ですから負担は大きく、直接の担当者一人のほかに課内の数人が入力と確認を手伝っていたようです。
応募用紙のイメージデータ化は複合機で行うのでしょうか。
知花さん 市役所の各階に共用の複合機があるので、応募用紙をスキャンしてPDFファイルを生成します。
そのPDFを「PaperStream Capture Pro Premium」の「ファイルインポート」機能で読み込み、抽出したテキストをCSVファイルで出力するのですね。テキストは審査用に加工するのでしょうか。
赤嶺さん Excelの表にして審査員の方々にご覧いただきます。

「PaperStream Capture Pro Premium」は、PFU製品以外のシステムやスキャナーで生成されたイメージデータも取り込める「ファイルインポート」機能を搭載しています。

「PaperStream Capture Pro Premium」の画面より。「ファイルインポート」機能で応募用紙のイメージデータを取り込み、OCR処理を行います。

読み取ったテキストを確認・修正後にCSVファイルで出力し、審査用のExcelファイルに加工します。
OCR処理により、手入力と比較してどのくらいの効率化が実現するのでしょう。
赤嶺さん 原課の担当者によると、令和5年度・6年度の実績として、課内の3~4人にダブルチェックを手伝ってもらったほかは、すべて一人で済ませることができたそうです。
削減された時間数までは確認していませんが、手入力の頃は手分けして毎日少しずつ進めていたのに対して、正味一日か二日で確認と修正までを終えられるようになったはずです。確認が紙とPC画面の照合ではなく、画面上でできるようになったことも時短につながっているでしょう。
小学生の文字が多いということでした。「PaperStream Capture Pro Premium」無償評価版で読み取った際の精度はいかがでしたか。
知花さん 小学生の字にはくせが強いものが多いので、90パーセントには達していないと思います。
赤嶺さん 消しゴムをかけた上から鉛筆で書き直しているものなどは紙の汚れが読み取りの邪魔をする場合があります。私の体感では80パーセント強というところでしょう。もちろん、20パーセント弱の修正が必要でもゼロからの手入力に比べればはるかに効率的です。
そもそも用紙のレイアウトが手書き前提で、OCR処理のことをまったく考慮していないという点も影響しているはずです。今後はAI-OCRでの読み取りを前提にしてフォーマットを作る必要があるでしょう。
知花さん 線を一本引くだけでも書きやすさと読み取りやすさが向上するので、原課と相談して詰めていくつもりです。

消しゴムをかけた上から書き込んである例。こうした原稿も含めて、読み取り精度は体感で80パーセントを超えているといいます。

「PaperStream Capture Pro Premium」の読み取り結果確認画面より。画面上でイメージデータと照合し、簡単に修正できます。
応募用紙のイメージデータと抽出したテキストデータは市役所のサーバーに保存するのでしょうか。
赤嶺さん そうですね、ファイルサーバーに保存しておき、何か確認したいときには検索してすぐに閲覧できるようにしています。また、応募用紙の原本も原課のルールに従って一定期間保存します。
3. スモールスタートでAI-OCRを活用できる、市役所業務に適した現実的な選択肢
DX推進班で「PaperStream Capture Pro Premium」無償評価版を試用したご感想をお聞かせください。スムーズに運用できましたか。
知花さん 正直なところ難しく、最初の出力までにやや時間がかかりました。日常業務の合間にマニュアルを読みながら少しずつ進めて、二日目に希望通りの出力ができました。いろいろな機能がある中で、AI-OCRでの読み取り機能だけをこちらが選択的に使おうとしているがゆえに難しく感じるのかもしれません。
ただ、難しいと感じるのは最初だけですから、読み取る書類に応じてデータ抽出のフィールドを我々が指定し、原課に使ってもらうという運用が可能だと思います。
協働のまち推進課のキャッチフレーズ応募用紙のほかに、今後「PaperStream Capture Pro Premium」で読み取る対象になり得る書類はありますか。
知花さん 一例としては、企画調整課が毎年行っている市民意識調査の回答用紙があります。これは無作為抽出した対象者2,000人に紙の調査票を郵送してご回答いただくもので、令和7年3月に実施した調査では回答が562件、その内訳はWeb回答が171件、郵送が383件、窓口へのご提出が8件でした。これなども400枚近い紙が集まるので、テキストデータ化にあたってはAI-OCRが有効と考えられます。
赤嶺さん 原課からはすでに一度、相談を受けています。ただ、意識調査ともなると項目が非常に多く、優に100を超えています。ですから「PaperStream Capture Pro Premium」で対応する場合は、用紙1枚に記載する項目を100以内に収めるなど、スムーズに読み取るための工夫が必要です。それさえクリアできれば、多くの項目を手入力する必要がなくなるので、恩恵は大きいと思います。


協働のまち推進課のキャッチフレーズ応募用紙以外にも、「PaperStream Capture Pro Premium」を活用できる書類は「市役所の中にたくさんあるはず」と知花さんは言います。
知花さん そのほか、税務課も興味を示しています。償却資産の申告でPDFが送られてくるので、それを読み取ると効率が上がるのではないかという話です。現在は税務システムに手入力しているようです。
赤嶺さん また、当班の想定に留まるものの、保育園の入園申込用紙も読み取り対象にできるかもしれません。これも100項目を超えているのでフォーマット調整が必要ではありますが。
知花さん 一方で、項目が100に満たない書類も市役所にはたくさんあります。各課に詳しく話を聞けば、「PaperStream Capture Pro Premium」の活用で入力作業を効率化できる書類が必ず出てくるはずです。
終わりに「PaperStream Capture Pro Premium」に対する総評をお聞かせください。
赤嶺さん 市役所のデジタル化には、手書き書類を減らしていくことと、手書きを排除できない書類をデータ化することという2つの目的があり、バランスよく予算を配分する必要があります。そのため後者の目的に使うAI-OCRだけに大きなコストをかけるのが難しく、悩みの種になっていました。そこに、スモールスタートという条件にぴったり合致する「PaperStream Capture Pro Premium」がリリースされ、本当に助けられました。我々にとって最良の現実的選択肢だったと思います。
「PaperStream Capture Pro Premium」が豊見城市役所の業務効率化の一助となれて幸いです。本日は詳しくお聞かせくださり、ありがとうございました。
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