舞台も料理もITも! ジェネラリスト・大倉照結さんのマルチなScanSnap活用法とは
大倉照結(おおくら・てゆい)さんは、ミュージカルをこなす舞台女優であり、ナレーターであり、日本舞踊家であり、そうかと思えば料理研究家でもあって、さらにはグラフィックデザイナーにしてAdobeのエバンジェリストでもあるという、言葉通りのジェネラリスト(幅広い知識や経験を持つ人)です。ITに明るいマルチクリエイターという立場でScanSnapを使いこなしている大倉さんに、具体的な活用法をうかがいました。
目次
1. 領収書をスキャンして「Dropbox」に入れるだけ。決算の準備が楽になった
――大倉さんは本当に多彩な分野で活躍しておられます。Adobeのエバンジェリストでもあるのですね。
IT系のイベントが盛んだった20年くらい前、舞台の合間にMCのお仕事を受けたのがきっかけです。人前でしゃべることができてデザイン系のスキルがあって、しかもITに強い女性ということでお手伝いをするうち、業務委託という立場でコンスタントにお仕事をするようになりました。
私はもともとパソコンが好きで、パソコンスクールの立ち上げに携わったこともあります。その流れで舞台のチラシを自分でデザインするなどして身につけたデザインスキルと、Adobeの製品知識を認めていただいた形です。
――活動は舞台関連とIT関連、大きく2つの方面に分けられるのでしょうか。
最近は日本舞踊のお仕事や料理関係のお仕事も増えてきているので、分類したり主/副をつけたりするのがとても難しくなっています。よくサブのお仕事を「副業」といいますが、私の場合はすべてにシフトしているので「複業」と表現しています。その全体を表すよい日本語がないのでジェネラリストと名乗っていますが、マルチクリエイターと言ってくださる方もいます。
――大倉さんはScanSnapもマルチに使っているとうかがっています。ScanSnapはいつから、どのようなきっかけで使い始めたのでしょうか。
自分の事務所に導入したのは昨年です。もちろん以前からScanSnapの存在は知っていて、手元にある紙をScanSnapでデータ化できればよいだろうなと思ってはいましたが、実現には至っていませんでした。
ところが昨年、あるセミナーで最新の「ScanSnap iX1600」を使ってみたところ、イメージしていたよりも簡単で手間がかからないしWi-Fiでつなぐこともできると知って、ちょうど自分の会社の決算が近かったこともあり、さっそく導入しました。
それ以来、ScanSnapのファンになって、自分の使いやすいように設定して活用しているところです。
――個人事業主ではなく法人にしておられるのですね。決算では領収書などの証憑をスキャンするのでしょうか。
そうです。これまでは税理士側の事情でITを活用しにくかったので、やむなく紙の領収書などを月ごとに封筒に入れたりファイリングしたりしておき、それを決算直前に郵送もしくはバイク便、時には手渡しで税理士に届けていました。ただ、それだと原本が税理士事務所に行ってしまうので、「これは何の経費ですか」といった問い合わせを受けたときの対応が難しいなど、検索性が低く不便なのが悩みどころでした。
そこに税理士事務所が代替わりしてパソコンのできる人が担当になったので、チャンスとばかりにScanSnapで証憑をスキャンしてデータで渡す方式にしました。
具体的には、スキャンしたデータを「Dropbox」の中に設けた作業エリアにいったん送り、相手が見やすい状態に整理してから「Dropbox」の共有機能で先方に送っています。フォルダーを共有しておけばメールで「送りました」と知らせなくても相手に通知が届くので、こちらはただファイルを放り込むだけです。懸案だった検索性も高まり、本当に楽になりました。
――証憑は月ごとに1つのPDFにまとめているのでしょうか。
そうです。同じ月の中で分けてスキャンしたものを結合したり、日付順に並べ替えたりして、相手が見てすぐにわかる状態に整理しています。
――「ScanSnap iX1600」に付属の「名刺・レシートガイド」は活用されていますか。
便利に使っています。ただ領収書は小さなものからA4サイズまであるので、すべてを日付順に重ねてセットすることができません。ある程度サイズごとに分けてスキャンしておき、最後に「Acrobat Pro」で結合して並べ替えています。
なお、スキャン作業自体はアルバイトの方にお願いしています。ScanSnapはセットしてスキャンボタンを押すだけと操作が簡単なので、ITの知識がない人や初めての人でもすぐに使えます。あらかじめ保存先を設定しておけば新しいフォルダーをその都度作る必要もありませんし、Wi-Fiでつながるのでアルバイトさんと私のデスクが離れていてもまったく問題ありません。
アルバイトさんがスキャンしている間、私は自分のパソコンで別の仕事をしながら結果だけをチェックして、1月分のスキャンが終わったら2月分フォルダーを指定して「2月をスキャンしていいよ」と声をかけたり、うまくスキャンできていない証憑が見つかったら「今のもう一度スキャンして」と頼んだりするだけです。
自分の手を煩わせなくてもよくなり、本当に助かっています。
2. 台本や譜面をスキャンして移動中に閲覧。過去の台本もスキャンして紙を処分
――決算以外ではどのような用途にScanSnapを使っていますか。
舞台の台本や過去の作品のパンフレットの紙を、アーカイブのためにスキャンすることが多いですね。私自身はほぼすべてのことをデジタルで済ませていますが、過去の台本や資料などは紙ベースですので、すごい量が溜まっていました。そこにScanSnapを導入したので、少しずつ地道にPDF化しています。
特に台本は何百という冊数がありましたが、捨てるに捨てられなかったんですよね。資料として必要というものもあるし、過去の舞台を再演することもあるので、手元にないと困ってしまいます。だから何箱もの段ボールを引っ越しのたびに移動したり、レンタルルームに預けたり。
ScanSnap導入後はそれらをスキャンして、紙を処分できるようになりました。原本は一部を除いて、あとは全部廃棄しています。
――進行中のお仕事のために紙をスキャンすることもありますか。
あります。新しい台本や絵コンテなど、紙でいただくものはスキャンしてデータ化しています。そうすると移動中でもスマホでチェックできますし、PDFになっていれば台本の覚えなければならない箇所に「Acrobat Pro」でマーカーを引いたり、注釈を書き込んだりもできます。台本は冊子になったものもありますが、紙をステープラーで留めただけのものが多く、意外と簡単にスキャンできます。
また、数年前から専門学校で教えている日本舞踊では毎年、お扇子や浴衣の構造や名称、邦楽の課題曲の歌詞や意味を書き起こすという課題を出しています。生徒たちがどんなふうに調べてまとめてくるのかも見たいため、フォーマットなどはあえて指定せず、直近の先輩のものを見本として見せるに留め、生徒の自主性を大切にしています。すると、多いときは60名以上の生徒がノートの切れ端や画用紙、コピー用紙などサイズも質感もさまざまな紙に書いてくるので、色とりどりの提出物をチェックします。
それらの提出物からは卒業した一人一人の顔が見えてくるようで、どうしても廃棄することができませんでした。そこでScanSnapを導入してから、すべてチェックしたあとで掲出物をデータ化することにしました。紙の原本は特徴的なものだけを各学年1~2枚程度、ファイリングして手元に置くようにしています。
――さまざまな活かし方をされているのですね。
はい。先日は舞台上演後のアンケートもスキャンしました。来場してくださったお客様にアンケートを書いていただくとき、劇場は外のネットワークとつながりにくくしていることもあってデジタルではお願いしにくいので、紙に書いていただくことが多いんですね。
それが200枚、300枚と集まったものを早く見たいので、終演後にScanSnapでスキャンして、共演者やスタッフとPDFを共有しました。
――どこが好評で、どこに工夫の余地があるのかといったことがすぐにわかりますね。
そうなんです。あと、紙で渡されることが多いものに譜面がありますね。ミュージカルの場合は何十曲にもなることがあるので、紙だとかなり大変です。
それをデジタル化しておくと、「あの譜面どこだっけ」というときに探す手間が省けます。検索しやすいのはデータならではの利点なので。
――曲は本番までにすべて暗譜されるのでしょうか。
はい、もちろん。ですから台本と同じように、データ化した譜面を移動中にスマホで見てブツブツ唱えていますね。
――台本や譜面を紙で持ち歩いていた時期もあるのでしょうか。
ありますよ。ScanSnap導入後は即スキャンしていますが,それまでは複合機タイプのフラットベッドスキャナーしか持っていなかったので、なんだかんだでスキャンするのが面倒になってしまい、そのまま何冊も持ち歩くことがよくありました。台本数冊とノートパソコンをキャリーバッグに入れてガラガラと。
今でも移動はキャリーバッグですが、持ち物の中で重いものはノートパソコンくらいという状況になったので、すごく楽になりました。
――料理のお仕事やデザインのお仕事でアイデアを紙に書いて、それをスキャンするといった使い方はされていますか。
料理に関しては完全にデジタル化していて、紙を使うことはないですね。私が作った料理を召し上がっていただくご飯会のときも、何を作るか、材料をどうするかといったことは移動中にスマホでメモしています。盛り付けのイメージも手描きアプリで描いてしまえば紙である必要性がないので、スマホで済ませてしまいますね。
でもデザインの仕事では、ロゴのイメージやレイアウトのイメージなどの当たりをつけるために、ごくラフなデザイン画を紙に描いて、それをスキャンしたものをベースにデジタルで絵を描くことはあります。
あるいはデザインの素材としてかすれた筆のニュアンスが欲しいといったときに、かすれた筆で紙に書いたものをスキャンしてからトレースするというようなこともしています。
3. ScanSnapはITに詳しくない人でも迷わず使える。画像補正機能も高ポイント
――ScanSnapの設定や操作性に関して、どのような感想を持たれましたか。
操作がすごくシンプルで、難しいところがないという印象を受けました。
プロファイルにしても、特に詳しい説明を読んだり見たりしたわけではなく、プリセットのプロファイルの中身をちょっと確認して、すぐに自分でカスタマイズしました。
プロファイルは今、領収書用、名刺用、資料送付用、アーカイブ用と、全部で5つか6つありますね。
――さすがですね。
プロファイルはとにかく作ってみて、「これはいいや」と思ったら作り直せばよいだけの話なので。
でも改めてプリセットを見てみると、いろいろな用途に向いたプロファイルが用意されているので、ITに詳しくない人でも迷わずに使えると思います。
――逆さまになった原稿や横倒れの原稿を自動で正立した画像にする機能や、文字列の傾きを自動で真っ直ぐにする機能など、ScanSnapの画像補正についてはいかがでしょうか。
すごく便利ですね。原稿が多少斜めになっていても真っ直ぐにしてくれますし。あの画像補正機能がある点はすごく大きなポイントだと思います。
それに、紙が重なって送られたときにスキャンが止まるのもいいですよね。エラーをちゃんと返してくれるので、こちらもすぐに対応できます。
――ScanSnapを導入した結果、特によかったと思われるのは決算などの会計関係でしょうか、それともアーカイブ関係でしょうか。
それはもう両方ですね。領収書の整理に自分の手を煩わせなくても済むようになり、アーカイブに関しては狭い自宅兼事務所にスペースを確保できるようになりました。
どちらも私にとって本当に大きなことです。
――今後、ScanSnap活用の幅を広げていくご予定はありますか。
名刺をスキャンして「Dropbox」に保存していますが、まだ名刺管理アプリに連携させられていないので、そこが今後の課題でしょうか。
それと、私は持病があるので毎月の検査結果やお薬の詳細を紙でもらっていて、ScanSnap導入後はそれらもスキャンしてデータ化しています。
このうちお薬の紙に関しては、QRコードをスマホで読み取ってお薬手帳アプリに連携させていますが、効能や副作用などの詳しい記載内容までは連携しないので、ScanSnapで読み込んだ記載内容がアプリにそのまま反映されるようになるといいなと思っています。これは予定というより私の希望ですね。
――お仕事同様にマルチなScanSnap活用法、参考になりました。本日はありがとうございました。
写真協力:長尾茂則
ScanSnap iX1600
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この記事を書いた人
アドビ エバンジェリスト 大倉 照結
女優、ナレーター、日本舞踊家、デザイナー、アドビ エバンジェリスト、料理研究家、マンガ大賞選考委員など、ジャンルを問わない深い知識で、幅広く活動するジェネラリスト。
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愛知県西尾市の「BANZAI税理士事務所」では、記帳代行などの煩雑な作業をデジタルの力で大幅に効率化する取り組みを進めています。特に、顧客にScanSnapを貸し出して証憑をスキャンしてもらい、そのイ