子どもが描いた絵はデータ化で味わいなおす 〜コドモノミライエ 天野朋子さんのScanSnap活用術〜
子どもが一生懸命に描いた作品。そのひとつひとつを大切にしたいと思う一方、増えていく作品を収納するためのスペースには限りがあります。
コドモノミライエを主宰するグラフィックデザイナーの天野朋子さんは、作品にひと手間を加えて額装したり、1冊の本にデザインすることで、子どもの作品を暮らしの中で楽しむことを提案しています。またオンラインイベント「30日で子どもの絵データ化チャレンジ!」を開催し、データ化による整理方法を伝えています。
天野さんに、作品をデータ化するうえでのポイントやScanSnapの活用法についてうかがいました。
目次
1. 子どもが描いた絵を未来へ残したい
――天野さんは2019年からコドモノミライエという活動に取り組んでいらっしゃいますが、どのような活動なのでしょうか?
コドモノミライエは、子どもが描いた絵を残そう、というテーマで取り組んでいる活動です。作品を撮影してデータ化したり、複数枚の絵を組み合わせるなどして、額装・製本することで、生活空間に飾り、日常の中で鑑賞してもらえるようにしています。
成長過程によって変化していく子どもの絵は、まさにその時の子どもの感性を写し取ったようなものです。見ているだけで当時の本人とまた会って話しているような、そんな気持ちにさせてもらえるんですね。ですので、見たり触れたりできる状態にして、いつも身近に感じてもらえたら、と思って取り組んでいます。
――素敵な活動ですね。どういったきっかけで始められたんですか?
私も2人の子どもを育てていますが、絵画教室にも通わせていたこともあってか、大きな画用紙に描いた絵がたくさんあったんです。せっかく子どもたちが描いた絵ですから、できれば大事に取っておきたい。子どもたち本人も一生懸命描いたものを大事にしてもらえたら嬉しいでしょう。
ただ特に子どもが小さいうちは、作品がどんどん増えていく一方で、自宅のスペースは限られています。実際、我が家でも衣装ケース2箱分くらいの量になってしまって、生活の場を圧迫しているのがずっと悩みでした。
こんなモヤモヤした気持ちを抱えてしまうことを、きっと子どもも作品自体も望んでいないはずです。
それで、子どもたちの絵を大事に残せる形がないかと考えて行き着いたのが、データ化して額装や製本をして残すという今のやり方でした。
――なるほど。でも額装や製本はとてもむずかしいように感じます。
普段はグラフィックデザイナーの仕事をしているので、印刷物のデザインや絵のデータ化、写真撮影といった必要なノウハウは、もともと身についていました。そうしたことも活かしながら、私自身があったらいいなと思うサービスを、自ら始めることにしたんです。
お客様からは「製本したことで、本人がすごく喜んでいる」という嬉しいお声もいただいています。その方は製本したお子さんの作品集をリビングの一番手に取りやすいところに置いて、いつでも見返せるようにされているそうです。
――コドモノミライエに依頼されるお客様は子育て中の親御さんが多いのでしょうか?
実際はじめてみてわかったのですが、小さいお子さんを持つ親御さんだけでなく、ご年配の方まで幅広い層の方にご利用いただくなど、思いがけないニーズがあり、私自身も驚いています。
ご年配の方が終活のなかでお孫さんからプレゼントされた作品を飾りたい、というケースや、これはとても悲しく忘れられないお客様なのですが、不幸にも先に娘さんが亡くなってしまって、残された作品をどうしたらいいか、というご相談もありました。
こんなに人それぞれ思いが違うのかと、この活動を通じて実感しています。そのため、まずはお話を伺い、作品に向き合い、試作もしながら、お客様にとって一番いい形を考えて提案するようにしています。
2. データ化する時間が絵と向き合う時間になる
――そうしたなかで、今年(2023年)から「30日で子どもの絵データ化チャレンジ!」を新たに始められたのですね。どのようなプロジェクトでしょうか。
親御さんが自らお子さんの絵を撮影してデータ化するのをサポートする取り組みです。私自身がなかなか子どもの絵を整理できなかった経験から、ひとりではできなくても仲間となら楽しくやれるかも、と企画し、希望するメンバーをインターネット上で募りました。
「子どもの絵をデータ化したい」という同じ目的を持った仲間とオンラインでつながり、みんなで励まし合いながら30日間という期間を決めて作業を進めていくという内容で、参加者の多くは小学校に入学される前後のお子さんをお持ちのママですが、パパやお孫さんのいらっしゃる世代の方など、幅広くご参加いただいています。
お子さんの作品をデータ化する方法をお伝えすることで、ご自身でも取り組めますし、このようなノウハウをお持ちの方が地域に増えたら、もっと普及させられるのではないか、と思っています。
――作品をデータ化するうえでのポイントはありますか?
きれいにデータ化するには撮影する環境が重要になります。私は「段ボール撮影ボックス」という、ご自宅で簡単に作れるものを考案しています。これを使えば、自然光を遮断し、均一にライティングするので、影が入らず明るく撮影することができます。今はスキャンアプリも豊富ですが、撮影ボックスを作る過程も楽しんでくださっているようで、私も嬉しいです。
あとは、家のあちこちにある作品を1箇所に集めて量を把握することも大切です。
また、撮影する前に作品を平らにしておくこともポイントです。絵はくるくると丸めて持って帰ってそのまま...ということも多く、そうなると巻きぐせがついています。作品の上に重たいものを乗せて、伸ばして平らにするようにしています。そうすることで、作業がスムーズに進みます。
――参加されている方からの反応はいかがですか?
「なかなか一人では気が乗らないけど、みんなでやると楽しく作業が進みました」「作業会やLINEで聞きたいこともすぐ聞けるので良かったです」「写真の撮り方や作品集のアイデアなど、他の参加者から刺激を受けました!」など、嬉しい感想をたくさんいただいています。
また、ある方は、気に入ってよく見ていたはずの絵ですが、改めて見て「こんなところにクマが描いてあった!」と驚かれていました。そんな楽しい新たな発見があることも。
自分でデータ化するなかで改めて作品を見返し、いままで気づかなかった作品の魅力に気づけるのは、このプロジェクトならではだと思います。そういった機会をみなさんに味わっていただけてよかったと感じています。
3. 小さいサイズや凹凸の多いものはScanSnapできれいにデータ化
――天野さんはScanSnap iX100も活用されているとうかがいました。ご自身で撮影もされるなかで、どのように使い分けていらっしゃいますか?
残しておきたいものの中には、手紙や小さいサイズの絵などもあります。
そういったものを段ボール撮影ボックスで撮影しようとすると、拡大する分、画質が粗くなってしまうんですね。そういうときにScanSnapがおすすめです。
小さい作品というのは意外と多く、また作品が曲がってしまうこともあるので、予め作品の上に重しを置いて平らにしないといけないんです。
でもScanSnapはそのまま作品を取り込んでもまっすぐにスキャンしてくれます。取り込むスピードも速いですし、トリミングも自動的にしてくれるので、作業自体が簡単にできるので助かります。
――トリミングや作品についたクセを直す手間が省けるのですね。ScanSnapではどんな作品をデータ化されましたか?
うちで試したのは子どもが描いてきた水墨画なんですが、墨を吸って紙自体がぼこぼこしていたんですね。でもScanSnapは読み込めば、まっ平な状態でデータ化してくれます。
――ScanSnapを使ったデータ化はカンタンでしたか?
はい、特に迷うことはなく、設定もデフォルトのままで十分きれいにデータ化できました。
友人にScanSnapを紹介したところ、私が使っているよりも上位の機種を早速購入したと聞きました。彼女は写真整理に活用していて、設定にもこだわってデータ化しているようです。
――なるほど。今後データ化してみたいものはなにかありますか。
今後活用してみたいのは古い家族アルバムです。特に大きなものは持ち運ぶこともしませんし、重くてページをめくるのも大変ですから、そんなアルバムの台紙に貼った写真を見返す機会はなかなかありません。整理をしながら、写真をデータ化してスマホでも見られるようにできたらいいなと思います。
――子どもたちの絵を作品として残す過程で、作品の新たな魅力に気づき、あらためて作品のよさを味わうことができる、とても素敵な取り組みだと感じました。
天野朋子さん、ありがとうございました!
この記事を書いた人
コドモノミライエ主宰。兵庫県出身、東京都在住。大学卒業後デザイン事務所に勤務し、グラフィックデザイナーとして広告制作の経験を積む。結婚・出産を機に退職し、2014年よりヒビト・デザインとしてフリーランスでの活動をスタート。2019年にはコドモノミライエを立ち上げる。2児の母。
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