FileMakerをプラットフォームに院内の臨床データベースを統合 臨床データの充実に向け 問診票のデータ入力をScanSnap iX1500で劇的に改革
目次
膨大な臨床データの入力診療科の手作業では限界に
大阪府大阪市北区にある公益財団法人田附興風会 医学研究所 北野病院(院長:吉村長久)は、33の診療科を有する総合病院。1928年の設立以来、同院は、京都大学と連携し、学術研究を行う医学研究所の付属医院として臨床研究にも積極的に取り組んでいる。
臨床研究のさらなる充実に向け、同院では、2015年より各診療科の臨床データベースの統合を進めてきた。診療科を横断して専門分野における質も精度も高いデータを有効に活用していくことが狙いだ。
統合臨床データベースのプラットフォームには院内で構築可能なFileMakerが採用された。病院の情報システムというと電子カルテが一般的だが、研究を目的としたデータベースとして活用するためには、研究用のデータ入力や解析のために新たなテンプレートを電子カルテのベンダーに発注する必要がある。電子カルテは、耐用年数から5年ごとに新システムに移行されるケースが多いため、更新時の互換性も懸念された。
一方、FileMakerは、臨床データベースを活用する医師自身が他科からの公開範囲も含め診療科に合わせた入力項目を定めるなど、アイデアを活かし、自由度の高いシステムが構築できる。医療情報部の長谷川義継氏を中心に、FileMakerをプラットフォームに各診療科の臨床データベースの統合が進められた。患者基本情報や検査データは電子カルテとも連携することで重複入力の削減や情報の共有を図り、診療科を横断した参照を実現した。
しかし、この臨床データベースを運用していく過程で、紙からのデータ入力作業が診療科での大きな課題となっていた。院内では紙の運用が多く行われている。例えばリウマチ膠原病内科では、問診票に記載された食事や歩行など20項目わたる日常生活の動作について支障がないかを患者の方が、4段階でチェックを付ける。さらに医師は、全身にわたる関節の疼痛や腫脹の症状を丹念に記述する。結果、問診票に記載される情報は200項目にもおよぶ。これらのデータをスタッフが手作業で入力するのだ。
同科の主任部長を務める井村嘉孝氏はこう語る。「症状が落ち着いている患者さんの問診票でもデータ入力には5分、重い患者さんになると、およそ10分かかることも少なくありません」。一日に数名分の入力が限界だったという。そこで長谷川氏を中心に忙しい診療科に負担をかけずに、多くのデータを正確に入力できる方法はないかが検討された。
※ FileMaker、ファイルメーカーおよびファイルフォルダロゴは、Claris International Inc. (旧 FileMaker, Inc.) の米国および/またはその他の国における登録商標です。
※ 「代打の職人 帳票OCR」は、株式会社アットデルの製品です。
ScanSnap iX1500が一択だった理由
その解は「問診票を電子化しOCR処理を行うことで、紙の情報をデータ化し、データベースに自動的に書き込む」という仕組みの導入だった。スタッフの作業は、問診票のスキャニングと正しくOCR処理が行われたかの確認だけに削減できる。スキャナー選定においても、長谷川氏が重要視したのは診療科の負担軽減だ。「私たちの要望は、書類を種類によって適切なフォルダに保存する作業を、操作する人が複雑な指定をすることなく、直観的に行えること。それが実現できるのはScanSnap iX1500しかありませんでした」。
ScanSnap iX1500は、読み取り時の設定をタッチパネルにアイコンとして登録することができる。この機能を活用し、患者用と医師用に分けて問診票をスキャンする時の設定をアイコンに登録した。
スタッフは、患者用、医師用いずれかのアイコンを選びスキャンボタンを押すだけで、問診票は、適切なフォルダーに保存される。電子化された問診票は、「代打の職人帳票OCR(株式会社アットデル)」によってOCR処理され、その結果が、FileMaker Serverにホストされた臨床データベースに書き込まれる。
検証期間を経て導入に至ったが、その効果は大きかった。これまで5?10分かかっていた作業時間は1?2分へと大幅に短縮。最後にスタッフが正しくOCR化されているかを確認するが、細かな部分を除けば概ね正しくデータ化されていて、煩雑な手間もなく、作業は劇的に軽減した。
井村氏は、その効果を「一日に訪れる20名近くの患者さんの情報を簡単にデータベース化できるようになったことは、診療の意味からも、また医学研究の観点からも大きいと思います」と語る。「今後、より質の高い情報を得られるよう問診票の改善にも取り組みたい。さらには、リウマチにとどまらず、症例の少ない難病指定の疾患も対象にしていきたい」と意欲を見せている。
臨床データベースのさらなる充実に向け他の診療科への展開を計画
操作性と耐久性がScanSnapの決め手となったと長谷川氏は語る
長谷川氏は、ScanSnap iX1500の高い品質についても言及する。「スキャンした結果にズレなどがなく、OCR処理にこれほど適したスキャナーは他にありません」さらに「日常的にスキャンを続ければ、ローラーが摩耗して紙詰まりを起こしてしまいやすいのです。しかし、他科で十数年使用している以前の機種でも、そのような兆候は見られません」。
臨床研究に不可欠なデータを診療時間内に入力できる画期的なしくみとして、長谷川氏は「リウマチ膠原病内科だけでなく、他の診療科にもScanSnap iX1500を広げ、データ入力の作業荷を削減することで、統合臨床データベースのさらなる充実に取り組みたい」と、今後の展望を語った。
■取材協力
大阪市北区にあり、33の診療科を有し、高度急性期・急性期医療を提供する総合病院。
同時に京都大学と密接に連携して学術研究を行う医学研究所の付属病院として地域医療の中核を担っている。
名称 | 公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 |
所在地 | 大阪市北区扇町二丁目4番20号 |
病院長 | 吉村 長久 |
病院種別 | 一般病院 DPC対象病院(診断群分類別包括評価制度対象病院) |
病床数 | 699床(一般687床、精神12床) |
ScanSnap iX1600
毎分40枚・80面の両面高速読み取りを実現し、簡単操作のタッチパネルを搭載。Wi-Fiの5GHzに対応し、原稿サイズ、色や両面・片面を自動的に判別。 驚くほど簡単、スピーディーに電子化します。 ※ 記事中の「ScanSnap iX1500」の後継モデルです。 |
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