2022.6.22 |
深澤会計事務所
記帳代行業務を自動化し大幅時短と顧客増対応を実現
業務用スキャナーとAI-OCRの連携で大量の紙証憑をスムーズにデータ化
深澤会計事務所 代表社員・中央事務所 所長・公認会計士・税理士の深澤智之さん。
中央事務所エントランスにて。
深澤会計事務所 代表社員・中央事務所 所長・公認会計士・税理士の深澤智之さん。
中央事務所エントランスにて。
山梨県甲府市で多数のクライアントに税務・会計サービスを提供する「深澤会計事務所」では、ITを活用して内部業務の効率化を進め、クライアント支援に尽力しています。その一環として、同法人の中央事務所ではPFUのA4高速イメージスキャナー「fi-8190」と、AI-OCRで入力・仕訳を自動化するシステムを導入し、記帳代行業務の効率化を実現しました。中央事務所を訪ね、所長の深澤智之さんに詳細をうかがいました。
税理士法人 深澤会計事務所
業種:税務・会計
中央事務所 従業員数:18名(事務スタッフ16名、税理士2名/2022年6月現在)
- 課題
- クライアントから預かった領収書など大量の紙証憑を手入力していたためスタッフの作業負荷が高く、会計コンサル業務などに充てたい時間も圧迫していた。
- 解決法
- PFUの高速スキャナー「fi-8190」と、AI-OCRによって入力・仕訳を自動で行うシステムを導入。
- 効果
- 導入直後に入力・仕訳業務の時短を実感。業務負担軽減を実現したほか、クライアント増への対応、会計コンサル業務や電帳法導入コンサル業務の推進にも時間を割けるようになった。
1. A4高速スキャナー「fi-8190」を導入して入力・仕訳の自動化を推進
「税理士法人 深澤会計事務所」の沿革と現況について教えてください。
深澤さん当法人は私の祖父が昭和28年(1953年)に創業した会計事務所を母体としており、現在は創業以来の北口事務所(甲府市北口)に加えて、私が5年前に別の会計事務所を譲り受けて開いた中央事務所(甲府市中央)の2拠点があります。私の父の深澤正樹が法人の会長を、私の兄の深澤和宏が北口事務所の所長を、それぞれ務めています。
私の中央事務所に即して言うと、クライアントは増加傾向にあり、現時点で約200の法人と約500の個人の税務・会計を請け負っています。中央事務所スタート時に8名だった事務スタッフは現在16名になっています。
クライアントが増えている背景として何が考えられるでしょうか。
深澤さん現状は既存クライアントの紹介によって増加している状況です。今後は東京からの移住先として山梨県の人気が高まっていることも多少影響してくるかもしれません。ただ、後継者不足によって税理士事務所が全国的に減少しつつあることも考慮する必要があります。私が中央事務所を前の法人から譲り受けたのも後継者問題に起因するものですし、そもそも国の人口が減っているので、私自身も求人難には常に悩まされています。
中央事務所でデジタル化による効率化に取り組まれているのも、将来的な人手不足を見越してのことでしょうか。
深澤さんもちろんそれもありますが、基本的には業務のクオリティをさらに上げ、顧客サービスの向上につなげることが第一の目的です。税務は国民の義務でもある重要な業務ですが、クライアントにとってはあくまでも経営に付随する事務作業という位置づけです。クライアントには経営に集中していただきたいと私は考えており、経理などのバックオフィス業務のサポートや業務フローの効率化提案、経営判断に有用な会計情報などの提供によって「経営者が経営に専念できる環境づくりをサポートすること」を事務所の理念として掲げています。
当事務所において、グループウェアとして「LINE WORKS」(ワークスモバイルジャパン株式会社)を活用したり、決済システムに「コラボフロー」(株式会社コラボスタイル)を取り入れたりしているほか、2022年からPFUのスキャナー「fi-8190」と、AI-OCRによって入力と仕訳を自動化するシステム(以下、仕訳システムと表記)を導入したのも、目的はその理念をよりよい形で実現するためです。
「fi-8190」と仕訳システムを導入された背景を教えてください。どのような課題があったのでしょうか。
深澤さんクライアントから預かる証憑の内容を人の手で入力して仕訳を行う、記帳代行業務が膨大な作業量になって税理士法人本来の業務を圧迫していたため、効率化するよい方法はないかと検討し、スキャナーとシステムの導入に至りました。
スキャナーについては、いろいろ調べて世界シェアNo.1という信頼性の高さからfiシリーズを選びました。デモ機貸し出しサービスが利用できるとわかり、すぐに申し込んだところ、非常によいスキャナーであることが確認できたので購入を決定したという経緯です。
2. スタッフの業務負担が軽減。空いた時間を確認に使い記帳の精度もアップ!
導入して3か月というタイミングではありますが(取材は2022年4月)、「fi-8190」と仕訳システムの導入による効率化についてうかがいます。まず領収書などの証憑に関して、すべてのクライアントから紙で預かるのでしょうか。
深澤さんクライアントによって方法はさまざまです。紙で預かり、当方ですべて入力する場合もあれば、先方で決算書まで作成し、当方は法人税の申告書だけを作る場合もあります。紙の証憑を預かるときも、月次契約の方からは毎月預かりますし、年に1回、年明け頃に資料がドサッと届くケースもあります。
約500人のクライアントを抱える個人の確定申告の場合、年に1回まとめてというパターンが多いのでしょうか。
深澤さんそうですね、個人の方々の繁忙期はやはり年明けから3月までで、それを処理するのは大変です。それに法人の場合も3月決算が多いので、5月がまた繁忙期になります。個人・法人とも、繁忙期には事務スタッフ16名がフル稼働という状況です。
たとえば個人のクライアントが確定申告のために、1年分の領収書や通帳数冊といった大量の証憑を渡してきた場合、手分けして入力と仕訳を行うのでしょうか。
深澤さん当事務所ではクライアントに対する窓口担当を決めており、基本的には同じ事務スタッフが証憑の入力も行うようにしています。ですからスタッフそれぞれの担当分が一気に増加するようなイメージです。もっとも、法人のクライアントが200あると月次だけでもかなりの量になりますから、スタッフは年間を通して常に一定量の入力・仕訳を行っているというのが実情です。
月次の場合、クライアントから預かる証憑は何枚くらいになるのでしょう。
深澤さん数えたことはありませんが、1クライアントにつき100枚くらいにはなると思います。ただ法人・個人とも規模によって枚数はまったく違ってきますね。
「fi-8190」と仕訳システムを導入した直後に到来した確定申告の繁忙期、それらをどのように運用されましたか。「fi-8190」でスキャンしてシステムと連携する流れを具体的に教えてください。
深澤さん領収書や通帳を「fi-8190」でスキャンしたら、イメージデータを仕訳システムに読み込ませます。スキャンのみを先に行っておく場合は、イメージデータを専用のフォルダーに格納しておき、あとでシステムにアップロードするようにしています。
領収書にはA4判からレシート状までさまざまあります。サイズごとに分けてスキャンしているのでしょうか。
深澤さん基本的にはサイズ混載のままスキャンできる機能を活かすようにしていますが、担当者によってはサイズを揃えているかもしれません。そのあたりは各自の方法に任せています。いずれにせよ「fi-8190」の読み取りスピードと給紙の安定性は、これまで使用したスキャナーの中で群を抜いていると思います。
スキャン後、イメージデータの確認は行っていますか。
深澤さんたとえば50枚の証憑をスキャンしたとき、ちゃんと50枚の画像があるかどうかを確認する手続きを踏んでいます。「fi-8190」といえども何があるかわかりませんので。ただ「fi-8190」は万が一の給紙エラーがあった場合、すぐに搬送を止めて、どの帳票が読み取れていないかをきちんと知らせてくれます。スキャナーとしての信頼性が非常に高いと思いますね。
システムで入力・仕訳を行ったあと、人の目によるチェックはどの程度行っているのでしょうか。
深澤さん文字・数字の一致について、一つ残らずスタッフがチェックしています。仕訳データとスキャンしたイメージデータを画面上で同時に見ることができるので、さほど苦労せずに確認が可能です。このチェック工程を含めても、手入力と比べれば工数は大きく削減されていますし、確認にも十分な時間をかけられるようになったため記帳の精度も上がっているはずです。
「fi-8190」と仕訳システムの導入によって、今後どのくらいの時間が削減されると見込まれるでしょうか。
深澤さんあくまでも目安ですが、年間で述べ1万8000時間ほどを月次業務に割いており、それが全業務の40パーセントを占めています。この月次業務の多くが入力と仕訳で、スタッフ1人あたりが一日5時間を費やしていることになりますから、この部分をシステムとスキャナーによって効率化すれば大きな効果を出すことができます。まだ正確には算出できていないものの、見通しとしては年間1200時間の削減は確実だと思います。また、現時点での予想として、年間100時間以上の削減が可能なクライアントも少なくないと見ています。
たとえば、預かった証憑がすぐに参照できるようになって、顧客からの問い合わせへの対応が迅速になったというような効果はありましたか。
深澤さん現実的にはまだありませんが、クライアントから「何月のいつ頃に購入した機器の型番を知りたいので領収書を確認してほしい」といった問い合わせが入ることがあるので、システムで検索すればイメージデータをすぐに見られるようになったことが功を奏するはずです。そうした付随するメリットも享受できるよう、運用していきたいと思います。
3. 証憑のデータ化で最も重要なのは「ボトルネックにならない優れたスキャナー」
改めて「fi-8190」の評価をお聞かせください。
深澤さん私としては本当に素晴らしいスキャナーだと思っています。給紙性能が高く、スキャンのスピードが速い点も魅力です。結局、紙証憑をデータ化して業務を効率化するためには、スキャナーというハードウェアがいちばん大事です。特に給紙性能、ここがボトルネックになってしまっては何も始まりません。
AI-OCRが認識しやすい良質なイメージデータの確実な生成が第一ということですね。
深澤さんそうです。いくらシステムのAI-OCR機能が優れていても、画像が認識しにくければ意味がありませんし、ましてやスキャン段階でつまずいてしまうと物事が進みません。デジタル化すなわち効率化というわけではなく、現実的にフローが短縮されることが効率化ですから、まずはボトルネックにならないスキャナーを導入するべきでしょう。そうした考えに基づいて「fi-8190」を選びました。最初は少し価格が高いかなと思いましたが、デモ機を使ってみて、価格以上の価値があるとすぐにわかりました。今ではむしろ安かったと思っています。
おそらく今後、電子取引が増えてくるにしても浸透するまでには時間がかかるでしょうし、紙証憑自体は当面残っていくはずです。ですからスキャナーの重要性は当分の間、変わることがないと思います。
既存の複合機をスキャナーとして使うという選択肢もあったのでしょうか。
深澤さん複合機も使ってみましたが、領収書やレシートのスキャンに関しては限界がありました。スピードが遅く、何よりも定形サイズしかスキャンできないのが致命的です。まとめてスキャンできるかなと思って試してみたことがありますが、ぐちゃぐちゃになってしまったので早々に諦めました。
「fi-8190」導入時、設定はスムーズに進みましたか。
深澤さん当事務所にはIT機器に詳しい人材がいないので、なんとなく設定した結果、特に問題もなく使い始めることができたというのが正直なところです。時間はさほどかからなかったと記憶しています。ソフトは標準の「PaperStream Capture」ではなく、操作がより簡単な「PaperStream ClickScan」を現時点では使用しています。まだ「fi-8190」の機能をすべて活用できているわけではないので、今後いろいろ試していきたいと思っています。
「fi-8190」は地紋除去、印影重なり除去、白抜き文字反転など、OCRに適したイメージデータを生成するクリーンアップ機能を備えています。それらはお使いでしょうか。
深澤さんたとえば自治体が発行する「ふるさと納税」の受領証明書などには地紋が入っている場合があるため、地紋除去機能を活用しています。証憑をまとめてスキャンするとき、ほかにも地紋入りの証憑があるかもしれないので、常時除去する設定にしています。
4. 会計コンサルや電帳法導入コンサルを含めた「バックオフィスの最適解」を追求
今後の見通しについてうかがいます。「fi-8190」と仕訳システムによって業務の効率が進んだ結果、空いた時間をどのように活用されますか。
深澤さんまずクライアントの増加への対応が可能になります。さらにはクライアントに対する業績の説明の頻度を上げる、つまり数字に基づいた会計コンサル業務の時間を増やしていけるでしょう。
前述の通り当事務所の目指すところは、クライアントにとってのバックオフィスの最適解を追求してサービスを提供することにあります。顧客それぞれのニーズに合った業務改善の方法提案を、これからどんどん行っていく予定です。
電子帳簿保存法(電帳法)との関連という点では、何かビジョンをお持ちでしょうか。
深澤さん今後、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務が生じることになります。業務の効率化といった観点だけでなく、法律面からも必要となってきますので、その対応は急務となっています。そのため、クライアントが電帳法対応で書類を保存したいと望んだとき、組織として相談に乗れるような仕組み作りをしていきたいと思っています。いわば電帳法導入コンサル業務ですね。
会計コンサル業務と並んで可能性の感じられる分野ですね。
深澤さん可能性はありますが、電帳法は意外とハードルが高いという現実もあります。国税関係書類には「帳簿」と「書類」があり、総勘定元帳や仕訳帳といった帳簿のデジタル化はすでに進んでいるため対応が比較的楽であるのに対して、請求書などの書類は紙が多いためスキャナーなどでデータ化しなければなりません。多少のコストと知識が必要になるため、クライアントによっては明日からやりましょうというわけにはいかないという事情があります。
また、すべてのクライアントにとってデジタル化だけが正義とは限りません。実際、たとえばExcelを薦めても「私は紙に手書きしたほうが安心できる」とおっしゃる方もいますし、そうした方々にとってのバックオフィスの最適解を追求することも当事務所の役割だと考えています。ただ、多少長い目で見れば徐々に環境が整って電帳法に対応しやすくなっていくはずですので、電帳法適用のためのフローのアイデアをスタッフと共有しながら、アドバイザリー業務の精度を高めていきたいと思います。
本日はお忙しい中、お話をお聞かせくださりありがとうございました。