2022.7.20 |
株式会社北國銀行
手形・小切手の「電子交換」に低コストで対応
多種大量の有価証券を高速でスキャンして高画質のイメージデータを出力
山田泰輔さん(左)と能戸千佳夫さん(右)。
北國銀行本店前にて。
山田泰輔さん(左)と能戸千佳夫さん(右)。
北國銀行本店前にて。
2022年11月に予定されている手形・小切手の「電子交換所」開設に伴い、日々大量の手形・小切手を扱う北國銀行では、電子交換に必要なイメージデータ生成のために業務用ドキュメントスキャナー「fiシリーズ」から「fi-7900」と「fi-7460」を選択・導入し、低コストでの新制度対応に成功しました。fiシリーズの具体的な活用方法について、石川県金沢市の本店とオペレーションセンターを訪ねてうかがいました。
株式会社北國銀行
業種:金融
国内店舗数:105店(うち出張所1店/2022年6月現在)
- 課題
- 電子交換に対応するにはカラーでのスキャンが必須であるため、カラースキャン機能を備えた機器の導入が必要になった。
- 解決法
- PFUの業務用スキャナーを採用。オペレーションセンターに4台の「fi-7900」、都市店舗に1台ずつの「fi-7460」を導入して電子交換開始に備える。
- 効果
- 低コストで電子交換対応を可能にしたほか、都市店舗とオペレーションセンター間の現物輸送コストも削減された。
1. 電子交換に必須のカラーイメージデータを生成するためfiシリーズを導入
株式会社北國銀行オペレーション部オペレーション企画グループ長の山田泰輔さんと、株式会社CCイノベーション コンサルタントの能戸千佳夫さんにうかがいます。お二人はともに、このたびの小切手・約束手形・為替手形(以下、慣例的な通称「手形・小切手」と表記)の電子交換への対応業務を主導されたとか。
山田さんはい。オペレーション部は銀行業務全般における事務の企画・運用を統括しており、オペレーションやシステムの改善業務を行っています。このたびは2022年11月に手形・小切手の電子交換所が開設されるのに伴い、オペレーションセンターのスタッフと協同してスキャナーの導入を実施しました。
能戸さん私は現在、北國銀行のコンサルティング部を独立させたCCイノベーションに所属していますが、以前はオペレーション部企画グループのマネージャーとして、主に決済に関する事務の企画・運用を担当してきました。その立場でスキャナー導入にも取り組み、現在も一部、オペレーション部の流れを汲んだ業務に関わっています。
手形・小切手は従来、支払人による振出はもちろんのこと、金融機関(ここでは以下、銀行とする)への取立依頼、銀行間の手形交換など、すべてを有価証券としての現物によって行うことが大原則でしたが、電子交換所開設によってどの部分がデジタル化されるのでしょうか。
山田さん電子交換所は全銀協(一般社団法人全国銀行協会)が開設を決定したもので、銀行間の手形交換をデジタル化するためのバーチャルなハブ機関です。支払人が振り出した紙の手形・小切手が受取人によって銀行に持ち込まれるところまでは従来と同じですが、取立依頼を受けた銀行は、それをスキャンしてイメージデータを電子交換所に送るだけで手形交換ができるようになります。
より詳しくいうと、取立依頼を受けた銀行は預かった手形・小切手をスキャンし、イメージデータを電子交換所にアップロードします。これが従来の、手形・小切手の「持出(もちだし)」に相当します。イメージデータを受け取った電子交換所ではAI-OCRが文字認識を行い、銀行別の仕分けなどを行ったのち、支払銀行にイメージデータを送ります。これを支払銀行がダウンロードして取得することが従来の「持帰(もちかえり)」に相当します。
イメージデータの送受信だけで手形交換が完了
これまで必須だった、銀行-手形交換所間の現物輸送が不要になり、イメージデータのやり取りだけで手形交換が成立するようになるのですね。
山田さんそうです。従来は金沢市のオペレーションセンターをハブにして、近地には車両で、遠方には鉄道を利用して手形・小切手を輸送していました。特に毎朝、東京・大阪・名古屋・福井・富山・高岡の各支店に手形・小切手を輸送していたため、そのコストは年間数千万円に達していました。それがイメージデータの送受信だけで済むようになれば、輸送に要していた人手とコストがそっくり削減されることになります。
また、手形交換には時限があり、毎朝その時限に間に合うように輸送していましたが、悪天候などにより遅延も発生していました。イメージデータでのやり取りになることで、大雪・豪雨・台風・地震や交通機関の乱れによる遅延リスクの低減と、事務のシンプル化によるミスの発生リスク低減、資金化時限の短縮なども実現できます。
かなりメリットの多いデジタル置換といえますね。
能戸さんはい。ただし電子交換所に送るイメージデータは、電子交換所でAI-OCR認識を行う関係上、カラーであることが絶対的な条件になっています。ところが当行にはカラー画像を出力できる機器の持ち合わせがなく、何らかの対応を迫られることになりました。
ただ、手形・小切手の流通量が減少傾向にあり、経済産業省も手形廃止方針を打ち出していることや中小企業庁が下請け企業への支払手段の現金化を推奨していること、加えて当行自体も地域デジタル化を推進していることを踏まえると、大きなコストをかけることはできませんでした。
山田さんそこで汎用のカラースキャナーを導入することにし、手形・小切手はもちろん、そのほかにもサイズや厚さ・紙質の異なる帳票のスキャンが可能であることを重視して選定を進めました。手形・小切手は銀行によって地紋にもさまざまなバリエーションがあり、減少傾向にあるといってもまだまだ膨大な量が発生します。そのため、高い処理速度を確保しながら正確に読み取れるスキャナーを選択する必要がありました。さまざまな検討を重ねた結果、読み取りの正確性とスピードを兼ね備えていること、アフターフォローが万全であることなどからfiシリーズの導入を決定しました。
手形・小切手はどのくらいの量が発生し、どのように管理しているのでしょうか。参考としてお聞かせください。
能戸さん当行はかなり手形・小切手が少ないほうだと思いますが、それでも常時2万枚から3万枚の在庫があります。銀行はそれらの1枚ずつについて、どのお客様が受取人・支払人で、金額はいくらで、手形の場合は支払期日がいつなのかといったことを把握して管理しなければなりません。
そのため、手形・小切手をお預かりするとシステムで管理できるよう、印字されたMICR文字(磁気インク文字)を専用の機器で読み取ってシステムに送ると同時に、支払期日別や交換所別などの仕分けを都度行います。たとえば支払期日別に分けて保管している手形を、支払期日が近づいたら支払店別に分けるというように、仕分けは何度も行います。
手形・小切手の一部が日々出ていき、同じくらいの枚数が日々入ってくるので、全体で2万~3万枚の在庫は常に流動的な状態になっており、銀行はそれを逐一把握して管理しているのですね。
能戸さんそうです。また管理システムに送られる手形・小切手の情報は当行にとって重要なデータにもなり、地域の商流分析などに活用されます。
そうした管理とは別に、今後はfiシリーズによる手形・小切手のスキャン工程も発生するということですね。
能戸さんそういうことになります。ただ工数は増えるものの、スキャンを主に行うオペレーションセンターに大容量で高速の「fi-7900」を4台導入したので、大きな負担にはならないと見込んでいます。コストとの兼ね合いを考えると最善の選択だったと思います。
2. 手形・小切手など各種の有価証券を「fi-7900」でスキャンし電子交換所にアップロード
fiシリーズのうち、オペレーションセンターに導入された「fi-7900」について、オペレーションセンター センター長の南秀明さんと業務役の船本郁子さんにうかがいます。スキャンする手形・小切手にはどのような種類があり、今後は月に何枚のスキャンが必要になるのでしょうか。
南さん電子交換所でOCR認識を行って分類する主な証券は、約束手形、為替手形、小切手5種類、銀行間領収書、銀行発行の配当金領収書、ゆうちょ銀行発行の配当金領収書、定額小為替証書、普通為替証書、振替払出証書、外国為替領収書と14種類があり、それらに含まれない証券も若干あります。これらをすべて合わせて、電子交換開始後は月に5,000枚から1万枚をスキャンすることになります。月末や五十日(ごとおび)には一日にスキャンする枚数が多くなると思います。
電子交換開始後、手形・小切手のスキャンや保管はどのような流れで行われるのでしょうか。
南さん大筋としては次のような流れになります。
- 営業店でお預かりした手形・小切手の現物を持出、オペレーションセンターに集約
- 専用の機器を使って手形管理システムに登録・仕分け
- 1)ならびにオペレーションセンターで保管している期限到来の手形を保管庫から持出
- それを「fi-7900」でカラースキャン
- 4)のイメージデータを電子交換所にアップロード
手形・小切手の管理には仕分けが重要とうかがいました。「fi-7900」でのスキャン後も何らかの仕分けを行うのでしょうか。
南さんいえ、電子交換所にイメージデータを送る手形・小切手は仕分けする必要がないので、スキャンした並び順のままで再び保管します。
「fi-7900」は毎分140枚/280面(カラー・A4横送り・両面読み取りの場合)の高速スキャンが可能です。実際にお使いになった感想をお聞かせください。
船本さんまだテスト段階ですが、紙詰まりが発生しにくく、スキャンスピードが速いので大変満足しています。多少斜めになっていても真っ直ぐに修正された画像で保存される機能が素晴らしいですね。お掃除がしやすい点を含めて全体的に扱いが簡単で、使いやすいスキャナーだと思います。
サイズが異なる証券類をまとめてスキャンするにあたり、セットするときに何か工夫をされていますか。また、証券の多くを占める手形には印紙が貼られていますが、スキャンに影響はありますか。
船本さんすべての手形を上方・右寄せで整頓し、スキャナー給紙口の中央にセットしています。印紙については、2枚送りを検知する機能をオンにしていると印紙を敏感に検知してストップしてしまうので、現時点ではオフにしています。
「fi-7900」が備えている「インテリジェントマルチフィード機能」には、印紙のような貼り付け紙片の位置を記憶させて2枚送りと区別するモードもあります。この機能を活用されてはいかがでしょうか。
船本さん活かしたいところなのですが、手形のフォーマットや印紙の貼り付け位置は本当にまちまちなので、すべてを記憶させることが難しいのです。「fi-7900」の場合は現実的に2枚送りがほとんど発生しないので、当面は現状通りに進めようと思います。
手形の裏書についてうかがいます。両面スキャンで裏書もイメージデータ化が可能ですが、手書きが多いのではないかと思います。電子交換所のOCRは、手書きされた裏書も認識するのでしょうか。
船本さん電子交換所では裏書の文字までは認識せず、あらかじめ各銀行が登録してある証券のフォーマットに基づいて「証券種類」ごとに分類し、交換先である支払銀行にイメージデータを送るだけです。
裏書のスペースが足りなくなって補箋(追加の裏書用紙)が付け足されている手形については、スキャン時にどのように対処していますか。
船本さん補箋の付いた手形は先に分けておき、それだけを別途スキャンするようにしています。なお、裏書に求められる連続性などはこれまでと同様、銀行が事前にチェックしますので、銀行から電子交換所にアップロードされる手形はすべて法的に有効なものであるということになります。
3. 都市店舗に「fi-7460」を配備して電子交換所に直送、コスト削減と遅延リスク回避を実現
都市店舗に導入されたコンパクトスキャナー「fi-7460」について、再び山田さんと能戸さんにうかがいます。どちらの店舗で、どのような目的で運用されていますか。
山田さん当行では東京・大阪・名古屋に店舗を構えており、「fi-7460」はそれら都市店舗からイメージデータをアップロードするために導入しました。
これまで、都市店舗がお客様からお預かりした手形・小切手には、手形の支払期限や手形交換所の地域・場所に応じて、各店舗で事務処理を行うものと、オペレーションセンターに輸送するものとの2パターンが存在していました。ところが電子交換所の開設により、地域・場所という概念がなくなって全国一律になりますから、都市店舗にスキャナーを設置すれば、金沢のオペレーションセンターに手形・小切手をデリバリーする必要がなくなり、物流コストの大幅削減と遅延リスクの回避が実現できます。
各店舗では毎月、何枚くらいの手形・小切手をスキャンするのでしょうか。また3店舗に「fi-7460」を導入するにあたって、運用上、現場の方々の負担増や戸惑いなどの問題はありましたか。
能戸さん都市店舗がスキャンする手形・小切手の枚数は、東京支店が30枚、大阪支店が90枚、名古屋支店が50枚というところです。
実はこれまでも都市店舗では、自店管轄地区支払の手形・小切手について、手形・小切手専用スキャナーで読み取りを行ってきました。ですから「fi-7460」導入にはまったく問題がなく、すんなりと運用を開始できました。
従来も都市店舗では一部の手形・小切手をスキャンしていたのですね。それ以外の地域支払の手形・小切手については、現物をオペレーションセンターに輸送していたということでしょうか。
能戸さんそうです。それが電子交換開始に伴い、都市店舗でカラースキャンができるようにすれば、現物を店舗の外に出す必要がなくなります。これにより、コスト削減もさることながら、到着遅延がなくなるという、現場にとって大きなメリットが生じます。
すべての処理が完了した手形・小切手は、従来どのように保管していましたか。また電子交換開始後、それがどう変わるのでしょうか。
能戸さんオペレーションセンターとは別にファイルセンターがあり、現在はそこで決済後の手形・小切手を10年間保管しています。今後はファイルセンターでいったん集中保管し、その後はイメージデータを活用して電子帳簿保存法に則った形で保管することを考えています。
終わりに、手形・小切手の管理に関する今後の見通しをお聞かせください。
山田さん前述のように経済産業省が手形廃止方針を打ち出しており、各銀行も決済手段として「でんさい」(※)を推奨するなどデジタル化を進めています。このたびの電子交換所開設自体が中間的な措置ともいえ、今後は手形・小切手そのものが減少していくことが予想されます。その一方で、手形・小切手が完全に姿を消すまでには相応の時間を要すると考えられますので、当面はコストに見合う管理の手段を探っていくことになると思います。
fiシリーズが北國銀行の電子交換対応ならびにコスト節約の一助となることができて幸いです。本日はありがとうございました。
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