2023.4.27 |
株式会社グリーンメディック
グリーンメディック・芦屋局
「fiシリーズ」で患者自身が処方箋を読み取ることで、無人受付を実現
処方箋OCRによるレセコン自動入力と調剤の物流革命で薬局の在り方を変える
兵庫県芦屋市の「グリーンメディック・芦屋局」は、大阪府豊中市に本局を置く調剤薬局「グリーンメディック」が、今後求められる調剤薬局像を具現化するために開いた最先端の薬局です。
従来の半数の人員で業務を回せるよう全面的にITを導入している中で、無人受付に設置したネットワークスキャナー「fi-7300NX」と調剤薬局向け処方箋入力支援AI-OCRサービス「薬師丸賢太」による処方箋の読み取り・自動入力システムは、在庫管理の自動化を実現する薬局ロボットと並ぶ同局のキーアイテムになっています。本格稼働直前の同局を訪ね、システムの全容と目指す薬局像をうかがいました。
株式会社グリーンメディック
グリーンメディック・芦屋局
業種:調剤薬局
- 課題
- 大病院の門前薬局やメディカルビル薬局など従来の形態に留まらない、患者に新しい価値を提供できる調剤薬局像を長年模索していた。
- 解決法
- 無人受付に置いた業務用スキャナー「fiシリーズ」で患者自身が処方箋をスキャンし、処方箋専用AI-OCRによってレセコンに自動入力する仕組みを構築。全自動で薬品の在庫管理からピッキングまでを行う薬局ロボットも導入し、業務を高度にIT化。
- 効果
- スキャンから始まるシステム連携により、半数以下の人員で定期業務を回せることが証明された。今後は調剤薬局に新しい価値を付加するため、患者向けのコンサルテーションに人員を割いていく予定。
1. 患者と病院をつなぐバッファとしての「会員制デジタル調剤薬局」
調剤薬局「グリーンメディック」を展開する株式会社グリーンメディック 代表取締役で薬剤師の多田耕三さんにうかがいます。「グリーンメディック・芦屋局」は一見して薬局とは思えない、未来的な外観と内観を備えています。ここはどういう薬局なのでしょうか。
多田さんひと言でいえば「会員制のデジタル調剤薬局」です。会員制は患者の生涯顧客化と、顧客へのコンサルテーションに重きを置くために必要なもの、デジタルすなわちITはコンサルテーションに人員を割くために必要なものです。
僕は仕組みを作ることが大好きで、以前からこのような薬局ができないだろうかと考えていました。そこで2021年から構想の具体化を開始し、22年8月に芦屋局をオープンしました。現在は近隣の高齢者施設の調剤を引き受けながら、会員制デジタル調剤薬局としての本格始動準備を整えているところです(取材は23年2月)。
この薬局が目指すところをお聞かせください。
多田さん患者と病院の間をつなぐバッファのような存在になることです。一例として挙げられるのが、薬局によるドクターの紹介です。一般の方が不調を感じられたとき、症状に合う病院をご自身で探すのは大変ですが、当薬局にご相談いただくことで、信頼できるドクターのデータベースから適したドクターを探して紹介することができます。
また、医療ではあるけれども病気の治療ではない、健康増進やパフォーマンス向上を目的としたコンサルテーションもあります。たとえば需要が高まっている遅延型アレルギー検査や、コロナ禍の今なら抗原検査、あるいはアクティブトラッカーを貸し出して睡眠を分析し最適化するサービスなども実施予定です。
病院に行く前にこの薬局に寄れば、治療などがスムーズに進む可能性が高まるのですね。
多田さんはい。病院に行くにはエネルギーが必要ですから、まずは気軽に薬局を訪ねてくださいということですね。各種相談に関してはオンラインでもお受けできますし、将来的にドクター側のIT環境が整えば、当局内のブースで遠方のドクターのオンライン診療を受けていただくこともできるでしょう。芦屋局はさまざまな需要に、外来でもオンラインでも対応できるように設計しています。
エントランスの無人受付に設置されている「fi-7300NX」は、外来の患者が病院でもらった処方箋を受け付けるためのものでしょうか。
多田さんそうです。初めての方にはその場で会員になっていただき、処方箋をご自身でスキャンしていただくと、後述するように半ば自動でお薬が出来上がります。お薬は対面で説明しながらお渡しすることもできますし、ピックアップ用のロッカーを利用して都合のよいときに取りにきていただくこともできます。近隣の方であればこちらで業者による配送を手配することも可能です。
従来の調剤薬局は店頭がごちゃごちゃしていて、外来の方にはわかりにくいところが多々ありました。それを整理して動線をシンプルにしたいという思いも長く抱いていました。そこでこのたびシステムインテグレーターやPFUの技術を借り、従来にはない新しい価値を生み出す薬局としてオープンしたのが芦屋局です。
2. 無人受付で患者が処方箋をスキャンするとレセコンに自動で入力される
処方箋の受け付けから調剤・投薬までの流れを教えてください。初めての外来患者の場合、スキャンの前に会員登録を行うのですね。
多田さん会員登録は当方のQRコードをLINEでスキャンして友だちに追加していただくだけです。表示された会員証のQRコードを受付のiPadにかざすと受け取り方法選択画面が表示されるので、「薬局で待つ/ロッカーで受け取る/配送で受け取る/再来局して受け取る」のいずれかを選んでいただきます。次に「処方箋を一枚ずつスキャンしてください」という表示が出るので、処方箋を「fi-7300NX」にセットしてスキャンしていただきます。これで受け付けが完了します。
会員証の認識システムとスキャナーがあれば無人受付が成立するのですね。スキャンしたイメージデータは芦屋局内のPCに送られるのでしょうか。
多田さんいえ、データは大阪府豊中市にある「グリーンメディック・少路局」の入力センターに送信されます。入力センターでは、グリーンメディック各局に持ち込まれる処方箋をレセコン(診療報酬明細書を作成するシステム)に入力する業務を集中的に行っています。芦屋局から届いた処方箋のスキャンデータは、調剤薬局向け処方箋入力支援AI-OCRサービス「薬師丸賢太」が認識し、レセコンに自動で入力します。他局の処方箋は現在、FAXで送信して手入力していますが、順次、芦屋局と同じ方法に切り替えていく予定です。
「薬師丸賢太」はどのような特徴を備えたAI-OCRなのでしょうか。
多田さん「薬師丸賢太」は当社のシステムインテグレーターであるNeoX株式会社が開発した、画像認識に近い技術で読み取るAI-OCRサービスです。認識領域などをあらかじめ設定しておく必要がなく、さまざまなフォーマットの処方箋をそのまま読み取って文字を認識し、レセコンに自動入力してくれます。
自動入力後、レセコンのデータはどのように動くのでしょう。
多田さん入力センターで結果を確認し、誤りがあれば修正します。その後、入力した処方箋データがこちらに送られて紙にプリントアウトされるので、僕ら薬剤師はそれを見ながら処方の薬学的・医学的なチェックを行います。これを監査といいます。
監査はどのように行うのでしょうか。
多田さん処方箋データにプリントされたバーコードをリーダーで読み取り、調剤監査システムにかけてチェックします。システムには副作用や相互作用などのデータがすべて入っており、問題があればアラートが出ます。もちろん目視でも確認しますが、人間が機械と同じことをすべてやるのは不可能ですから、調剤監査システムは欠かすことができません。
監査の段階でアラートが出るなど、処方内容に問題や疑問が発生することはあるのでしょうか。また、発生した場合はどう対処するのでしょう。
多田さんドクターも人間ですから、小さなミスは実際にあります。そういうときはすぐに電話をして確認します。そうすることがドクターと薬局の信頼関係構築につながり、ひいては冒頭にお話しした薬局によるドクターのデータベース化や患者の紹介など、新しい試みの基盤にもなります。ドクターと薬剤師は同じ医療に携わる仲間であるという意識が非常に重要です。
そうした確認や修正も含めて処方が監査を通ると、次は調剤の作業に入るのですね。
多田さんそうです。監査システム上で「発行」というボタンを押すとデータが調剤に回ります。当局ではドイツ製の薬局ロボットを導入しており、薬品の入庫や出庫、在庫管理までロボットが全自動で行います。5,000種類の薬が収められたロボットブースの中でアームが動き、1件あたり3秒でピッキングします。
この調剤の間にも、先のチェックとは別の監査が行われています。薬品にはGS1標準バーコードという、ロット番号や使用期限までが入った識別コードがあり、薬剤の包装シートなどに印刷されています。ロボットによる薬のピッキングはこれを認識しながら行います。
調剤において人間とロボットはどちらが優れているのでしょうか。
多田さん僕らの世代の薬剤師は何万回でも同じことをやれと言われて、それこそ遮光瓶の持ち方まで先輩に正されながら鍛練してきました。でもはっきり言ってしまえば、100パーセント、機械のほうが優秀です。人間はいくら鍛練しても機械と同レベルにまで正確性を上げることはできません。むしろ人間は人との会話など、簡単に結果が出ないものに対してコミットしていくべきでしょう。この薬局がコンサルテーションに重きを置いているのも、まさにそれが理由です。
「グリーンメディック・芦屋局」の処方箋処理フロー
3. 外来の2倍の手間がかかる定期調剤業務を、標準の半数以下の人員で回せる
処方箋をスキャンするためにA4ネットワークスキャナー「fi-7300NX」を選択されたのは、Wi-Fi環境下でPCを介さずデータをシステムに直送するためでしょうか。
多田さんまさにその通りです。いつでも外来の患者を迎えられるよう、最終の準備を整えています。
スキャナー選択にあたり他社の製品も検討されましたか。
多田さんいえ、システムインテグレーターのNeoXによると「選択肢はPFUしかない」とのことでした。「スキャナーはPFUがいちばんよい」と。僕自身、これまでに何度も実験的に動かしてみて、「これなら間違いない」という実感を得ています。画像の質が高いことと、小型でどこにでも置けること、患者自身が簡単にスキャンできる安定性が特に素晴らしいと思います。
処方箋スキャン、レセコンへの自動入力、調剤ロボットの導入などの高度なIT化によって、どの程度の効率化が実現するのでしょうか。
多田さん当局は現時点で高齢者施設350人分の定期的な調剤を一手に引き受けています。この業務では施設のヘルパーが間違えることなく入居者に薬を飲ませられるよう、1回につき薬1包みを飲めばオーケーという形に整えなければなりません。これにはロボットではなく人間の手作業が必要です。さらに高齢者施設からは臨時の処方も随時届きますので、トータルで外来の2倍の手間がかかっています。
これを従来の一般的な方式でこなそうとすると、薬剤師だけで4~5人が必要です。ところが現在、芦屋局に常駐している薬剤師は1~2人ですから、半分以下の人数で回していることになります。
今後、会員制デジタル調剤薬局が本格始動した暁には、おそらく4~5人の薬剤師を揃えることになると思いますが、これは調剤のためというよりコンサルテーション重視の布陣になります。機械に任せられるところは任せ、僕らは人間だけができることに注力したいと考えています。
薬局の未来を占う実験的な試みの中で、「fiシリーズ」が重要な役割を担うことができて幸いです。本日はありがとうございました。
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