1. 伊藤忠商事株式会社
2023.5.25

伊藤忠商事株式会社

月5,000件以上が発生する経費精算を電子化し電帳法「スキャナ保存」を活用
リモートでの申請・承認が可能になり、大量の紙証憑を保管する手間とコストも削減

伊藤忠商事株式会社 IT・デジタル戦略部 全社システム室の室谷直希さんの写真

伊藤忠商事株式会社 IT・デジタル戦略部 全社システム室の室谷直希さん。伊藤忠商事東京本社前にて。

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日本を代表する総合商社の一つ、伊藤忠商事株式会社では2022年に施行された改正電子帳簿保存法対応の一環として、経費精算業務において、電子取引時の電子データの保存に加え、「スキャナ保存」を活用することで、経費精算業務の電子化を実現しています。紙の証憑をいかに効率よくスキャンして法要件を満たした電子データにするかが最大の悩みどころでしたが、PFUのA4ネットワークスキャナー「fi-7300NX」を国内7拠点に約100台導入することによってクリアし、月5,000~6,000件発生する経費精算を紙から電子へとスムーズに移行しました。東京都港区の東京本社を訪ね、電子化の経緯と効果を詳しくうかがいました。

課題
改正電子帳簿保存法対応の一環として、スキャナ保存を活用することでペーパーレスを実現し、なおかつ社員の負担にならない紙証憑電子化の仕組みを必要としていた。
解決法
「ユーザー認識機能」と「e-文書モード」を備えた「fi-7300NX」約100台を国内拠点7か所に配備し、スキャンデータを従前より全社的に利用していたクラウドストレージサービス「Box」に保存する仕組みを構築。
効果
スムーズに電帳法への対応を実現し、経費精算における紙保存文化からの脱却に成功。リモートでの承認も可能になったほか、書類保管の手間とコスト削減も実現。

1.「fiシリーズ」でスキャンした証憑ファイルをワークフローに添付して回付

伊藤忠商事株式会社 IT・デジタル戦略部 全社システム室の室谷直希さんにうかがいます。このたび伊藤忠商事では、領収書などの証憑をスキャンして、電子帳簿保存法におけるスキャナ保存要件を満たした電子データにすることで、経費精算を電子化されたとうかがっています。どのような背景や目的があったのでしょうか。

室谷さん2022年に施行された改正電子帳簿保存法(以下、改正電帳法)において、電子取引を行った際の電子データについて、一定の法要件を満たす形で電子的に保存することが義務付けられました。当社はこれまで、社員が立て替えた出張旅費や交際費などを、経費精算専用のシステムに入力した上で、すべての証憑を紙で添付し回付・精算していました。今般の改正電帳法への対応を機にスキャナ保存を活用することで、電子で受領した証憑のみならず、紙で受け取った証憑も電子的に保存する形になります。この取り組みを通じて、ペーパーレスをよりいっそう推進し、リモートでの申請/承認を行うことで隙間時間の有効活用が可能になるなど、業務効率化につながると考えました。

室谷直希さんの写真

室谷直希さん。経費精算の電子化を主導した全社システム室のメンバーです。

伊藤忠商事の東京本社の外観

2021年度に史上最高益を更新するなど、近年好調を維持する伊藤忠商事。東京本社は青山通り沿いにあります。

室谷さんが所属されている全社システム室の位置づけと、このたびの経費精算デジタル化において果たされた役割についてお聞かせください。

室谷さんIT・デジタル戦略部全社システム室のミッションは「全社的な業務利用を目的とするシステムの開発と維持・保守」です。当社では事業領域ごとに組織が分かれており、それぞれをカンパニーと呼んでいます。カンパニー単位で維持・保守しているシステムもありますが、全社システム室が取り扱うのは、カンパニーを横断して全社員が利用するような基幹系システムで、経費精算を含む会計系システムや、人事システムなどが含まれます。

また、当社には業務主管とシステム主管という考え方があります。これは当該業務を司る部署と、業務のためのシステム開発を司る部署の2軸でプロジェクトを推進するというもので、経費精算の場合は業務主管が経理部、システム主管が我々IT・デジタル戦略部です。改正電帳法への対応を機に、経費精算というものが「業務としてどうあるべきなのか」を業務主管である経理部と協議した上で、電子/紙の別を問わずすべての証憑を電子化することを決定し、開発を進めました。

全社システム室でプログラム開発をすることもあるのでしょうか。

室谷さん全社システム室が直接開発を行うことはありません。プログラミング等の開発は開発ベンダーに委託しており、その開発ベンダーはさらに協力会社と組んで開発を行います。経費精算電子化のキーアイテムである業務用スキャナー「fiシリーズ」供給元のPFUも、その協力会社の一つです。

PFUのA4ネットワークスキャナー「fi-7300NX」を全国7拠点で計約100台導入されたとか。

室谷さんはい。内訳は東京本社に70~80台、大阪本社に約10台、全国の支社に各1~2台です。この東京本社では、各執務フロアにおいて概ね1つの部に1台、「fi-7300NX」を置いています。

fi-7300NXの写真
fi-7300NXのタッチパネルの写真

「fi-7300NX」はWi-Fi接続に対応しPCとの接続なしでスキャンできるA4ネットワークスキャナーです。毎分60枚・120面の高速スキャンが可能で、非接触ICカードリーダーも装備しています。

伊藤忠商事には現在何人の社員がおられ、経費精算は月あたり何件が発生するのでしょうか。

室谷さん社員は総数で約4,200人ですが、経費精算システムを利用するのは国内の本社・支社に在籍している社員のみなので約2,600名です。経費精算の件数は月あたり5,000~6,000件です。

このたびの電子化では経費精算システム自体も更改したのでしょうか。

室谷さんいえ、今利用している経費精算システムは2016年からのもので、今回の件でシステム自体の更改はしていません。ただし、電子データを画面上で添付した上で申請ができるように改修は加えています。

フローがどのように変わったのか、概要をお聞かせください。

室谷さん従来の経費精算では、各自のPCで経費精算システムのフォーマットに必要な項目を入力したのち、それをシステム上で回付すると同時に、紙で出力して領収書などの証憑を貼り付けて回付していました。承認者は、紙の証憑が添付された書類とシステム上での申請とを見ながら承認を行っていました。

そうした中、2022年1月に電帳法が改正され、電子取引時の電子データを電磁的に保存することが義務付けられることとなりました。そこで当社では2022年11月から、電子取引時のデータのみならず、スキャナ保存を活用することで、紙の証憑を「fi-7300NX」でスキャンし、生成されたPDFデータを原本としてシステムに添付する運用を始め、電子と紙の二本立てだった回付を電子に一本化しました。

2.「fi-7300NX」に社員証をかざして認証、スキャン後は「Box」の個人フォルダーに保存

スキャナー導入後の経費精算手順を教えてください。

室谷さん紙の証憑をスキャンする際には、まず「fi-7300NX」の非接触ICカードリーダーに社員証をかざして認証を行います。次にスキャンボタンにタッチして証憑をスキャンします。なお、スキャンして生成されたPDFが必ず法要件を満たした形で保存されるよう、スキャナーは「e-文書モード」のみの設定にしています。

社員証を非接触ICカードリーダーにかざす様子

社員証を非接触ICカードリーダーにかざして認証を行います。

スキャンボタンにタッチしてスキャンする様子

スキャンボタンにタッチしてスキャンします。大小の証憑を混載してスキャンでき、証憑が横向きや逆さまになっていたり傾いていたりしても、向き補正機能により正立したPDFファイルを保存します。

スキャン後、証憑のPDFファイルはどこに保存されるのでしょう。

室谷さんすべてのPDFファイルが、クラウドストレージサービス「Box」の、社員各自に割り当てられている個人フォルダーに入ります。

「Box」は経費精算電子化に際して導入されたのでしょうか。

室谷さんいえ、すでに数年前から全社インフラとして使用しているものです。特定の業務用というわけでもなく、ファイルサーバー的な位置づけで社員が日常的に利用しています。このたびの電子化では、証憑スキャンデータの保存先として、認証の観点からも「Box」の個人フォルダーが最も好ましかったため、連携機能を新たに開発して自動で保存されるようにしました。

PDFファイルは申請者が経費精算システムに手動で添付するのでしょうか。

室谷さんそうです。今回導入したスキャナーは、経費精算の証憑スキャン以外の用途でも利用されることを想定していましたから、経費精算システムへの自動添付まではスコープに入れていません。これまで証憑を紙に貼っていた作業が、スキャンと手動添付に置き換えられたという形です。

生成されたPDFファイルをノートPCで確認する様子

生成されたPDFファイルは「Box」の個人フォルダーに保存されます。これを手動で経費精算システムに添付します。

PDFは複数枚をまとめて1ファイルにしていますか、それとも証憑1枚につき1ファイルにしていますか。

室谷さん経費精算のルール上、どちらの形式で保存・添付してもかまわないことにしており、「fi-7300NX」には「一括出力」と「分割出力」のボタンを設けてユーザー自身に使い分けてもらっています。どちらの場合もスキャン自体は証憑を重ねてセットしてボタンを押すだけですが、経費精算システムへのファイル添付以降に多少の違いが出てきます。

たとえば出張旅費精算などで証憑が10枚あるとき、一括出力を選んだ場合は、経費精算システム画面上で入力した1件目に対して10ページ分の1PDFファイルを添付します。このとき2件目以降にはPDFファイルを添付しないことになります。一方、「分割出力」を選んだ場合は各件に対して対応する証憑のファイルを逐一添付します。

fi-7300NXのタッチパネルでスキャンボタンを選択する様子

「fi-7300NX」のタッチパネルには「一括出力/分割出力」と「両面読み取り/片面読み取り」を組み合わせた4つのスキャンボタンが設定されています。

申請者から見たとき、一括出力にすれば1つのファイルを添付するだけで済むのに対して、分割出力では複数ファイルの添付が必要になるということですね。手間がかかりそうな分割出力にも何かメリットがあるのでしょうか。

室谷さん分割出力した上で各件に証憑が添付されていれば、どの証憑にどの精算案件が紐づいているかがわかりやすいので、承認者の照合作業がスムーズだと考えています。導入に先立ちユーザーである社員へのヒアリングを重ねたところ、一括と分割、それぞれに対するニーズがあることがわかりました。そこで、一括か分割かは現場の運用マターであろうという判断のもと、どちらでも可とするルールにしました。なお、分割出力で複数のファイルを生成した場合も、複数ファイルを選択して1回でまとめて添付することができる機能も開発することで、ファイルを添付する手間が増えないような工夫もしています。

参考まで、室谷さんはどちらの方式で申請されていますか。

室谷さん私の場合、各件と証憑が対応しているほうがわかりやすいと考えていますので、分割出力にしています。ただそれは現在の業務の性質上、外出や出張が少ないので経費精算の頻度が低く、一度に精算する証憑数も少ないためかもしれません。海外出張などの多い部署では、1回の経費精算で証憑が何十枚も発生するケースも頻繁に発生しますので、一括でスキャンして添付する運用を残しておきたいというニーズも理解できます。個人の好みだけではなく、業務の特徴によるところも大きいと思います。

申請者が経費精算システムに入力する内容は、紙証憑の頃と比べて大きく変わったのでしょうか。

室谷さん電帳法の定めにより取引先(当該経費の支払先)の名称も入力するようになりましたが、それ以外はほとんど同じです。システム画面で費目を選び、詳細や金額を入力します。

ノートPCで経費精算システムに経費の内容を入力する様子
ノートPCに表示された証憑ファイルの画像

経費精算システムのフォーマットに経費の内容を入力します。写真の画面は対応する証憑ファイルが添付された状態です。

スキャンした証憑はどのタイミングで廃棄していますか。

室谷さん承認が下りるまで申請者が各自で保管し、承認後に各自で廃棄してもらっています。電子データが証憑原本になったことで初めて可能になった運用です。

航空チケットなどインターネットで購入したものは、領収書をWebからPDFでダウンロードすることが多いと思います。それらは紙への出力やスキャンを経ることなくそのまま添付するのでしょうか。

室谷さんそうですね。Webからダウンロードした電子証憑は、電子ファイルのまま保存することが電帳法上義務付けられており、紙に出力して再度スキャンして電子化することは認められていません。

3. リモートでの申請・承認が可能になり、書類保管の手間とコストが削減された

経費精算デジタル化による効率化の程度についてうかがうにあたり、比較のために証憑を紙で回付していた頃のファイルをご用意いただきました。拝見すると証憑をしっかりと糊貼りして押印するなど、ルールに則って厳密に運用されていたことがうかがえます。

室谷さんはい、厳格なルールに基づき、経費精算を行っています。航空運賃の精算では領収書のほかに航空券やボーディング時に受け取るレシートなど、搭乗を証明するものも提出しますし、海外でクレジットカードを使ったときはそのタイミングで適用されたレートを示す証憑も付けます。

証憑を紙で回付していた頃の、航空運賃精算のための搭乗を証明する証憑の写真
証憑を紙で回付していた頃の、交際費精算のための領収書の原本の写真

紙証憑時代のファイル。これが1部門の半年分にあたります。は航空運賃精算のための搭乗を証明する証憑、は交際費精算のための領収書の原本です。

紙証憑での経費精算はいつまで行っていたのでしょう。

室谷さん今回の電子化の運用開始が2022年11月ですから、それまでは長らく紙でした。今般の改正電帳法への対応と、スキャナ保存の活用に伴い、経費精算においては原則として電子ファイルを原本として取り扱うように変更された形です。

紙の証憑をこれだけ厳密かつ丁寧に扱っていたのですから、電子化でかなり経費精算の手間が省けたのではないでしょうか。

室谷さんそこは一概には評価が難しいところで、紙証憑を台紙に貼って申請書類を整える作業と、証憑をスキャンしたり撮影したりして電子ファイルをシステムに添付する作業、どちらを手間と感じるかは人それぞれです。取引先名など、入力項目が増えているという事情もあります。

ただ、当社では、グループ内の会社に経費精算システムへの入力代行業務を委託しており、この仕組みをフルに活用すれば経費精算の効率は上がると考えられます。

どのような仕組みでしょう。

室谷さん当社の社員が申請前に証憑をスキャンして、ファイルをシステム内に添付した状態でその会社に送れば、取引先や金額など、証憑から読み取れる範囲の内容を経費精算システムに入力し、出張目的などの申請者にしかわからない項目を入力するだけの状態にして戻してくれます。入力代行の外部委託も紙証憑時代には不可能だった運用です。

証憑の枚数が多いときには便利ですね。電子化ならではの成果はほかにもありますか。

室谷さんペーパーレス化が一気に進んだことで、大きく2つの効果が出ていると考えます。1つ目は、PCさえあればどこででも申請と承認ができるようになったことです。従来は、申請時は紙書類を貼りつけるため、承認時は紙書類を確認するために出社する必要がありました。それが電子化によってリモートでも承認できるようになりました。昨今のコロナ禍による出社制限等を抜きにして考えても、精算の締切が近くなると在社時間を確保するといったこともなくなったので、大きなメリットが生じていると思います。

もう1つは、紙の原本保管が不要になり、分厚い証憑ファイルを何冊も作成して保管する必要がなくなったことです。ファイリングの手間も、ファイルを保管する書庫のコストも、大幅に削減されます。これは非常に大きなメリットです。

社内の自席ではない場所でノートPCから申請や承認をする様子

社内の自席ではない場所でもPCさえあれば申請や承認が可能です。証憑はスキャンのほかにスマートフォンでの撮影による電子化も許可されているため、外出や出張中の隙間時間を活用して申請することもできます。

電子化の運用開始前に使用していた分厚い証憑ファイルの写真

この厚さのファイルが年間何十冊も作成されていましたが、電子化によってファイリングの手間も保管コストもかからなくなりました。

4. 複合機では困難だった「スキャナ保存」への対応が「fiシリーズ」導入によってスムーズに実現

証憑スキャンのためのスキャナーとして「fiシリーズ」を選択された経緯をお聞かせください。

室谷さん経費精算の電子化にあたり、全社システム室では2020年に「経費精算からの解放」をコンセプトに掲げて、どうすれば現場の負担を軽減できるかを探ってきました。

当初は証憑のスキャンに既存の複合機を使うことを考えましたが、小さな領収書の場合が多い経費精算の証憑を、複合機でスキャンしてPDFファイルにするのはかなり高いハードルでした。また、複数の証憑をまとめて1つのPDFにするにしても、ガラス面に証憑を並べて開け閉めするのは面倒なので、実質的には従来のように証憑を紙に貼ってからスキャンするよりほかに手がありません。

そんな中で「領収書などのスキャンにも適した業務用スキャナーがある」という情報が入り、前向きに検討を開始しました。検討の結果、「fiシリーズ」ならば証憑のスキャン自体がユーザーにとってもかなり簡単で、分割出力にも一括出力にも対応でき、電帳法対応の「e-文書モード」も備えていることから導入を決定しました。

社内でヒアリングを繰り返されたとうかがいました。電子化やスキャナー導入に対する反応はいかがでしたか。

室谷さん複合機でのスキャンを考えていた頃の反応は、かなり厳しいものがありました。やはり複合機で、領収書などの小さな証憑を大量にスキャンするのは、相当現場負担が高い運用だったものと思います。

そこで「fiシリーズ」の導入検討にあたり、秘書などスキャナーのヘビーユーザーになりそうな人たちを、カンパニーごとに10人ずつほど集めて説明会を開きました。その席で「fi-7300NX」の実機を用いて、スキャンを実演して説明したところ、「このスキャナーは便利そう」というリアクションを得ました。スキャンが簡単であること、薄い紙や小さい紙もスムーズに読み取ってくれることに加えて、白紙ページを除去する機能や、縦横混載でスキャンしても自動で正立になる向き補正機能、一括出力と分割出力を選べる機能などに、価値を感じてもらえたようです。

笑顔で話す室谷さんの写真

今後、「fi-7300NX」を経費精算以外の業務にも活用するご予定はありますか。

室谷さん全社システム室としては「fi-7300NX」を経費精算専用ではなく、当初から全社インフラとしてとらえています。契約書など、経費精算には関係のない紙資料などのスキャンにも使える状態です。書類はすべて「e-文書モード」でスキャンされますが、それにより困ることは現状特にありません。

今後の展望としては、経費精算以外でも、紙の証憑や契約書類などをスキャンして電子ファイルを原本にするという方向に進んでいくと思われます。その具体的な方法の検討もすでに始めていますので、全社インフラとしての「fi-7300NX」の重要性はさらに高まると思います。

「fiシリーズ」がペーパーレス化のお役に立てて幸いです。本日はありがとうございました。

※ Box、BoxロゴはBox Inc.の商標または登録商標です。

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