2023.10.5 |
三井金属鉱業株式会社
製造記録書類のデータ化手段を複合機から「fiシリーズ」に置換し作業時間を75パーセント削減
「ゾーンOCR機能」でファイル名を自動付与、現場で役立つPDFへとスムーズに変換
現代の産業に欠かせないマテリアルを供給する三井金属鉱業株式会社 セラミックス事業部では、セラミックス製品の製造過程で発生する書類をスキャンし、イメージデータを現場の業務に役立てています。この運用では従来、スキャンを複合機で行っていたため手間と時間を要していましたが、業務用イメージスキャナー「fiシリーズ」と標準添付ソフトウェア「PaperStream Capture」へのリプレースによってデータ化の所要時間が75パーセント削減され、より円滑になりました。福岡県大牟田市の同事業部を訪ね、詳細をうかがいました。
三井金属鉱業株式会社 機能材料事業本部 セラミックス事業部
業種:製造
主要製品:アルミナ、ムライト、ジルコニア、マグネシア耐火物/炭化珪素耐火物/ファインセラミックス/アルミ溶湯ろ過装置
- 課題
- 製造課の「白物」係では、過去の製造記録を現場で活用する目的で、製造時に発生する紙の書類を複合機でデータ化していたが、スキャン後のファイル名変更に手間と時間がかかっていた。
- 解決法
- スキャン専用機「fiシリーズ」を導入し、「PaperStream Capture」の「ゾーンOCR機能」を活用してファイル名を自動で付与する設定にした。
- 効果
- スキャンとイメージデータ保存に要する時間が75パーセント削減されて書類のデータ化がスムーズに行えるようになり、過去の製造記録をより現場で活用しやすくなった。
1. 製造過程で発生する「中間検査表」などの書類を「fiシリーズ」でデータ化
本日は三井金属鉱業株式会社 機能材料事業本部 セラミックス事業部 大牟田工場にお邪魔し、工場長の山下圭介さん、生産企画課の飯塚浩之さん、生産企画課 作業長の永石隼貴さん、製造課 白物係の立山杏佳さんにお話をうかがいます。「fiシリーズ」を活用した改善の詳細をお聞かせいただく前に、セラミックス事業部で手がけられている製品の概要について教えていただけますか。
山下さん当事業部で実際に物を作る製造課には白物・黒物・ハイセラ・メタロ・築炉の5係があり、主に耐火物を製造しています。このうち、アルミナなど酸化物を主原料にした耐火物を「白物」、炭化珪素の粒子を主原料にした耐火物を「黒物」と呼んでいます。このたび「fiシリーズ」を導入したのは白物係です。
白物や黒物はどのような使用目的・形状の製品なのでしょう。
山下さん大まかには煉瓦をイメージしていただくのがよいと思います。焼却炉やピザ窯が煉瓦を積んで作られるように、産業においてお客様が熱処理をされるときにも煉瓦に相当する耐火物が必要です。これが白物・黒物で、炉の内貼のほか、焼成する製品を載せるためのセッター、棚板、支柱、匣鉢といった通称「窯道具」の数々になります。
私どものお客様の業種は多岐にわたっていますが、一例としてはスマートフォン1台あたり1,000個が使われているといわれる、極小のセラミックコンデンサーの焼成にも当事業部の窯道具が使われています。
このたび「fiシリーズ」を導入された業務改善の概要と、それを白物係に適用されている理由を教えてください。
山下さん白物や黒物の製造過程では「中間検査表」をはじめとして、4枚が1セットになった書類が製品ごとに発生します。もともとはこれを紙のまま保存していましたが、過去の書類を製造現場で活用しやすくしようと、複合機を使ってデータ化するようになりました。ところが複合機でのスキャンには手間と時間を要するため、複合機を業務用のスキャン専用機に置き換えることにし、「fiシリーズ」を導入して2023年3月から運用を開始しています。
「fiシリーズ」を白物係に導入した理由は、当事業部の中で白物のボリュームが最も大きいためです。当事業部では現在、より効率的になるようにどんどん変えていこうという意識でデジタル化を推進しており、その点でボリュームの大きな白物係には試行錯誤の効果が見えやすいという利点があります。そこで今回の「fiシリーズ」導入を白物係からスタートしました。実際、「fiシリーズ」には導入効果が認められるので、今後は他の係へ広げていくことも十分に考えられます。
2. 「ゾーンOCR機能」を活用し、製品コードや受注No.をファイル名として自動で付与
スキャン対象である書類の役割について教えてください。
永石さん白物の製造には、原料となる粉を混ぜる「調合」、製品の形を作る「成形」、それを乾かす「乾燥」、焼成する「窯」、出来上がりをチェックする「検査」という工程があり、このうちスキャン対象の書類が発生するのは「成形」です。
書類の内訳は生産管理担当が製造とスケジュールを指示する「製造指図書」、製品の「図面」、製品をいくつ作るのかを指示するとともに当日の製造数を記録する「工程指示書兼累計管理票」、成形後の寸法測定結果を記す「中間検査表」です。いずれも成形が終わるまで紙のまま運用され、成形完了後に一式をスキャンしてデータ化しています。
成形の前後にある調合・乾燥・窯の工程でも別種の書類が発生するのでしょうか。
山下さん調合は別の取り組みとしてシステム化されており、現場も紙ではなくタブレットを見て調合しています。また乾燥以降の工程で書類が発生することはほとんどありません。セラミックス製品の製造工程は焼き物と基本的に同じですから、製品の形を作る成形はある意味のスタートといえます。その点で、各種の情報を記載した書類が必然的に多く発生することになります。
「工程指示書兼累計管理票」に手書きされた製造実績数や上長の確認印を拝見すると、現場で紙が運用されていることがよくわかります。これらの書類も、ゆくゆくは調合の工程と同様に最初からデータでの運用になるのでしょうか。
山下さん最終的にはそうしたいとは思っていますが、どのデータをどこで入れるかといった複雑な問題が絡むため、多くの制約があるのが実情です。また、現場の職人たちは紙での運用に慣れているため、特に書類の多い成形工程を急にデータ化するのも難しいでしょう。その意味で、決してゴールではないものの、当面は紙での運用を続けることになると思います。
書類をデータ化する目的として現場での活用を挙げておられました。過去の書類を現場で閲覧することに、どのようなメリットがあるのでしょうか。
永石さん現場で製品を成形するとき、同じ製品を以前に作ったことがあれば、その際にどのような配合の原料を用いて、どの程度の調整を加えて成形したのかを知りたいというケースがかなり頻繁に発生します。原料の調合ロットによる粒度の違いなども製品の仕上がりに影響しますので、以前はどうだったかという情報を、現場にいながらにしてタブレットで見ることができれば、作業効率が大きく向上します。
それが可能になった現在、振り返る頻度が最も高いのは「中間検査表」に記された寸法の数字と調合ロットです。備考欄に「こうしたことに留意し、このくらいの調整を加えた」といった情報が書かれていることもよくあります。また、お客様から問い合わせがあった場合や、何らかの理由によって一定以上の不良が出た場合などに備えたトレーサビリティの確保という点でもデータ化は必須です。
ハイテクなイメージのあるセラミックス製品も、人による調整が重要なのですね。
永石さんむしろ、ほとんど職人の勘と経験で作られていると言ってよいでしょう。機械の調整、原料を流し込む型の据え付け具合の調整など、製品はたくさんの細かい調整によって成り立っています。
山下さんそのように重要なことが記された書類であるにもかかわらず、紙で保管していた頃は探し出すことも大変でしたから、現実的には「ただの荷物」以上のものではありませんでした。もちろんISOの規格に基づいた保管ではありますが、ただ保管するのではなく活用できるようにしよう、そうすれば現場も楽になるはずだという意識は当時からあったため、7~8年前にデータ化に踏み切りました。
「fiシリーズ」導入前は複合機でスキャンされていたとうかがいました。複合機でのスキャンを開始した時点で、現場でのデータ活用は実現したのでしょうか。
永石さん基本的にはそういうことになります。ただ、複合機でのスキャンには大きな手間がかかるという問題があり、事務担当の悩みの種になっていました。
現在、白物係で事務を担当されているのは立山さんですね。書類はどの程度の量が発生し、複合機で運用していた当時はどのような問題があったのでしょうか。
立山さん前日に成形を完了した製品の書類が、通常は毎日5セットから10セット、私の手元に回ってきます。月末になると大幅に増え、一日30セット程度になることもあります。それを複合機でスキャンしていた頃は、スキャン後に書類の原本を見ながらファイル名を手作業で付け直さなければならず、数字が不規則に並ぶ長い文字列を入力するのが大きな手間になっていました。検索を考慮して製品コードや受注No.などをファイル名に含めているため、入力ミスの修正を含めてかなりの時間が必要でした。
当時はフロアで共有している複合機のところまで書類を持っていき、1セットずつスキャンしてから自席まで戻ってスキャン結果の確認やファイル名の修正を行っていたのでしょうか。
立山さんそうです。白物係の事務担当は私一人なので、本当に大変でした。
それが「fiシリーズ」導入によってどのように変化しましたか。導入後のフローを教えてください。
立山さん書類1セットごとに「中間検査表」という名称を付けた表紙を出力して、書類セットの上に表紙のように重ね、デスクに置いた「fi-8170」でスキャンしています。表紙はExcelで作成しており、受注No.、指図No.、製品コードを入力すると自動的に「製品コード(中間検査表)受注No.」という文字列が1行で表示されます。これを「PaperStream Capture」の「ゾーンOCR機能」で読み取り、末尾にスキャンした年月日を追加して、自動でイメージデータのファイル名にするよう設定しています。
書類は1セットずつスキャンしているのでしょうか。
立山さんいえ、「PaperStream Capture」の「自動仕分け」機能を使うと表紙をセパレーターにして自動でファイルを分けてくれるので、まとめて一気にスキャンしています。だいたい3~4セットを重ねてスキャンし、画像を見て正しくスキャンされていることを確認したら次の数セットをスキャンするという流れで進めています。
「ゾーンOCR機能」の読み取り精度はいかがでしょう。
立山さん文字の修正は今のところ一度もありません。ハイフンを別の線種として認識することがたまにありますが、あとからの検索には影響しないので特に修正は加えず、そのまま保存しています。
「fi-8170」と「PaperStream Capture」の活用により、複合機時代と比較してどのくらいの効率化が実現しましたか。
永石さんスキャン結果の確認・修正までを含めた作業時間を算出すると、複合機時代は書類1セットあたり120秒、「fiシリーズ」導入後は30秒となり、75パーセント削減できました。
立山さんを悩ませていた問題がようやく解決したのですね。スキャンした書類のイメージデータはどちらに保存していますか。
永石さん会社のファイルサーバーと「Box」に保存するほか、マニュアル共有システムにもアップしています。アカウントが必要な「Box」は工場にいる全員が見られるわけではないため、ほぼ全員が閲覧できるマニュアル共有システムも利用して、現場で製造記録を振り返りたいときはタブレットですぐに検索できるようにしています。
スキャンを終えた書類はすぐに廃棄しているのでしょうか。
立山さん図面と製造指図書は検査の工程に回ります。それ以外はこちらで保管しておき、一斉に捨てるタイミングで廃棄しています。
永石さん書類は3年間の保管が義務づけられていますが、現在はISOの規定によりデータ保管でも可ということになったので、スキャンすれば基本的にいつでも廃棄できます。紙保管の時代は月ごとにファイリングし、段ボールに入れて書庫の棚に箱ごと差しておくという状況でした。
当時はどの程度のスペースを取っていたのでしょう。
永石さん白物以外の書類も含めてのことですが、大きめの会議室よりも広いくらいの書庫が埋まっていました。保管期限を終えた1年分の書類をまとめて捨てるときは4トントラックが満杯になっていましたから、相当な量でしたね。それが現在、紙の書類は完全になくなっています。
3. スキャン速度と高精度OCRに加え、紙を傷めない「原稿保護機能」にも高評価
「fiシリーズ」導入にあたっては、生産企画課の飯塚さんが機種の選定などを主導されたとうかがっています。生産企画課は現場の問題を吸い上げて検討する機能を持つと考えてよいでしょうか。
飯塚さんそうですね、今回のように現場からの改善要望があれば我々が検討して解決していくという関係です。
山下さん生産企画課はシステムを含め、新しいことの導入にあたって該当部署のメンバーと話しながら調整をしています。今回も複合機では不可能なファイル名付与の問題を解決するために「fiシリーズ」を見つけてきてくれました。
飯塚さんはどのようなきっかけで「fiシリーズ」に白羽の矢を立てたのでしょう。
飯塚さん信頼するメーカーの営業の方と会話する中で、複合機でのスキャンが大変だという話をしたら、「よい機器がありますよ」とPFUの「fiシリーズ」を教えてくれました。そこで「fiシリーズ」のデモ機貸し出しサービスを利用して試してみたところ、問題に対する効果があると判断できたので導入に至りました。
その際に他社製のスキャナーも候補に入れていたのでしょうか。
飯塚さんいえ、実は以前にPFUの「ScanSnap」で書類のスキャンをしたことがあり、評価が高かったので、同じPFUの製品である「fiシリーズ」一本で検討を進めました。
永石さん2年ほど前、書類のデータ保存と紙の廃棄が公的に可能になったことを受けて、その時点で残っていた3年分の書類をすべてスキャンしてデータ化し、紙を廃棄して書庫を完全に空けることになりました。その作業を担当した生産企画課では人海戦術で乗り切るほかはないと判断し、「ScanSnap iX1500」を3台ほど購入して10人で交代しながらスキャンしたのです。
飯塚さんその際に「ScanSnap」はスキャンが十分に速くて紙詰まりが発生しにくく、かなり優秀であるとわかりました。それが業務用スキャナーの「fiシリーズ」になると、機種によっては速度が2倍以上にもなるほか、「ゾーンOCR機能」など「ScanSnap」にはない機能が数多く搭載されているということで、導入の決定はスムーズでした。
「fi-8170」の設定は飯塚さんがなさったのでしょうか。
飯塚さんそうです。初期設定は簡単でした。思い通りのファイル名を付与するための方法の確立に少々悩みましたが、PFUのサービス窓口に連絡して電話で説明を聞いたところ、現在の方法で実現することができました。
「fi-8170」と「PaperStream Capture」に対する評価をお聞かせください。
立山さんスキャンのスピードが速く、前述のように文字の認識にほとんどミスがないので、ストレスなく使えています。一番のメリットは、ゾーンOCR機能を活用したファイル名の指定が100パーセントに近い状態で実現できたため、入力ミスや面倒な作業がなくなったことです。数値には出ませんが、私自身のストレスもだいぶ軽減できました。
飯塚さんどんなスキャナーも紙の状態によっては読み込み中に引っかかるなどしてクシャクシャになるものですが、「fiシリーズ」はそうなる前に「原稿保護機能」が働いて止まってくれます。ですから紙がまったく傷みません。あれはすごくよいですね。
立山さん現場から届く紙なので、クリップの跡が強く付いていることや、端が折れたり丸まったりしていることがよくあります。「fi-8170」はそういう紙でも安定してスキャンできますが、あまりに状態が悪いときには止まって知らせてくれます。
今回の改善を他の部署や事業部に広げていくご予定はありますか。
山下さん三井金属では現在、デジタル化推進のために社内で効果のあった施策の情報交換をしています。そうした共有情報の一つに加えて、興味を持った事業所や部署に紹介していくつもりです。事業部内では、黒物係が複合機でのデータ化の段階で止まっているため、黒物係への展開から始めることになると思います。
「fiシリーズ」と「PaperStream Capture」が三井金属のデジタル化の一助となれて幸いです。本日はありがとうございました。