2024.10.16 |
順天堂大学医学部附属浦安病院
診療記録を効率的に電子カルテシステムへ取り込むため「fiシリーズ」をフル活用
システム連携用のQRコードを利用した自動仕分けで、取り込み作業を合理化
順天堂大学医学部附属浦安病院は、大学附属病院ならではの高度な医療とともに、地域の基幹病院として周辺住民に良質な医療を提供し、地域医療と地域社会の発展に寄与しています。
同院では患者から受け取る紹介状や患者に提供する同意書・説明書など、大量の診療記録(カルテ)が日々発生しており、それらを効率的に電子カルテシステムへ取り込むため、業務用スキャナー「RICOH fi Series」(以降、fiシリーズ)を利用しています。
fiシリーズの運用と電子カルテシステムとの連携について、情報管理室 課長補佐の米山さんと、診療録管理室 課長補佐の市原さん、同室 主任の吉田さんにお話をうかがいました。
順天堂大学医学部附属浦安病院
業種:医療
病床数:一般 785床/22病棟
患者数:外来患者 延べ人数:578,445人
入院患者 延べ人数:269,696人
(2022年度)
- 目的
- 1日4,000枚近く発生する大量の文書を、効率的に電子カルテシステムへ取り込む。
- 対応
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- 緊急度の高い文書をその場で取り込むため、外来受付や病棟にA4コンパクトスキャナー「RICOH fi-7030」を20台設置。
- すべての文書を一括して取り込むため、診療録管理室のインポートセンターにA3フラットベッド付きモデル「RICOH fi-7700」を4台設置。
- 効果
-
- 診療に必要な文書を診療前に電子カルテへ取り込むことで、患者情報をすぐに閲覧でき、電子カルテ画面を見ながらの診療に対応。
- fiシリーズの「自動仕分け機能」を利用して患者別に自動で文書を振り分け、電子カルテシステムへの円滑な取り込みを実現。
1. 電子カルテシステムとの連携実績と安定性からfiシリーズを選択
はじめに、順天堂大学医学部附属浦安病院の特徴について教えてください。
米山さん 当院は大学病院としての役割だけでなく、地域の基幹病院として高度救命救急と災害時の医療支援にも力を入れています。2023年9月には「高度救命救急センター」の指定を受け、千葉県内および隣接する東京都からも患者さんが通っていらっしゃいます。
千葉県全域の医療情報連携ネットワークというものはまだありませんが、今後、当院と隣接するいくつかの医療機関と電子カルテ共有などの連携をとっていく予定です。その連携も考慮して、2023年に電子カルテシステムのリプレースを行いました。
電子カルテシステムのリプレースとあわせて、連携するスキャナーのfiシリーズもリプレースされたそうですね。
米山さん はい。fiシリーズについては、電子カルテシステムを初めて導入した2015年から継続して使用しています。 2015年当時、fiシリーズを採用したきっかけは、システムとの連携実績があり、かつ安定性の高いスキャナーとして、システムのベンダーから提案があったからです。実は、システムを導入する前は他社のスキャナーを利用していたのですが、システムとの連携や他の病院での導入実績から判断して、fiシリーズを選択しました。
現在利用されているfiシリーズについて教えてください。
米山さん 当院で使用しているスキャナーは2種類です。 1つは、外来受付や病棟で使用するA4コンパクトスキャナーの「fi-7030」で、各科の受付やバックヤードなどに合計20台設置しています。 もう1つは、診療録管理室のインポートセンターで使用するA3フラットベッド付きモデルの「fi-7700」4台です。 電子カルテシステムとあわせて導入した当初から、コンパクトスキャナーとフラットベッド付きスキャナーの2種類体制で運用しています。
設置する場所や部署にあわせて、スキャナーを使い分けているのですね。診療録管理室とインポートセンターについて教えていただけますか。
市原さん 診療録管理室は、病院で発生するすべての文書や電子データを保存・管理する役割を担っています。 診療記録(カルテ)や患者さんから受け取る文書などを、一括して電子カルテシステムに取り込んでいる部署がインポートセンターです。
外来受付や病棟に設置されているfi-7030では、どのような文書をスキャンしていますか。
市原さん 緊急度の高い文書をスキャンしています。 主に、診療に必要な問診票、紹介状、お薬手帳などを患者さんから受け取ったときに、問診票や紹介状などはその場でスキャン、お薬手帳などの冊子はコピーしたものをスキャンして、患者さんの電子カルテに取り込んでいます。 診療前に素早く取り込むことで、電子カルテの画面を見ながら診療に対応できるようになっています。
インポートセンターのfi-7700では、どのような文書をスキャンしていますか。
吉田さん 入院中に発生する大量の文書や緊急度の高くない文書は、インポートセンターで一括スキャンしています。 病棟で発生した同意書・説明書などの文書や、外来で受け取った文書もすべてインポートセンターに集約し、電子カルテシステムに取り込んでいます。 4台のfi-7700を並行して使い、ほぼフル稼働でスキャン作業を行っています。
2. バーコードとQRコードを使い分けて、取り込み作業を効率化
インポートセンターでのスキャン作業の流れについて教えてください。
市原さん 外来で発生する文書と病棟で発生する文書で、スキャンするサイクルが分かれています。 外来の文書は、診療録管理室のスタッフが毎日、午前1回、午後1回の周期で回収してから、インポートセンターでスキャンしています。 外来から預かった文書は、回収したその日のうちにスキャンを完了し、電子カルテに取り込む必要があります。
吉田さん 病棟の文書は、毎日1回、午後4時に回収しています。 病棟からの文書は外来の文書ほど緊急度が高くないので、遅くとも翌日中にスキャンして取り込んでいます。
文書が発生してから電子カルテシステムに取り込むまでの仕組みを教えてください。
市原さん 患者さんごとに自動で振り分けて電子カルテシステムに取り込めるように、スキャンする文書には、バーコードかQRコードのどちらかが印刷されています。 まず、バーコードが印刷されるのは、電子カルテから作成した同意書などの文書です。 同意書は、患者さんに内容を説明し、署名をして頂いた後で、スキャンして電子カルテに取り込みます。このようなケースで、バーコードを使用します。
具体的には、電子カルテの患者さん別の画面から作成したい文書を選択し印刷すると、紙の左上にバーコードが付いた状態で印刷されます。 バーコードの中には、患者IDと文書の分類が含まれるので、何名かの患者さんの文書を一気にスキャンしても、バーコードの情報にそって患者さんごとのフォルダーに保存されます。文書管理システムのフォルダーに保存されたデータは電子カルテにひも付けられるので、電子カルテから該当の患者さんのデータを参照できるようになります。
市原さん QRコードを利用するのは、患者さんが持参した紹介状や検査結果などを電子カルテに取り込む場合です。 これらの文書は、電子カルテから作成した文書ではないので、バーコードが入っていません。 この場合は、患者IDと文書をひも付けるために、QRコードが入った紙を仕切り紙として使います。 この仕切り紙は、患者さんから文書を受け取った外来受付などの担当者が作成して、文書と一緒にスキャンする運用になっています。
仕切り紙は、電子カルテの患者さん別の画面から、仕切り紙の作成画面で文書の分類を選択して印刷します。 仕切り紙を文書の先頭にセットしてスキャンすると、バーコードと同様に、QRコードの情報にそってフォルダーに保存されます。
fiシリーズの自動仕分け機能を使って、効率的に取り込まれているのですね。スキャンする文書はどのようなものが多いですか?
市原さん 最も多いのは同意書・説明書で、月間8,000件ほどあります。 その次に多いのが紹介状・診療情報提供書で、こちらは月間4,000件ほどです。 その他には、診断書、検査記録、入退院計画書なども多くスキャンしています。 枚数にすると、病院全体では月間90,000枚弱をスキャンしていますね。
3. 高精度の読み取りで電子カルテへの取り込み作業を強力サポート
インポートセンターで実際にfi-7700を使用されている事務スタッフの高橋さんに、取り込み作業についてうかがいます。fi-7700の使い勝手はいかがでしょうか。
高橋さん A4サイズやA3サイズの紙は、複数枚重ねて一気にスキャンしています。 縦向きの紙や横向きの紙が混在していても、自動で文字の向きを判断して、正しい向きでデータを生成してくれるので、チェックも進めやすいです。 また、両面読み取りを設定しているので、作業者が目視で見落としてしまいそうな裏面にある文字なども、きっちり不足なくデータ化できるようになっています。 変形サイズの紙や折りたたんでスキャンする必要のある大きな紙など、取り扱いに注意が必要な文書は、フラットベッドを使ってスキャンしています。
以前に使っていた機種との違いなどはありますか?
高橋さん バーコードの読み取り精度が格段に良くなっていると思います。以前に使っていた機種はバーコードに斜め線などが入ってしまっていると、正しく読み取れないことがあったのですが、fi-7700ではバーコードが読み取れないということがほぼないですね。
インポートセンターにもコンパクトスキャナーのfi-7030が1台設置されていますが、こちらはどのように使っていますか?
高橋さん 以前はインポートセンターにこのタイプのスキャナーはなかったのですが、fi-7700に置き換わったタイミングで1台だけ置いていただきました。 スキャン作業をしていると、外来から急ぎの電話が入って、「その文書の中からこの紙だけ先にスキャンしてほしい」などの依頼が来ることがあります。 その場合は、fi-7700でのスキャン作業を止めずに、fi-7030で特定の文書のみスキャンして取り込んでいます。
急ぎの依頼や要望にも臨機応変に対応されているのですね。
4. 患者との円滑なコミュニケーションに紙を利用。運営面ではペーパーレス化を推進
順天堂大学医学部附属浦安病院での紙の運用やペーパーレス化について、今後の展望などがあればお聞かせください。
米山さん 現在、院内スタッフの連絡や打ち合わせなど運営業務でのペーパーレス化は進んでおり、使用する紙の量は確実に減っています。 一方で、診療業務においては、患者さんへの情報提供や説明対応などは、紙での運用が今も基本となっています。
同意書は患者さんから署名を頂く必要がありますし、手術の説明書などは患者さんのご家族にも見ていただく必要があります。 この場合、患者さんが持っているスマートフォンにデータを送って、その画面で手術の説明を読んでいただいたり、同意書に署名していただくのは、まだ難しいと感じています。 多くの患者さんがスマートフォンをお持ちですが、今後も患者さんと病院間のやりとりは紙が主になると予想しています。
病院運営としては、医療文書に関する法律やガイドラインに変動があれば、それらにきちんと対応・準拠し、タイムリーに取り入れて効率化を図っていきたいと考えています。
効率化のために、今後もfiシリーズを役立てていただけると幸いです。 本日は、お忙しいところ貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
※QRコードは、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
※「RICOH fi-7030」は2023年5月31日をもって販売終了しています。最新モデルは「RICOH fi-8040」です。