2025.2.18 |
尼高運輸株式会社
百貨店のギフト宅配伝票をOCR処理し、繁忙期に1,200時間を削減 「fiシリーズ」と「DynaEye」を活用して業務効率化と1/2の省人化を実現

右から、情報・品質管理部 次長の西前和之さん、業務部 係長の井上達也さん、業務部の前山朱音さん。
流通加工を得意とする尼高運輸株式会社(兵庫県尼崎市)では、大手食品会社から請け負っているギフト発送代行業務において、多数の百貨店から届くお中元・お歳暮ギフトの宅配伝票を「RICOH fi Series」(以降、fiシリーズ)でスキャンしてAI-OCRソフトウェア「DynaEye」でOCR処理し、宅配伝票の記載情報を包装や熨斗(のし)がけの作業指示書に反映させる運用を開始しました。これによって従来多くの人手をかけていた手書き作業がなくなり、時短と省人化が実現したほか、伝票処理の正確性も向上しました。同社の西宮北第2営業所(西宮市)を訪ね、実際の運用状況を詳しく取材しました。

尼高運輸株式会社
業種:流通
設立年:1972年(昭和47年)
主な事業:流通加工、倉庫保管、輸配送
事業拠点:国内10か所
- 課題
- 大手食品メーカーのギフト発送代行業務で、受注分の宅配伝票からハンディスキャナーで情報を抽出し、手書きで作業指示書を作成していたが、手間がかかりすぎていた。また繁忙期に業務が集中するため、人員の確保が困難だった。
- 解決法
- ハンディスキャナーを「fi-8190」に置き換えるとともに、宅配伝票の記載内容を「DynaEye」でOCR処理することで作業指示書の作成を自動化。
- 効果
- 伝票処理に要する時間と人員が大幅に削減され、時短と省人化に成功。また作業指示書の正確性が大きく向上し、受注から発送までの業務効率がアップした。

事例ご紹介動画(再生時間 5:01)
1. データと紙で届く伝票を「DynaEye 11」で読み取り、CSVで出力し作業指示書に反映させる
尼高運輸株式会社 情報・品質管理部 次長の西前和之さんにうかがいます。尼高運輸では「倉庫保管」「輸配送」と並ぶ主軸事業「流通加工」の一環として請け負っている、大手食品メーカー・N社のギフト発送代行業務を効率化するために、A4高速スキャナー「fi-8190」とAI-OCRソフトウェア「DynaEye 11」を導入されたとうかがっています。具体的な運用を拝見するにあたり、はじめに流通加工がどのようなサービスなのかを教えてください。
西前さん 在庫管理、仕分け、梱包やラッピングなど、お客様のご要望に添う加工を施して出荷までを請け負う一気通貫のサービスです。ギフト発送代行業務のほか、コンテナで入ってきた輸入食品を一つずつ検品してシールを貼る、ビールなどのパック商品に景品を添付する、大学の教科書を個人別にセット組みして箱詰めする、ドラッグストアに置く化粧品などの紙製什器を組み立てて出荷するというように、その内容は多種多様です。毎シーズン入ってくる業務もあれば、初めて受注する業務もあり、状況に応じて倉庫のレイアウトを頻繁に変更しながら対応します。
尼高運輸ではいつから流通加工サービスを始めたのでしょうか。
西前さん もともと運送業一本だった当社が倉庫を構え、N社のギフト発送代行業務を請け負うようになったのが18年前です。以降、どのような作業でもお引き受けすることを旨として流通加工を積極的に引き受け、売上を伸ばしてきました。現在では当社第一の得意分野にまで成長しています。

西前和之さん。「fiシリーズ」と「DynaEye」の導入を主導しました。

複数の倉庫で行う流通加工は尼高運輸が得意とするサービスです。
N社のギフト発送代行業務について、概要や規模を教えてください。
西前さん 簡単にいえば、N社が百貨店から受注するお中元・お歳暮のギフトとして、N社の商品をピッキングして包装し、発送する業務です。当社はN社の西日本担当ギフトセンターとして、西日本エリアに発送する注文の処理を一手に引き受けています。
お中元とお歳暮のギフトなので年に2回の期間限定ですが、昨年(2023年)の実績では当社から46万件の発送がありました。その3分の2はお歳暮で、大半を毎年12月に処理することになります。完全に短期集中型の業務です。
ギフト商品の発送にあたっては、N社から受注リストや宅配伝票などがまとめて届くのでしょうか。
西前さん そうであれば話は早いのですが、実際には西日本を中心に、全国44の百貨店から当社に直接、複数の形式の宅配伝票がそれぞれのルートで毎日届きます。
対外的には尼高運輸がN社ギフト商品の受注担当部署ということになるので、百貨店からの注文を直接受けるのですね。宅配伝票にはどのような形式があるのでしょうか。
西前さん 宅配伝票は次の3系統に大別されます。
系統① Web上にある百貨店の宅配伝票印刷システムを使用して当社で印刷。このとき伝票に記載された情報のテキストもCSVファイルで取得できる
系統② Web上にある百貨店の宅配伝票印刷システムを使用して当社で印刷。このとき宅配伝票の画像をPDFファイルで取得できるが、記載情報のテキストは取得できない
系統③ 宅配便や郵便で届く、紙の宅配伝票。通称「送り込み伝票」
①と②は毎朝7時にWebで百貨店の各システムをチェックし、アップロードされている宅配伝票を当社のプリンターで印刷します。この作業を「発伝」といいます。③は毎朝10時頃、当社に届きます。
「fi-8190」と「DynaEye 11」はどの系統の伝票に使用するのでしょうか。
西前さん ②と③です。②の場合は伝票記載情報のCSVを取得できないため、ダウンロードしたPDFからテキストを抽出する必要があります。そこでPDFを「DynaEye 11」に取り込んでOCR処理を行い、読み取ったテキストをCSVファイルで出力します。
③の「送り込み伝票」は紙の現物なので「fi-8190」でスキャンし、そのイメージデータを「DynaEye 11」で読み取って、同じくCSVファイルを生成します。
ともにOCR処理を行う箇所は伝票番号、品名、品番、個数、熨斗(のし)の有無といった項目に限られ、個人情報には触れません。

左が宅配伝票。発送時、包装した商品に貼付します。右は包装のための作業指示書、通称「小鑑(こかがみ)」です。
「fi-8190」と「DynaEye 11」によって、3系統の伝票の情報をCSVに統一するのですね。商品に貼付する宅配伝票が「発伝」と「送り込み」によってお手元に揃うのに、なぜ伝票に記載された情報のCSVが必要なのでしょうか。
西前さん パートの方々にお願いする包装作業に必要な情報をまとめた、作業指示書を作るためです。作業指示書は品番や個数などの基本情報と包装指示を記載した紙で、当社では「小鑑(こかがみ)」と呼び習わしています。当日の受注分は「小鑑」の出力までを行い、その翌日にパートの方々が「小鑑」の指示通りに商品をピッキングして指定の熨斗をかけ、包装する作業をしたのちに発送します。
またCSV化には、受注状況を集計し、当社に常駐しているN社の社員に伝えるという目的もあります。当日発送する商品の品番や個数がわかれば、N社は自社工場に正確な数で発注をかけることができます。CSV化によってN社の営業予測の精度を高められるということです。

「発伝」後に「小鑑」に集約されて束ねられた宅配伝票。いちばん上の横長の紙が「小鑑」で、2枚目以降は「小鑑」に記載された包装指示が同一の宅配伝票です。

包装作業の様子。「小鑑」を見て商品をピッキングし、指示に従って熨斗がけをしてから百貨店の包装紙で包みます。
CSVの生成には重要な意味があるのですね。ところで、系統②でCSVを取得できないのはどのような理由によるのでしょうか。
西前さん 百貨店のシステムからCSVを受け取る仕組みを構築するには、1店ごとにかなり大きなコストがかかるという事情があるためです。当面はPDFしか受け取ることができないので、「DynaEye」によるOCR処理が欠かせません。
「fi-8190」と「DynaEye 11」の導入は2023年10月とうかがっています。それ以前はどのような運用だったのでしょう。
西前さん 伝票を処理する伝票班のパートの方々が、20本のハンディスキャナーですべての伝票を読み取り、「小鑑」は手書きしていました。
ハンディスキャナーは本来、受注から発送までをトレースできるようにするため、伝票番号のバーコードだけを読む目的で導入したものでしたが、N社の要請を受けて品名も読み取り項目に加えることになりました。そのときはハンディスキャナーのプログラム変更によって、読み取りと入力で対応できたのですが、最終的に出荷日も追加することになったため、ハンディスキャナーでは手に負えない状況になりました。
それと同時に、昨今は人手不足でパートの人員を確保しにくく、「小鑑」を手書きで運用するのが難しくなったという事情もあります。そこで、伝票の読み取りと省人化を一気に実現する手段としてOCRを活用することにし、「fi-8190」と「DynaEye 11」を導入して2023年のお歳暮シーズンから運用を開始しました。

「fi-8190」は高度な給紙搬送機能を備えたA4高速スキャナーです。1分間に90枚・180面をスキャンします。

定型帳票のOCRに対応する「DynaEye 11 Entry」の標準アプリケーションを利用しています。
2. PDFの伝票と、「fi-8190」でスキャンした紙伝票のイメージデータを「DynaEye 11」でOCR処理
ここではN社ギフト発送代行業務における「発伝」から包装・出荷までの具体的なフローを、順を追って見ていきます。なお、取材はお歳暮シーズン直前の2024年11月中旬に行いました。
宅配伝票3系統の処理工程

(1) 百貨店のシステムにアップロードされた宅配伝票をダウンロードして印刷
倉庫の一角にある伝票班の部屋では毎朝7時から、3系統がある宅配伝票のうち、系統①と ②の伝票を印刷する「発伝」作業に取りかかります。Web上にある各百貨店の宅配伝票印刷システムをチェックし、アップロードされている宅配伝票をプリンターで印刷し、系統① ②の宅配伝票を紙で手元に揃えます。
発注元の百貨店が現在44あるうち、系統① ②の百貨店は計15です。Webでの参照先は百貨店のシステム、または百貨店が利用しているギフト向けオペレーションサービスのシステムです。百貨店ごとに伝票のフォーマットが異なるため、印刷の際はその都度プリンターに専用の用紙をセットします。

「発伝」や「小鑑」の作成を行う伝票班の部屋。複数のプリンターと「fi-8190」が設置されています。

百貨店の宅配伝票印刷システムから直接、宅配伝票をプリンターで印刷します。枚数の多い一部百貨店の伝票はRPAによって自動で印刷されます。
(2) 宅配伝票のPDFを「DynaEye 11」で読み取り、CSVで出力
「発伝」と並行して、「小鑑」作成に必要なファイルを宅配伝票印刷システムからダウンロードします。系統①でダウンロードするのは、伝票に記載された文字情報のCSVファイルです。このCSVからは「小鑑」が直接出力されるので、以降のOCR処理には関係しません。
一方、系統②でダウンロードできるのは「指定の用紙に印刷するためにレイアウトされた宅配伝票の画像」のPDFファイルです。そこで「小鑑」を作るためにPDFを「DynaEye 11」に直接取り込み、伝票に記載された文字を読み取ってCSVで出力します。


左上が「発伝」した宅配伝票(①②)、右下が宅配伝票のPDF(②)。ともに一例です。
「DynaEye 11」で読み取る箇所は、伝票番号、品名、数量、出荷日(着日指定もあるため)、熨斗の有無など、個人情報以外の必要項目です。これらはすべて活字で、手書き文字はありません。また百貨店ごとに伝票のフォーマットが異なるため、「DynaEye 11」に複数の書式定義を登録しています。

宅配伝票のPDFを認識中の「DynaEye 11」画面。

「DynaEye 11」の書式定義画面。簡単な操作で読み取り範囲を設定できます。
系統①②の百貨店15のうち、系統②は3店ですが、いずれも大手で伝票の枚数が多く、12月に入ると1店につき一日1,000枚から2,000枚になり、ピーク時にはさらに増えることもあります。また系統②がゼロ枚の日はないため、シーズン中は毎日「DynaEye 11」でOCR処理を行います。系統②のPDFを「DynaEye 11」でOCR処理する際の読み取り精度は、西前さんによると「ほぼ100パーセント」です。
(3) 「送り込み伝票」を「fi-8190」でスキャンして「DynaEye 11」でOCR処理、CSVを出力
続いて、朝10時に系統②の「送り込み伝票」が到着したら、開封して「fi-8190」でスキャンし、イメージデータを「DynaEye 11」で読み取ってCSVを出力します。

到着した「送り込み伝票」の一部。

添付のリストと照合したあと「fi-8190」でスキャンします。
「送り込み伝票」だけが届く百貨店は2店と少ないものの、系統①や②がメインの百貨店からも一部、「送り込み伝票」が届きます。それらをすべてスキャンし、イメージデータを「DynaEye 11」に取り込んでOCR処理を行います

「送り込み伝票」の束を次々に「fi-8190」にセットしてスキャンします。

イメージデータが「DynaEye 11」に取り込まれ、OCR処理が行われます。
「送り込み伝票」の読み取りでは、枠線をまたいで文字が印字されている場合があることなどが影響し、日付などの数字にエラーが出ることもあります。その修正は「DynaEye 11」の画面では行わず、CSVでの出力後、Excelファイルにしてからまとめて行います。


読み取りエラーが発生した場合、「DynaEye 11」の画面で修正が可能(左)(上)ですが、尼高運輸ではCSV出力後にExcelで開いてから確認と修正を行います。
(4) CSVをAccessに取り込んで「小鑑」を出力
3系統の宅配伝票がCSVファイルに統一されたので、次はCSVをいったんExcelのファイルにしてからAccessに取り込んで「小鑑」のデータを作り、紙に出力します。

Access画面より。「データ」の欄に並ぶのが系統①のCSVをインポートするボタン、「OCR」の欄に並ぶのが系統②のPDFを「DynaEye 11」で読み取って作成したExcelをインポートするボタンです。

データがAccessにインポートされると自動で「小鑑」が作成されます。
「小鑑」は百貨店ごとに、商品・出荷日・包装形態が同じ伝票のまとまりに対して1枚が指示書として添付されます。1枚のA4用紙に3連で「小鑑」を印刷したら、ミシン目で切り離し、対応する伝票と一括りにする「付け合わせ」の作業を行います。それを伝票班のスタッフが確認し、間違いがなければ包装の現場に渡します。

専用の紙に「小鑑」を印刷し、ミシン目で切り離します。

該当する伝票とセットにし、確認したら完了です。
なお「送り込み伝票」のうち、包装や熨斗の指示が複雑なものはスキャンとOCR処理を行わず、従来通りハンディスキャナーで読み取りと入力をします。宅配伝票と専用の熨斗が重なっていることが多く、伝票だけを取り出してスキャンすると、あとで熨斗とのペアリングを間違えるリスクがあるためです。この場合、ハンディスキャナーでは「小鑑」の作成に十分な読み取りができないため、「小鑑」は赤ペンで手書きします。全伝票の5分の1がこのパターンで、この日の枚数は約230でした。

宅配伝票と熨斗が重なって一部ずつクリップ留めされた状態で届くものなど、扱いに注意が必要な送り込み伝票はハンディスキャナーで読み取りと入力を行います。

赤ペンを使って「小鑑」に手書きし、伝票と一組にして完成です。
「付け合わせ」まで完了した「小鑑」と宅配伝票の束は、翌日以降の出荷分と当日出荷分に分け、翌日以降の出荷分をいったん棚に入れて保管します。当日出荷分の束は、前日までに棚に入れた束と合わせて集計を行ってから包装の現場に渡り、N社からの出荷指示を待ちます。当日出荷分と前日までに保管した分の集計結果はN社に報告され、N社が自社工場に発注をかけるために役立てられます。
(5) ピッキングして包装し、発送へ
商品が生鮮食品のため、包装班は倉庫の冷蔵エリアで熨斗がけや包装を行います。N社からの出荷指示を受けたら、包装班のパートのスタッフが「小鑑」を見ながら商品をピッキングし、指示通りに熨斗をかけて包装し、発送します。

包装作業は室温8~9℃に保たれた冷蔵エリアで行われます。12月には外気より暖かい日もあるそうです。

包装を終えて積み上げられたお歳暮のギフト。写真ではピーク前のため少量ですが、12月に入るとエリア全体が人と物で埋まります。
12月に入ると広大な倉庫に包装作業用のテーブルがずらりと並ぶほか、自動包装機も置かれてスペースが埋まり、30~50人規模の出荷場になります。出荷前にはトレース対応として、最新鋭の自動読取機で商品に貼られた伝票のバーコードを読み取ります。ベルトコンベアで読取機を通過した商品は宅配便の車両に積み込まれ、西日本の各地に配送されます。


商品の出口となる自動読取機。エリアをぐるりと取り囲むようにベルトコンベアが設置されています。
3. 夏と冬の繁忙期を通して1,200時間の時短が実現。今期から人員も半数に減らすことができた
「fi-8190」と「DynaEye 11」に対する評価と導入効果についてうかがいます。まずAI-OCRソフトウェアとして「DynaEye 11」を選んだ経緯をお聞かせください。
西前さん インターネットで検索してPFUと「DynaEye」の存在を知りました。PFUを含む3社に問い合わせをし、それぞれを試用した上で「DynaEye 11」の採用を決めました。
何が決め手になったのでしょう。
西前さん 読み取り精度の印象は3社がほぼ同等でしたが、「DynaEye 11」はオンプレミス型である点と、定額で利用できる点が決め手になりました。他のメーカーは従量課金制をとっており、シミュレーションするとそちらのほうが高くなります。ギフト発送代行は季節業務のため、使わない間も基本使用料がかかるのは避けたいところでしたから、「DynaEye 11」の価格は魅力的でした。また、「DynaEye 11」の無償評価版を使ってみて、これならさほど苦労することなく使えるという感触を得たので、すぐに決裁をとって購入しました。
3種類を試用された中で、「DynaEye 11」はわかりやすかったのでしょうか。
西前さん そうですね、したいことをするにはどうすればよいかをイメージしやすく、組み立てやすいという感触があり、導入後の運用でもその通りでした。書式定義では位置の調整にかなりの時間をかけましたが、操作自体は簡単でした。
スキャナーに「fi-8190」を選んだ理由をお聞かせください。
西前さん 宅配伝票がスキャン対象で、サイズはごく少数のB5を除いてすべてA4ですから、A4が読めてスキャンするスピードが速ければよいと判断し、「fi-8190」を3台購入しました。スキャナーに関しては他社との比較はしていません。
現在、伝票班にある「fi-8190」は1台ですが、残りの2台はどちらで使っているのでしょう。
西前さん 1台は尼崎市の本社に置き、洋菓子メーカーのギフト発送代行業務に使用しています。そちらでも「小鑑」を出しますが、伝票がN社ほど複雑ではないため、「DynaEye」ではなく「fiシリーズ」標準添付のソフトウェア「PaperStream Capture」の機能でOCR処理をしています。
もう1台は予備機として私のデスクに置いていますが、実は導入直後の昨シーズンにはこれも伝票班に置き、お歳暮の伝票スキャンに2台をフル稼働させました。その時点では系統②のPDFを直接「DynaEye」に取り込まずに、一度印刷して③の「送り込み伝票」と同じ処理をしていたためです。
1社につき一日1,000枚から2,000枚にもなる宅配伝票を、すべてスキャンしたのでしょうか。
西前さん そうです。大変な量だったので1台では追いつかず、私のPCにもう1台をつないで乗り切りました。2台とも相当な枚数をスキャンしましたが、自分たちでは解決できないようなトラブルは発生しませんでした。
ここからはギフトセンター長で業務部 係長の井上達也さんと、伝票班リーダーの業務部 前山朱音さんにも加わっていただき、「fi-8190」と「DynaEye 11」に対する評価をうかがいます。「fi-8190」の使い勝手はいかがでしょう。
前山さん 操作に難しいところがなく、紙をセットしてクリックするだけでスキャンできる、とても使いやすいスキャナーです。最初はスピードが速いのに驚きました。紙詰まりも滅多にありません。宅配伝票はシール状で普通紙よりも厚く、多少の波打ちもあるのですが、導入直後の大量スキャンも含めて、スキャン中の停止は10回に満たないくらいです。作業効率が高いので助かっています。
井上さん 私はギフト発送代行全体を見る立場のためスキャンやOCR処理を頻繁にするわけではありませんが、教えてもらいながら少し扱えるようになっています。「fi-8190」はスピードが速いのがよいですね。

業務部 係長の井上達也さん。ギフトセンター長として伝票班と包装班の全体を見る立場です。

業務部の前山朱音さん。伝票班のリーダーとしてパートのスタッフに指示を出します。
「DynaEye」についてはいかがでしょうか。
前山さん 送り込み伝票をスキャンして読み取るとき、伝票のフォーマットによってエラーが出やすいものと出にくいものがあるようです。
西前さん エラーはそう頻発するわけでもありませんが、書式定義の工夫によって今後改善できるならばそれに越したことはありません。
書式定義は情報・品質管理部に所属されている西前さんの専任業務でしょうか。
西前さん いえ、専任というわけではありませんし、今の部署はDX推進のために2024年4月に新設されたもので、もともとは二人と同じ業務部の所属でした。AccessやExcel、RPAなどは業務のために独学で覚えたものです。いずれは私のほかにも「DynaEye」の書式設定ができるメンバーを増やしていきたいと思っています。
「DynaEye」導入時の設定は西前さんがなさったのでしょうか。
西前さん そうです。これも自力で行いました。マニュアルをざっと見て大筋の順序だけ把握し、あとは実際に触りながら進めて、つまずいたらマニュアルに戻るというやり方でした。今年のお中元が始まる前に自力ではどうしてもわからないことがあり、一度だけPFUのサポートにメールで問い合わせたことがあります。そのときはもらった回答ですぐに解決しました。
「fi-8190」と「DynaEye 11」の導入効果についてお聞かせください。どの程度の時短や省人化が実現しましたか。
西前さん ハンディスキャナーでの読み取りと「小鑑」の手書きが大幅に減ったため、昨年のお歳暮シーズンと今年のお中元シーズンを合わせた実質3か月間で、約1,200時間を削減できました。また省人化という点では、伝票班のパート募集の人数を大幅に減らすことに成功しています。
井上さん 導入前はお歳暮に25人から30人を要していましたが、今年は14人ですからほぼ半減ですね。
前山さん 残業も減りました。繁忙期の伝票班では残業がよく発生していて、場合によっては夜の10時頃までかかることもありましたが、今はほとんど残業がありません。基本的には6時、遅くても7時には終わります。これもかなり大きな効果です。
西前さん また当社としては、手書きだった「小鑑」の作成を自動化できたことに大きな意味があります。手書きの場合は一定の頻度でミスが発生しますが、OCRによって「小鑑」の記入ミスが激減したので、伝票班はミス対応が不要になり、包装班は「小鑑」に対する「答え合わせ」型の作業に集中できるようになりました。
井上さん 「小鑑」の作成が「fi-8190」と「DynaEye 11」によって機械化されたことで、ヒューマンエラーがほとんど発生しなくなりましたね。正確を期することが何より重要なギフト発送代行業務において、これは本当に喜ばしいことです。
今後、「fi-8190」と「DynaEye 11」を他の業務に活用するご予定はありますか。
西前さん まだ具体的な予定はありませんが、今後営業活動をしていくにあたり、OCRなど最新技術の活用によって効率的で正確なサービスを提供できることが強みになると考えています。冒頭に業務の一例として挙げた大学の教科書のセット組みにしても、大元は学生さんが手書きした注文用紙です。そういう場合に当社で注文用紙のOCR処理から承ることができれば、お客様にとってもメリットが生ずるでしょう。
「fiシリーズ」と「DynaEye」が尼高運輸の業務効率化と今後の展開のお役に立てて幸いです。本日は詳しくお聞かせくださり、ありがとうございました。
※ Excel、Accessは、マイクロソフトグループの企業の商標です。