1. 株式会社アグレックス
2025.06.12

株式会社アグレックス

“大相続時代”に対応する金融機関向け「相続事務デジタル支援サービス」で「fiシリーズ」と「PaperStream Capture」が活躍

戸籍謄本などの重要書類を「fi-7700S」でイメージデータ化し、プログラムにより自動で審査

森田純一さん(左)と柴田浩明さん。株式会社アグレックス 新大阪センターにて。

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BPOの大手・株式会社アグレックス(東京都新宿区)では、社会の高齢化に伴う相続事務の増加に悩む金融機関に向けて、「相続事務デジタル支援サービス」を立ち上げ、第一段階として証券会社を対象に提供を開始しました。このサービスは戸籍謄本など各種の重要書類を業務用イメージスキャナー「RICOH fi Series」(以下、fiシリーズ)でイメージデータ化し、
同社が開発したプログラムで迅速かつ正確にチェックするもので、熟練を要する書類審査のあり方を大きく変える仕組みとして注目されます。同社の新大阪センター(大阪府大阪市)を訪ね、サービスの具体的なフローをうかがいました。

課題
「相続事務デジタル支援サービス」の立ち上げに際して、ステープル留めされた戸籍謄本などの重要書類をスムーズにイメージデータ化できるスキャナーを探していた。
解決法
ステープル留めされたままで書類をスキャンできるフラットベッドに加えてADFも備えた「fi-7700S」を5台導入。
効果
フラットベッド使用時にドキュメントカバーを開けたままでスキャンできる機能を活かし、高効率のイメージデータ生成を実現。また標準添付ソフトウェア「PaperStream Capture」を活用してファイル名の自動付与やフォルダーへの自動仕分けも行い、プログラムチェック(書類審査)にかけるまでのフローを円滑化。

1. 熟練を要する書類審査をイメージデータ生成とプログラムチェックで自動化

株式会社アグレックスが新たに立ち上げた「相続事務デジタル支援サービス」と、フローに組み込まれている「fi-7700S」の運用について、ビジネスファンクションサービス事業本部 デジタライゼーション事業部 ビジネスリレーションサービス第1部 上級マネジャーの柴田浩明さんに詳しくお聞かせいただきます。またビジネスプロセスマネジメント事業統括本部 事業企画統括部 事業企画部長の森田純一さんにも、同サービスについて新規事業開発の観点からコメントをいただきます。はじめに同サービスの概要から教えてください。

柴田さん 「相続事務デジタル支援サービス」は金融機関における相続事務を、当社が開発したシステムによって支援するBPOサービスで、2025年1月にスタートしました。相続事務が発生する金融機関のうち、まずは証券会社を対象にしています。

ビジネスファンクションサービス事業本部 ビジネスリレーションサービス第1部 上級マネジャーの柴田浩明さん。

ビジネスプロセスマネジメント事業統括本部 事業企画統括部 事業企画部長の森田純一さん。

相続事務とはどのようなものでしょうか。

柴田さん どなたかが亡くなられたとき、その方が金融機関にお持ちの資産を相続人の方に移管する手続きです。金融機関が銀行であれば預金や投資信託など、証券会社であれば証券などが資産に相当します。
この手続きに当たり、金融機関では相続人の方に戸籍謄本など各種の書類を提出していただき、その内容を審査する事務作業が発生します。ただ、書類審査という業務の性質上、スキルが個人に蓄えられて属人化しやすく、後継者を育てるにもコストがかかるという問題が以前からありました。そして何より、社会の高齢化に伴って亡くなる方が増えたという背景があり、増加する相続事務に割くリソースが足りないという大きな問題が金融機関を悩ませています。

それらの問題をBPOサービスで解決するためにデジタルの力を活用されたのですね。

柴田さん その通りです。これまでにも金融機関を対象にした相続事務のBPOサービスは存在していましたが、多くは進捗管理、ステータス管理に留まるものでした。それに対して当社の「相続事務デジタル支援サービス」では、相続事務で最も熟練を要し時間もかかる書類審査をデジタル化しています。このサービスでは当社の独自プログラムが書類を精査し、人はシンプルな判断を行うだけなので、より迅速かつ正確な支援を提供できます。

サービスの大まかな流れと、「fi-7700S」の役割を教えてください。

柴田さん 相続人の方に準備していただいた書類を当社で受け取り、すべて「fi-7700S」でスキャンしてイメージデータにします。このイメージデータと、イメージデータを基に入力したテキストをプログラムチェックにかけて精査し、本人確認や相続人の特定などを行います。書類が完備されていることを確認できたら資産の移管が可能になるので、移管処理に入ります。

「fi-7700S」はさまざまなニーズに対応するA3フラットベッド付きモデルです。上部にA3対応ADF、下部にA3対応フラットベッドを備えています。なお撮影の都合により、写真では同タイプで両面スキャンが可能な「fi-7700」を使用しています(以下すべて)。

「相続事務デジタル支援サービス」の最初の対象として証券会社を選んだ理由をお聞かせください。

森田さん 前述のような“大相続時代”に対応したBPOサービスを提供するプレーヤーが少ない業界であり、明らかなニーズが存在することを当社でキャッチしたので、証券会社から先鞭をつけることにしました。ゆくゆくは地方銀行など、他の金融機関にもサービスを展開していく予定です。

現在(2025年2月の取材時点)、何社の顧客にサービスを提供していますか。

柴田さん サービスインしたばかりですが、すでに2社の実務が始まっており、近々もう1社がスタートします。また、内諾をいただいているお客様が相当数いらっしゃるので、今後は順次増えていくことになります。

2. 「fi-7700S」のフラットベッドスキャナーで戸籍謄本も難なくイメージデータ化

「相続事務デジタル支援サービス」の運用フローを、証券会社に資産を持っている方が亡くなったときの流れに沿って教えてください。

柴田さん ご本人がお亡くなりになると、相続人の方から証券会社にその旨の連絡が入ります。その翌日、証券会社から当社に前日分の相続事務依頼データがまとまって届くので、当社から相続人の方々に手続きを案内する書類を郵送します。相続人の方には案内に沿って戸籍謄本などを集める、書類に記入・署名・押印をするといった準備をしていただき、揃ったら当社宛てに郵送していただきます。書類は郵便局の私書箱に到着するので、当社ではそれを引き取って開封し、中身を取り出してスキャンします。

なお、ここでは相続人と表現していますが、相続される方がお一人とは限らないため、厳密には「相続手続きをされる代表の方」ということになります。

証券会社からの相続事務依頼データは一日に何件くらい届くのでしょうか。

柴田さん 証券会社の規模によりますが、現時点でお受けしているお客様の場合は一日に1社あたりの平均が10件から20件、規模の大きい証券会社だとそれ以上になります。各所にある支店の情報が集約されることに加えて、やはり高齢化社会であることが大きく影響していると思われます。

スキャンする前に書類を確認するのでしょうか。

柴田さん 人の目による書類チェックはせず、後続のチェックプログラムに任せます。そこが「相続事務デジタル支援サービス」のポイントでもあります。

その代わりにスキャン前の準備として、書類1セットごとに英字と数字から成るバッチ番号をつけ、そのバーコードを印刷した頭紙を書類一式の上に重ねます。スキャン前にこのバーコードをバーコードリーダーで読み取り、「fiシリーズ」の標準添付ソフトウェア「PaperStream Capture」にバッチ番号を入力すると、バッチ番号に基づいてファイル名の付与と保存フォルダーの生成が自動で行われます。

「PaperStream Capture」のバッチ番号入力画面。ファイル名と保存フォルダー生成の基になるバッチ番号をスキャン前に入力します。アグレックスではバーコードリーダーでバーコードを読み取り、自動で入力しています。なお「PaperStream Capture」の「バーコード認識機能」を利用し、スキャンしたバーコードによってファイル名付与とフォルダー仕分けを自動で行うこともできます。

郵送されてくる書類にはどのようなものがあるのでしょう。

柴田さん 戸籍謄本と印鑑証明書に加え、相続手続きの申請者が本当に亡くなった方の相続人であるかどうかを判断するためのさまざまな書類です。また、相続人に兄弟姉妹がいる場合は、全員が資産配分に合意して初めて移管が可能になります。その合意を示すために、亡くなられた方の資産明細に基づいて配分を記載する遺産分割協議書という書類があり、全員の署名と実印が必要です。

法に則って作成された遺言書がある場合、遺言書もスキャン対象になるのでしょうか。

柴田さん なります。遺言書は優先度が最も高いので、正しい書式の遺言書があればすべてそれに従って手続きします。

さまざまな重要書類をスキャンするために「fi-7700S」を導入されています。この機種を選択された理由をお聞かせください。

柴田さん 当業務で最も必要性が高いのはフラットベッド方式のスキャナーです。「fi-7700S」は下部にA3対応フラットベッド、上部にA3対応ADFを備えていて汎用性が高く、機能やスピードも当社の希望通りだったので5台の導入を決定しました。

なぜフラットベッドスキャナーが必要なのでしょう。

柴田さん 戸籍謄本をスキャンするためです。戸籍謄本はほとんどの場合、A4の長辺2か所をステープラーで留めた2枚綴りになっています。針を外して単票にすればADFでスキャンできますが、戻すときに紙のペアリングを間違えるリスクがあるため、針を外さないことが業務要件になっています。そのためどうしてもフラットベッドスキャナーに書類を開いてセットし、スキャンすることになります。

戸籍謄本は多くの場合、このようにステープルで綴じられています。

戸籍謄本はA3の見開きでイメージデータにするのでしょうか。

柴田さん いえ、どの自治体の戸籍謄本も片面印刷の単票を重ねて留めてあるだけで裏面には情報がないため、開いてから片側のA4相当部分だけをガラス面に当ててスキャンします。

戸籍謄本はステープラーの針を外せないため、記載のある面だけをフラットベッドのガラス面に当ててスキャンします。「fi-7700S」はドキュメントカバーを開けたままスキャンできる「カバーオープンクロップ機能」を備えています。

上部のADFでスキャンすることもあるのでしょうか。

柴田さん 届出書がA4の単票なので、ADFでスキャンすることも可能です。ただ現在のフローでは、その書類だけADFを使うよりも全書類をフラットベッドでスキャンするほうが作業の効率は高いようです。書類はスキャンする順番を業務ルールで定めており、オペレーターはそれに則ってフラットベッドでスキャン作業を進めます。

ADFは原稿を曲げずに真っ直ぐ通す「ストレートパス構造」で、1分間に100枚のスキャンが可能です。一度に300枚の原稿をセットできます。

イメージデータはカラーでしょうか。

柴田さん イメージデータはすべてカラーで、ファイル形式はJPEGです。

数ページの書類も1枚ずつのJPEGファイルにして、「PaperStream Capture」の機能で案件ごとのフォルダーに仕分けているのですね。保存後はどのような工程に進むのでしょうか。

柴田さん イメージデータを基にテキストを入力します。フォルダーに保存されたイメージデータは当社のツールによって、当センターとは別の場所にある入力センターに送られます。入力センターではオペレーターがイメージデータを基に、手入力とAI-OCRを組み合わせて氏名や住所、年月日などをテキスト化します。

こうして入力した一日分のテキストデータと、基になっているイメージデータを、当社で構築した「相続事務デジタル支援サービス」のシステムに投入するとプログラムによるチェックが働き、書類審査が行われます。相続人の合意が全員分揃っているかといった数々の条件がここでチェックされ、すべて通れば完備、記載漏れなどが見つかれば不備という判定になります。目視確認を要する書類や、テキストの入力漏れなどもプログラムが指摘してくれます。

不備があった場合、どのように対応されていますか。

柴田さん 当社から再度お手紙を送って記載内容の訂正や書き直しなどをお願いし、また当社宛てに郵送していただきます。

完備と判定されたら証券会社にその旨を報告するのでしょうか。

柴田さん 完備したテキストを証券会社にお渡しします。これによって完備リストが整うので、証券会社が移管手続きを行う運びになります。移管が完了すると証券会社から当社にデータが返ってくるので、それを印刷して完了通知と呼ばれる書類にし、当社から相続人の方に郵送してお知らせします。

証券会社は実際の書類を手にすることなく、プログラムチェックの結果に基づいて資産を移管できるのですね。

柴田さん 証券会社はこれまで相続事務に大きな労力をかけてきました。当サービスは特に手間と時間を要していた書類審査と不備解消をデジタル化で支援するサービスですので、メリットが大きいことを感じ取っていただけると思います。

移管が完了したら書類の原本を証券会社に渡すのでしょうか。

柴田さん 手続きが終わった方の分を数か月後に転送します。ただ相続人の方が書類の返却を希望される場合は、業務要件に則って当社から直接お返しすることもあります。

3. デモ段階から「fi-7700S」に好印象。フラットベッドで工数の少ないスキャンが可能

「fi-7700S」を知ったきっかけを教えてください。

森田さん 当社は長くBPOを手がけていますので、これまでにも何度かPFU製品を導入して事業に活用してきました。そうした中で私自身もPFUとコミュニケーションをとり、石川県かほく市のPFU本社を訪問するなどした結果、スキャナー製造のナンバーワン企業であることを改めて理解できました。この前段があったため、「相続事務デジタル支援サービス」向けの機器を選択する際に担当部署のデジタライズサービス部にPFU製品を紹介しました。

柴田さん 当部署ではそれを受け、PFUを含めて3~4社のスキャナーを試すことにし、各社のショールームを訪ねるなどして製品を見せてもらいました。その結果、最も好感触を得られたのがPFU製品でした。

特に印象深かったのが、2024年の夏にPFU横浜本社のショールームを訪ねたときのことです。デモンストレーションの際、営業担当者から非常に丁寧な説明を受け、機器としての性能に不満がまったくないことがわかりました。特に、小さめの文字も難なく読み取れたことは決め手の一つになりました。その後、2024年11月に「デモ機貸し出しサービス」の利用を経て5台を導入し、2025年1月のサービスインに備えました。

「fi-7700S」に対する評価をお聞かせください。

柴田さん 生産性の高さは期待した通りでした。フラットベッドであっても、スキャンの速さとドキュメントカバーを開けたまま読み取れる「カバーオープンクロップ機能」によって時間短縮と工数削減が可能です。仮にステープラーの針を外してADFでスキャンすることが許されていたとしても、元の状態に綴じ直す工数を含めて比較すると、むしろ現状のフローのほうが速いかもしれません。

また、スキャナーをオペレーターの左右どちら側に置くかによって効率が変わるので、上のADF部分が回転するのは非常によい仕様だと思います。当社でもいろいろ試してみて、現在は左側にスキャナーを縦向きに置いて作業しています。

「fi-7700S」は上部のADFが180度回転するユニバーサルデザインを採用しています。左右どちら側に置いても使いやすいセッティングが可能です。

「相続事務デジタル支援サービス」のフローにおける基本セッティング。オペレーターの左側に「fi-7700S」を縦に置き、ドキュメントカバーを開けたままスキャンできる機能を活かして手早くスキャンします。

設定はスムーズに進みましたか。

柴田さん 当社のシステム担当とPFUのサポート担当者が直接対話しながら適切な設定を探る時間を設けることができたので、非常に助かりました。サポートのあり方として100点をつけられると思います。

オペレーターの方々に向けて説明会などを開かれたのでしょうか。

柴田さん 立ち上げメンバーがあらかじめPFUから話を聞き、その内容をオペレーターに伝えてレクチャーしました。スキャナーも「PaperStream Capture」も操作がわかりやすいので、ごく短時間の説明で済みました。また、今のところ現場で問題は生じていません。

「相続事務デジタル支援サービス」の今後の展望お聞かせください。

柴田さん 証券会社向けからスタートしましたが、銀行も相続事務の対象となる資産をお持ちですので、今後は銀行も支援できるよう広げていきたいと考えています。

森田さん 現在は地方銀行のお客様とお話を進めています。地方銀行は地方銀行で、証券会社とはまた違った高効率化のテーマをお持ちですので、それに合ったお手伝いができるよう事業を企画しています。

銀行は取り扱う資産の種類が多そうですね。

柴田さん 投資信託や貸し金庫などさまざまな資産があるので、当社で対応する範囲も広くなり、案件の絶対数も多くなると考えられます。事業の進展次第では「fi-7700S」の追加購入もあり得るでしょう。

森田さん 相続事務の外部環境としての高齢化が進むにつれ、金融機関が相続事務にかけられる労働力は相対的にどんどん小さくなります。そこをBPOサービスの提供で支援できるよう、今が勝負と見て積極的に事業を展開していきます。

大きなニーズが見込まれる「相続事務デジタル支援サービス」において、「fiシリーズ」が一助となれて幸いです。本日は詳しくお聞かせくださり、ありがとうございました。

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