| 2026.2.13 |
鹿児島みらい農業協同組合
月500枚・40時間の栽培履歴チェックをクラウドシステムで自動化し大幅な時短に成功
「DynaEye」を組み込んだシステムと「fiシリーズ」の連携によりJA業務を効率化

左がJA鹿児島みらい 営農経済部 営農企画課の松岡和昭さん、右が同じく幸加木清寛さん。JA鹿児島みらい屋上にて、桜島をバックに。
鹿児島県鹿児島市のJA鹿児島みらい(鹿児島みらい農業協同組合)では、生産者が直売所に出荷する農産物の農薬チェックを効率化するため、みずのいろシステムズ株式会社(福岡県福岡市)が開発した作物栽培安全管理システム「MizCrop(みずくろっぷ)」を導入しました。生産者が手書きした栽培履歴を「RICOH fi Series」(以下、fiシリーズ)でスキャンしてAI-OCRソフトウェア「DynaEye」で読み取り、テキストデータを農薬データベースと瞬時に照合する当システムによって、効率的でいっそう正確な農薬チェックが実現します。当システムの本格稼働を間近に控えたJA鹿児島みらい本部を訪ね、具体的な運用フローや導入メリットを詳しくうかがいました。

鹿児島みらい農業協同組合
業種:流通
事業区域:鹿児島市(一部を除く)、鹿児島郡三島村・十島村
組合員数:41,098人(令和7年2月28日現在)
主な農産物:桜島大根、桜島小みかん、軟弱野菜、肉用牛(鹿児島黒牛)、加工品
- 課題
「食の安心・安全」を担保する農薬チェックの効率化と正確性向上が求められていた。またJAの大型合併により組織が巨大化したため情報共有の円滑化も急務だった。
- 解決法
みずのいろシステムズが開発したクラウドベースの作物栽培安全管理システム「MizCrop」を導入し、テスト運用を開始(2025年11月現在)。
- 効果
農薬チェックに要していた手間と時間が大幅に削減されるほか、クラウド活用により直売所との情報共有も円滑化されることが確実となった。

1. クラウドベースの画期的な作物栽培安全管理システム「MizCrop」で残留農薬を瞬時に検証
JA鹿児島みらいにおける「MizCrop」の活用フローをうかがうにあたり、同システムの開発元であるみずのいろシステムズ株式会社 CEOの小松紗知子さんと、同じくJA・道の駅システムアドバイザーの牧山博徳さんに「MizCrop」の詳細と特長をお聞かせいただきます。はじめにみずのいろシステムズの事業内容を教えてください。
小松さん 当社はシステムの受託開発から保守までを一貫して請け負い、お客様に寄り添ったご提案と運用サポートを提供する会社です。また自社パッケージとして「MizCrop」をはじめ複数の業務システムも開発提供しており、多くのお客様からいただいたご意見やノウハウを基に、改善を続けて適宜バージョンアップを行っています。
現在は特にJA様の営農部門や道の駅などの直売所様を中心に業務効率化や業務改善のお手伝いをしており、お客様の現状やご要望を丁寧にうかがった上で、現状分析や改善の提案、お客様の情報システム部門のサポートなどを、責任を持って請け負っています。
みずのいろシステムズ株式会社 CEOの小松紗知子さん。自ら開発に携わるシステムエンジニアでもあります。
同社JA・道の駅システムアドバイザーの牧山博徳さん。長年にわたりJAや道の駅のシステムコンサルや課題解決を行っています。
「MizCrop」は直売所に生産者が農産物を出荷する際、栽培時に農薬が正しく使用されているかどうかをチェックするための作物栽培安全管理システムで、「食の安心・安全」を守るツールとして現場で活躍するものとうかがいました。またシステム内には、PFUのシステム組み込み用開発キット「DynaEye SDK」を組み込んでいるほか、栽培履歴スキャン用のスキャナーとして「fiシリーズ」もご採用いただいています。同システムはどのような背景と目的のもとに開発され、どのような働きをするのでしょうか。
小松さん 昨今は「食の安心・安全」が当たり前となり、消費者はそれが担保されていることを前提として農産物を手に取っています。一方、その裏側では売り手であるJA様や直売所様が、消費者の信頼に応えるために多大なコストをかけて農産物の栽培履歴を確認されています。特に農薬には複雑で厳密なルールが多々あるため、正しく使われているかどうかの検証には時間と労力を要します。当社では、こうした現場の負担を軽減し、より効率的に管理業務を進められるようサポートしたいという思いから「MizCrop」を開発しました。基本的な機能は使用農薬に関する残留農薬チェックと情報共有です。
農薬チェックの運用フローはシンプルです。直売所に農産物を出荷する生産者様が、ご自身で日々記録している栽培日誌を基に「どの農薬をいつ、どのような希釈倍数と液量で散布したか」といった、検証に必要な数字を専用の書式に手書きした栽培履歴を直売所または所轄のJA様に提出します。この紙を「fiシリーズ」でスキャンするとイメージデータが「MizCrop」に送られ、システムに組み込まれている「DynaEye SDK」が数字を読み取ってテキストデータ化します。それをシステムが農薬データベースと瞬時に照合し、合否ならびに不合格だった場合の理由を表示します。
これによりJA様や直売所様では、もし不合格が出た場合に農産物の出荷を止めるなどの素早い対応が可能になり、「食の安心・安全」が担保されます。また、紙をスキャナーにセットしてスキャンボタンを押せば、あとはシステムの画面上で簡単な操作をするだけで照合までの処理が完了するので作業効率が上がり、ヒューマンエラーも防ぐことができるため検証の正確性も向上します。
栽培記録を「fiシリーズ」(写真はJA鹿児島みらいが導入した「fi-8150」)でスキャンすると自動でOCR処理とデータベース照合が行われます。
検証結果がエラー(不合格)の場合は画面下に理由が文章で表示されるので、生産者に伝えて確認を取る作業も円滑化されます。
システムは公的な農薬データベースと栽培履歴を照合するのでしょうか。
小松さん 公的なデータベースは存在しますが、用字用語が統一されておらず照合時に見落としが発生する可能性があるため、「MizCrop」では当社がJA営農部門の協力を得て独自に構築したデータベースを使用しています。農薬は同じ農産物に使用する場合でも時期によって希釈倍数や散布量が変化するので、データベースの記載内容がシステムでの検索に適するよう、念を入れて整えました。データベースは農林水産省が公開している農薬の情報を基に1か月に一度の頻度で更新しています。新薬の発売や薬剤の仕様変更があれば随時入力し、システムの機能によって用字用語を統一して登録します。
生産者が記入する専用の書式は、JAが印刷して生産者に渡すのでしょうか。
小松さん 書式のデータを当社が作成してJA様に供給し、プリンターや複合機で普通紙に印刷して生産者様に配布していただきます。従来、同種の既存システムではOCR処理のために専用の厚紙を採用しているケースが多く、JA様や直売所様が印刷所に印刷を発注する必要があったため、ランニングコストが問題になりがちでした。「MizCrop」では普通紙に印刷すればよいので、低コストで運用できます。
「MizCrop」はJA鹿児島みらいとの密接な連携のもとで開発したとうかがっています。
牧山さん そうですね、もともと当社に作物栽培安全管理システムを作る計画があったところにJA鹿児島みらい様の現状と課題をお聞かせいただき、それをきっかけとして開発が一気に進みました。
JA鹿児島みらいではどのような課題を抱えていたのでしょう。
牧山さん 最大の課題は前述した農薬チェックにまつわる非効率を解決することですが、それに加えてJA鹿児島みらい様では、JAの統廃合や大規模合併といった事業環境の変化にも対応するシステムに仕上げることを望んでおられました。
JA鹿児島みらい様は、2018年に鹿児島市内を中心に複数のJAが合併して誕生した大規模なJAです。この合併により組織が巨大化し、所轄の直売所も10を超えたことから、JA鹿児島みらい様では農薬チェックを店舗単位での検証からJA本部での一括検証に変更されました。そのためJA本部の負担が大きくなったほか、店舗との情報共有が煩雑になるなど管理全般が複雑化したため、業務効率化が急務となっていました。
そのお話を受け、当社では「MizCrop」をクラウドベースのシステムとして開発することにしました。クラウドベースであれば、本部と店舗など施設間の情報共有がスムーズになります。既存の農薬チェックシステムは店舗単位の導入に適したオンプレミス型がほとんどだったので、クラウドベースの「MizCrop」は画期的なシステムといえます。
小松さん 「MizCrop」ではお客様専用サイトを作っており、システムが照合した結果はそこに自動でアップロードされます。JA鹿児島みらい様であればJA鹿児島みらい様の専用サイトにアップされるので、所轄の直売所様もそのサイトを見れば、出荷受入の可否をアイテムごとにすぐ確認できます。


「MizCrop」のJA鹿児島みらい専用サイト画面より、左が「作物栽培履歴一覧」、「右が「作物栽培履歴明細(農薬情報)」。直売所がこれらの画面を確認することで出荷受入の可否をすぐに確認できます。
開発にあたってクラウド化のほかにも工夫された点はありますか。
小松さん JA鹿児島みらい様では、生産者様が「MizCrop」での農薬チェックに対応できるようにすることを重要視しておられました。一口に生産者といっても、大規模農家様や複数品目を管理されている農家様もいらっしゃれば、小規模でこつこつと作られているご高齢の方や、新規に就農された方もいらっしゃいます。そうした方々に等しく「簡単で使いやすい」と感じていただくためにアナログとデジタル、2系統の提出方法とそれぞれに合わせた書式を用意し、誰もが無理なく利用できる仕組みづくりを目指しました。
アナログは前述のとおり、従来と同じく生産者様が紙の書式に手書きして直売所やJAに提出し、その紙をスキャンしてOCR処理する方式です。一方、デジタルは生産者様がExcelの書式に入力してメールで提出し、管理者がシステムにアップロードする方式です。こちらは大規模農家様や若い世代の方々に向いており、好評を得ているとうかがっています。ただ、第一次産業におけるデジタル化の度合いは一般的に低く、ご高齢の生産者様も大勢いらっしゃるため、紙に手書きしてスキャンする方式がなくなることは考えられません。JA鹿児島みらい様も紙による運用を重視されています。


JA鹿児島みらいには紙の栽培履歴が大量に集まります。その数、月に500枚以上(詳細は後述)。これを人がチェックするには多大な労力を要しますが、「MizCrop」を活用すると短時間での正確な自動チェックが可能になります。(右)
これまでのお話で、「MizCrop」がJAや直売所にとってメリットの多いシステムであることがよくわかりました。
小松さん 「MizCrop」の代表的なメリットをまとめると次の4点になります。
①農薬チェックの自動化により、専門知識がなくても正確な判断が可能になる。農薬使用量の判断を自動で行うため、担当者の知識量に依存しない運用ができる。
②提出された栽培履歴を品目ごと・生産者ごとに集計する機能も付加しているため、出荷証明やトレーサビリティの資料として利用することも可能である。
③栽培履歴の提出方法にアナログとデジタルの2系統を設けたので、デジタル化を希望する生産者様が少しずつ慣らしながらデジタルに移行できる。
④組織内での情報共有が容易なため、複数拠点での一元管理が可能である。JA内の営農指導部と品質管理部門の間での情報共有にも活用できる。
続いて、「MizCrop」に組み込まれた「DynaEye SDK」についてうかがいます。どのように利用されていますか。
小松さん スキャンからOCR処理を経て認識データをCSVでアウトプットするまでの一連の流れを「DynaEye SDK」で構築しています。
どのような理由で当システムに「DynaEye SDK」を選択されたのでしょうか。
小松さん 「DynaEye」は以前から利用しており、自社のプログラムへの組み込みやすさやメンテナンスのしやすさと、当然のことですがスキャナーの「fiシリーズ」と精度の高い連携が可能である点が気に入っています。また読み取り枚数などによる従量課金制ではないため、お客様に提案しやすいという利点もあります。
「DynaEye SDK」の使い勝手やPFUのサポート体制に対する評価をお聞かせください。
小松さん マニュアルもありましたが、サンプルプログラムがとてもよくできていると思いました。サンプルプログラムを実際に動かしてみて、スキャナーの操作、OCRの操作等を開発の参考にしました。また必要な機能がコンポーネントとして準備されており、OCRの基礎知識がなくても十分に対応できました。サポートを利用したときは回答が非常に早く、解決までに時間を要しませんでした。当社ではこれらの点を高く評価しています。
「MizCrop」の推奨スキャナーとして「fi-8150」と「fi-8170」を選定された理由を教えてください。
小松さん コンパクトであること、スキャン性能が高く給紙のスピードが速いこと、設定が容易であることが主な理由です。「MizCrop」を導入されるお客様にこの2機種を紹介し、1回のスキャン枚数などの状況に照らして選択していただいています。
「MizCrop」推奨スキャナーの1機種、「fi-8150」はA4高速イメージスキャナーです。1分間に50枚・100面をスキャンします。
「fi-8150/fi-8170」によるスキャンで生成された鮮明なイメージデータを「DynaEye 11」でOCR処理。このコンビネーションが「MizCrop」の正確な農薬チェックを支えています。
JA鹿児島みらいでは現在(※)、本格稼働を前に「MizCrop」をテスト中とのこと。どのような評価を得ていますか。
※取材は2025年11月。
牧山さん テストは順調で、JA鹿児島みらい様からは高い評価をいただいています。JA鹿児島みらい様の「MizCrop」導入は、県下JA様にも参考にしていただけるモデルケースとなり得るものです。現時点でJA鹿児島みらい様のほかにもう1件の導入先があり、その後も2件の導入が予定されています。メリットの多いシステムですから、今後も機能をさらに充実させながら積極的に展開していく予定です。
2. 農薬チェックに要する「1件5~10分×月500件超」が「MizCrop」でほとんど削減される
ここからはJA鹿児島みらい 営農経済部 営農企画課 課長で専門営農指導士の松岡和昭さんと、同じく係長で専門営農指導士の幸加木清寛さんに、「MizCrop」導入の経緯や期待される効果などについてお話をうかがいます。はじめにJA鹿児島みらいの特徴や代表的な農産物などを教えてください。
松岡さん 当JAは管内の多くが都市近郊のため、特徴としては小松菜、水菜、チンゲン菜といった葉物の生産量が多く、それらを少量多品種で生産する農家が多いことが挙げられます。また桜島を含む地域であることから、県の特産品である桜島大根や桜島小みかんも栽培されています。畜産も盛んで、肉用牛の販売高が多いのも特徴です。
鹿児島港に面するJA鹿児島みらい本部からは、噴煙を上げる桜島を正面に望むことができます。
JA鹿児島みらいが手がける加工品の一例、桜島小みかんサイダー「桜の雫」。
営農企画課はどのような位置づけと役割の部署でしょうか。
松岡さん 当課は営農指導員のサポートや生産者のサポート全般を行う、「なんでも屋」のような部署です。販売企画を考えたり、農家の経営を支援したりと、業務内容はかなりオールマイティです。また安心・安全推進本部の事務局も直接的に担っているため、「食の安心・安全」に関する管理も行っています。
営農経済部 営農企画課 課長で専門営農指導士の松岡和昭さん。
営農経済部 営農企画課 係長で専門営農指導士の幸加木清寛さん。
「食の安心・安全」を担保する作物栽培安全管理システム「MizCrop」を導入された背景を具体的にうかがいます。JA鹿児島みらい管内の直売所の数と、そこに農産物を出荷する生産者の数を教えてください。
幸加木さん 直売所は現在、当JA直営が1店舗、経済連直営が1店舗、Aコープ内インショップが10店舗と、合計12の店舗が出荷先となります。また生産者数は令和6年度末の実績で、直営店に出荷される方が約290人、その他の店舗に出荷される方が約460人です。なお生産者数には多少の重複もあると考えられます。
重複があったとしてもかなりの人数ですね。今後「MizCrop」が活用されることになる、現状の農薬チェックと出荷情報管理の全体像を教えてください。生産者が栽培履歴を提出するのは、出荷する直売所に対してでしょうか。
松岡さん そうですね、出荷希望の直売所に直接お持ちになる方が多くいらっしゃいます。それを直売所の職員が受け取ってコピーを取り、原本は生産者の方にお返しします。なお栽培履歴の提出は出荷の1週間前がルールです。
直売所の一つ、JA鹿児島みらい直営の「農産物直売所ごしょらん」外観。
生産者は出荷の1週間前、直売所に栽培履歴を提出します。主な提出方法は紙の手渡しです。
新鮮な農産物が並ぶ「農産物直売所ごしょらん」店内。
生産量が多く日常的に消費される葉物が充実しています。
農薬チェックは現状、どのような方法で行っていますか。
松岡さん 2018年にいくつかのJAが合併してJA鹿児島みらいができて以降、農薬チェックは店舗単位ではなく当JA本部で一括して行っているため、栽培履歴を受け取った直売所からコピーを当JA宛てにFAXで送ってもらいます。生産者がご自宅から当JAに直接FAXを送ってくることもあります。そのようにして集約した栽培履歴を、当課の職員が農業情報提供サイト「ルーラル電子図書館」(農山漁村文化協会)を見ながら照合し、一つずつ検証します。
栽培履歴は何枚発生し、1件の検証にどのくらいの時間を要するのでしょうか。
松岡さん 最も多い直営店で品目が月平均500アイテム以上にのぼり、栽培履歴は1アイテムに対して1枚が発生するので、直営店分だけでも月に500枚以上に達します。所要時間はだいたい1枚5分、使う農薬の種類が多い果樹であれば1枚10分というところです。当課ではその業務に一人の担当を設けており、担当者は毎朝チェックを済ませてから他業務に回ります。また、数が多いときは課内で分担して検証します。
すべてを5分で終わらせたとしても月40時間以上を要するのですね。それが「MizCrop」導入によって自動化され、1件がほとんど瞬時に完了するようになると、人が手をかけていた時間がそっくり削られることになるのでしょうか。
松岡さん 念のために人が再確認するケースを除いて、基本的にはそうなります。かなり大きな時短が実現します。
以降は「MizCrop」による農薬チェックのフローです。①栽培履歴を「fi-8150」にセットして「MizCrop」画面上の「読取スタート」ボタンをクリック。
②「fi-8150」が1分間に50枚の速度で栽培履歴をスキャンします。
③スキャンすると栽培履歴のイメージデータが生成され、自動で「MizCrop」に送られます。
④「MizCrop」に組み込まれた「DynaEye 11」がイメージデータを読み取り、記載されている文字をテキストデータにします。


⑤テキストデータを「MizCrop」がデータベースと照合し、残留農薬をチェックします。左はチェックの進行画面、右は完了後の画面です。検証結果はJA鹿児島みらい専用サイトに自動でアップロードされます(前掲「作物栽培履歴一覧」など)。
松岡さん また、我々としては農薬チェックの時短に加え、出荷情報をはじめとする組織内での情報共有を、よりスムーズで堅実なものにしたいという希望を持っています。その観点から、みずのいろシステムズには「MizCrop」をさまざまな情報を管理できるクラウドベースのシステムとして開発することを依頼しました。その結果、複雑化している管理業務の円滑化にも役立つ、とてもよいシステムが出来上がりました。
直売所への出荷関連で情報共有の円滑化が期待される例があればお聞かせください。
松岡さん 2018年に整備した「ルート便」がそれにあたります。ルート便は一人の生産者が一つの店舗にアイテムを持ち込むだけで複数の直売所に出荷できる、当JA独自の仕組みです。12店舗すべてのバックヤードに他店舗行きのアイテムを入れる籠を設けてあり、ルート便を利用したい生産者は自ら出荷アイテムを籠に分けて置き、栽培履歴とともに出荷希望店舗を書いて提出します。すると、その店舗から他店舗に向けてアイテムがトラックで運ばれ、生産者が足を運ぶことなく他店舗にも商品が並びます。
幸加木さん ルート便整備の根幹にあるのは、売れるお店に商品を出せるようにし、生産者の方々に利益が出るようにしたいという思いです。品物と店舗には相性がありますから、せっかく出荷するならその品物が売れそうなお店に置くのがベターです。そこで生産者の方々に選択権を与え、ご自身で選んだ店舗に簡単に分配できるようにしました。
松岡さん ところが、そうなると分配先の店舗にも「この方のこの商品については農薬チェックOKです」という情報が、あらかじめ回っていなければなりません。そこで、ルート便と同年にスタートしたJA本部での一括チェックによる検証結果を、店舗にフィードバックする仕組みを構築しました。
店舗では現物の入荷があったとき、あらかじめ共有されているデータを見て農薬チェックの合否を確認できるのですね。
松岡さん その体制にはしています。ただ現状では、当JA本部から各店舗に情報を回す際に当課でExcelのシートを作り、生産者のお名前、品目、検証結果を表にして配信しているため、一定の手間と時間がかかっています。「MizCrop」が本格稼働すると、この労力もまるごと削減されます。
幸加木さん 今後は農薬チェックの結果が「MizCrop」の当JA専用サイトに自動でアップロードされ、各店舗にはそれを見てもらえば済むようになるので、情報共有が非常にスムーズになります。
直売所が特定の番号の出荷物を検索すれば、その検証結果が表示されるということですね。
松岡さん そうです。農薬チェック自体の時短もさることながら、情報共有のスピードアップは大きな効率化になるでしょう。
ほかにも「MizCrop」導入によって派生するメリットはありますか。
松岡さん 生産者の方々に100パーセント、確実に記録を出していただけるようにしたいという課題に対しても「MizCrop」は有効に働くと考えています。提出し忘れる方はどうしてもいらっしゃいますし、記録がないまま商品を店頭に出したことに気づいて慌てて下げるといったことも、まれではありますが発生していました。そうした問題も「MizCrop」で栽培履歴を厳密に管理し、提出がなければ商品に貼るラベルが出力できないといった仕組みを作ることで解決に向かうと思われます。
「農産物直売所ごしょらん」に掲示された栽培履歴提出リマインダー。
栽培履歴の提出とアイテムの出荷が一体になった仕組みを構築することで「食の安心・安全」がいっそう強く担保されます。
参考まで、農薬チェックで不合格が出たときの原因は、生産者が実際に農薬の使い方を間違えていることが多いのでしょうか。
松岡さん それもありますし、記入の仕方や倍数の書き方などの間違いもあります。不合格であれば生産者の方に連絡して、記入ミスだと確認できれば修正し、根本的な間違いであれば「これでは出荷できません」とお伝えすることになります。そこは「食の安心・安全」を担保するため、「MizCrop」稼働後も変わることなく厳密な線引きを行います。
3. スキャン性能・OCR性能ともに高評価。「食の安心・安全」のより強い担保実現が確実に
「MizCrop」の本格稼働に向けて、どのような準備をなさっていますか。
幸加木さん 「MizCrop」用の新しい書式への記入方法を生産者の方々にご理解いただくため、案内を作成して配布するとともに、「食の安心・安全」の再確認を含めた研修会を開催しています。
新しい書式では、従来の書式になかった農薬番号の記入欄があります。そこで、農薬番号はどこで確認できるかといった基本的なことをはじめ、正しく記入するための手順をすべて説明しています。
OCRで読み取るのは農薬番号などの数字でしょうか。
幸加木さん そうです。これまで漢字やカタカナで書いていただいていたところに数字も併記していただくようになるため、記入箇所がやや増えます。それが最大の変更点です。生産者の皆さんには、薬剤の名前の近くにある番号などを見ていただくだけで書けることを伝えるなど、スムーズに移行できるよう工夫しています。
松岡さん 当初は理解していただくのが大変かもしれないと予想していましたが、蓋を開けてみたら意外と皆さん、事情を酌み取って納得してくださっていますね。「食の安心・安全」に完璧を期すること自体が生産者のメリットにもなるということを、よく承知しておられます。
左が従来の書式、右が「MizCrop」用の新しい書式です。新書式では数字を記入する枠付きの欄が増えています。なお「MizCrop」用の書式には基本フォーマットがありますが、顧客の都合や希望に即した一定のカスタマイズが可能です。
JA鹿児島みらいでは説明会を開催し、生産者に新しい書式への記入方法を説明しています。写真は説明会で生産者に配布される資料です。
若い世代の生産者にはデジタルでの提出が好評だとうかがいました。
幸加木さん そうですね、Excelの書式に記入してメールで送信してもらい、管理者がシステムにアップロードする方式を用意しており、時間を問わずに提出が可能であるという点が喜ばれています。陽のあるうちはできるだけ農作業に集中したいという方が多くいらっしゃいますので。ただ、ご高齢の方にとってデジタル対応は難しいという事情があるため、紙で提出していただく従来の方式でいかにスムーズに回収するかが目下最大の課題です。
松岡さん 紙の回収という点では、生産者が直売所に提出する栽培履歴のコピーを直売所から当JA本部に運ぶルート便が一日に1便あるので、「MizCrop」稼働後はそれを活用し、紙を当JA本部に集約してスキャンする予定です。
現在テスト中の「MizCrop」をどのように評価していますか。また、いつ頃から本格稼働が始まる予定でしょうか。
松岡さん 今のところまったく問題がなく、当JAとしては非常に高く評価しています。本格稼働の次期については、生産者への周知を2025年度中に終え、2026年度の早い時期にはスタートさせたいと考えています。
システムを構成する「DynaEye SDK」ならびに「fiシリーズ」の性能についてうかがいます。読み取り精度やスキャナーの使い勝手はいかがですか。
松岡さん OCRについては、数字を間違いなく読んでいます。きちんと枠内に書いてあれば読み間違いはほとんど発生しません。修正があるとすれば紙の汚れや、記入者が薄く入れたチェックのマークなどを読み取ったときに限られています。スキャナーに関してはボタンが少ないので間違えようがなく、誰でも簡単に操作できます。
幸加木さん 「fiシリーズ」はスピードも十分に速く、操作性も高い、とても優れたスキャナーだと思います。
松岡さん スキャナーは今後の展開の中で、たとえば各店舗に1台ずつ設置し、紙そのものではなくイメージデータをJA本部に集約するという運用も考えられます。「MizCrop」稼働後、店舗でスキャンした場合の効果が具体的にイメージできれば検討の俎上に乗せることもあり得ます。
「MizCrop」を他地域のJAにも推薦するご意向はお持ちでしょうか。
松岡さん ぜひ広まってほしいと願っていますし、経済連の店舗などにメリットを伝える取り組みをしています。生産者の中には当JAの所轄区域だけではなく県域で出荷している方もいらっしゃいますし、県域レベルでこのシステムを使ってもらえれば活用の幅が広がって連携もしやすくなるでしょう。将来的に各店舗がスキャナーを持ち、栽培履歴をイメージデータでやり取りできるようになれば、「食の安心・安全」を担保する仕組み全体がいっそう強化されるのではないかと考えています。
幸加木さん また、人手不足でどこの組織も人材確保が困難になっている現在、負担が誰かに偏らないようにしながら省人化することが求められています。そういう時代にあって、「MizCrop」によって人がかけていた手間を大幅に削減できるのは大きなメリットです。
松岡さん もう一つは、季節商品を昨年は誰が出荷していたかといったことを店舗が検索しやすくなることから、効率的な販売も可能になるだろうという期待もあります。
幸加木さん けっこうお客様から「あれはいつ出るの?」といった問い合わせがありますからね。
松岡さん 「今年はタケノコ出ないんですか?」とか。データが整備されていれば、そういうときに店舗から生産者に連絡して、栽培状況や出荷情報をお客様に伝えることができます。
「農産物直売所ごしょらん」店内に掲げられた「安心・安全宣言」。記載された「身土不二(しんどふじ)」は「人の身体と土地(環境)は一体で、切り離せないものである」という意味の言葉です。
店内には消費者を含め、訪れた人が誰でも農薬などについて調べられる端末が設置されています。
今や直売所は、食に対する意識の高い消費者の生活に欠かせないものになっていますね。
幸加木さん よいものを手に取って選ぶという行為が当たり前になっていることを生産者もよく理解しているので、よい商品を作ろうと皆さんが努力しています。
松岡さん その礎となるのが「食の安心・安全」にほかならず、お客様もそこには鋭い目を向けています。お客様の期待に応えるためにも業務を効率化して正確性も向上させ、「食の安心・安全」を守っていきます。
「MizCrop」を通じ、PFU製品がその一助となれて幸いです。本日は詳しくお聞かせくださり、ありがとうございました。
※ルーラル電子図書館は、一般社団法人農山漁村文化協会、アシストシステムズ株式会社の商標です。
※Excelは、マイクロソフトグループの企業の商標です。
