| 2026.8.20 |
キステム株式会社
自治体から受託した給与支払報告書のデータエントリーをAI-OCRで効率化、現場の負担軽減と時短を実現
正確性を担保するベリファイ工程への人的配置を最適化し、効率化と高品質を両立

左から岡山肇子さん、中森一恵さん、目加田桃さん。滋賀県大津市の本社ビル前にて。
滋賀県におけるシステム・ソフトウェア開発や情報処理サービスの最大手、キステム株式会社(大津市)では、アウトソーシング事業にAI-OCRソフトウェア「DynaEye 給与支払報告書OCR」を導入して運用を開始しました。同ソフトウェアは総括表と個人別明細書の自動識別など、給与支払報告書(給報)の読み取りにフォーカスした諸機能により、煩雑なことで知られる給与支払報告書のデータエントリー業務を大幅に効率化するものです。キステムでは同ソフトウェアをシー・ディ・エス・テクノロジー株式会社(以下、CDST)のデータエントリーシステム「G-5Evo(ジーファイブ・エボ)」と連携させて活用し、早くも導入1年目に効率化の手応えを得たといいます。大津市の本社を訪ね、その詳細をうかがいました。

キステム株式会社
業種:IT
事業内容:システム・ソフトウェアの企画・開発、インターネットサービス、クラウドサービス、情報処理サービス ほか
- 課題
- ニーズが増加傾向にある給与支払報告書のデータエントリー業務を処理するにあたり、短期間に作業が集中するため、限られた人員による運用では負荷がかかりやすい状況にあった。
- 解決策
- 手入力によるエントリーをAI-OCRでの読み取りに置き換えるために「DynaEye 給与支払報告書OCR」を導入、既存のエントリーシステムと連携させて運用を開始。
- 効果
- 7万件の給報のうち4万5000件を「DynaEye 給与支払報告書OCR」で処理したところ、同じ人員で作業効率が向上したほか、属人化の解消と時短にも成功。受託件数の拡大も視野に入れられるようになった。

1. 自治体からのニーズが増加傾向にある中、人員に限りがあるため断るケースも発生
キステム株式会社 システム技術本部 EO部 理事の岡山肇子さん、同部オペレーターの目加田桃さんと中森一恵さんにお話をうかがいます。はじめにキステムの事業内容と、EO部の位置づけを教えてください。
岡山さん 当社はシステムの企画・開発・販売、データセンター、アウトソーシングなど、おおよそIT関連といわれる仕事のすべてを手がける企業です。そのうちアウトソーシング事業にはクラウドサービスやホスティングサービス・ハウジングサービス、データエントリーサービスなど各種のサービスがあり、EO部はデータエントリーサービスでの入力業務に携わっています。EOは「エントリー・オペレーター」の頭文字を取ったものです。
キステムの本社は琵琶湖(写真)に面した大津市中心部にあります。
システム技術本部 EO部 理事の岡山肇子さん。
EO部にはオペレーターの方が何人いらっしゃるのでしょうか。
岡山さん この3名を含めて10人が在籍しています。ただ私自身は業務が効率的かつスムーズに流れるよう、人員配置を計画して差配する立場にあるため、入力は基本的に9人のスタッフに任せています。同席の2人は6~7年のキャリアを持つベテランで、「DynaEye 給与支払報告書OCR」導入にあたっても中心的な役割を果たしてくれています。


EO部オペレーターの目加田桃さん(左)と中森一恵さん。給与支払報告書データエントリーの経験が豊富なベテランオペレーターです。
キステムでは給与支払報告書(以下、給報と表記)のデータエントリー業務をいつから手がけているのでしょうか。また、同業務の現況を教えてください。
岡山さん 当社では35年近く前から給報のデータエントリー業務に携わっています。長い歴史の中では現在の5倍の人員で対応していた時期もありますが、行政手続のデジタル化などに伴い、少しずつ落ち着いて現在に至ります。ただ近年は自治体の人的リソース減少の影響で再びニーズが増加傾向にあります。現在の当社の人員では処理件数に限界があるため、引き合いがあってもお断りするケースが発生しています。
現状、どのくらいの量の給報をデータ化しているのでしょうか。
岡山さん 入札のため年度によって多少の増減はありますが、直近の実績では約7万件の給報を処理しています。
人員が限られている状況でそれ以上を請け負うと、正確性の担保などに影響が出るということですね。
岡山さん その通りです。当社のデータエントリーサービスには正確性と迅速性、お客様のニーズに合わせたきめ細やかな対応、堅牢な情報セキュリティ対策といった特長があり、特に正確性はお客様からも高い評価をいただいています。これには入力とチェックのしやすいエントリーシステム、「G-5Evo」も大きく寄与しています。
ただ、給報のデータエントリーは年に1回の季節業務で、煩雑な入力作業が短期間に集中するため、現在の人員で7万件以上の給報を処理すると業務負担がかなり大きくなります。その解決を図るため、令和7年度分から「DynaEye 給与支払報告書OCR」を導入しました。
2. 計7万件の給報データ化で生じる多大な負担を軽減するためにAI-OCRを導入
「DynaEye 給与支払報告書OCR」の導入効果について詳しくうかがうにあたり、はじめに給報こと給与支払報告書がどのような帳票なのかを教えてください。
目加田さん 給与支払報告書は、事業者が従業員に支払った1年間の給与や賞与などの情報を自治体に報告するために、事業所が従業員の居住する市区町村に提出する書類です。自治体では事業者から受け取った給報を基にして、その従業員に賦課する適正な住民税額を算出します。
給報は個人別明細書と総括表の2種類から成る帳票で、サイズはほとんどA5です。紙質はさまざまで、普通紙もあれば複写式伝票のような薄い紙もあります。個人別明細書には主に氏名、住所、個人番号、支払金額や社会保険料の控除額、中途就退職、生年月日などが記載され、総括表には明細書が何人分あるかの数字と、法人番号、指定番号が記載されています。記載は活字の場合と手書きの場合があります。

給与支払報告書(A5サイズ)の一例。左端が総括表、その他が個人別明細書です。個人別明細書には100項目以上の記入欄があります。
事業者から給報を受け取った自治体のうち、給報を内部でデータ化するのが難しい自治体がデータエントリーサービスの顧客になるわけですね。直近ではいくつの自治体からデータエントリーを請け負っているのでしょうか。
中森さん 令和7年度は6自治体でした。すべて人口3万人から10万人規模の市町です。
6市町から集まる給報を合計すると約7万件に達するのですね。給報のデータエントリーは毎年、いつ始まっていつ終わるのでしょう。
中森さん 毎年1月上旬から3月末にかけて、自治体から給報が1週間単位で分割されて届きます。1週間ごとに受け取り・入力・データ化処理・返却を行い、返却と同時に次回納品分の給報を受け取ります。期間中はこれを繰り返します。
岡山さん 自治体からは初めにスケジュールをお渡しいただき、その通りに進めます。ただ自治体の規模によって給報の総件数に差があるため、期間を通じて作業量を平準化するのは困難です。特に2月初旬のピークは非常に立て込みますので、次の工程を待たせることなくスムーズに作業が流れるよう、都度調整しながら進めます。
続いて「DynaEye 給与支払報告書OCR」導入前のフローについてうかがいます。給報の記載内容を手入力で登録していたのでしょうか。
目加田さん すべて「G-5Evo」に手入力です。給報を受け取ったら、イメージデータの納品を希望される自治体の給報をスキャンし、イメージデータを生成します。次に紙の帳票原本を見ながら記載情報を手入力する、エントリーの工程に進みます。続くベリファイの工程ではチェック機能を使いながら確認と修正入力を行い、正確なデータに仕上げます。完成したデータはお客様の希望される体裁に整え、納品します。
手入力でエントリーしていた頃の作業を再現していただきました。「G-5Evo専用キーボード」とPC画面の間に給報の原本を置き、画面と見比べながら作業します。
「G-5Evo」のエントリー画面(サンプル)。給報の細かい記載内容を、画面の該当欄に手打ちで入力します。項目を間違え、ずれたまま続きを入力してしまうこともあったそうです。
エントリーとベリファイでは担当者を変えているのでしょうか。
目加田さん はい、エントリーとベリファイは別の者が行うようにしています。なお、給報のデータ化はオペレーター8人で行っており、内訳はベテランが5人、経験の浅いメンバーが3人です。このうちベテランは正確なデータに仕上げるためのベリファイに対応し、経験の浅い者はエントリーだけを担当します。したがって本来ならば、経験の浅い者がエントリーした結果をベテランがベリファイで確認・修正して仕上げるという流れが理想ですが、現在はエントリーの人員が少ないため時間がかかり、ベリファイに待ち時間が発生します。それを解消するために、ベテランの5人はベリファイのほかにエントリーも随時担当しています。
スキャンしてイメージデータを生成した給報も、イメージデータではなく紙の原本を見てエントリーとベリファイを行うのでしょうか。
目加田さん 「DynaEye 給与支払報告書OCR」導入前はすべて紙を見ながらの作業でした。
給報は入力項目が最多の場合で100を超え、また紙のサイズが小さいため、手入力によるエントリーが非常に煩雑であると聞いています。
中森さん そうですね。入力時に判断が求められる項目もあるほか、いつの間にか項目が一つずつずれてしまうといったことも起こり得ます。そのため、ベテランと経験の浅いメンバーの間には正確性という点でどうしても差が出てきます。
目加田さん 入力スピードに関しても、もともと個人差が出る部分ではありますが、給報の場合は経験の差も如実に出ます。一般的なデータエントリー業務の場合は1年程度の経験があれば対応できますが、給報に関しては年に一度の季節業務ということもあり、もう少しかかると思われます。
正確性の担保がベテラン5人の肩にかかっているのですね。ベテランの皆様は期間中、どのくらいの件数をエントリーするのでしょうか。
岡山さん ベテラン5人全体での処理件数で、おおよそ一日あたり2,000~2,500件程度ですね。
残業することもあるのでしょうか。
目加田さん あります。特に通常の仕事に給報の納期が重なると、残業の長時間化や休日出勤も発生します。この負担を軽減するには、AI-OCRによる機械化・自動化が必要と考えられました。

「DynaEye 給与支払報告書OCR」は、紙で提出された給与支払報告書のイメージデータからテキストを抽出してCSVファイルで出力する、給与支払報告書に特化したAI-OCRソフトウェアです。総括表と個人別明細書(異なるレイアウトでも可)を自動で識別するため、仕分け不要で一気に処理できます。手書き文字にも対応しており、活字と手書きが混在していても読み取りが可能です。
3. AI-OCR導入により負担軽減と時短が実現。受託件数の拡大も見込めるようになった
キステムでは給報データエントリー業務の負担軽減という課題解決のため、令和7年12月に「DynaEye 給与支払報告書OCR」を導入し、翌月の給報処理から本番運用を開始されたとうかがっています。導入後、フローはどう変わりましたか。
岡山さん 自治体から給報を受け取ったらすべてスキャンし、生成したイメージデータを「DynaEye 給与支払報告書OCR」で読み取ります。次に読み取り結果を100件ずつに仕分けて各オペレーターに分配し、モディファイを行います。モディファイはOCR処理の結果を確認し、必要があれば修正を施す工程で、手入力によるエントリーに代わるものです。ソフトウェアが読み取れなかった箇所をモディファイによって補足するということですね。このモディファイ100件を終えたオペレーターは次の100件に着手します。モディファイが完了したデータはベリファイの工程へと進みます。
なお、当社では「DynaEye 給与支払報告書OCR」を「G-5Evo」と連携させているので、モディファイとベリファイは、読み取り結果とイメージデータを並べて表示した「G-5Evo」の画面上で行います。

「G-5Evo」のモディファイ画面(サンプル)。給報イメージデータと読み取り結果が並んで表示され、要確認の項目にはピンクのマーカーが付きます。
手入力によるエントリーからモディファイに移行したことで、どのような効果がありましたか。
中森さん 前述のとおり、これまではエントリー工程に時間がかかっていたため、ベテランのオペレーターはエントリーとベリファイを兼務していましたが、モディファイならば経験の浅いオペレーターでも長い時間を要しません。そのためベテランはモディファイを兼務する必要がなく、データの正確性を担保するためのベリファイに専念できます。これは大きな効果だと思います。
2点目として、給報の様式の新旧にまつわる問題が解決したことが挙げられます。給報は年度によって様式が少しずつ異なります。そのため手入力では項目を何度も目で確認しなければならず、見間違いによるずれなどが発生する危険もありました。その点、OCR処理ならば項目を自動で認識するため、様式が変わっても常に正しく読み取ります。入力ミスが排除されたことで、修正にかかる時間も削減されました。
3点目は、オペレーターによる入力文字数が大幅に減り、入力時間が削減されたことです。入力スピードには個人差があるため一概にはいえませんが、100枚あたり20分程度の時間が削減されたと考えています。これには同一画面上のイメージデータを見ながら作業できるようになったことも影響していると思われます。視線の移動が少なくなり、拡大して見やすくすることも簡単なので、作業効率が上がりました。
ご自身も「楽になった」といった実感を得ておられますか。
中森さん 少しは余裕ができたかなと思います。個人的にはベリファイに集中できるようになったことがいちばん大きいと感じています。

「DynaEye 給与支払報告書OCR」導入後のモディファイの様子(画面はサンプル)。入力文字数の大幅削減に加えて、「G-5Evo」の画面上にイメージデータと読み取り結果が並ぶため、照合と修正入力も楽にできるようになりました。
AI-OCR導入によって、オペレーター1人が一日に処理する件数は増加しましたか。
岡山さん 今年の実績では変わっていません。なにぶん導入1年目ということで、運用方法の検証や調整に時間を充てていたためです。ただ、そこに費やした時間自体、エントリーからモディファイへの移行で実現した時短によって捻出されたものといえます。
時短によって余剰の時間ができたのですね。
岡山さん さらに、今年に限っては給報7万件のすべてをOCR処理したのではなく、件数の多い自治体の給報4万5000件を対象にしました。これも併せて勘案すると、来年からもっと多くの給報をOCR処理することで、一人あたりの処理件数は確実に増えるはずです。
人の目と手をAI-OCRに置き換えたことで、ベリファイの作業量や作業内容に変化はありましたか。
岡山さん ありませんでした。人によるエントリーとAI-OCRによる読み取りに精度の差はないようです。
給報データエントリー業務にはGPU付きのPCをお使いとうかがいました。
岡山さん OCR処理のために1台を今年から入れました。想像より速く、今のところ300件を10分ほどで処理しています。
「DynaEye 給与支払報告書OCR」導入の経緯についてうかがいます。どのようなきっかけで同ソフトウェアを選ばれたのでしょうか。
岡山さん CDSTの紹介を受け、テストして決めました。同社には何年も前からいろいろなOCRソフトウェアをご紹介いただいていましたが、なかなか正確に読み取ってくれるものがありませんでした。ところが今回の「DynaEye 給与支払報告書OCR」は読み取り精度が非常に高かったので、導入を決心しました。
導入前、テストされた結果はいかがでしたか。
岡山さん テストなので読み取る枚数は限られていましたが、97パーセントから98パーセントの精度で文字を正確に読み取れるようでした。人の手によるエントリーと比べても遜色のない精度でした。
業務で稼働させたときの精度はいかがでしょうか。
中森さん 実際の運用では認識精度を数値化していませんが、オペレーター全員が高いと感じています。
エントリーシステム「G-5Evo」との連携はスムーズでしたか。
岡山さん CDSTがすでに「G-5Evo」とOCRソフトウェアを連携させる「外部データ取り込みツール」を開発済みでしたので、「DynaEye 給与支払報告書OCR」の導入決定後、すぐに問題なく連携させることができました。
終わりに、給報データエントリー業務における今後の展望をお聞かせください。
岡山さん 導入1年目の業務を通じて効率の向上を確認できたので、自治体のお客様をもう少し増やしていきたいと考えています。給報は全国一斉の季節業務のため、当社への委託を希望されるお客様が数多くいらっしゃいます。今後は冒頭にお話ししたような、お断りするケースをなくしていきたいですね。
