1. 南阿蘇村役場
2026.9.1

南阿蘇村役場

自治体DXの一環として業務用スキャナーとAI-OCRソフトウェアを導入、アンケート集計などに活用

将来的には保存書類のデータ化や申請関連業務などへの展開も見据える

宮崎智弘さん(左)と後藤良太さん。南阿蘇村公式キャラクター「ブルル」と「ミルリ」を手に。

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熊本県阿蘇郡の南阿蘇村役場では、DX推進の一環として業務用スキャナー「fi-7700」とAI-OCRソフトウェア「DynaEye 11」を導入し、運用を開始しています。DX推進は人口減による将来的な職員減少を前提に、業務の効率化と省人化を実現し、職員がコア業務に集中できる環境を整えて住民サービスの向上につなげることが狙いです。運用開始から約2か月が経過した現在、庁内では両製品の利便性に対する認識が徐々に高まり、各課のアンケート集計に活用されているほか、複数の活用アイデアも出ているとのこと。役場を訪ね、具体的な活用状況やDX推進に対する考え方などをうかがいました。

目的
人口減による職員の減少を前提に、業務の効率化と省人化、ならびに住民サービスの向上を目的に推進しているDXの一環として、「fi-7700」と「DynaEye 11」を導入。
効果
運用開始後、早々にアンケート集計への活用が始まったほか、各課からDX推進係への問い合わせや相談が増えている。今後は保存書類のデータ化業務や申請関連業務への展開も見据えている。

1. 住民サービス向上・行政運営最適化・社会基盤構築を重点施策としてDXを推進

南阿蘇村役場 政策観光課 DX推進係 主幹の宮崎智弘さんと、同じく主事の後藤良太さんにうかがいます。南阿蘇村は阿蘇カルデラの南部を占める自治体です。当エリアは観光資源に富んでいるほか、肉牛の飼育などでも有名ですね。

宮崎さん 阿蘇地域一帯で褐毛和種の「あか牛」が放牧され、熊本を代表する畜産物として広く知られています。

水田が多い印象も受けました。

後藤さん 農業は当村の主たる産業で、水稲栽培が盛んです。雨がよく降って寒暖差が激しい土地柄のためか、このあたりのお米はもちもちしていて美味しいと評判です。

南阿蘇村の風景

南阿蘇村は平成17年(2005年)に3村が合併してできた自治体で、阿蘇カルデラ内に位置しています。背景の山々は南外輪山です。

白川水源の風景

南阿蘇村湧水群の一つ、毎分60トンの水が湧き出る白川水源。湧水は飲料水として持ち帰ることもできます。

お二人が所属されている政策観光課 DX推進係の成り立ちと役割を教えてください。

宮崎さん 政策観光課は政策企画・商工・観光・産業の各課が合体して成立した部署です。もともと政策企画課に情報管理係があってシステムやネットワークを担当していたため、その流れを受けて現在は政策観光課がDX関連も担当しています。DX推進係としての役割は庁舎内のDXの取りまとめです。

いろいろな課にDX関連のヒアリングをするのでしょうか。

宮崎さん 年に3~4回、各課の担当者を集めてDX推進部会を開き、出た意見をもとにして計画を立てています。効率化に必要な業務フローの見直しも含め、システムありきではない柔軟な姿勢で改善を進めるというのが現在の大きな流れです。

宮崎智弘さんの写真

南阿蘇村役場 政策観光課 DX推進係 主幹の宮崎智弘さん。

後藤良太さんの写真

南阿蘇村役場 政策観光課 DX推進係 主事の後藤良太さん。

南阿蘇村では令和6年(2024年)4月付で「南阿蘇村DX推進ビジョン」を発表し、DXを推進されています。この動きはいつから始まったのでしょうか。

宮崎さん DXの推進は令和4年(2022年)頃から徐々に始まっています。ビジョンは対外的な資料にもなるよう、改めて作成したものです。

南阿蘇村DX推進ビジョンの策定について

なぜDXを推進することになったのでしょうか。

宮崎さん 今後は人口減によって職員数が限られてくるので、少ない人数でも業務を効率的に回せるようにしようという首長の考えからです。当村は今のところ、同じ規模の自治体の中では人口が多い部類に入りますが、いずれは減少するでしょうから、DXは不可欠といえます。

ビジョンの冒頭には「住民サービスの向上(ひと)」「行政運営の最適化(むら)」「社会基盤の構築(くらし)」が重点施策として明記されています。これらがDXの主たる目的でしょうか。

宮崎さん そうですね、その3部門でDXを推進しています。「住民サービスの向上(ひと)」は手続きのオンライン化など対外的なサービス、「行政運営の最適化(むら)」は職員の業務効率化、「社会基盤の構築(くらし)」はDXを利用した全般的な生活の向上というイメージです。本日の主題である業務用スキャナーとAI-OCRソフトウェアの導入は「行政運営の最適化(むら)」に関するトピックの一つです。

3部門のうち特に力を入れているものや、現時点で進行が早いものはありますか。

宮崎さん 注力の度合いはすべて同じですが、やはり「行政運営の最適化(むら)」は庁舎内のことなので手を着けやすいという面はあります。これが手続きのオンライン化となると住民の方々にもサービスを周知し、積極的に利用していただけるようにする必要があるため、動く範囲が広く、時間もかかります。その点、庁舎内のDXであれば、たとえばデジタル機器を導入したり業務フローを整えたりするだけでも一定の効果が期待できます。

参考まで、業務用スキャナーとAI-OCRソフトウェアのほかに庁舎に導入しているデジタル機器があれば教えてください。

宮崎さん 庁舎入り口に2年前から設置してあるLEDビジョンはその一例です。LEDビジョンは横断幕の代わりに防災情報や各種のお知らせなどを掲示し、広報活動に役立てています。また、これは住民サービスの向上に関するものですが、口座振替オンライン化のシステムや、マイナンバーカードの券面を読み取って申請書作成を支援するシステムなどを入れています。

2. 各課が実施するアンケートの集計業務に「fi-7700」と「DynaEye 11」を活用

南阿蘇村ではDX推進の一環として、令和8年(2026年)2月にA3対応のフラットベッド付きスキャナー「fi-7700」とAI-OCRソフトウェア「DynaEye 11」を導入されました。実際の運用はいつスタートしたのでしょうか。また、どのような用途に活用していますか。

宮崎さん 2月の導入後、各課への操作説明などを経て、3月末から4月頭にかけて運用を開始しました。現時点(※)での主な用途は、回収したアンケートの集計です。

※取材は令和8年(2026年)6月初旬。

アンケートを取る課は多いのでしょうか。

宮崎さん 各課でさまざまなアンケートを実施しています。たとえば高齢者学級や健康関連イベント、福祉系イベントなどで、次回の参考にするため参加者にアンケートへの回答をお願いし、その場で回収するということがよくあります。枚数は催しの規模によりますが、100~200枚のケースが多いようです。

アンケートはどのくらいの頻度で実施されるのでしょう。

後藤さん 事業ごとに4~5年単位で中期的な計画を立てる関係上、多い年と少ない年がありますが、今年は比較的多く、月に1件くらいはあるようです。直近ではアンケート集計にスキャナーとAI-OCRを使いたいという依頼が2件あったほか、その前は福祉課が介護関係のアンケート集計に活用しました。

どのような内容のアンケートだったのでしょうか。

後藤さん 看取りに関するアンケートです。介護を受けられている方が施設でお亡くなりになるのか、ご自宅でお亡くなりになるのかといった質問に対する回答を集計し、今後の計画に盛り込むということでした。これはイベントに付随するアンケートではなく、郵送で行ったものです。住民情報を年齢でフィルタリングして対象となる世帯に郵送し、返信用封筒を使って匿名で回収します。

イベント配布ではないアンケートも、回答は紙で回収しているのですね。

後藤さん お送りする紙にQRコードも記載して、スマートフォンでもご回答いただけるようにしていますが、現実的には紙が圧倒的に多いですね。

アンケートの例

アンケートの一例(以下すべて、回答はダミーです)。QRコードも記載していますが、回答の多くは紙で集まります。

アンケート用紙を「fi-7700」でスキャンし、イメージデータを「DynaEye 11」で読み取る作業は、DX推進係が行うのでしょうか、それともアンケートを実施した課が行うのでしょうか。

宮崎さん 基本的には各課が行いますが、現在は導入したばかりなのでDX推進係が最初だけ手伝っています。IT機器に慣れている職員に導入部分を教えれば、あとはたいてい自分で進めてくれます。

「DynaEye 11」で読み取る回答は選択式と記述式、どちらが多いのでしょうか。

宮崎さん 両方ありますが、多くはチェックボックスか丸で囲む方式の選択式です。

「DynaEye 11」の書式定義も各課で行っているのでしょうか。

宮崎さん 方法だけ教えて、あとは各課に定義してもらいます。

ADFでA4横送りの様子
ストレートパスで読み取っている様子

「fi-7700」はADFとフラットベッドの両方を備えたA3対応スキャナーです。ADFは原稿に負荷をかけない「ストレートパス構造」により、A4横送りの場合は毎分100枚の高速で両面を読み取ります。一度にセットできる原稿は300枚です。

認識結果を確認している様子
確認画面の例

「fi-7700」でスキャンして生成したイメージデータを「DynaEye 11」に送り、AI-OCRで読み取ります。読み取り結果とイメージデータが並んで表示されるので、確認と修正が楽にできます。

CSV出力されている様子

確認・修正後にCSVファイルで出力。スキャナーとAI-OCRソフトウェアを活用することで、アンケート集計など手入力では時間を要する作業も短時間で完了します。

「fi-7700」は政策観光課に設置しているのでしょうか。

宮崎さん 当課ではなく電算室に置いてあり、使うときには該当する課に取りに行ってもらいます。設置場所を決めてしまうと、使うたびにその場所まで行って作業しなければならないので不便です。そこでスキャナーをツールワゴン(台車)に載せ、そのまま一式で動かせるようにしました。

とてもよいアイデアですね。「fi-7700」が庁内を行き来する様子は壮観です。使用する課ではツールワゴンに載せたままスキャンとOCR処理ができるのですね。

宮崎さん 電源さえ入れればすぐ使える状態になっています。使い終わったら電算室に戻してもらいます。

一式をセットしたツールワゴン
ツールワゴンで移動する様子

ツールワゴンに「fi-7700」と、「DynaEye 11」専用のPCをセット。使用する課に移動させ、ワゴンに載せたまま電源を入れれば、すぐにスキャンとOCR処理を行えます。

昨年度までアンケート集計は手作業で行っていたのでしょうか。

後藤さん そうです。紙をめくりながら、選択肢の1にチェックがあればExcelに「1」を入力するといった作業を各課で行っていました。私も経験がありますが、手入力による集計はかなり大変です。それだけに集中できるならともかく、通常業務の合間を縫っての作業ですから、数百枚のアンケートになると1週間から2週間をかけて延々と入力することになります。

残業が発生することもあったのでしょうか。

後藤さん 課によってはあったと思います。でも今はスキャナーとAI-OCRの活用によって作業が楽になるという認識が徐々に浸透しつつあるので、今後は状況が変わるでしょう。

手作業の再現写真

手作業によるアンケート集計を再現してもらいました。1問ずつ視線を移動させながらの手入力は負担の大きい仕事です。スキャナーとAI-OCRソフトウェアに置き換えることで、時間と労力が大幅に削減されます。

アンケート集計のほかに「fi-7700」と「DynaEye 11」を活用した実績はありますか。

宮崎さん こども未来課から、保育園の入所申込書の集計に使えないだろうかという相談を受け、試してみたことがあります。

入所申込書はどのような書類でしょうか。

宮崎さん お子さんの家庭環境を把握するために、家族構成、親が働いている・働いていない、兄弟が何人いるといった情報を手書きしていただくもので、用紙はA4サイズです。これを人の手で確認しながら入力するには、かなりの手間を要します。また短期間に相当な数の申込書が到着するため、いっそう大変になるという事情もあります。

どのくらいの件数になるのでしょう。

後藤さん 1か月の間に500~600件の申込書が届きますね。

宮崎さん さらには申込1件あたり書類が2~3枚あるため、2,000枚近い紙を処理することになります。そこでAI-OCRに読み取らせたらどうだろうということになり、本格運用の前だったので当係で書式定義を引き受け、やってみることになりました。

そうしたところ、手書き文字の読み取り精度はまったく問題がありませんでしたが、テキスト化した情報の集計方法を整理するのに時間がかかったため、今期は実現に至りませんでした。現在は実現に向けて運用の検討を続けています。

ほかにもスキャナーとAI-OCRの活用事例や活用アイデアがあればお聞かせください。

宮崎さん スキャナーに関しては、当村が以前から進めている保存書類のデータ化にも活用したいと思っています。特に永久保存が定められた書類は一つの施設を占有するほどの量になっており、探し出すだけでも大仕事です。それらをデータ化しておけば、必要なときに検索すればすぐに閲覧できるので便利です。

A3対応でフラットベッドスキャナーとしても使える「fi-7700」を選ばれたのは、古い保存書類もスキャンできるようにという狙いでしょうか。

宮崎さん そうです。保存書類には製本された契約書や傷みの激しい伝票などもあるため自動給紙機構(ADF)だけではスキャンが困難ですが、フラットベッドがあればそれらの書類も安全にスキャンできます。この高性能スキャナーをOCR処理のためだけに使うのはもったいないので、文書の係にもどんどん活用してほしいと伝えています。

3. 両製品の高い性能と使い勝手のよさに高評価。今後は申請関係業務への展開も

「fi-7700」と「DynaEye 11」に対する評価をお聞かせください。

宮崎さん 「DynaEye 11」は、これまでのアンケート集計を通じて読み取り性能自体に問題がないことを確認済みです。「fi-7700」はスキャンするスピードが速く、正確に読み込めます。紙詰まりなどトラブルの報告も受けていません。

業務に使用した課からの感想は届いていますか。

宮崎さん 使い方を教え、あとから「どうだった?」と聞けば「できたよ」という答えが返ってきます。それ以外のレスポンスはないので、すんなり完了したということだろうと理解しています。

各課では「DynaEye 11」の書式定義もスムーズにこなしていますか。

宮崎さん デジタルに抵抗のなさそうな人を中心に教えたためかもしれませんが、今のところ「難しい、できない」といった声はありません。「DynaEye 11」の書式定義は使い勝手がよく、「こういうときはこうすればいいんだな」と直感的に進めていくことができます。私自身が最初に覚えたときも、正しく読み取れるポイントを感覚で探しながら定義し、うまくいきました。

「DynaEye 11」の書式定義画面

「DynaEye 11」の書式定義画面。直感的でシンプルな操作により、誰でも簡単に定義できます。

「fi-7700」と「DynaEye 11」はリコージャパン株式会社の紹介を受けたのがきっかけで導入されたとうかがっています。具体的な経緯をお聞かせください。

宮崎さん リコージャパンからこういう製品があるという話をもらい、展示会で何度か実際に見て確認しました。その後、プロポーザルをかけた結果、PFUともう1社の製品を試すことになりました。

PFUのスキャナーはデモ機貸し出しサービスを、「DynaEye 11」は無償評価版をお使いになったのですね。

宮崎さん そうです。スキャナーは試したのがPFUのみで、A3タイプとA4タイプの貸し出しを受けました。そのスキャナーでテスト用の書類をスキャンし、「DynaEye 11」無償評価版と、もう1社のAI-OCRソフトウェアの読み取りを試しました。

結果はいかがでしたか。

宮崎さん OCRの読み取り精度は両社互角で、ともに問題はありませんでした。ただ、もう1社のソフトウェアは、興味深い製品ではあったものの、プロンプトを自分で考えて入力するタイプだったため、使用する上でやや難しい部分がありました。その点、「DynaEye 11」は想像した通りのAI-OCRで、定義の仕方などがわかりやすく、使いやすいという評価でした。

一方、スキャナーはA3対応でフラットベッドも付いた「fi-7700」が外せないという結論が出ていたので、OCRのテスト結果を受け、スキャナーとAI-OCRソフトウェア、ともにPFU製品の導入を決定しました。

「DynaEye 11」の無償評価版は、ご自身でマニュアルをご覧になって試されたのでしょうか。

宮崎さん 最初にPFUから説明を受けたときにYouTubeの「DynaEyeシリーズ」チャンネルに公開されている動画を見て、その後は自分たちで勉強しました。読み取りたい帳票の案を別の課からもらい、当係で書式定義をして読み取りを試しました。

南阿蘇村ではDX推進にあたってデジタル田園都市国家構想交付金を活用されたとか。「fi-7700」「DynaEye 11」の導入も交付金によって実現されたのでしょうか。

宮崎さん そうです。AI-OCRソフトウェアなどの導入により、職員がノンコア業務にかける時間を減らしてコア業務に時間を割く流れを作ることができるので、結果として住民サービスの向上につながります。そうした観点から当村では令和6年補正の基準に則って、対象となるデジタル機器やソフトウェアの価格を精査した上で申請し、令和7年に交付を受けました(※)。

※デジタル田園都市国家構想交付金は令和7年度から「新しい地方経済・生活環境創生交付金」に再編され、現在は諸条件が変更になっています。

終わりに、改めて「fi-7700」と「DynaEye 11」の活用についての展望と、DX推進の今後の見込みについてお聞かせください。

宮崎さん 「fi-7700」と「DynaEye 11」は運用が始まって2か月程度ですが、短期間に大量の情報を処理するときに有利であるという認識が庁内に浸透し、利用方法がある程度固まってきています。今後はオンライン申請と組み合わせる、申請書類をAI-OCRで読み取る、それらを行政の情報システムと連携させるなど、少しずつ広げていって、最終的に大きなシステムにつなげることができればよいだろうと考えています。

オンライン申請などの大きな仕組みを一括で実現できればよいのですが、予算が限られているため、やはり現実的にはスモールスタートにならざるを得ません。それでも「小さいけれど効果があるもの」を積み重ねていけば、最終的には大きな仕組みが出来上がるはずですので、その方向で進めていくつもりです。

PFU製品が南阿蘇村DX推進の一助となれて幸いです。本日は詳しくお話しくださり、ありがとうございました。

※Excelは、マイクロソフトグループの企業の商標です。

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