1. 校務DXで教員の労働環境改善!事例やおすすめのツールを紹介
2025.7.23

校務DXで教員の労働環境改善!事例やおすすめのツールを紹介

教員の産休・育休取得の増加や、大量採用世代の退職期などの背景から、教育現場における教員不足が深刻な課題となっています。令和3年に文部科学省によって調査されたデータ(*)によると、全国で2,558人の教師が不足しているという事態が明らかになりました。

その結果、一人当たりの業務負担はさらに増加し、授業の準備や進路指導、保護者対応など多岐にわたる業務によって、長時間労働が常態化しています。
こうした状況が、教職を目指す若者の減少や、現職教員の病気休職の増加にもつながり、教員不足が一層深刻化する悪循環を生んでいます。

このような現場の負担を軽減し、働きやすい環境を実現する取り組みとして注目されているのが「校務DX」です。

本記事では、校務DXの基本や推進するメリット、実際の導入事例、そしておすすめの支援ツールまで、現場の課題解決に役立つ情報を詳しく紹介します。

*: 【参照】「教師不足」への対応等について(アンケート結果の共有と留意点)|文部科学省

1. 校務DXとは

校務DXとは、教育現場におけるさまざまな業務(校務)を、ICTやクラウドサービスなどのデジタル技術を活用して効率化する取り組みのことです。校務にかかる負担の軽減や、教員間の迅速な情報共有を可能にする有効な手段として期待されています。

校務DXを教育現場で活用できる例は、以下のとおりです。

  • テストの採点業務
  • 生徒活動記録の管理
  • 通知表の作成
  • 生徒の出欠管理
  • 学校内外における連絡事項のデジタル化

1-1. 校務DXが求められる背景

校務DXが急務とされる背景には、教育現場が直面している深刻な教員不足が存在します。教員不足が発生している背景は、以下のとおりです。

  • 男女ともに産休・育休の取得増加
  • 特別支援学級の増加
  • 高度経済成長期に大量採用された世代の定年退職
  • 教員志望者の減少
  • 心身の不調による、病気休職者の増加

このような教員不足のなかで教師は授業だけでなく、進路指導や部活動、保護者対応など多岐にわたる業務が存在します。長時間労働になりやすく、心身ともに疲弊しやすいため、結果的に若者から敬遠されつつある職業です。

こうした危機的状況を打開する策として、教員の業務負担を軽減させる校務DXの推進が求められています。

1-2. 校務の主な課題

校務において教員が直面しやすい課題として、以下の2点が挙げられます。

1.職員室に縛られる校務

多くの学校では、校務支援システムが職員室の端末からしか使えず、教室や自宅など柔軟な場所での業務が難しいのが現状です。そのため、隙間時間の活用やテレワークが進まず、働き方の選択肢が限られています。校務が職員室に限定されている背景には、個人情報の漏洩リスクや、自宅作業の実態を把握しにくいといった懸念があります。

2.紙中心の校務運用

提出物や活動記録の保管・管理・共有が紙で行われており、生徒一人ひとりをきちんと把握することが容易ではありません。こうした紙中心の運用は、生徒に寄り添った進路指導や、教員間のスムーズな引き継ぎを妨げる要因にもなっています。

それぞれの課題を認識し、一つひとつ解決策を講じることが、校務DXを成功させるうえで重要です。

2. 校務DXを推進する3つのメリットと事例

ここでは、校務DXがもたらす代表的な3つのメリットを、具体的な事例を交えて解説します。

  1. アナログの業務が効率化できる
  2. リモートで校務ができる
  3. 情報をデータとして蓄積・活用しやすくなる

校務DXを推進することには、単に業務をデジタル化するだけでなく、教員の業務負荷を軽減するなど、さまざまなメリットがあります。校務DXによって得られるメリットを理解しておくことで、導入の際に有意義な活用ができるでしょう。

2-1. アナログの業務が効率化できる

校務DXを推進することで、これまで手作業で行っていたアナログ業務を効率化できるというメリットがあります。

たとえば、金沢市立清泉中学校では、スキャナーとデジタル採点システムを導入し、紙の答案用紙をスキャンして、PC上で採点業務をおこなう運用に移行しました。

結果、定期テスト・実力テストで計5クラスの採点に要していた時間が約50%短縮されました。この運用における主な利点は次のとおりです。

  • 同じ問題の回答を一度に採点でき、作業効率が良い
  • 点数集計を自動化でき、1枚ずつ手作業で計算する手間がなくなる
  • 誤答傾向、クラス比較などのデータが即座に可視化
  • 採点時間が大幅短縮されたことで、授業の準備や生徒と関わる時間に充てることができている
  • テストの返却が早くなることで、すぐに復習することができ、生徒にとってもメリットが大きい

業務の効率化が進むことで、残業時間の削減にもつながり、教員のワークライフバランス改善に寄与します。

2-2. リモートで校務ができる

クラウド型の校務支援システムを導入することで、自宅などのリモート環境から校務を行えるようになります。

これまで校務の多くが職員室内でしか処理できない背景には、個人情報漏えいの懸念がありました。しかし、今では「2-1. アナログの業務が効率化できる」で紹介したデジタル採点システムのように、個人情報をマスキングして表示できるセキュリティ機能が搭載された製品もあり、リモートでも安全に業務を進められる設計になっています。

このようなクラウド上での校務処理を前提としたセキュリティ対策が整えば、教員は場所の制約を受けずに業務をおこなえるようになり、働き方の柔軟性向上が期待されます。また、自然災害や感染症などにより出勤が困難な状況でも、学習支援・校務の継続が可能です。

2-3. 情報をデータとして蓄積・活用しやすくなる

校務DXを推進することで、これまで紙で管理していた生徒情報や活動記録などを、デジタルデータとして一元管理・活用できるようになります。

たとえば、石川県立金沢桜丘高等学校では、生徒の活動記録や提出物の保管にスキャナーとGoogle ドライブを利用。スキャンしたデータはGoogleドライブで共有され、情報の検索・活用・連携がスムーズになりました。

以前は、進学先の大学に提出する「調査書」の作成にあたり、情報の洗い出しに2週間程度要していましたが、データを1年次から蓄積・管理することで、調査書の作成効率が大幅に向上しています。また、情報を把握しやすくなったことで、担任が変わっても生徒一人ひとりに合わせた進路指導が可能になりました。

3. 校務DXを推進する際の注意点

校務DXにはさまざまなメリットがありますが、導入プロセスでは注意すべき点もあります。注意点を理解せずに導入を進めてしまうと、十分な効果が得られなかったり現場に混乱を招いたりするおそれがあるため、事前に把握しておきましょう。

ここでは、校務DXを推進する際に特に注意したい3つのポイントを解説します。

  1. 教員のITリテラシーに差がある/バラつきがある
  2. システムの導入・維持にコストがかかる
  3. あえてアナログを残す判断も必要

3-1. 教員のITリテラシーに差がある/バラつきがある

すべての教員が、新しいシステムにスムーズに移行できるとは限りません。特に、長年にわたって従来のやり方で業務を行ってきたベテラン教員のなかには、新たなツールや仕組みに戸惑いを感じる人もいます。

そのため、導入前の説明会に加えて、導入後も継続的な研修の実施や気軽に相談できるサポート体制の整備が欠かせません。

また、若手教員がまず先行してシステムを活用し、成果や使いやすさを具体的に共有することで、周囲を前向きに巻き込んでいく工夫も効果的です。小さな成功体験を職員会議などで共有することで、現場全体の意識を少しずつ変えていけるでしょう。

3-2. システムの導入・維持にコストがかかる

校務DXを推進するには、システムの導入や維持に一定のコストがかかるため、教育予算に影響を及ぼす可能性があります。そのため、費用対効果を見極めたうえで、慎重に導入を検討することが重要です。

主なコストとしては、以下のような項目が挙げられます。

  • システムの初期導入費用
  • 継続的に発生するライセンス料
  • クラウドサービスの利用料

特に財政規模が限られている自治体にとっては、全校への一斉導入は負担となる場合があります。モデル校を指定して試験的に運用するトライアル導入や、数年かけて段階的に導入範囲を拡大していくアプローチがおすすめです。

また、国や自治体による補助金や助成金が活用できるケースもあるため、制度を活用しながら計画的に予算を確保することが、持続可能な校務DXの実現につながります。

3-3. あえてアナログを残す判断も必要

教育現場の本質を守るためには、効率化や合理化を追求するだけでなく「あえてアナログを残す」という柔軟な判断も重要です。

例えば、タブレットを活用したグループワークでは、対面で向かい合っていながらも、誰も声を発することなく、全員が黙々と画面に向かい文字を入力している姿が見られ、生徒同士の対話が減ってしまうことがあります。

学びの場における、コミュニケーションの機会が損なわれる可能性もあるため注意が必要です。

また、教員が生徒一人ひとりの表情や様子を細やかに観察することなど、人間的なふれあいから得られる価値は、どれだけテクノロジーが進化しても変わりません。

校務DXはあくまで手段であり、デジタルとアナログの最適なバランスを見極めながら、導入を進めていく視点が求められます。

4. 校務DXの第一歩を踏み出すのにおすすめのツール

2章で紹介した「デジタル採点システム」や「生徒活動記録の一元管理」は、いずれも紙文書のスキャンが起点となっています。

PFUの業務用イメージスキャナー「RICOH fi-7480」は、教育現場のニーズに応える最適な一台です。

デスクサイドにも置けるコンパクト設計でありながら、A3サイズの答案用紙にも対応。
両面読み取りにより、答案の表裏を一度にスキャンでき、文字の向きに合わせて画像を出力します。

さらに、答案でよく使われる鉛筆やシャープペンシルの薄い筆跡もくっきりと読み取れる画像処理機能を搭載しており、デジタル採点システムとの相性は抜群です。

5. まとめ

校務DXは、長時間労働問題を解決し、教員のワークライフバランスを実現するための重要な取り組みです。

文教分野への豊富な導入実績を持つ「RICOH fi-7480」を、校務DXの基盤となるスキャナーとして、ぜひご検討ください。

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