2025.7.2 |
ISO 9001の要件に則った文書管理のポイントとは? ~担当者が知っておくべきことと、文書管理システムの選び方~

ISO 9001の認証取得を目指す企業にとって、文書管理は避けては通れない課題です。しかし、実際には、どのような品質マネジメントシステムを構築すればよいのか、何から始めるべきなのか、などとお悩みの方も多いでしょう。
本記事では、ISO 9001の基礎知識、規格・要件に則った文書管理を行うためのポイント、文書管理システム導入のメリット、選ぶべき文書管理システムなど、これから取り組む方が押さえておきたい情報を幅広く説明します。
なぜ、これほどまでに文書管理が重要視されるのか、まずは、ご一読ください。
1. 文書管理とは?
文書管理とは、企業などの組織において、文書を適切に管理するための手法や取り組みを意味します。管理の対象となるのは、紙・電子を問わず、業務で使われる多岐にわたる文書です。例えば、メールなどのコミュニケーションツールや各種システムに蓄積されるデータ類、マニュアル、契約書、証憑類が挙げられます。作成・取得から、保存・活用・廃棄に至るライフサイクルの全過程を通じて、これらを管理することは、業務の効率化はもちろん、セキュリティや法令遵守の観点からも重要です。
文書管理の基本については、次の記事で解説しています。
2. ISOにおける文書管理とは?
2-1. ISO 9001とは?
ISO(International Organization for Standardization)とは、国際標準化機構の略称です。産業分野で世界基準となる様々な統一規格を制定・運用する非政府機関・非営利組織であり、国際企業の取引の促進や、産業全体の発展を目的に活動しています。
ISO 9001は、ISOが制定した「品質マネジメントシステム(QMS:Quality Management System)」の国際規格です。これは、製品など「モノ」の品質に関する規格ではなく、企業や団体が商品・サービスの品質向上のために行う「活動」について定めたものです。方針・目標の策定、その実行や継続的な改善、そして、それらをどう指揮していくか、といったマネジメントのあり方に関する規格になります。
ISO 9001の認証を取得するには、認証機関の審査を受ける必要があります。一定の審査基準を満たし、認証を取得することにより、自社の品質への取り組みを顧客に訴求でき、信頼度・満足度の向上にもつながります。
2-2. ISO 9001の取得要件に基づく文書管理とは?
ISO 9001では、組織内の文書を適切に管理することが明示的に定義されており、これを文書管理のガイドライン・基準として実践します。段階別で考えると、「(1)必要な文書を作成・分類すること」「(2)管理するためのルールを定めて遵守すること」という分け方ができます。より具体化すると、体系的な管理によるデータへのアクセス性の向上と活用促進、また、文書にかかわる各種プロセスの標準化による効率化などが挙げられます。
文書管理においてISO 9001の求める基準を満たすには、これらのすべてに適合しなければなりません。特に、審査前の準備期間や運用開始して間もない頃には、一時的に様々な作業が発生し、コストもかかります。
2-3. 「ISO 9001って意味ない?」と思われがちな理由と、その誤解
ISO 9001の文書管理の要点を理解しても、「でも実際、ISO9001って意味あるの?」と感じる方もいるかもしれません。現場からは、よく、次のような声が聞こえてきます。
- 「書類を整えることが目的になっている」
- 「審査対応のためだけの運用になってしまっている」
- 「改善や品質向上につながっている実感がない」
このような状態が続けば、「形だけの取り組み」になってしまうのは当然です。しかし、これはISO 9001そのものの問題というよりも、「文書管理の仕組みや運用のあり方」に課題があるケースが多いのです。文書管理は、本来、「現場の品質向上や改善の仕組み」として機能するものです。必要な情報がすぐに見つかり、誰もが同じ手順で仕事ができる。そんな状態を実現するために整備されるべきです。仕組化の仕方や運用の工夫次第で、ISO 9001は「意味のある取り組み」に変わります。それは、組織全体の成長のための投資として、中長期的な視野でとらえることが重要で、その取り組みにより、投資をはるかに上回る効果が得られるでしょう。

3. ISO 9001における文書管理のポイント
ISO 9001に準拠した文書管理において、実際には、どのようなことを行うのでしょうか。国内では、日本規格協会グループから『品質マネジメントシステム−要求事項』Q 9001:2015を購入することができます。
ここからは、これらを踏まえて具体的に行うべきことの例を紹介します。
3-1. 文書体系図の作成
文書管理を行う前に、各文書の役割や重要度といった認識を全社で統一する必要があります。そのために用いられるのが、文書体系です。これは、一般に文書体系図として下のようなピラミッド型の階層構造で示されます。上位にあるものは組織全体の方向性(方針書など)を示し、下位になるほど細部についての言及(特定の業務に関する手順など)になります。

3-2. ルールを定める
実践においては、社内で文書を扱う全員にルールを周知することが必要不可欠です。下表は企業でよく使われるルールの例です。
項目 | ルールの例 |
---|---|
ファイル名 | プロジェクト番号や部署名、日付、版数など、ファイル名を付ける際は統一したルールを定める。 |
保存場所 | 文書の種類に応じて、適切な保存場所を決める。 |
アクセス制御 | 必要な人が、必要な文書に、容易にアクセスできるようにする。機密性のある文書には、アクセス制限をかける。 |
バージョン管理 | 新旧のバージョンが混在する場合、その文書がどのバージョンなのか、を明確にする。 |
履歴の保持 | いつ、誰が、どのような変更をしたのか、なぜ変更されたのか、などの文書の改訂履歴を記録する。 |
レビューと承認 | 公開・配布などを行う場合には、適切な担当者によるレビューと承認を経る。 |
保存期間の設定 | 法的要件や組織の方針に基づいた保存期間を設定し、期限が来たら廃棄する。必要があれば、アーカイブとして保存する。 |
バックアップ | 電子データは、損失防止のため、定期的にバックアップを取る。 |
3-3. 管理方法を決める
ルールを策定したら、それをどのように、実際の業務に適用していくか、を決定します。一般に紙文書はキャビネットに、電子データはファイルサーバーやクラウドストレージに保存されますが、いずれの場合でも、台帳管理が必要になります。特に、ISO 9001の要件に則った文書管理を行う場合には、ここは疎かにできない部分です。
しかし、人の手でこのような管理を行えば、大変な労力を要します。しかも、紙文書と電子データが混在する環境では、さらに煩雑になってしまいます。まさに、ISO 9001の取得の懸念となる点で、いかに負担を減らしていくか、が重要なポイントです。この不安を解消し、ISO 9001取得を成功へと導くのが、文書管理システム(DMS:Document Management
System)です。
3-4. 文書管理システムを利用する
文書管理システムは、電子文書の作成・取得から保存・活用・廃棄まで、ライフサイクルを通じて適切な管理を行うためのシステムです。人の手を使わず、電子文書に関する操作をシステムで制御することで、運用ルールからの逸脱、操作ミスによる過失を防ぎます。紙文書がまだ社内に残存する場合は、電子化を進めて一元的な管理体制に移行するのが理想的です。すぐに紙をなくすことが難しい場合には、長期的な目標として設定しましょう。
文書管理システムを使うことで、文書にかかわる多くの実務が自動化されます。例えば、文書の登録時には、メタデータ(タイトル、作成者、作成日など)を自動でインデックスとして付与することができます。ISO 9001を意識した文書管理システムならば、ワークフロー、バージョン管理、アクセス制御、改ざん防止など、規格が求める様々な機能を提供しています。

4. ISO 9001の要件に応える文書管理システム「DocuWare」
DocuWareは、ISO 9001で求められる各種要件を満たすことのできる文書管理システムです。「見つけやすさ、活用しやすさ」に定評があり、高度な検索、アクセス権限管理、改ざん防止など、文書にかかわる幅広い機能を網羅しています。下記は、ISO 9001の要件と関連が深い機能の一例です。
● バージョン管理・変更管理
文書のバージョンを記録・管理する。どのファイルが、最新版または有効なバージョンなのか、が簡単に判別できる。加えて、アクセス履歴や操作の記録・管理も容易に行える。
● ワークフロー
外部システムを使うことなく、格納した文書の申請・承認をスムーズに行うことができる。
● 保存期間や廃棄の管理
保存期間や廃棄のタイミングを、システムで管理できる。
ISO 9001では、初期の作業量の増加が導入のハードルとなることがありますが、DocuWareは、担当者の負担を軽減するための様々な機能も搭載しています。学習機能付きOCRによる登録作業の自動化に対応しており、負担軽減に貢献します。もちろん、ファイルサーバーやほかのシステムとの連携性にも優れており、既存システムを活かしたコンパクトな導入も可能です。
5. まとめ
ISO 9001を取得するには、多くの手間と労力がかかりますが、その先に待つ成果は確かなものです。株式会社PFUでは、DocuWareを通じて文書管理はもちろん、ペーパーレス化などの文書に関する幅広いソリューションを展開してきました。それらの実績から得た知見をベースに、企業の多様な課題に対して実践的な支援を行うとともに、細やかな個社サポートも提供しています。文書管理の課題をお持ちの方は、まずは、PFUにご相談ください。
*:DocuWareおよびDocuWareロゴは、DocuWare GmbHの商標です。