2025.10.14 |
スキャン作業を効率化するADFとは?メリットや導入事例を紹介

大量の書類をスキャンする作業をしていると、「もっと早くスキャンできたら…」と感じることはありませんか。
そこで活躍するのがADFです。ADFを活用すれば、短時間で大量の書類をスキャンできるだけでなく、作業負担の軽減にもつながります。
本記事では、ADFの概要や主な機能、導入成功事例、複合機やスキャナーの選定ポイントまで解説します。
CONTENTS
1. スキャンにおけるADFとは
ADF(Automatic Document Feeder)は、原稿トレイにセットされた複数枚の紙を自動で1枚ずつ取り込み、スキャンできる装置です。 日本語では「自動原稿送り装置」と呼ばれています。
フラットベッド方式では、1枚ずつガラス面に紙を置いて読み取る必要があり、大量の書類処理には膨大な時間と手間がかかります。
ADFでスキャンしている様子は、以下の動画でご覧いただけます。
2. ADFが搭載された複合機・スキャナーの便利な機能
ここでは、ADFが搭載された複合機・スキャナーの便利な機能について解説します。
- 両面スキャン
- 重送検知
- 白紙除去
2-1. 両面スキャン
両面スキャンとは、原稿の表と裏の両面を一度の搬送で読み取る機能のことです。両面印刷された書類をスキャンする際、フラットベッドスキャナーでは表面を読み取った後に蓋を開けて紙を裏返し、再び蓋を閉める作業が必要でした。
ADF搭載機であれば、紙を一度セットするだけで表裏を自動的に読み取れるため、効率的にスキャンできます。
2-2. 重送検知
重送とは、原稿を読み取る際に複数の紙が重なって同時に送り込まれてしまう状態のことです。
重送を防ぐために、ADF搭載機には超音波センサーを用いた重送検知機能が備わっています。紙の搬送中に超音波を発し、重なりを感知するとスキャンを自動的に停止し、エラーを通知してくれる仕組みです。
重送検知機能を活用することで、スキャン漏れや再読み取り作業を削減し、正確かつ効率的な電子化作業が実現します。
以下の動画では、業務用スキャナーの重送検知機能について紹介しています。原稿の読み飛ばしを防ぐ様子をご覧いただけます。
2-3. 白紙除去
白紙除去機能とは、片面印刷された原稿の裏面にあたる白紙を不要ページと判断し、自動的に削除または警告を表示する機能です。これにより、片面印刷のものと両面印刷のものを分けてそれぞれスキャンする必要がなくなるため、作業効率が向上します。
以下の動画では、業務用スキャナーの白紙除去機能について紹介しています。片面印刷と両面印刷が混在する原稿でも、正しく動作する様子をご覧いただけます。
3. スキャン作業にADFを導入するメリット
ここでは、スキャン作業にADFを導入するメリットを3つ解説します。
- 大量の紙を短時間でスキャンできる
- ペーパーレス化を推進できる
- スキャンミスを削減できる
3-1. 大量の紙を短時間でスキャンできる
これまでのフラットベッド方式の読み取りでは、以下のような操作を繰り返す必要がありました。
- スキャナーの蓋を開ける
- 原稿をガラス面に設置する
- スキャナーの蓋を閉める
- スキャンを実行する
- スキャナーの蓋を開ける
- 次の原稿をガラス面に設置する
一方、ADF付きの機種であれば、大量の書類を一度にトレイにセットするだけで、自動で処理が完了します。
作業手順が簡略化され自動で処理されることで作業時間を削減することができ、従業員はよりコア業務に注力できるため生産性の向上につなげられます。
3-2. ペーパーレス化を推進できる
フラットベッドスキャナーでは、スキャン作業に時間がかかるうえ、担当者が付きっ切りで原稿セット等の操作を行う必要があります。そのため、スキャンの対象書類は最低限にとどまり、全社的なペーパーレス化の推進は難しくなります。一方、ADFを活用すれば効率的にスキャンできるため、キャビネットに保管されている過去の書類も含め、積極的に電子化・整理に取り組めます。
その結果、オフィスに蓄積された紙書類のデジタル化が加速し、DX推進にも貢献します。さらに、保管スペースの削減や情報管理の一元化が実現し、既存のリソースを有効活用できるでしょう。

3-3. スキャンミスを削減できる
ADF利用により、スキャン作業時に発生しやすいヒューマンエラーを削減できます。
フラットベッド方式では、蓋の開閉や原稿の入れ替えといった単純作業を繰り返す必要があり、長時間集中し続けるのは困難です。その結果、同じ紙を二度スキャンしてしまったり、スキャン漏れが発生してしまったりなどのヒューマンエラーが起きやすくなります。
スキャンミスが起きると、スキャンのやり直しやデータ編集といった追加作業が発生し、さらなる時間ロスにもつながります。
ADFは原稿をまとめてセットして自動処理するため、スキャン漏れや重複を防ぐことができます。
4. スキャン作業をADFで効率化した3つの事例
今回ご紹介する事例はいずれも医療機関での導入事例です。医療現場では患者情報や各種書類のスキャンが日常的に発生するため、ADFによる効率化が特に効果を発揮しています。
- ひかり心身クリニック
- 竹田整形外科クリニック
- 関根内科外科医院
4-1. ひかり心身クリニック
三重県四日市市にて、心療内科・精神科診療所を営んでいるひかり心身クリニック。同クリニックでは、訪問看護・高齢者介護・訪問薬剤指導に関連する書類をカルテとは別に保存するため、複合機によるデータ化を実施していました。
しかし、利用していた複合機がフラットベッドタイプだったため、スキャン作業に膨大な時間がかかり、事務スタッフの負担が問題となっていました。
問題解決のために同クリニックでは、1分間に40枚・80面の高速スキャンが可能なADFスキャナー「RICOH fi-8040」を導入。
結果、スキャンの所要時間が従来の10分の1まで短縮され、事務スタッフの作業負荷が軽減。事務スタッフがより働きやすい職場の実現につながりました。
4-2. 竹田整形外科クリニック
膝腰肩などの痛みの治療や、機能改善などのリハビリテーションを提供している竹田整形外科クリニック。同クリニックでは、リハビリ計画書や紹介状などの書類をフラットベッドスキャナーで1枚ずつ読み取り、電子カルテに登録していました。
しかし、読み取りの時間がかかるため、会計時に患者を長時間待たせしてしまうという課題がありました。さらに、受付の事務スタッフ増員により、フラットベッドスキャナーを設置するスペースが確保できなくなるといった課題もありました。
解決策として、狭い受付にも設置可能なコンパクトスキャナー「RICOH fi-800R」を導入し、ADFによる連続読み取りでスキャン作業を効率化しました。
結果、狭くなった受付でも2台の設置が可能となり、連続読み取り機能により会計の待ち時間を短縮できています。
4-3. 関根内科外科医院
埼玉県児玉郡神川町にて、一般外科・内科をはじめとする総合的な医療サービスを提供する関根内科外科医院。同院では、紹介状や検査結果などの書類をデータ化して電子カルテに紐付ける際に、フラットベッドスキャナーでスキャンしていました。
しかし、一枚ずつしかスキャンできないことや、特定のPCでしか紐付け作業ができない状況だったために時間がかかり、診察開始時刻に間に合わないトラブルが発生していました。
トラブルの対策として、ADFスキャナー「RICOH fi-7300NX」を導入し、書類をまとめて高速スキャンできる環境を整備。また、紐付け作業をどのPCからでも対応できるように変更しました。
以前は、100枚を丸一日かけて処理していましたが、導入後は「スキャン数分+紐づけ1時間」で完了するようになり、負担が軽減しています。
5. スキャン効率化に役立つADFの選定ポイント
ここでは、スキャン効率化に役立つADFの選定ポイントを5つ解説します。
- 複合機かスキャン専用機か
- 紙を読み取るスピード
- 読み取れる紙のサイズ
- セットできる紙の枚数
- 紙詰まり防止機能が充実しているか
5-1. 複合機かスキャン専用機か
複合機にもADF搭載機種は存在しますが、スキャン作業の効率化を主目的とする場合、スキャン専用機の導入がおすすめです。
スキャン専用機は、以下の観点で複合機よりも優れています。
- スキャンが高速なためデータ化が短時間で可能
- 薄紙でもスキャンでき紙詰まりも少ない
- 小型のモデルなら狭い窓口や個人のデスクサイドにも設置できる
- 書類の定位置に印字された文字情報のOCRであれば、付属のソフトウェアで対応できる(*)
*: 有償オプションなら、手書き文字のOCRにも対応できる
業務効率化の観点から、スキャン頻度が高い企業ほど専用機の導入メリットを感じられるでしょう。
複合機とスキャン専用機の違いについては以下の資料で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
5-2. 紙を読み取るスピード
紙を読み取るスピードは、1分間にA4用紙を何枚スキャンできるかで表示されます。
例えば、業務用スキャナーRICOH fi Seriesのベストセラーモデル「RICOH fi-8190」は90枚/分の処理能力です。
処理能力が高いほど、業務の生産性向上に直結します。日常のスキャン頻度や1回あたりの処理枚数を考慮し、必要な機能を満たすモデルを選択することが重要です。

5-3. 読み取れる紙のサイズ
ADF選定時は、対応可能な紙のサイズを必ず確認しましょう。
一般的に最大サイズは機種の処理可能範囲に準じており、A3対応機であればA3まで、A4機であればA4までのスキャンが可能です。機種によってはA4対応機でもA3をスキャンできる場合があるため、事前に確認しましょう。その逆で、スキャンする書類がA4までであっても、A3対応機の方が高速でスキャンできるため、効率的な場合もあります。
また、最小サイズや非定型サイズへの対応については、製品ごとに仕様が異なるため、現場に必要な機能が備わっているか確認が必要です。
5-4. セットできる紙の枚数
原稿搭載容量は、一度に装置へ投入できる用紙の枚数を示す重要な仕様です。容量が大きいほど、紙をセットする手間を減らせるため、業務効率を向上できます。
日常のスキャン業務において、1回で処理したい書類量を想定し、必要な搭載容量に見合ったモデルを選択することが重要です。
例えば、請求書や申請書のように定期的に大量処理する業務がある場合は、大容量モデルの導入が効果的です。
5-5. 紙詰まり防止機能が充実しているか
ADFは便利な機能ですが、紙詰まりが発生する可能性もあるため、防止する機能を備えたスキャナーの選定が重要です。
スキャン専用機には、以下のような紙詰まり防止機能が備わっており、作業の中断リスクを最小限に抑えられます。
- 紙の厚さや摩擦の強さに応じてローラーの回転力を調整し、1枚ずつ丁寧に給紙
- 排紙時にはブレーキをかけて紙の散らばりを抑え、排出部での詰まりを防ぐ
以下の記事では、業務用スキャナー「RICOH fi Series」の紙詰まり防止機能について紹介しています。あわせてご覧ください。
6. スキャンにADFを活用する際の注意点
ここでは、スキャンにADFを活用する際の注意点について解説します。
- 紙の破損・汚れは機器の故障につながる
- 厚すぎる紙・薄すぎる紙は故障の原因になる
- 黒い線が入ることがある
6-1. 紙の破損・汚れは機器の故障につながる
ADF使用時に、以下のような原稿をセットすると故障の原因になります。
- 破れ
- シワ
- 貼りあわせ
- 汚れ
- クリップ・ホチキス付き
スキャン前には、必ず書類の状態を確認してからセットしましょう。
6-2. 厚すぎる紙・薄すぎる紙は故障の原因になる
仕様範囲外の薄紙・厚紙は、搬送不良や重送の原因となるだけでなく、機器の故障につながる可能性があります。
使用前には必ず機器のマニュアルを確認し、対応可能な紙の厚さの範囲内で使用しましょう。
6-3. 黒い線が入ることがある
ADF使用時に、スキャン画像に黒い線が入る現象が発生することがあります。主な原因は、ADF内部の汚れです。
黒い線を解消するためには、以下の2箇所を清掃しましょう。
- 原稿を読み取るガラス面
- 各ローラー
清掃後も問題が解決しない場合は、メーカーサポートへ問い合わせましょう。
7. まとめ
ADFはスキャン作業を効率的に進めるための重要な手段です。両面スキャンや重送検知、白紙除去といった機能を活用することで、スキャン精度と作業効率を高められます。
さらに、処理速度・対応サイズ・セット可能枚数といった選定ポイントを押さえれば、自社やオフィスの利用環境に最適なADF搭載スキャナーを導入できるでしょう。