確定申告で領収書の提出は必要?ない時の対処や保管方法も解説
確定申告において、領収書は経費計上するために必要な書類です。しかし、いざ申告する際に「領収書もあわせて提出する必要があるのだろうか?」「領収書がない場合はどうしたらいい?」と悩んでしまう人も多いのではないでしょうか。
この記事では、確定申告で領収書の提出は必要なのか解説するとともに、紛失したときの対処法についても紹介します。
目次
1. 確定申告で領収書の提出は必要ない
確定申告では領収書を税務署に提出する必要はありません。確定申告の際、領収書をもとに正しく経費を計上する必要はありますが、税務署への提出の義務はないのです。
「提出しなくてもよい」と聞くと、わざわざ領収書をもらわなくてもよいのでは?と疑問に思ってしまいそうですが、そんなことはありません。
領収書には「商品やサービスに対して料金を支払ったこと」を証明する役割があります。確定申告が終わっても税務調査となった場合は、過去の領収書も確認されるため、「領収書がない」「金額が違う」となれば申告内容の正しさを証明できません。
確定申告の後でも、領収書には原則5~7年間の保管義務があります。税務調査で領収書の提出が求められた場合、スムーズに対応するためにも、保管期限まで適切な方法で整理・保管しておきましょう。
参考:国税庁ホームページ「記帳や帳簿などの保存の必要性」
2. 領収書の代わりにレシートを使うためのチェックポイント
国税庁ホームページ「金銭又は有価証券の受取書、領収書」には、「受取書」「領収書」「レシート」等、作成の目的が金銭または有価証券の受取事実を証明するものであるときは、金銭または有価証券の受取書に該当すると記載されています。
つまり、領収書がない場合、代わりにレシートをもとに経費計上することが可能です。
ただし、どんなレシートでも領収書の代わりにできるというわけではありません。次の3つのチェックポイントを見てみましょう。
2-1. 記載内容をチェック
領収書と同じようにレシートを証明書として使うには、次の内容が明記されているか確認しましょう。
- 取引年月日
- 支払金額
- 商品・サービスの明細
- レシートの発行元
- 宛名(※)
- 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号(※)
- 税率ごとに区分した消費税額等(※)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率(※)
※消費税の仕入税額控除を受ける場合のみ。
・小売業、飲食業、タクシー等が発行する場合、⑤は不要(適格簡易請求書に該当)。
・請求書・納品書・その他書類でインボイスを受領済みの場合は記載なしでもOK。
不足情報がある場合は、レシートの余白や裏に手書きで不足情報を記入しておきましょう。なお、インボイスとして保存する場合、買手側が情報を追記することはできないので注意してください。
参考:適格請求書等保存方式の概要「2 適格請求書の記載事項・記載の留意点」
2-2. 経費とプライベートが混ざっていないか確認
レシートで経費精算する前に内訳をチェックして、仕事で必要な商品・サービスのみのレシートであるか確認します。
もしプライベートで利用する目的の商品が混ざっている場合は、仕事用の商品を丸で囲むかマーカーで印をつけておくなどし、その金額のみ経費として計上しましょう。
プライベート用の商品が混ざっているレシートであっても、経費として認められる項目のみ計上すれば問題はありません。
2-3. 5万円以上の買い物は収入印紙の有無をチェック
税抜5万円以上の買い物をした場合は、売上金額に応じて収入印紙が必要になります。レシートでも領収書でも同様に必要になるため、受け取る際には収入印紙が貼付されていることをチェックしておきましょう。
参考:国税庁ホームページ「金銭又は有価証券の受取書、領収書」
3. 確定申告で領収書やレシートがないときの対処法は?
「領収書をもらい忘れ、レシートも紛失してしまった...」というときは、まず再発行できないかを問い合わせてみましょう。請求書の記載内容や、レジの場合はPOSデータなどをもとに取引情報を特定できれば、再発行してもらえるケースもあります。
再発行が難しい場合は、以下の方法で代用できないか確認してください。
3-1. クレジットカードの明細を利用する
支払いをしたときに受け取った利用明細を領収書の代わりにするには、レシートで代用する場合と同様、以下の項目が記載されている必要があります。
- 取引年月日
- 支払金額
- 取引内容
- 支払先名称
- 宛名(利用元)
記載がない項目があれば、手書きで記入しておきましょう。また、取引先から請求書が発行されている場合は、請求書とセットで保管しましょう。
なお、クレジットカード会社からの請求明細書等は、商品やサービスの提供元が作成した書類ではないため、適格請求書として代用することはできません。
参考:国税庁ホームページ「カード会社からの請求明細書」
3-2. ATMの振込明細を使う
銀行振込で取引した場合は、発行された振込明細書で代用が可能です。実際に支払いをしたという証明ができれば、振込明細でも問題はありません。
ただし、振込明細だけでは支払いの目的まで分からないため、クレジットカードの明細と同様、請求書と一緒に保管するようにしましょう。またインボイスが必要な場合は、別途発行を依頼してください。
4. 領収書が出ないケース
冠婚葬祭など、そもそも領収書やレシートが発行されない取引の場合は、案内状や出金伝票を使用し、支払いを証明します。
勤務先と関係のある個人や企業の冠婚葬祭で支払いをした場合は、招待状や案内状などを領収書の代わりとして利用できます。お祝い金や香典には領収書が出ないため、届いた招待状や案内状が支払いの証明になるのです。
結婚式の招待状など飾りで厚みがあるものは、保管の際にかさばるためコピーでも代用できます。また、慶弔費は出金伝票を利用して経費を計上することも可能です。
ほかにも電車やバスなどの交通費や、自動販売機の飲料代、接待交際費で割り勘をしたときなどに出金伝票を使用できます。出金伝票を経費処理に使用するポイントは、取引内容が分かるように記載することです。
- 日付
- 支払先
- 勘定科目
- 取引の内容
- 金額
経費の誤った計上や架空計上を防ぐために、上記項目を正確に記載し、保管しておきましょう。
なお、仕入税額控除を受ける場合、公共交通機関の運送費や自動販売機の飲料代などは適格請求書(インボイス)の交付が免除されているため、インボイスがなくても問題ありません。
参考:適格請求書等保存方式の概要「交付義務の免除」
5. 領収書・レシートを整理・保管する方法
経費計上のために必要な領収書やレシートですが、整理や管理がどうしても後回しになりがちです。経費の計上モレを防ぐため、また、未来の自分の作業を少しでも軽くするために、なるべく整理した状態で保管することが大切です。
一度保管方法を決めてしまえば、効率よく楽に作業ができるようになります。ここでは領収書をスッキリ整理するための2つの方法を紹介します。
5-1. 封筒に入れる
領収書を整理する手軽な方法が、封筒に入れて保管することです。封筒に年月を記入して月ごとに分けて入れていくだけなので、簡単で時間もかかりません。
封筒を活用した管理方法は、領収書の枚数が少ない場合におすすめです。枚数が多くなってしまうときは、月ごとだけではなく勘定科目で分類するなど、記帳・管理しやすいようにしておきましょう。
5-2. ファイリングして保管する
領収書用のファイルを使って保管する方法なら、バラバラになりがちな領収書を分かりやすい状態で保存できます。
領収書には保管義務があり、税務調査の際にはすぐに取り出せるように保存することが大切です。ファイルに保管すると見た目もキレイにまとまり、パッと見ただけでどこに入っているのかが分かります。
領収書ファイルにはさまざまなタイプがあり、領収書の量やファイルの形状・収納方法に合わせて選べるので便利です。
6. 領収書は電子データでも保存できる
国税関係の帳簿や領収書などの書類は、もともと紙での保存が義務づけられていましたが、現在は電子帳簿保存法により電子データでの保存も認められています。
スキャナーを導入して領収書を電子データで保管すると、さまざまなメリットが生まれます。
- 省スペース化
- 領収書の紛失の防止
- データで検索可能
電子帳簿保存法 スキャナ保存の要件については、以下ページをご確認ください。
参考:国税庁「はじめませんか、書類のスキャナ保存!」
「領収書をスキャナ保存したい!」という人は、電子帳簿保存法に対応した読み取り設定でスキャンできるスキャナー「ScanSnap」がおすすめです。様々な会計ソフトとの連携も可能で、「Scan」ボタンを押すだけで、スキャンしたデータを直接会計ソフトに転送できます。
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ただし、電子帳簿保存法のスキャナ保存には、一定の要件があります。要件を満たさない場合や、満たしているか不安な場合は、念のため原本も保管しておくようにしましょう。
スキャナ保存については、以下のページも参考にしてください。
参考:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました」「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」
7. まとめ
確定申告で領収書の提出は不要ですが、透明性のある経費計上のために適切な保管が必要です。もし紛失してしまった場合は、焦らずに、他の方法で代用できないか確認しましょう。
確定申告のときに慌てないように、今回紹介した整理法を参考に領収書を適切に保管してくださいね。
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