カレー沢薫のなりゆきデジタル化ぐらし〜Vol. 5〜
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これを書いているのが1月末であり、そろそろ本格的に「確定申告」の準備がはじまろうとしている。
確定申告はフリーランスのほとんどがやりたくないと嘆く苦行である。
そう思いたいが、苦と思っていない勢は、我々がXに「確定申告ムリ...」と書き込んでいる間にさっさと終わらせてしまうから可視化してないだけで、もしかしたらそっちの方が多いのかもしれない。
SNSをやるなら「強い言葉を使ってでかい声で叫んでいる奴の意見が多数派とは限らないし、まして正しいわけでもない」ということは胸にヘナタトゥーしておかなければならない。彫るには文字数が若干多すぎる。
だが、確定申告が気乗りがしないイベントなのは事実である。
確定申告とは、これから支払う税金額を決定するためにこれだけ収入があったと自ら名乗り出る行為である。
これをやったせいで多額の税金を払う羽目になるとも言え、意味としては「出頭」や「自首」に近い。
よってできれば申告せずに潜伏しておきたいところだが、一般的にそれは「脱税」と呼ばれ、リアル出頭をすることになる。
還付があれば少しはやる気になるかもしれないが、それも自分が払いすぎた金が戻ってきたにすぎない。
少なくとも私は義務だからイヤイヤやっているという感じだ。
しかし今年は世間の「確定申告のやる気がおきない」の声が過去最大になることが予想される。
むしろ、今年が最大であってくれという「祈り」ですらあるのだが、今の日本政府は来年さらに超えて来るポテンシャルを十分に秘めている。サッカー日本代表と並んで期待度の高いジャンルである。
ご存じの方も多いと思うが、2023年から「インボイス制度」が実施されることとなった。
このインボイス制度がどのような物かというと、残念ながら未だに正確に説明することができない制度である。
つまり、今まで確定申告を「本当にこれで合っているのか?」という気持ちを拭えぬままイチかバチかの精神で提出してきた連中が、さらにリスキーな勝負に挑まされるということだ。
インボイス制度の意図は、専門家すら「わからん、なんもわからん」と自我を失うぐらい不明瞭のようだが、建前的には適切な申告と納税をさせるためのものだと思われる。
以降昨今の情勢を鑑みて「納税の義務」及び「インボイス制度」に対する怒りを長々と書いたのだが、 校閲の段階で無事「全カット」となったため、書き直しを余儀なくされた。
だが、書き直したものがさらに全カットとなったため、冒頭では1月末だったものが、これを書いている今現在、すでに確定申告期間が始まっているという時空のゆがみが発生してしまった。
私もこの仕事を初めて十年余り、最初からカットになりそうなことは書かない小賢しさを身につけてきたつもりだが、それでも果敢に二回体当たりして爆散するレベルで、今年は確定申告に対するお気持ちが高まっているということである。
ニュースによると、税務署には同じく高まった人たちからの批判が殺到しているようだ。
しかし、それに対応しているのは罪なき末端の税務署職員、または職員ですらなく確定申告シーズンに雇われたバイトなのである。
何故今年この状況で税務署でバイトしようと思ったのか、動機が全く不明だが、ここを乗り切れば大体のサポセンでやっていけるだろう。
こういう責任のない人に怒るのは下の下だとわかっているのだが、やはり人間貧すれば鈍するのである。
今年はぜひ富すれば鋭して、税務署員にチップを渡して帰るレベルの余裕が持てる世の中になってほしいと願う。
幸い私は確定申告を税理士に一任しているので、インボイス制度が始まった後も計算は税理士に任せれば良い。
しかしインボイスが始まったことにより、税理士から「領収書は今までより正確に出すようにしてくれ」とお達しを受けた。
むしろそれ以上のことは何も言われてないのだが、これが最大の難関なのである。
私が10年以上連続の追納を達成できているのは、作っているものが激安すぎて経費があまり発生していないというのもあるが、発生した経費すら領収書紛失により申告できていないおかげもある。
毎年1月には「今年こそ領収書をとっておく」と誓うのだが、半年もたたずに細かい金のことは気にしない江戸っ子になっており、年末には西の人に対するネット偏見を濃縮還元した粘着力で税制に絡み始めるのが恒例となっている。
この1年で人格が東西横断する生活はいい加減やめにしたい。そのためにScanSnapが使えないだろうか。
実際「電子帳簿保存法に則れば領収書はデータでも可」という話も聞いたことがある。そうだとすれば領収書をスキャンしておけば、紙を紛失しても大丈夫ということにならないか。
編集部注) 対応のソフトウェアが必要です。
本当に大丈夫かは税理士に要確認だが、ScanSnapには「e-文書モード」という、電子帳簿保存法の要件を満たした解像度などで保存してくれるモードが搭載されているので、とりあえずこれで領収書をスキャンしておいて損はない。
しかし、現時点ではとりあえずスキャンしておきたい領収書を紛失しているのである。
つまり今年は「なくす前に領収書をスキャンしておく」ことが目標だ。
だが、さすがに1枚も試しにスキャンしないのも何なので、辛うじて残っていた医療費の領収書をスキャンしてみることにした。
カレー沢「いつかこの機能が生きることを信じて」
1枚とて無傷なものはおらず、どの領収書も歴戦の老兵のような皺が全身に刻まれており、サイズもバラバラだ。
だがそんな不揃いの領収書たちも、自動でサイズを認識してくれるので一気にスキャンすることができた。
これでいつ税理士に、領収書はスキャンデータを送ってくれと言われても安心だ。
しかし去年「FAXで送ってください」と言われたので、その言葉が聞けるのはまだ先のことかもしれない。
ScanSnap iX1600
毎分40枚・80面の両面高速読み取りを実現し、簡単操作のタッチパネルを搭載。Wi-Fiの5GHzに対応し、原稿サイズ、色や両面・片面を自動的に判別。 驚くほど簡単、スピーディーに電子化します。 |
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