進路選択や職業選択に向けて、生徒一人ひとりに最適な指導を目指す
スキャナー × Google ドライブで高校3年間の活動記録を一元管理
石川県立 金沢桜丘高等学校
業種:文教
生徒数:1,078名(令和3年度)
課題:大学入試で「調査書」が重要視されるようになり、生徒の学業や課外活動への取り組みをより正確に管理する必要が出てきた。
解決法:A3高速スキャナー「fi-7480」を導入し、授業で使用したプリントや部活動の記録を生徒ごとのフォルダーで一元管理。データはGoogle ドライブで保管し生徒とも共有。
効果:進路指導や調査書作成時に生徒の個性を把握したきめ細かい対応が可能に。担任が変わる際の引継ぎもスムーズに。
石川県立 金沢桜丘高等学校 進路指導課 教諭 永山皓貴さん。
保健体育の先生で、陸上競技部の顧問でもあります。
石川県立 金沢桜丘高等学校 進路指導課 教諭 永山皓貴さん。
保健体育の先生で、陸上競技部の顧問でもあります。
「いしかわニュースーパーハイスクール」の指定校でもある金沢桜丘高校では、教員全員がiPadを所有しICT教育を実施、職員会議はペーパーレスと、授業と校務の両面においてICT活用が進んでいます。
さらに、大学入試の変化をきっかけにA3高速スキャナー「fi-7480」を導入。授業で使用したプリントや部活動の記録などをデータ化し生徒ごとのフォルダーに自動集約することで、生徒のこれまでの歩みを詳細に把握し、一人ひとりに最適な指導ができるよう努めています。その取り組みをうかがいました。
活動記録の蓄積で、学年が変わり担任が変わってもきめ細かい指導が可能に
どうして生徒の書類を一元管理しようと思ったのか、その経緯をお聞かせください。
永山さん:大学入試がセンター試験から共通テストに変わり、知識や思考力に加えて、生徒がどんな人かという「人間性」が重要視されるようになりました。この人間性を大学側に伝えるための書類が「調査書」なのですが、どういう生徒か、どんなことに意欲を持って高校生活を送ってきたのか、生徒一人ひとりの活動を細かく記録し、これまで以上に詳細に書き記す必要があります。
こうした変化に伴い、教員間で「1年生の頃から活動記録を蓄積していく必要があるね」「できればそれをデータ化したいな」という話が出ました。さらに、1年生の学年主任である窪川先生から「スキャナーを使って一元管理できないかな?」と具体的な提案があり、スキャナーの活用に至りました。
生徒の書類を一元管理することで、どのような効果が期待できるのでしょう。
永山さん:生徒が持つ個性を調査書により明確に記入できますし、記入に必要な情報収集の負担も軽減されます。情報収集のため、各学年での出来事を生徒自身に思い出してもらうのですが、現状、この洗い出しに2週間ほどかかっています。書類が一元管理できていれば、そうした生徒の負担もほぼなくなります。
また、生徒の個性をより具体的に把握できるようになることで、学年が変わり担任が変わっても、生徒一人ひとりに合わせた指導が可能になると考えています。担任が変わる際は、それまでの担任が引継ぎ用の書類を作成して次の担任に渡しているのですが、担任ごとにまとめ方が違うため内容に差が出ている状況です。次の担任が生徒を知ろうと思うと、受け取った書類に加えて成績情報や課外学習の記録、部活動の記録などを集約してまとめ直す必要があり、時間がかかっています。
書類を一元管理できれば、その生徒のことがフォルダーを見ればすぐに把握できますし、これまでの経緯を踏まえた上での指導が可能になります。生徒の「過去」も考慮した上で進路選択などをサポートすることが、信頼関係の維持にも繋がると考えています。
パソコンやITに強い永山さん。金沢桜丘高校は先生同士の風通しがよく、今回のスキャナー活用に関しても先生方から様々なアイデアが挙がったそうです。
金沢桜丘高校で使用しているスキャナーはA3サイズまでの用紙を高速で取り込める「fi-7480」。A4サイズやB4サイズの書類が混在していても、一括でスキャンできます。
左:パソコンやITに強い永山さん。金沢桜丘高校は先生同士の風通しがよく、今回のスキャナー活用に関しても先生方から様々なアイデアが挙がったそうです。
右:金沢桜丘高校で使用しているスキャナーはA3サイズまでの用紙を高速で取り込める「fi-7480」。A4サイズやB4サイズの書類が混在していても、一括でスキャンできます。
3年間分の書類となると、生徒1人あたりどれくらいの枚数になりますか?
永山さん:令和3年度の1年生から始めたことなので見込みになりますが、1年生が20~30枚で、2年生になるとそこに模試の分析や学習状況が追加されます。さらに金沢桜丘高校では、生徒自身でテーマを決めて一年間調査する課題研究も行っているので、そういったデータも合わせると3年間で300枚ほどになると思います。
なので、それが最終的に1つのフォルダーにまとまっていると、ありがたいですね。
1人分でも膨大な枚数になりますね。紙で保管するのは、かなり大変だったのではないでしょうか。
永山さん:そうですね。やはり紙は、人から人へ渡していくとどうしてもボロボロになっていきますし、書類を生徒に渡して手元にないというのが一番不安になるのです。「本当に返ってくるのかな…」と思うことがたびたびあるので、データ化できればそうした不安も取り除けます。
今は活動記録を蓄積できる有料のツールもあるのですが、問題は費用がかかること。契約にも維持にも費用がかかるので、公立高校にとってはハードルが高いです。そうした中で、スキャナーとGoogle ドライブをうまく活用すれば追加費用なく同様のことができるので助かっています。
「fi-7480」は職員室の真ん中に置いています。先生方は好きなときに、自由に使うことができます。
スキャンしたデータは、学年・クラス・出席番号の連番をフォルダー名にした生徒ごとのフォルダーに自動仕分けされます。
左:「fi-7480」は職員室の真ん中に置いています。先生方は好きなときに、自由に使うことができます。
右:スキャンしたデータは、学年・クラス・出席番号の連番をフォルダー名にした生徒ごとのフォルダーに自動仕分けされます。
単元ごとにワークシートをまとめてスキャン、生徒ごとのフォルダーにバーコードで自動仕分け
令和3年度からの新たな取り組みとのことですが、どのように運用されているのでしょうか?運用方法を提案された窪川さんにうかがいます。
窪川さん:ワークシートを1クラス分まとめてスキャンすると、データが生徒ごとのフォルダーに自動仕分けされるような運用を行っています。
1つの単元あたり5~6回で完結するように授業を行っていて、ワークシートは計5枚ほど配布。1枚目のワークシートには、学年・クラス・出席番号の連番を変換したバーコードを貼り付けています。普段は生徒一人ひとりにファイリングさせ、その単元が終わった時点で全てのシートを回収します。
回収したシートを生徒ごとに、バーコードが付いているシートが先頭になるよう重ねて、1クラス分まとめてスキャンします。すると、スキャナーの標準添付ソフト「PaperStream Capture」がバーコードを読み取ってくれて、データが生徒ごとのフォルダーに保存されるのです。
5枚×40人が9クラス分ありますが、「fi-7480」であれば用紙サイズの混在も気にすることなく一気にスキャンできます。中には両面印刷のシートもありますが、スピードを落とすことなく両面スキャンしてくれるので本当にありがたいですね。
1年生の学年主任である窪川さん。まずは、1年生の総合的な学習の時間に使用しているワークシートからデータ化しています。
バーコードの情報をもとに、データが生徒ごとに分かれて出力されます。画像の向きも自動で補正されます。
左:1年生の学年主任である窪川さん。まずは、1年生の総合的な学習の時間に使用しているワークシートからデータ化しています。
右:バーコードの情報をもとに、データが生徒ごとに分かれて出力されます。画像の向きも自動で補正されます。
バーコードは1枚目のシートだけに貼り付けているのですね。
窪川さん:そうです。全てのシートに貼ると手間がかかるので、1つの単元で5枚あるのなら1枚目だけにバーコードを貼り付けます。バーコードが付いたシートを先頭にして取り込むと、その生徒のワークシートが1つのファイルになり、生徒ごとのフォルダーに保存されます。
バーコードはどのように作成していますか?
永山さん:Google スプレッドシートのimage関数で作成しています。
学年・クラス・出席番号の連番をセルに入力すると、そのセルの情報を参照してバーコードが生成されるようimage関数を指定していて、できたバーコードを印刷してからワークシートに貼り付けています。
Google スプレッドシートを使えば簡単に作成できますよ。生徒への渡し間違いを防ぐため、バーコードの横に生徒の名前も入れています。
最初はQRコードを作成して、ワークシートにもQRコード用の枠を用意していたのですが、枠がない書類にも貼ろうとすると場所をとってしまうのです。だから「薄型の方が良いな」と思ってバーコードを作りました。
Google スプレッドシートは無料で使えるので、費用の面でも安心です。
横長の一次元バーコードであれば、ワークシートやプリントの余白にも貼り付けられます。
左:Google スプレッドシートは無料で使えるので、費用の面でも安心です。
右:横長の一次元バーコードであれば、ワークシートやプリントの余白にも貼り付けられます。
永山さん:学年が変わるときはフォルダー名も次の学年の番号に変更する必要があるため、Google スプレッドシートとGoogle Apps Scriptを使って、フォルダー名を一括置換しています。
仕組みづくりにGoogle スプレッドシートも役立っているのですね。
データを保管しているフォルダーには、生徒もアクセスできるのでしょうか。
永山さん:はい。Googleのアカウントを1人1アカウント渡しているので、パソコンでもスマートフォンでも、インターネットさえ繋がればどこからでもアクセスできます。もちろん、フォルダーにアクセス制限も付けています。
生徒が自分自身で写真を撮って残せる時代なので、残しておきたいデータを生徒側が入れるのもいいなと思っています。
たしかに個人フォルダーがあれば、生徒の主体的な学びもサポートできそうですね。
生徒の活動記録をクラウドで保管することに、不安や抵抗はありませんでしたか?
永山さん:ゼロではないですし心配される先生方もいらっしゃいます。学校としてはデータ化したあとの危険性を十分に考慮し、クラウドで保管しても問題ないと判断できる書類のみ、まずはアップロードしています。成績に関するものはまだ少し怖いので、アップロードしていません。
生徒の取り組みが記録されている書類に関しては生徒も確認できるようにしたいですし、生徒自身も自分のフォルダーに保存していくので、そういったものはクラウドで保管した方が良いと捉えています。
最初は「何を上げていいの?」というところから始まり、1つ1つルールを整備しながら進めているところです。
石川県では、教員同士のやり取りにはMicrosoftのアカウント、対生徒や生徒同士のやり取りはGoogleのアカウントと、分けて使用することで情報漏洩リスクを低減しています。
インターネットさえ繋がれば、生徒は場所や時間を問わずにデータを閲覧できます。令和4年度からはChromebookが生徒1人につき1台配布される予定で、今後ますますICT活用が加速します。
左:石川県では、教員同士のやり取りにはMicrosoftのアカウント、対生徒や生徒同士のやり取りはGoogleのアカウントと、分けて使用することで情報漏洩リスクを低減しています。
右:インターネットさえ繋がれば、生徒は場所や時間を問わずにデータを閲覧できます。令和4年度からはChromebookが生徒1人につき1台配布される予定で、今後ますますICT活用が加速します。
進路選択に向け生徒と教員が二人三脚で歩んでいく
高校3年間のデータを蓄積できることに対して、生徒から反応はありましたか?
永山さん:まだ始めたばかりの取り組みではありますが、何人か自分でフォルダーを確認している生徒もいて「ここに何でも入れていいですか?」と質問されることがあります。特に、オープンキャンパスなどに行ってきた生徒からは「大学調べで得た情報をフォルダーに溜めておけば、3年生になったときに見られますか?」と聞かれることが多いですね。
もちろんどんどん保存してほしいですし、これまでの活動を記録できていれば、3年生になって進路を選択するときも自己分析しやすくなりますね。
また、そうした情報を生徒側だけで完結するのでなく教員も確認できるようにしておくことで、教員が生徒の興味・関心を知ることができます。生徒と教員が共に歩んでいくための、大切な共有環境になると思います。
進路選択の時期になると、先生方はどのように生徒をサポートするのでしょうか?
永山さん:学力面のサポートや大学に関する情報収集はもちろんですが、本人が将来希望している職業と、生徒が取り組みたい内容に差がないかも見るようにしています。
たとえば最近、生徒と「調理師になりたいのか、栄養士になりたいのか」という話をしていたのですが、会話しているうちに「運動する人のサポートがしたい」ということがわかり、「スポーツ栄養士」を目指すのがベストだという結論にたどり着きました。生徒がイメージする職業と、実際の業務内容がずれていることも多いのです。
そうした違和感は生徒の作文を読んでいるときに持ったりするので、今後は蓄積したデータからも気付けるようになると思います。
また、蓄積したデータは小論文や面接対策にも役立ちます。高校での活動記録を具体的に書いたり話したりできれば合格が近づきますし、教員側も活動内容を把握できるので、きめ細やかなサポートが可能になりますね。
採点時間が1/2に短縮、空いた時間は受験生の質問対応や部活動の指導に注力
金沢桜丘高校ではデジタル採点も導入していらっしゃいますが、デジタル採点のメリットについて教えてください。
永山さん:やはり、採点時間が大幅に短縮されることですね。私が担当する保健では、採点にかかる時間が半分になりました。
分散採点で同じ問題を一度に丸付けするので採点基準に迷うことなく丸付けできますし、「もう紙採点には戻れない」という感じです。
スキャネット社の採点支援ソフト「デジらく採点2普通紙対応版」(以降、「デジらく採点2」)の採点画面です。同じ問題の回答を並べて採点できます。
理科(物理)担当の村上さんも、採点時間が1/2以下に短縮したとのこと。答案用紙は個人向けスキャナーのScanSnap iX1500で取り込んでいて、共通テストのシーズンは毎日活用しています。
左:スキャネット社の採点支援ソフト「デジらく採点2普通紙対応版」(以降、「デジらく採点2」)の採点画面です。同じ問題の回答を並べて採点できます。
右:理科(物理)担当の村上さんも、採点時間が1/2以下に短縮したとのこと。答案用紙は個人向けスキャナーのScanSnap iX1500で取り込んでいて、共通テストのシーズンは毎日活用しています。
永山さん:採点のしやすさだけでなく、答案をデータとして持てる点も良いですね。あってはならないことですが、万が一にもテスト後の不正が起きないように、また答案を返却したあとも点数を確認できるように、答案用紙をコピーして年度末まで保管する先生が多かったのです。しかし、使うかわからない紙をとっておくのは非常に無駄。「デジらく採点2」を使えばそうした手間が省けるので、どんどん使うようになりました。
私が担当する保健では、「デジらく採点2」での分散採点をきっかけに、問題も単元ごとに担当者を決めて分散作成するようになりましたね。担当する単元を絞ることで質の高い問題が作れますし、その単元と言われたら「これをやろう」とすぐに思いつくので、作成時間も1/2ほどに短縮されました。
担当クラス分の名簿、テストの模範解答、各設問の配点など、慣れるまでは事前の情報登録に時間がかかりましたが、今では同じ作業を10分程度で完了しているそうです。
様々な場面で効率化への取り組みが柔軟に進められているのですね。
業務が効率化されたことで、どのような効果がありましたか?
永山さん:空いた時間を、授業の準備や生徒の質問対応に費やせる先生方が増えてきました。私は、放課後に定期試験の採点をすることがほぼなくなり、部活動をしっかり見られるようになっています。感染症の流行もあり特に注意が必要なので、そういった面も含めて教員側が指導できる時間が増えたというのは大きな効果です。
次のテストでは、「fi-7480」とスキャネット社の「デジらく採点2」を連携予定だとか?
永山さん:はい。これまで「ScanSnap iX1500」で答案用紙を取り込んできましたが、答案用紙のサイズをB4からA4に変更する必要があり、生徒の解答欄が狭くなっていました。
「fi-7480」を導入したことでB4サイズも取り込めるようになったので、次のテストからは答案用紙のサイズを戻す予定です。何よりスキャンのスピードが速いので、今後も多くの場面で活用できると考えています。
今後もPFUのイメージスキャナーが高校生活の学びをサポートできれば幸いです。本日はありがとうございました。
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