2025.7.29 |
データ入力を自動化する方法【導入事例や最適なツールまで解説】

データ入力は単純作業でありながら、膨大な手間と時間がかかるため、自動化を検討する企業も増えています。
本記事では、データ入力を自動化する具体的な方法に加え、実際に自動化を成功させた企業の事例や、導入に適したツールについても詳しく解説します。
手作業による入力の負担を軽減し、業務全体の効率化を図りたい方は、ぜひ参考にしてください。
1. データ入力を自動化する方法と具体的な手順
データ入力業務は、複合機やスキャナー、OCR・RPAを連携させることで一連の処理を自動化できます。
本章では、「紙の書類から文字情報を抽出し、システムへ登録するまで」の自動化プロセスを3つのステップに分けて解説します。
- 紙をスキャンして画像データに変換する(複合機やスキャナーの役割)
- 画像データからテキスト情報を抽出する(OCRの役割)
- テキスト情報をシステムに自動で入力する(RPAの役割)
それぞれのツールがどの工程に関わり、どう連携しているのかを理解することで、自動化の全体像がつかめます。
1-1. 紙をスキャンして画像データに変換する
まずはOCR処理をするための画像データの作成を行います。 紙の書類は、複合機やスキャナーを使用して、PDFなどの画像データに変換することができます。

1-2. 画像データからテキスト情報を抽出する
次に、OCRを用いて画像データから文字情報を抽出します。抽出したデータは、CSVなどの形式で出力されます。
近年では、AI(人工知能)技術を搭載した「AI-OCR」が登場しています。こちらは従来のOCRでは読み取りが難しかったFAXや手書きの文字認識に適しています。

1-3. テキスト情報をシステムに自動で入力する
RPAが文字情報を業務システムなどに自動で入力する役割を担います。
※RPAはパソコンで行われる単純作業を自動化することができます。そのため、スキャン後の処理を自動化すれば、人の手でOCRを起動させる・OCR処理を実行するといった作業も不要になります。

2. データ入力を自動化する6つのメリット
ここでは、データ入力を自動化する6つのメリットを解説します。
- 業務効率の向上
- 人的ミスの削減
- コスト削減と人的リソースの最適化
- さまざまな書類や部門に横展開できる
- 従業員の負担やストレス軽減
- 業務の属人化を解消する
2-1. 業務効率の向上
データ入力を自動化するメリットは、業務の処理速度を向上できる点です。
これまで担当者が数時間かけておこなっていた大量のデータ入力作業を、RPAなどを活用すればわずかな時間で完了させられます。人手が必要になるのは、OCRが文字を正確に認識できているかどうかの確認のみです。
2-2. 人的ミスの削減
人が手作業でデータ入力をおこなうと、どれだけ注意を払っていても入力ミスや入力漏れといった「ヒューマンエラー」は避けられません。特に、大量の書類を扱う場合や、月末などの繁忙期で疲労が蓄積している状況では、ミスの発生率はさらに高まります。
その点、データ入力自動化ツールは人のように集中力が途切れたり、体力が消耗したりすることはありません。担当者のスキルやコンディションに左右されることなく、入力業務の品質を均一化できます。

2-3. コスト削減と人的リソースの最適化
データ入力業務を自動化することで、コスト削減と人的リソースを最適化できます。これまで従業員が対応していた定型業務をRPAが代行することで、その分の作業時間を削減できるためです。
たとえば、残業代の削減に直結するケースもあれば、業務量の増加に対して新たな人員を採用せずに対応できるため、追加の人件費を抑える効果もあります。また、単に「コストを減らす」だけでなく、人材をコア業務に再配置できる点に価値があります。
2-4. さまざまな書類や部門に横展開できる
データ入力業務であれば、導入できる可能性があり、適用範囲の広さも大きなメリットです。まずは一部の書類からスモールスタートし、効果を実感した後に、他の書類や別部門へと段階的に展開する方法がおすすめです。
たとえば朝日生命保険相互会社では、はじめに払出請求書の入力業務に導入し、その後、団体保険の保険金額変更時の帳票や加入・脱退時の帳票など、計14業務に横展開されています(2022年7月時点)。
一度導入すればその適用範囲を広げていける拡張性と、それに伴う投資対効果の増大もメリットの一つです。

2-5. 従業員の負担やストレス軽減
データ入力業務は、作業自体は難しくなくても、数量や金額といった正確性が求められる情報を扱うため、ミスが許されないというプレッシャーが常に伴い、社員のストレス要因になりやすいです。
データ入力業務を自動化することで、従業員の精神的な負担を大幅に軽減できます。
結果として、従業員のモチベーションや働きやすさの向上が期待でき、離職率の低下や組織全体の生産性向上にもつながります。

2-6. 業務の属人化を解消する
データ入力業務は単純な作業ですが、担当者しか把握していない細かい知識や情報があったりするので、意外と属人化するケースもあります。
自動化すれば、人が対応するのはOCRの読み取り結果の確認のみとなるため、誰でも対応できるようになります。担当者の急な不在や異動があっても業務が滞りません。
3. データ入力を自動化した導入事例
続いて、データ入力を自動化した導入事例を紹介します。
- 朝日生命保険相互会社|データ入力を年間300時間削減
- 株式会社松村組|請求書の処理にかかる時間が半分に
- 株式会社ブリヂストン|伝票処理作業が1時間から5分に短縮
以下で紹介する事例を、実際に自社で導入する際の参考にしてください。
3-1. 朝日生命保険相互会社|データ入力を年間300時間削減
朝日生命保険相互会社は、一般財形貯蓄の払出請求書が毎月約400通届きます。
これらの請求書に記載された契約番号・生年月日・金額などの情報を、すべて手作業でシステムに入力しており、業務負担の大きさが課題となっていました。
この課題を解決するため、業務用スキャナー「RICOH fi-7800」で請求書をスキャンし、OCRによる文字認識から入力までをRPAが自動化する運用を開始。
結果、年間約300時間の入力作業を削減。1日7時間勤務だとした場合、40日強が削減された計算です。担当者は、入力作業に費やしていた午前中の30分から1時間の時間が削減されたことで、余裕を持って他の業務をこなせるようになるという好循環も生まれました。
3-2. 株式会社松村組|請求書の処理にかかる時間が半分に
総合建設業を手掛ける株式会社松村組は、全国に拠点を展開する企業です。
同社では、契約業者から毎月届く請求書の処理において、工事事務所の所長が支払金額を手計算し、システムへ手入力していたため、作業に時間を要していました。この非効率な業務プロセスが、長時間労働の一因となっており、働き方改革の観点からも改善が急務でした。
この状況を打開するため、自社で開発した請求書処理システムを導入。請求書を業務用スキャナー「RICOH fi-7300NX」でスキャンすれば、RPAが画像データをAI-OCRソフトウェア「DynaEye」でOCR処理してCSVファイルを生成、請求書処理システムに自動で連携します。
導入の結果、請求書の処理が効率化され、工事事務所の残業時間抑制につながりました。さらに、支払サイトも10日間短縮され、契約業者側も恩恵を受けています。
3-3. 株式会社ブリヂストン|伝票処理作業が1時間から5分に短縮
株式会社ブリヂストン下関工場では、工場間輸送に伴い、毎日20枚から30枚の入荷伝票・出荷伝票が発生します。
伝票の内容はExcelに手入力して管理していたため、毎朝1時間かかっており、大変な作業になっていました。
そこで、A4コンパクトスキャナー「RICOH fi-800R」で伝票をスキャンし、AI-OCRによる文字認識、Excelへの入力をRPAで自動化しました。
結果、データ入力作業がなくなり、所要時間は5分に短縮されました。また、これまでは業務を把握している人しかできませんでしたが、簡易化されたことで誰でもできるようになりました。
4. データ入力の自動化におすすめのツール
PFUが提供している業務用スキャナーとAI-OCRソフトウェアを紹介します。
4-1. OCRに最適な画像データを生成できるスキャナー

業務用イメージスキャナー「RICOH fi Series」は、書類内の白抜き文字の反転や、背景の網かけ・印影・汚れやシミなどを除去して、OCRが文字情報を抽出しやすいデータを作成します。
OCRの文字認識精度が向上することで、データ修正の手間を最小限に抑えることができます。


4-2. 確認作業が減らせるAI-OCRソフトウェア「DynaEye 11」

AI-OCRソフトウェア「DynaEye 11」は、1つの読み取り項目に対して2つのOCRエンジンでそれぞれ文字認識を行い、結果を突合する「ベリファイOCR」機能を搭載しています。両者の結果が一致しない項目(信頼性の低い項目)を強調表示し、その項目だけ確認・修正することで作業時間が削減できます。
データ入力業務を自動化すると、人手が必要になるのは主にOCR結果の確認作業ですが、「DynaEye 11」を使えばこの工程も効率化でき、さらに高い業務効率化を実現できます。

5. まとめ
データ入力業務の自動化は、単なる省力化にとどまらず、人材の再配置など、組織全体の最適化につながる施策です。
スキャナーやOCR・RPAといったツールの組み合わせにより、紙書類からデータ化・システム登録までを一気通貫で自動化できます。
本記事で紹介した内容がご参考になれば幸いです。