歯科医院を悩ませる「紙のサブカルテ」をScanSnapで一気にデジタル化、「Medical Box Note」に保存してiPadで運用│武蔵小杉まつ歯科クリニック
神奈川県川崎市の「武蔵小杉まつ歯科クリニック」では、大量に発生する紙のサブカルテを「ScanSnap iX1600」でスキャンし、画像データをペーパーレス化システム「Medical Box Note」に直送してiPadで運用する方式を導入、業務の効率化を実現しています。同クリニックを訪ね、詳しいお話をうかがいました。
目次
1. 検索性が低く場所もとる「紙のサブカルテ問題」を解決するシステム
歯科業界には、院内の情報共有ツールとして「サブカルテ」があります。歯科医師や歯科衛生士が、患者との会話内容や気づいたこと、次回の診療内容を手書きで記録します。患者ごとにカルテファイルを設け、歯科医院が自院の運用に合ったフォーマットを紙で作成し、保管をする運用が主流です。
サブカルテは紙であるがゆえに、付随する問題が複数あります。物理的に存在しているサブカルテを「探す・出す・戻す」といった作業が不可欠であるということです。患者数が増えるとカルテファイルの保管場所を増設する必要があり、サブカルテの管理業務の負担も増加します。ヒューマンエラーによりカルテファイルが正位置に戻されていないと、「探す・戻す」作業にさらに時間を要するといった問題も発生します。
サブカルテには患者との重要なやり取りが記録されているため、患者からの電話を受けた際、詳細な診療の履歴を確認するためにカルテ棚へ走ることも珍しくありません。歯科医院本来の業務ではないこれらの対応に、1日何時間も費やしているのが紙のサブカルテを運用している歯科医院の実態です。
このサブカルテ問題を解消するために「武蔵小杉まつ歯科クリニック」では「Apotool & Box for Dentist」を導入しています。「Apotool & Box for Dentist」は、株式会社ストランザが提供する歯科専用のトータルソリューションシステムです。予約管理はもちろん、画像や動画を含めた診療情報や歯周検査記録、スマートフォンが診察券の代わりになる診察券アプリなど、歯科にまつわる業務を一元管理できるシステムです。それぞれの機能は予約情報に紐づいており、「Medical Box Note」もその一つです。通常、カルテファイルを出す作業はアポイント一覧を見ながら行いますが、「Medical Box Note」は予約情報と紐づけてサブカルテを管理することができるため、iPad内で確認したい患者さんの氏名・用紙名を選択するだけで必要な情報へアクセスが可能です。これにより、従来の紙のサブカルテの運用に伴う管理業務が大幅に軽減されます。
そして、「Apotool & Box for Dentist」が推奨するスキャナーがPFUのScanSnapです。ScanSnapでサブカルテや問診票、紹介状、同意書など、紙の書類をデジタル化して「Medical Box Note」に取り込むことで、Wi-Fi環境下であれば診療中にiPadでの閲覧が可能になります。また、スキャンした画像データには描画ソフトが重ねられるため、iPad上でサブカルテの続きを直接、スタイラスで書き込むことができます。つまり、紙のサブカルテをスキャンすることで、サブカルテを紙運用からデジタル運用へと、シームレスにつなげることができるのです。
「武蔵小杉まつ歯科クリニック」では2022年、最新アプリの「Medical Box Note」と「ScanSnap iX1600」を同時に導入しました。両者のコンビネーションによる効率化の実際について、同クリニック院長の松浦宏彰さんと、同クリニック歯科衛生士の小椋元子さんにお話をうかがいましょう。
2. 「Medical Box Note」と「ScanSnap iX1600」でサブカルテのデジタル化に成功
――武蔵小杉まつ歯科クリニックの成り立ちと現況についてお聞かせください。
松浦さん:当院は3年前の2020年1月にオープンしました。10年ほど前に武蔵新田(東京都大田区)に開院した「武蔵新田まつ歯科クリニック」に続く2軒目のクリニックです。私は両院の理事長ですが、武蔵新田は管理者に任せ、現在は武蔵小杉の院長をしています。スタッフは私のほかに、歯科衛生士が2人と助手が2人です。
武蔵小杉は大規模な開発が続いており、若いファミリーが増加しています。そのためホワイティングやマウスピース矯正を希望して来院される患者さんが多いのが特徴です。
――一日に何人くらいの方を診られるのでしょう。
松浦さん:だいたい15人から20人というところです。診療時間は早い方で30分、歯科衛生士が施術をする場合はもう少し時間をかけます。
小椋さん:最長で90分ですが、60分くらいの方がいちばん多いですね。
――デジタル化は何をきっかけに、どのような経緯で進められたのでしょうか。
松浦さん:歯科の臨床では早い時期からレントゲンのデジタル化やCTの導入などが進みましたが、それ以外のバックオフィス的な業務では長らく紙が主流でした。
その弊害を最初に痛感したのは患者さんの予約管理です。紙のノートに予約を書き込み、レセコン(レセプト(診療報酬明細書)を作成するPC)にも同じ予約を入力するのですが、片方に予約を書き忘れるといったヒューマンエラーが頻出していました。それをデジタルで一元化できればトラブルが解消しますし、どなたの予約がいつ入っているのか、どこでも確認できるようになります。紙のノートを逐一めくる必要もなければ、ノートをコピーして診察室に貼っておく必要もありません。
そこで7年ほど前に「Apotool & Box for Dentist」の予約管理ツールを導入してデジタル化を開始しました。以降、順次アプリを導入し、2022年には「Medical Box Note」と「ScanSnap iX1600」の同時導入によって、煩雑な紙での運用が残っていたサブカルテのデジタル化を実現して現在に至ります。
――先生ご自身、もともとデジタル機器に詳しかったのでしょうか。
松浦さん:そうでもありませんが、新しいものにトライしようという思いはいつも頭にあります。やってみて、うまくいかなかったら修正すればいい、常にトライ&エラーを重ねていかなければ先が見えない、そういう考えを持っています。予約管理のデジタル化にしても、当初は従来の方式に慣れたスタッフから反対の意見も出ましたが、「今やるしかない」と思って進めました。今ではみんな便利に使っています。
――「Medical Box Note」と「ScanSnap iX1600」でデジタル化したサブカルテについてうかがいます。サブカルテはどのような形式で、どのように運用していますか。
松浦さん:サブカルテはすべてiPadに集約されています。昔の患者さんのサブカルテも「ScanSnap iX1600」でスキャンしてあるので、iPadで全部見られます。また、紙のサブカルテをスキャンした画像データには、過去に書き込んだ処置などの続きをiPad上で直接書き込むこともできます。
――たとえば書式の下半分が空欄の状態でスキャンしても、その空欄に続けて書き込んでいくことができるのですね。
松浦さん:そうです。また治療計画書、問診票、同意書、紹介状などの書類もスキャンして「Medical Box Note」に収納することで、書類の一元管理を実現しました。別途保存しているレントゲンや口腔内カメラなどのデジタル画像も「Medical Box Note」で横断的に見ることができ、画像をサブカルテに貼り付けるといった編集も簡単です。
――歯科衛生士にも歯科医のサブカルテに相当するような書式があるのでしょうか。
小椋さん:歯の状態や、患者さんにこういうお話をしたということを書きつける衛生士業務記録があります。それがないと次にいらっしゃったときに経緯がわからなくなるので、先生のサブカルテ同様、これまではボールペンで紙に書いていました。今では過去の記録もスキャンして「Medical Box Note」に入っているので、iPadで見ながら直接書き込んでいます。
――「Medical Box Note」と「ScanSnap iX1600」によって、お二人とも日々の業務から紙を排除することができたのですね。
松浦さん:はい、もう二度と紙には戻れません。
3. 2,100人分のサブカルテを空き時間にスキャンし、4か月でデジタル化完了
――ScanSnapによる過去のサブカルテのスキャンについてうかがいます。何人分を、どのくらいの時間をかけてデジタル化したのでしょうか。
松浦さん:スキャンしたのはこれまでの患者さん約2,100 人分のすべてです。現時点でサブカルテを活用している直近の患者さんから始めて、業務の合間に残りの方々の分を少しずつ進めました。スキャンした書類はシュレッダーにかけて廃棄しました。
小椋さん:みんなでコツコツやり続けたら4か月ほどですべてをスキャンできたので、今はもう基本的に紙が不要になっています。紙のサブカルテがなくなったことで診察室の棚が空き、置き場所に困っていた矯正用マウスピースをそこに収めることもできました。紙がなくなってクリニック内がとてもすっきりしたと思います。
――「ScanSnap iX1600」は「Apotool & Box for Dentist」の推奨スキャナーとして、「Medical Box Note」と同時に導入されたのですね。
松浦さん:そうです。「ScanSnap iX1600」を当院で購入し、「Medical Box Note」に対応するようストランザに設定してもらいました。iPadの「Medical Box Note」画面にもスキャンボタンがあり、紙をセットしたらそのボタンかScanSnap側のボタンを押してスキャンします。すると自動的にスキャンデータがiPadを経由してストランザのサーバーに送られ、「Medical Box Note」に保存されます。ですからスキャンさえすれば、すぐにiPadで扱えるようになります。
――スキャンはどのような手順で行ったのでしょう。
松浦さん:レセコンと「Medical Box Note」を連携させ、レセコンにある全患者のデータに基づいて1人ずつ書類をスキャンしました。
小椋さん:お名前を選んで、スキャンボタンを押してという手順です。ScanSnapはサイズの異なる紙を重ねてもスキャンできますが、一応A4やA5などの大きさに分けた上で、大きいものを奥に、小さいものを手前に重ねるようにしました。
――スキャンした書類のデータが「Medical Box Note」に正しく入ったかどうかを確認しながら進めたのでしょうか。
小椋さん:最初は確認していましたが、ちゃんと入ることがわかったので、途中からその作業はなくなりました。
――ScanSnapをお使いになって、どのような感想を持ちましたか。
松浦さん:ドキュメントスキャナーの存在を知らなかったので、ScanSnapのスキャン速度や両面スキャンなどの機能に驚きました。サブカルテをスキャンして「Medical Box Note」に入れると聞いたときは、家庭用コピー機に付いているスキャン機能をイメージして、「あれで1枚ずつスキャンしていたらいつ終わるのだろう」と思っていました。ところがScanSnapは想像とまったく違い、1人分の書類をあっという間にデジタル化してしまいます。実際、5~6枚なら所要時間数秒というところではないでしょうか。あれにはびっくりしましたね。
――過去のサブカルテをすべてデジタル化し終えた現在、ScanSnapはどのように活用していますか。
松浦さん:患者さんがサインをして持ってきた同意書など、今も紙の書類自体は存在しているので、発生するたびにScanSnapでスキャンしています。また、専門的な資料にも紙が多いので、今後は随時スキャンしてiPadで読めるようにしていきたいと思います。
小椋さん:今、個人的に保管している資料を家でスキャンして、原本を廃棄する作業を進めています。でも家のスキャナーに比べるとScanSnapの便利さは際立っているので、こちらに持ってきてスキャンさせてもらおうかなと思っています(笑)。
松浦さん:絶対そうしたほうがいいよ(笑)。とにかく速さが違いますから。本当に重宝しますね、ScanSnapは。
それと、武蔵新田のクリニックではまだ「Medical Box Note」の導入に至っていないので、今年は向こうにもScanSnapを1台入れて、サブカルテのデジタル化を進めたいと思っています。武蔵新田はこちらより規模が大きく患者総数は約8,500 人ですが、作業のコツもわかっていますので、ScanSnapがあれば1年で実現するだろうと見ています。
――やはりトライすることが大切なのですね。
松浦さん:どの医院も「やりたい」と思うことはたくさんあるはずです。でも問題は実際にやるかやらないかということ。それはもう、やってみるしかないんですよね。
――ScanSnapがクリニックの業務効率化の一助となれて幸いです。本日はありがとうございました。
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