ScanSnapを顧客先に設置し証憑はデータで受領!freeeや自動記帳サービスを活用し作業を大幅自動化│BANZAI税理士事務所
愛知県西尾市の「BANZAI税理士事務所」では、記帳代行などの煩雑な作業をデジタルの力で大幅に効率化する取り組みを進めています。特に、顧客にScanSnapを貸し出して証憑をスキャンしてもらい、そのイメージデータから半ば自動的にクラウド会計ソフトfreeeに入力する運用は、多くの税理士事務所が抱える悩みを解決する方法として注目されます。西尾市の同事務所を訪ね、代表税理士の伴洋太郎さんに詳しいお話をうかがいました。
目次
1. 一人1台のScanSnapでストレスなく「電帳法スキャナ保存制度」に対応
――BANZAI税理士事務所はロゴマークやイメージカラーなど、トータルにデザインされて閲覧しやすいホームページを構築・運営しているほか、オフィスの内外装もホームページと同じコンセプトのデザインで美しくまとめておられます。税理士事務所としては異例ともいえるデザインは、明るく親しみやすく、デジタル化にも積極的な新しいタイプの税理士事務所であることをアピールするためでしょうか。
その通りです。5年前に私の地元である西尾市で開業する運びになったとき、どうすればほかの税理士事務所との違いを打ち出せるだろうかと考え、デジタル化によって顧客にもメリットのあるサービスを提供する事務所であることを、デザインで訴求しようと思いました。
そこで当事務所では名称をアルファベットにしてロゴを作る、イメージカラーを明るい山吹色にするなど、若い経営者や個人事業主の方々に興味を持っていただけるようなデザインにするとともに、クラウド会計ソフトfreeeを専門的に扱うデジタルベースの税理士事務所であることをホームページに明示しました。したがって、ホームページを閲覧して連絡をくださったお客様と当事務所との間には、最初からデジタルに対する感度という点で一定のマッチングが成立していることになります。
BANZAI税理士事務所のロゴ。「i」を小文字にして「人」をイメージさせています。手の形のマークは2つ並べると「バンザイ」になります。
――本日お話をうかがう、ScanSnapを顧客に貸し出してfreeeと連携させる運用など、BANZAI税理士事務所は高度なデジタル化を実現しています。そうした構想はいつからお持ちだったのでしょうか。
開業前に別の税理士事務所に勤務していた頃は旧来のアナログ方式の業務がほとんどだったので、もっと効率のよい方法があるはずだと常々考え、当時から「独立したらできるだけ多くの業務をデジタル化しよう」と心に決めていました。
従来の税理士事務所は、顧客から受け取る証憑などの紙資料を会計ソフトに入力する記帳代行作業に忙殺され、時間的に常時圧迫されているのが普通です。また顧客の側も、発生した証憑を月次でまとめて税理士に郵送・持参するといった煩雑な作業が発生し、本来の業務に費やすべき時間を割かなければなりません。ところが、この記帳代行もfreeeとScanSnapの自動連携によって、ごく短時間の仕事になります。また、それまで5分かかっていた作業をデジタル化してみたら5秒で終わるようになった、というような例がほかにもたくさんあります。
――税理士事務所の業務をデジタル化することの最大の利点は何でしょうか。
当事務所は「お客様には税務に関するバックオフィス業務をすべてこちらにお任せいただき、経営に専念していただく」という理念を掲げています。「面倒なことは全部こちらで巻き取ります」ということですね。ただ、税理士事務所の側がパンクして巻き取り不能になってしまったら話になりません。お客様にどんどん面倒な業務を投げてもらうためには、税理士の仕事がスムーズに回っている必要があります。そのために不可欠なのがデジタル化です。
ですから当事務所では、freeeやScanSnapといったデジタルの手法を活用することにご理解とご協力をいただきますが、そのかわり遠慮なく投げてください、そして本来の業務に集中してどんどん稼いでください、とお客様にお伝えしています。
――顧客へのScanSnap貸し出しについてうかがう前に、BANZAI税理士事務所内でのScanSnap活用法についてお聞かせください。伴先生を含めて計3人のスタッフが、それぞれ1台ずつのScanSnapをデスクに置いているとか。
そうです。事務所の規模が小さいので、ScanSnapの機能ならば1台を3人で共用しても運用できますが、ScanSnapはコンパクトでデスクに置いても邪魔にならないので、すぐ手の届くところにある便利さを重視しました。そうすればストレスがゼロになりますから。機種は現在のところScanSnap iX1600とScanSnap iX1500が混在しています。
――主にどういった用途で活用していますか。
自社の会計のために使っています。たとえば当事務所はAmazonで買い物することが多いので、荷物の中に入ってくる納品書をスキャンしてデータ化し、それをAmazonの購入履歴のデータにfreee上で添付する、といった使い方です。私が仕事で使った車のガソリン代のレシートをスキャンして、クレジットカードの明細に紐付けることもあります。それらは紙のままで保存しておいてもよいのですが、私としてはなるべく紙を避けたいので、「電子帳簿保存法(以下、電帳法)スキャナ保存制度」に則って運用しています。
――従来の記帳代行業務のように、顧客から証憑がドサッと送られてきて、それをScanSnapでスキャンするというケースもあるのでしょうか。
証憑などの資料を預かってこちらでスキャンするのは、ごく限られたお客様か、相続税関連の単発のお客様のみです。記帳代行に関しては、貸し出したScanSnapでお客様ご自身にスキャンしていただくことを原則としています。
2. 顧客ごとにプロファイルを作って貸し出すことで記帳代行を大幅に自動化
――記帳代行業務におけるScanSnapとfreeeの連携についてうかがいます。概要としては、顧問契約を結んだ顧客にScanSnapを無償で貸し出し、証憑などの資料が発生したら顧客自身にスキャンしてもらって、送られてきたイメージデータを基にBANZAI税理士事務所が顧客のfreeeに入力するというものですね。
そうです。記帳代行でいちばん困るのが、お願いした資料が届かない、好ましいタイミングでいただけないといった問題です。ScanSnapを貸し出して逐次スキャンしてくださいとお願いすることで、まずこれが解決できます。
――顧客に対してScanSnap導入のメリットをどのように説明していますか。
たとえばネットバンクを使ってデータを連携させれば通帳のコピーをとらなくてもよくなるように、紙の資料もこれでスキャンすれば、コピーや荷造りの手間もなく当事務所に届きます、あとはお任せくださいというような感じですね。
また、ScanSnapによってお客様にもメリットが生じます。ボタンを押してスキャンするだけですから郵送や持参に比べて圧倒的に楽ですし、証憑を税理士事務所に送るのを後回しにしているうちに紛失したといった事態も発生しなくなります。
――ScanSnapの貸し出し方法について教えてください。
新規の顧問契約が成立したら、当事務所がその都度ScanSnapを購入します。そこで初期費用が発生しますが、その後の業務が非常にスムーズになるため、コストを十分に回収できます。
この運用では契約初期にお客様に対して行うヒアリングが非常に重要になるため、最初の1か月間だけは綿密な打ち合わせをお願いし、どのような紙資料が発生するのかを詳細に聞き取ります。それが終われば対面での打ち合わせの必要はなくなり、当事務所が顧客との主たる連絡手段にしているChatworkでのやり取りに移行します。
――何回も打ち合わせすると、「そういえばこんな紙も出ます」といった情報を引き出すこともできそうですね。
はい。そこまでヒアリングしてScanSnap導入が決まったら、あとは紙資料の種類などに応じてこちらでScanSnapのプロファイルを作成するだけです。
――スキャンする書類の種類に応じて、保存形式やクラウドを含めた保存先を登録してスキャンボタンを作っておけるプロファイルの機能を活用し、「この証憑ならこのプロファイル、この資料ならこちらのプロファイルでスキャンしてください」という指定を、顧客ごとにあらかじめ行うのですね。素晴らしい活用法です。
たとえば「現金払いレシート」というプロファイルを作っておき、「レシートをもらったら、タッチパネルでこのボタンを押してからスキャンしてください」とお伝えします。これはScanSnapがプロファイルを選べるタッチパネルを備えているがゆえに可能な運用です。ScanSnapには本当に助けられています。
このようにしっかり初期設計をしたら、お客様の事務所に私がScanSnapを搬入して設定・設置までを行います。なお、ScanSnapはもし顧問契約が終了したらご返却いただくことになりますが、一度顧問契約を結んでいただいたお客様はほとんど継続で利用してくださっており、ScanSnap返却の事例は発生していません。
――freeeについては、顧問契約を結ぶ顧客に導入してもらうことが前提で、「freee会計上級エキスパート」でもある伴先生がその導入を支援するということですね。記帳代行の成果は、顧客のfreee画面でその都度確認できるのでしょうか。
freeeの画面を顧客と当事務所で共有していますから、我々が顧客のfreeeに数字を入力し、締めた段階で「月次決算をご確認ください」と連絡してご覧いただくようにしています。
――連携の具体的なフローを教えてください。顧客は資料が発生するたびにScanSnapでスキャンするようルール化しているのですね。
そうです。たとえば仕入先から請求書や納品書が届いたら代金を振り込む前にスキャンしてください、出先で買い物をしたら帰社後すぐにレシートをスキャンしてくださいとお願いしています。ScanSnapならPC抜きでもスキャンできますから、顧客のストレスは最小限に抑えられます。
なお、紙資料はScanSnapの機能を生かし、一つのプロファイルごとに複数枚を重ねて一気にスキャンできますが、その場合も1証憑につき1ファイルのPDFを生成する設定にしています。
――イメージデータはどのようにしてBANZAI税理士事務所に届くのでしょうか。
ScanSnapと各種クラウドサービスをつなぐScanSnap Cloudを活用し、顧客先でスキャンしたデータが自動でGoogle ドライブにアップロードされるようにしています。Google ドライブには顧客別の格納エリアがあり、その中に当事務所が行う処理工程別に分けたフォルダーを作ってあります。そのフォルダーはScanSnapのプロファイルに対応していて、顧客がスキャンするだけで該当フォルダーにデータがアップロードされます。
これは税理士事務所にとって、紙資料を預かったときに行う仕分け作業がなくなったということを意味します。紙の仕分け作業は非常に手間のかかるものですから、それだけでも多大なメリットといえます。また顧客は、紙資料がScanSnapを通りさえすれば、その後のことを意識する必要がまったくありません。
――詳細なヒアリングに基づいた初期設定がここで物を言うわけですね。ところでGoogle ドライブに随時新しいものが入ってくるからには、アップロードを知らせる仕組みも構築しているのでしょうか。
はい、エンジニアに依頼して、タスク管理ツールのAsanaに通知が来るようにしてもらいました。フォルダーにファイルが増えるとプログラムが検知して知らせてくれるので、手の空いているスタッフが取りに行って必要な処理をします。
――BANZAI税理士事務所では、属人化しがちな顧客別の担当制をとっていないということでしょうか。
その通りです。担当分けせずに全員が同じマニュアルを見て、どの仕事も全員ができるようにしています。私自身は特殊な資料が来たときを除いてほとんどタッチしませんから、2名で十分に回っていることになります。
――Google ドライブにイメージデータが入ったら、次はfreeeへの入力ですね。どのようにしてイメージデータをテキスト化しているのでしょう。
重要度の高いものや仕訳処理が複雑なものは内部でテキスト化しますが、経費関係の証憑はほとんど外部に委託しています。現時点では自動記帳サービスのSTREAMEDを利用することが多いですね。あるいは直接freeeに取り込む方法もあります。いずれにしても、イメージデータをGoogle ドライブでいったん受けて内容を確認し、適切なテキスト化の手段を選ぶという運用です。
――顧客がスキャンしたイメージデータは「電帳法スキャナ保存」の対象になるのでしょうか。
現時点では電帳法対応によって大きなメリットが得られるほど紙資料の量が多い顧客がいないため、スキャン後の紙資料を原本として保存してもらっています。ただし今後お客様から「紙資料をその都度廃棄したい」といったリクエストが出ればすぐに対応することが可能です。
3. タッチパネルを備えたScanSnapは頭一つ抜けたスキャナー
――伴先生ご自身は開業以前からScanSnapを使用していたのでしょうか。
いえ、独立前は使っていませんでしたが、開業してすぐに自分の業務のためにScanSnap iX1500を購入し、非常に感動したんですね。「これはめちゃくちゃいいぞ」と。ScanSnapなら小さいレシートなど、複合機ではスキャンが困難な紙も簡単に読み取れますから、コストをかけてでもお客様に使っていただこうと決めました。
――ほかのメーカーのスキャナーとの比較検討もされましたか。
していません。小回りのよさ、クラウドサービスとの親和性、手頃な価格などを考えるとScanSnap一本だと私は思っています。なんといってもタッチパネルを備えているのが素晴らしいですよ。ScanSnapはコンパクトスキャナーの中で頭一つ抜けているのではないでしょうか。
――客先でのScanSnapの稼働状況はいかがでしょう。トラブルの連絡などはありましたか。
そこもScanSnapのすごいところで、トラブルがほぼないんですよ。顧客への貸し出しで心配だったのは、紙が詰まってしまったり、エラーが出たりしないだろうかということでしたが、蓋を開けてみたら極めて安定的に稼働してくれました。画像の品質についても、自動補正機能が優れているためか特段の問題は発生していません。お客様には、クリーニングアラームが出たら拭き取ってください、ファームウェアのアップデート通知が来たら更新してくださいとだけお願いしています。
ちなみに、お客様にはScanSnapを記帳以外にも自由に使っていただいています。私が薦めるのは名刺管理ソフトとの連携ですね。すごく便利ですから一度試してみてください、もしプロファイルの作り方がわからなければ次の打ち合わせのときに私が設定しますと、よくお伝えしています。
――顧客のメリットは非常に大きいですね。
そうですね。顧問契約の継続率が高いのは、それもあってのことなのかなと思っています。
――freeeやAsanaなどのデジタルツールはどのような観点で選んでいますか。
freeeに関しては画期的なクラウド会計サービスであること、Asanaは当事務所にとって使いやすいことがそれぞれ第一です。このほか、AsanaやChatworkに関しては、APIを使ってプログラムを作れるという点が大きいですね。Chatworkでは顧客へのメッセージを定期的に自動で送れるようにしています。できるだけ業務を自動化していきたいので、それに対応できるデジタルツールを選択しています
――デジタル化が急がれる税理士業界において、BANZAI税理士事務所は優れたモデルケースになり得るように思います。
ごく小さな事務所ではありますが、デジタル化を含め、それなりに頑張って違いを出そうとしているところです。これからお客様を増やしていかなければなりませんから、よりいっそう頑張っていきたいと思います。
――本日は詳しくお聞かせくださり、ありがとうございました。
ScanSnap iX1600
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この記事を書いた人
愛知県西尾市にある税理士事務所。"経営をたのしむ人をふやす"という理念のもと、顧客に寄り添ったサービスを展開する。 代表・伴 洋太郎さんはクラウド会計ソフトfreeeの認定アドバイザー。アプリやクラウドツールの活用にも積極的で、様々な角度から経営課題解決・バックオフィス業務効率化へと導く。
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