カルテや紹介状のデータ化で在宅医療もスムーズに 医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニック 遠矢純一郎先生
医療現場はまだまだ紙が中心。電子カルテを導入しても、外から受け取る紙書類は減らせない。
桜新町アーバンクリニックでは、電子カルテでの一元管理へ向けて、iX100とiX1500でペーパーレス化に取り組んでいる。
目次
患者情報をクラウドの電子カルテで共有
桜新町アーバンクリニックは、2009年に開院した在宅医療の診療所。医師10名と看護師14名。そのほか薬剤師、栄養士、作業療法士、ケアマネージャー、ソーシャルワーカーなどを含めて50名が所属し、ひとりの患者さんを複数の担当者がチームでサポートしている。
現在の患者数は約430名で、ひとりの医師が60?70名の患者さんを担当している。それだけでも情報管理が大変そうだが、特に問題なのが、夜間や休日にコールを受けた時の対処だ。24時間コールは当番制で、自分の担当する患者さんでなくてもすぐに対応しなくてはならない。
また、一般の病院であれば、担当でなくとも通院や入院患者の顔はなんとなく覚えているかもしれないが、在宅医療の場合、担当していない患者さんとは会う機会がないため、電話で名前を聞いただけでは年齢や症状がまったく想像つかない。患者情報の共有と、その情報をいつでも手元で見られる体制が必要だ。
医療や介護の世界は、ほとんど紙情報でやり取りしているのが現状だ。在宅医療の患者さんが以前に通院していた病院からの紹介状をはじめ、健康保険・介護保険証、カルテ、保険会社や役所の介護認定の書類など、膨大な紙情報が飛び交う。あるデータによれば、ひとりの患者につき年間で6,000枚もの紙情報が出る、とも言われている。こうした紙情報を電子化するため、クリニックでは7年前にScanSnap iX500を導入した。
「それ以前は電子化する術がなく、紙カルテのままで持ち歩くか、自分たちでこつこつ電子カルテに転記作業が必要でした。しかし、検査結果の表など、すべての項目を転記するのはとてつもない時間がかかりますし、人手では入力ミスが起こる可能性があります」
医療はミスが許されない世界だけに、情報を正確に取り扱うことが重要だ。
「束の書類をセットしてボタンを押すだけで、1枚ずつ両面をきちんと読み取ってくれる。さかさまになっていた書類も自動で修正してくれるので、すごく使い勝手がいいですね」
現在はiX1500とiX100の2台をメインに使っている。
コンパクトなiX100は現場に持っていき、その場で保険証などを取り込める。主に、在宅医療の開始時をサポートするソーシャルワーカー(相談員)が主に使っているとのこと。
訪問先で保険証や名刺をスキャン
「初回の往診では、患者さんに関わるいろいろな職種の方が複数の事業所から集まり、会議をします。関係者の連絡先もカルテに反映させなくてはなりません。以前は、保険証や名刺をスマホで撮影していましたが、文字がつぶれて判読しにくいことがありました。iX100を使えば均一な画質で撮れて、OCRでテキスト変換されるので、そのまま電子カルテにコピペできます」
iX500を使っていたときは事務の担当者に書類を渡して、スキャンしたデータを所定のフォルダーに入れてもらうようにしていたそうだが、iX1500に移行後はみんなで使えるようにしたそうだ。タッチパネルで個人のフォルダーや、共有の電子カルテといった宛先を選んで保存できるようにしている。
「ボタンに保存先を登録できるようになり、使い勝手がずいぶん変わりました。以前は、一ヵ所に一元管理していたのが、いまはみんながそれぞれ使えるので、担当者ひとりに負担がかかることもなくなりました」
スキャナーは紙を減らす唯一の方法
医療情報は5年間の保存義務があるため、すぐに処分することができない。今のところ、書類が増えてきたら古いものから貸倉庫に移し、新しいものをオフィスに保管しているとのこと。
在宅医療は長期にわたるものだ。クリニックでは電子カルテを導入しているが、訪問看護師、リハビリ、ケアマネージャーからは、それぞれ紙で報告書が届く。こうした連携先から受け取る紙の書類だけでも電話帳ほどの厚さになってしまうという。
これを十数冊も持ち歩いて往診するのは大きな負担だ。クリニックでは紙を減らすため、「ペーパーレスプロジェクト」を立ち上げ、さらなる電子化を進めている。
「外から受け取る紙は減らせません。それを唯一解決する道がスキャナーです。すべての紙情報を電子カルテに取り込めば、完全に紙をなくすことができます」
各患者さんの電子カルテには、紹介状、保険証、薬の処方箋、過去に他院で診療した紙のカルテなどのスキャンデータが年数別に整理されて納められている。かさばらないだけでなく、OCRがかかるので、名前やキーワードから検索でき効率がいい。紹介状に記載された病歴などをコピーペーストして、簡単に二次利用できるのも電子化のメリットだ。
紙の資料は、誰かが持ち歩いていると、ほかのスタッフは見られないが、電子カルテに入れておけば、複数のスタッフがいつでもPCやスマホから閲覧できる。
学会資料や議事録も電子化してクラウド保存
遠矢先生は診療の情報だけでなく、学会や勉強会で配られる資料や議事録などもすべてデータ化して、いつでも見られるようにしているそうだ。遠矢先生は、プロファイルで共用する書類はDropbox、個人用の書類のデータはOneDriveに保存している。ほかのスタッフも各自の保存先を登録しているそうだ。
「送り先をスキャナーで選べる快適さは、ちょっと今までにはなかった。スキャンするたびに保存先のフォルダーを選ぶのではなく、プロファイルに登録できるのは、すごくいいですね」
情報管理には、Evernoteを愛用。今はScanSnapと連携はせずに、スキャンしたPDFから必要な箇所を取り込むほか、ウェブからの情報収集やメモに活用しているとのこと。
「Enernoteは、Macでもスマホやタブレットでも同じように使えるのがいいですね。書きかけの学会の原稿などは、空き時間を利用して、そのとき手元にあるデバイスで少しずつ続きを書いたりしています」
今後は、ペーパーレス化をさらに進めていくのが目標だ。医療や介護の世界は、いまだに紙カルテが多く、電子カルテを導入したからといって、すぐにはペーパーレスに切り替えられない。しかし、紙と電子カルテを併用していると、事務作業は倍になってしまう。
「紙をなくすことができれば、いろいろなことが省略化されるでしょう。ただし、それを実現するために手間が増えるのは本末転倒。なるべく手間をかけずに、デジタル化できるようにうまく運用していきたいです」
>>Toya's Setting【患者関係書類をスキャン】共有する情報と個人的な書類の保存先をプロファイルで設定
ScanSnap iX1500は1台を複数ユーザーで共用できるのが特徴だ。桜新町アーバンクリニックでは、iX1500をスタッフで共有し、医師や看護師がそれぞれ自分のPCに『ScanSnap Home』をインストールして、保存先やファイル形式などのプロファイルを設定している。いったん設定しておけば、液晶のアイコンを押すだけなので、忙しい時は事務のスタッフにスキャンを頼むこともあるそうだ。遠矢先生は、スタッフ間で共有するデータは、Dropboxに直接保存。学会資料など個人的な書類のスキャンデータは、MacやOneDriveにPDF形式で保存し、あとからEvernoteに整理しているとのこと。
■取材協力
遠矢純一郎(とおや・じゅんいちろう)先生
用賀アーバンクリニックの副院長を経て、2009年4月に桜新町アーバンクリニックを開業。在宅医療における診療に携わる。専門分野は、呼吸器科、アレルギー科、感染症科、在宅医療、緩和ケア、内科全般。ScanSnapプレミアムアンバサダー。
医療法人社団プラタナス
桜新町アーバンクリニック
遠矢純一郎先生が院長を務める世田谷区の診療所。地域の家庭医を目指し、小児科から婦人科、心療内科、喫煙外来まで幅広く対応。外来診療のほか、24時間365日往診可能な在宅訪問診療や健康診断も行なっている。
記事制作:flick!編集部
本記事は『flick! digital(フリック!デジタル)特別編集 デスクが片づくデジタル超整理術』に掲載されました。
記事は2019年11月10日時点の内容です。
ScanSnap iX1600
毎分40枚・80面の両面高速読み取りを実現し、簡単操作のタッチパネルを搭載。Wi-Fiの5GHzに対応し、原稿サイズ、色や両面・片面を自動的に判別。 驚くほど簡単、スピーディーに電子化します。 ※ 記事中の「ScanSnap iX1500」の後継モデルです。 |
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