1. 手書き文字はOCRで読める?事例や精度を上げる3つの方法も紹介
2025.7.23

手書き文字はOCRで読める?事例や精度を上げる3つの方法も紹介

画像データから文字情報を抽出するのに便利なOCRですが、従来のOCRは活字の読み取りには高い精度を発揮する一方で、手書き文字の認識には課題がありました。

近年、AI技術を活用した「AI-OCR」の登場により、手書き文字の読み取り精度が向上し、多くの業務現場で導入が進んでいます。

とはいえ、手書き文字のOCRは帳票の設計やソフトウェアの設定、運用方法によって精度に大きな差が生じるため、使いこなすには一定の知識と工夫が必要です。

本記事では、手書き文字のOCR精度の実態や事例から、製品の選び方やおすすめ製品について実務に役立つ視点から解説します。

1. 手書き文字のOCR精度

手書き文字の認識精度は、従来のOCRとAI-OCRとで大きく異なります。特に、 AI‑OCRでは手書き文字の認識精度は大幅に向上しました。ここでは、AI-OCRによる手書き文字認識の進歩と、従来のOCRとの比較について解説します。

  • AI-OCRなら手書き文字も高精度に認識できる
  • 手書き文字をOCRとAI-OCRでそれぞれ認識した結果

1-1. AI-OCRなら手書き文字も高精度に認識できる

AI‑OCRは、従来のOCRで課題だった手書き文字の認識を、AIの機械学習によって可能にしています。手書き文字は人によって書き癖があるため、文字の形状やバランスなどが異なりますが、AI-OCRに多くの筆跡を認識・学習させることで、高い精度で認識できるようになりました。

1-2. 手書き文字をOCRとAI-OCRでそれぞれ認識した結果

手書き文字をOCRとAI-OCRでそれぞれ認識した一例をご紹介します。

手書き文字のOCRとAI-OCRの認識例

「横浜市」の場合、従来のOCRでは、手書きの「横」を「木」と「黄」の2文字として誤認識してしまうことがあります。
しかしAI-OCRでは、学習した筆跡データに加え、前後の文字列から「地名としての横浜市」であることを推測し、「横」と正しく認識できるようになっています。

2. 手書き文字をOCRしている事例

手書き文字をAI-OCRでデジタルデータ化する技術は、すでにさまざまな業界で導入され、業務効率化に貢献しています。

ここでは、実際にAI-OCRを導入し、成果を挙げた企業の事例を紹介します。

  • 【事例1】手入力作業をAI-OCRに切り換えて省人化を実現
  • 【事例2】栽培履歴をスキャン・OCR処理してデータベースと自動照合

2-1.【事例1】手入力作業をAI-OCRに切り換えて省人化を実現

いるま野農業協同組合様では、従来、購買事業における受注処理を各支店の人手で対応しており、多くの人員と人件費を要していました。

そこで、手書きで記入された申込書を業務用スキャナーでスキャンし、AI-OCRソフトウェアで抽出した文字情報を基幹システムに連携する運用を開始。本店に集中受注センターを設置し、従来38支店(38人)でおこなっていた紙の受注処理を、わずか4人で対応できる体制を構築しました。

これにより、大幅な省人化が実現し、支店スタッフは他の業務に専念できるようになりました。結果として、業務の効率化と全体の生産性向上に貢献しています。

2-2.【事例2】栽培履歴をスキャン・OCR処理してデータベースと自動照合

農作物に使用された農薬のチェックは、「食の安心・安全」を守るうえで欠かせません。しかし、道の駅などで農産物を直売する施設では、その確認作業に多くの時間と労力がかかっていました。

この課題を解決するために開発された「栽培日誌管理システム」は、生産者が手書きで記入した栽培履歴シートをスキャンすると、システムが記載内容をAI-OCRで読み取り、それを農薬データベースと自動で照合するものです。

結果、農薬チェックの精度が向上しただけでなく、各道の駅における作業負担も軽減され、現場の業務効率が改善しました。

3. 手書き文字をOCRする際の注意点

AI-OCR導入を検討する際、「認識精度が100%ではないから効果が出ない」といった誤解を抱くこともあるでしょう。しかし実際には、精度が100%でなくとも業務改善への貢献は十分に可能です。

また、AI-OCRの精度をさらに高めるための工夫も重要になります。

ここでは、手書き文字をOCRする際の注意点を解説します。

  • 「認識精度が100%ではないから効果が出ない」は誤り
  • OCR精度を高めるための工夫も重要

3-1. 「認識精度が100%ではないから効果が出ない」は誤り

たとえAI-OCRであっても、すべての文字を100%正確に読み取るのは現実的に不可能です。しかし、認識精度が100%ではないからといって、AI-OCR導入の効果がないと判断するのは誤りです。

実際、認識精度が80〜90%であれば日常業務で十分に活用でき、5〜7割程度の業務削減につながります。具体的には、5分56秒かかっていたデータ入力業務が、AI-OCRによって1分58秒に短縮された検証結果が出ています(*)

AI-OCRの検証結果

*: 弊社環境にて、弊社所有の「介護保険申請書」を使用して、帳票1枚当たりの作業時間を測定。AI-OCR認識精度が90%の場合の結果。

3-2. OCR精度を高めるための工夫も重要

AI-OCRの導入効果を最大限引き出すためには、精度を高めるための工夫も重要です。次の3つの方法を紹介します。

①OCRする範囲や文字種を限定する

認識する必要がない部分は、OCRを行わずに、OCRが必要な箇所のみを認識対象とすることで、認識精度を改善します。

「0(ゼロ)」と「O(オー)」、「8」と「B」のような判別し難い類似文字の組み合わせが存在する場合は、あらかじめ読み取る文字種をソフトウェアで設定することで、認識精度が改善します。

OCRの範囲設定例
②帳票のレイアウトを変更する

枠をつけることでAI-OCRが認識すべき箇所を限定し、1文字だけを認識すればよい状態になるので、認識精度が改善します。

文字間隔が狭いと、AI-OCRが1つの文字であると誤認識してしまう可能性が高くなります。記入欄を大きく確保し、文字間隔を広くとれるようにすることで認識精度の改善につながります。

OCRの範囲限定例
③画像の品質を見直す

AI-OCRの場合は、カスレ等で情報が欠落し、認識精度が低下してしまうことを防止するために、カラー画像(24bit)を使用することをおすすめします

解像度が高くなるほど画像が鮮明になり認識精度が向上しますが、ファイルサイズが大きくなります。使用するOCRの要件や、帳票のデータ保存方法にあわせて適切な解像度を設定してください。

画像品質の説明

画像の品質はスキャンする機器にも大きく左右されます。OCRに適した鮮明な画像生成や画像の傾きを補正できるスキャナーの利用がおすすめです。

4. 手書き文字のOCRに最適な製品の選び方・比較方法

ここでは、多種多様な製品の中から、自社の課題に最適なAI-OCRの選び方・比較方法を解説します。

  • 自社で使っている帳票に対応しているか
  • 帳票定義のしやすさ
  • 利用形態はクラウドか、オンプレミスか
  • 従量課金制か、定額制か
  • 帳票特化型OCRという選択肢

4-1. 自社で使っている帳票に対応しているか

AI-OCRを選定するうえで最初に確認したいポイントは、自社が日常的に使用している帳票に対応しているかどうかです。

帳票には大きく分けて、以下の3種類があります。

  • 定型帳票(決められた形式の申請書など)
  • 準定型帳票(ある程度形式が変動する請求書・注文書など)
  • 非定型帳票(形式が自由な契約書・図面など)

4-2. 帳票定義のしやすさ

帳票定義とは、「どの位置に」「どのような文字種が記載されているか」をあらかじめ設定することで、文字認識精度を上げるための事前作業です。導入後にOCRしたい書類の種類が増える可能性を考えると、帳票定義のしやすさは重要になります。

PFUの「DynaEye スタートアップサービス」のように帳票定義を代行するサービスメニューを用意しているメーカーもあります。

4-3. 利用形態はクラウドか、オンプレミスか

AI-OCRの利用形態には、主に「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類があります。それぞれに特徴があるため、自社の運用方針やセキュリティ要件に合わせて選択することが重要です。

クラウド型 オンプレミス型
特徴 インターネット経由でサービスを利用する形態 自社サーバーやPCにソフトウェアをインストールして利用する形態
メリット
  • 自社で保有・管理する必要がない
  • アップデートやメンテナンス作業も不要
  • 初期導入コストを抑えやすい
  • インターネットを介さないため、高速な処理が可能
  • セキュリティリスクを軽減できる
  • AIが自社の帳票のみ学習するため、特定の帳票に対して精度が出やすい

4-4. 従量課金制か、定額制か

AI-OCR製品の料金体系は、主に「従量課金制」と「定額制」の2種類に大別されます。自社の利用状況に合わせて、最適な料金プランを選択することで余計な支出を抑えられます。

従量課金制 定額制
特徴 毎月の読み取り枚数や処理項目数に応じて料金が発生する形式 一定期間の利用に対して固定の料金を支払う形式
向いている企業
  • 読み取り枚数が少ない
  • 月によって処理量が大きく変動する
  • 毎月大量の帳票を処理
  • 予算管理をしやすくしたい

自社の平均的な処理量や今後の利用計画を具体的にシミュレーションし、最適な料金プランを選択しましょう。

4-5. 帳票特化型OCRという選択肢

汎用的なOCR製品だけでなく、特定の帳票の読み取りに特化した「帳票特化型OCR」という選択肢も存在します。

帳票特化型OCRは汎用性には欠けるものの、特化している帳票においては高い認識精度を発揮するのが特長です。

たとえば、PFUが提供する「DynaEye 給与支払報告書OCR」は、給与支払報告書という特定の帳票の構造や記載の特徴をAIが深く学習しています。結果、一般的な帳票に対応するAI-OCR製品では認識が難しい帳票に対しても高い文字認識精度を実現しました。
また、帳票定義が不要で、すぐに利用することができます。

このように特化型ならではのメリットもあるため、OCR導入を検討している場合は、視野に入れてみてください。

5. 手書き文字のOCRにおすすめの製品

OCR導入を検討している方に、手書き文字の認識に強みを持つおすすめのAI-OCRソフトウェアと、精度を最大限に引き出すスキャナーを紹介します。

  • AI-OCRソフトウェア「DynaEye 11」
  • 業務用スキャナー「RICOH fi Series」

5-1. AI-OCRソフトウェア「DynaEye 11」

AI-OCRソフトウェア「DynaEye 11」は、手書き文字の認識精度や製品の特徴など3つのポイントで高い評価を得ています。

POINT 1:手書き文字の読み取り精度が高い

DynaEye 11の文字認識精度は99.2%(*)で、フリーピッチに書かれた癖の強い日本語の手書き文字や、枠からはみ出して記入された文字であっても、高い精度で認識が可能です。文字に取り消し線が引かれている場合、読み取り不要な情報と判断することもできます。

*: 弊社基準帳票を用いた認識精度結果

フリーピッチ手書き文字の例
POINT 2:直感的に操作できて、しっかり帳票定義できる

帳票定義画面は使いやすさを追求しており、製品の知識や操作経験がない方でも、画面上のガイドに従うだけでスムーズに設定できます。導入後の帳票追加や項目の変更も、簡単に行えます。

また、帳票定義はきめ細かく設定できるため、手書き文字の精度を向上させます。
手書き文字は、日本語、数字、アルファベットなど、文字種はさまざまです。さらに、氏名、住所、電話番号と、入力される情報の種類も異なります。

DynaEye 11では、帳票上の各項目に対して、文字種や情報の種別を細かく設定でき、入力形式に応じてAIが最適な読み取りを行います。これにより、手書き文字を高い精度で読み取ります。

OCR設定の例
POINT 3:高セキュリティで安心して利用できる

手書き文字の入った帳票は、氏名や住所といった個人情報を含むことが少なくありません。しかし、DynaEye 11はオンプレミス型のため、データを外部に出さずに自社内で処理することができます。自治体や金融機関など、セキュリティ面が求められる現場において、多数の導入実績があります。導入事例はこちらからご確認いただけます。

5-2. 業務用スキャナー「RICOH fi Series」

fiシリーズの例

業務用イメージスキャナー「RICOH fi Series」は、OCR処理に適した高精細な画像を生成できます。
CISとPFU独自の画像処理技術を組み合わせた「クリアイメージキャプチャ」により、色ずれや歪みを抑え、AI-OCRの認識精度を最大限に引き出します。

fiシリーズの生成画像例

また、業務用スキャナーならではの特長として、紙詰まりが起きにくい安定した高速読み取りや、スキャン後のデータ整理のしやすさも挙げられます。
複合機との違いや業務用スキャナーの利点については、以下の資料に詳しくまとめています。
データ入力作業だけでなく、スキャン作業の効率化も検討したい方はぜひご参照ください。

6. まとめ

OCRは、従来手作業でおこなっていたデータ入力作業を効率化し、業務負担を軽減する強力なツールです。AI技術の進化によって手書き文字の認識精度も向上しており、たとえばDynaEye 11では99.2%という高い精度で正確に読み取れるようになっています。

AI-OCR導入の効果を最大限得るためには、認識箇所を限定したり帳票のレイアウトを工夫したりするなど、精度を上げるための取り組みも重要です。

本記事を参考に、自社の業務に最適な製品を選び、さらなる業務改善を目指しましょう。

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