市制30周年の未来に向けて、かほく市史編さん事業がスタート スキャナーの活用で古文書のデジタル化を効率化!
時代が経つにつれて徐々に遠ざかっていく古い歴史。生まれ育った市の歴史を知りたい、そして後世に残したいという想いをもっている方も多いのではないでしょうか。
石川県かほく市史編さん室では、既存の文化財や資料に加え地域の皆様から古い文書や写真を収集・整理し市史として後世に残していく「かほく市史編さん事業」を新たにスタートしました。
そんなかほく市史編さん室を訪ねてお話をうかがいました。
目次
1. はじめに市史編さん室について教えてください。
1-1. 市史編さん室について
かほく市は、平成16年3月1日に高松町、七塚町、宇ノ気町の合併により誕生し、令和6年に市制20周年を迎えます。
旧3町ではそれぞれ「町史」を編さんしていますが、それ以後40年以上が経過し、その間、本市を取り巻く社会情勢や生活様式は大きく変化しています。
合併以降のかほく市生まれの世代や移住者の増加、高齢化や世代交代に伴い、市内に残る貴重な資料の散逸や先人の知識が失われることを防ぎ、旧3町と新市の歴史を収集、保存し市民の財産として後世に伝えていくことが行政の責務であるとして、令和4年4月より教育部スポーツ文化課内に当室が設置され、業務を開始しました。
1-2. 普段はどのようなお仕事をされていますか?
主に「市史編さん」に関わるあらゆる業務を行っています。「編さん(纂)」とは、様々な原稿や材料を集めて、整理・加筆などして書物にまとめる、という意味です。具体的には、委嘱をうけた専門家の方々(以後専門委員)の力をお借りしながら、遥か古代から今日までの「かほく市の歴史」を体系化し書物にまとめるという業務になります。
専門委員は「考古」や「近世」などをはじめ8部会に分かれており、全体の進捗等をとりまとめるため、それぞれの部会や委員の方々との会議や連絡調整を行うほか、収集した史資料の整理や調査に必要な図書の取り寄せ、聞取りの機会の設定に加え、一般の市民の方にもご参加いただいている「編さん委員会」において事業方針や刊行計画をはかるための準備を行っています。
1-3. 普段の業務の流れ
収集した史資料の整理という視点から、史資料には、個人で所有していて未整理なもの、博物館や図書館などの公共施設に所蔵されているもの、専門家の方々が確認し「いつ」「どこで」「だれが」「何をした」といった内容が読み解かれ、さらに順番にならべられ整理が終了したものがあります。資料のデジタル化の方法については、お預かり出来るかどうかによって様々です。
- すでにお預かりしている資料の場合
現在、石川県文教会館からお預かりしているものと、個人の方からお預かりしているものがあります。
内容を確認・分類し、それらをリスト化した後、写真で撮影しデジタル化しています。(点数:約2,000点以上) - 訪問する場合
地区やご自宅に眠っている古い文書や写真が無いか町会区長会への依頼や地区回覧を活用し、市民の皆様に情報提供を呼びかけました。
それらを受けて、情報をお寄せくださった方のご自宅などへ訪問し、聞き取りと写真撮影を行っています。その際、保存状況を現状記録として残すため、保存場所から動かさないようお願いしています。持ち帰った記録や写真を専門委員の意見を仰ぎ、収集や整理が必要かを検討しています。 - 文書や写真を預かる場合
令和6年度刊行予定の「図説編」は、掲載される内容の候補が決定しています。それらに関連していると思われる文書や写真はお預かりする場合があります。提供くださる方にとっても大切な資料となりますので、正式に書面を作成し、期間を定めて「借用」させていただきます。その後は、内容の整理・リスト化、写真撮影によるデジタル化を行います。極めて重要な資料であると判断されれば、さらに研究対象として扱われる場合があります。
1-4. スキャナーを導入する前に使用している機器について
現在は、主にデジタル一眼レフカメラ「Nikon D850」を使用しています。図書等の複写は複合機のCanonのC3330F-RGを使用しています。また、事務処理上庁内の各課に配置されている iX1600 を使用しています。
1-5. 資料はどのようにまとめていくのか、それをどのように社会貢献につなげていくのか
これまで図書館や文書館等ではマイクロフィルムによる媒体変換や資料収集が長年広く用いられてきました。これらは長期的な保存のために、温湿度管理が行える保存庫の確保や酢酸の吸着を皮切りとする定期的な作業点検が必須となります。
また、マイクロフィルムに記録した画像を確認する際は専用の機器設備が必要となるため、当室では今後の資料活用方法に柔軟に対応するべく、資料保存の手段としてデジタル画像による媒体変換を行うこととしました。
市史編さんにあたっては、市民に親しまれ活用される市史となるよう、編さん段階から市民の参加・参画の機会をつくるとともに、地域との連携・協力を図ることのできる事業としたいと考えています。
重ねて、市の内外を問わず、かほく市の考古、歴史、民俗、自然等に関わる有形・無形の史資料を収集し、調査研究を進める予定です。
なるべく平易な表現での記述や、写真・図版の活用など、市民に親しみやすく、わかりやすいものにするほか、旧3町の町史編さん事業以後に発見された資料や調査成果を体系的に整理・反映し、かほく市に関する基本的な資料として活用でき、正確で学術レベルの高いものとすることを市史の編集方針としています。
2. ScanSnapを採用した理由と導入効果
2-1. なぜScanSnapを導入したのでしょうか?きっかけとなった出来事や、導入前の課題について
地区やご自宅に眠っている古い文書や写真が無いか、8月にご案内したチラシを見て、PFUの方からお声掛け頂いたご縁が導入のきっかけです。
以前より、ハイパフォーマンスなスキャナーがある事を噂には聞いていました。また、市役所全庁的にDX化事業を進めている背景もありましたが、編さん事業も始まったばかりで、高性能なデジタル一眼レフカメラが既に手元にあったため、実際の導入には至っていませんでした。
導入前の課題として、既存の複写機やスキャナーでは、資料を押し付けたり、機器に挟んだりとすることで、折り目や変形などの負担がかかっていました。当然、古書や古文書にはそのような負荷をかけられません。
デジタル一眼レフカメラでの撮影は、機能が豊かである分、初めは操作も不慣れで、画像の色合いやサイズ、位置の取り方など苦労しました。カメラのセッティングも経験者から指導をうけて徐々に知識を増やしていくので、大変時間がかかるものでした。
2-2. ScanSnapの導入により、導入前と比較して便利になったことがあればお聞かせください。
ご自宅に保管されていた写真や資料をはじめ、資料をデジタル画像化として記録する作業では、読込スピードを活かし、すみやかに資料をその場で読込める点や、編さん室に戻ってきた後からでも資料の反りや色あせを補正することが可能な点が便利だと感じました。
デジタル一眼レフカメラでの記録では、一度記録した画像データの反りや歪みまでは修正しにくいというデメリットがあったのです。
読み取りからデータ保存までの作業時間という観点で言えば、「古文書」といっても「1枚物」といって「冊子」になっていない資料など形態が様々であるため、それらを一枚一枚広げて、シワを伸ばしてから撮影することを繰り返し、半日でやっと200ページ程度を記録するというスピードだった作業が、スキャナーを使用することで2時間かからずに終了することもあります。
カメラでは記録した後、SDカードを読み取り、フォルダに移し替え、データ1点ごとにタイトルを付していく作業も、スキャナーの高い読み取り精度と、読み取った文字をそのままファイル名にして保存する機能のおかげで、資料データの管理保存作業や専門員などへ提供するまでのスピードが格段にあがりました。
資料の頁をめくるだけでシャッターが切られたり、自動でフォーカスしたり、歪みを補正する機能は大変魅力的で、カメラで1ページ毎、1枚ごとに調整していた時間が半分ほどに短縮されており、作業効率が上がっていることが体感できています。
3. ScanSnapの操作は簡単でしたか?操作に迷うことはありませんでしたか?
サイズはA3までに限られてはいますが、定位置にセットし読み取りのボタンを押すだけ、という作業は大変簡単だと感じました。ある程度の高さの資料も対応できる点が助かります。
最初のソフト設定や基本操作を教えていただいたあとは、概ね迷うことはありませんでした。
4. 今後のかほく市史編さん事業計画について
まずは、市制 20 周年を記念して令和 6 年度の3月までに「図説編」を刊行予定です。その後、 令和7年度より「資料編」を年度ごとに「古代・中世」、「寺社」、「民俗」、「近代」、「考古」、「近世」、「現代」、「集落」の順で続けて刊行し、最後には市制30周年の記念とするべく令和15年度完成を目途に「通史編」を集大成として市民の皆様にお届けする計画です。
5. ICTを活用した市民サービス向上の取り組みが他にもあれば教えてください。
「紙の少ない自治体日本一」を目指して、業務用スキャナーのfiシリーズを用いて帳票の自動入力から業務改善を庁内では行っています。乳幼児健診問診票・予防接種申告書などの入力時間を約60%も削減できています。
ScanSnap SV600が、市史編さん室業務の効率化の一助となれば幸いです。取材へのご協力、誠にありがとうございました。
ScanSnap iX1600
毎分40枚・80面の両面高速読み取りを実現し、簡単操作のタッチパネルを搭載。Wi-Fiの5GHzに対応し、原稿サイズ、色や両面・片面を自動的に判別。 驚くほど簡単、スピーディーに電子化します。 |
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ScanSnap SV600
厚みのある本や雑誌、新聞などの電子化に最適な非接触スキャナー。原稿を均一に読み取るVIテクノロジーやブック補正機能により、A3サイズまでしっかりクリアに読み取れます。 |
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この記事を書いた人
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