夫は技術書の「自炊」に、妻はテレワークの編集作業に。ソフトウェアエンジニア・白山文彦さん夫妻のScanSnap活用法
IT技術の世界で若くして頭角を現し、現在はアメリカの大手テック企業の社員としてソフトウェア開発に携わる白山文彦さんが、ScanSnapのヘビーユーザーでもあるという情報を耳にしました。Twitterのフォロワー数も1.6万人と、その動向が注目される気鋭のエンジニアはScanSnapをどのように活用しているのでしょうか。シリコンバレーに単身赴任中の白山さんに連絡を取り、リモートでお話をうかがいました。
目次
シリコンバレーの"ど真ん中"でモバイルアプリ開発に携わる
白山文彦さんのアメリカでの職場はカリフォルニア州サニーベールにあります。いわゆるシリコンバレーの主要都市の一つであるこの街で、白山さんは世界的なテック企業に在籍し、ソフトウェアエンジニアとして働いています。
「確かにシリコンバレーの"ど真ん中"ではありますね。そのせいか渡米の動機や志をよく聞かれますが、特に深いものでもなく、『IT技術者をするにあたってアメリカで働いてみたいな』と思ったという、そのくらいの軽いノリです」
とはいえ、そこはシリコンバレー。会社で仕事をするだけでもエンジニアとしての力量アップにつながるといいます。また白山さんは北陸先端技術大学院大学(JAIST)に社会人として在籍し、自らの実力を磨いてもいます。
「会社ではモバイルアプリ開発を手がけていて、現在の立場は自分の希望するところと遠くはないと思っています。僕は自分の作ったプロダクトを世界に使ってもらいたいと思っていて、今はその道半ばといったところでしょうか」
うかがうと、白山さんのScanSnap活用法もソフトウェアエンジニアとしての力量アップに直結したものでした。読むべき技術書をスキャンしてPDF化する、いわゆる「自炊」です。さらに、日本で編集の仕事をしている奥様も、コロナ禍によるテレワークに対応するためScanSnapを大いに活用しているとか。
「僕もScanSnapを1台持っているし、妻も1台持っています。モデルは、僕が少し古い『iX500※』、妻は最近買った『iX1500※』です。ですので、我が家としては2台のScanSnapを使っていることになります」
※現在ScanSnap iX500、iX1500は販売終了しており、現行の後継機種はScanSnap iX1600です。
テレワークで困難になったワークフローがScanSnap導入によって自宅で可能になった
では、白山さん自身と奥様、それぞれのScanSnap活用法について詳しく聞きましょう。
「妻のほうがエピソードしてはタイムリーなので、先に妻の話からしますね。妻は出版社の編集者で、専門的な書籍や雑誌を編集しています。その仕事内容はまだまだアナログで、著者からの原稿などが届くと、それがデータであってもいったん紙に出力し、校正・校閲の赤ペンを入れて送り返すという業務がとても多いんですね。ところがコロナ禍で在宅勤務になると、そのアナログなワークフローができなくなってしまい、大変困ることになりました」
編集の仕事では、著者が執筆した原稿や、活字に組み上がってきたゲラ(校正)などに対して、それぞれの初期段階で修正・提案・相談が多く発生します。そのため、相手がそれらの事項を見逃すことなく一覧できるよう、紙の上に赤字を直接書き込むことが多いのです。この工程がスムーズに進まなくなると、本作りそのものがおぼつかなくなります。
「そこに至って妻が、僕が『自炊』に使っているScanSnapを見て『それは何? スキャナー? ちょっと使わせて』ということになったんですね」
これが大正解でした。自宅のプリンターで出力した原稿に赤字を入れたら、ScanSnapでスキャンしてPDF化し、メールなどを使って相手先に送信すれば一件落着です。
お嫁さんが原稿をスキャンするためだけに出社すると言い出したので、ScanSnapを出して「これで勘弁して、お家に居て🥺」とお願いしたら、その出来上がりの良さに「すげえ、なんでこんなものが家にあるんだよ」とちょっと引いていたので、プログラマは全員持ってる(適当)と言っておきました☺
-- しろやま (@fushiroyama) May 11, 2020
白山さんが2020年5月に投稿したツイート。テレワーク中にスキャンのためだけに出社すると言う奥様に、白山さんがScanSnapを見せた一幕。これを機に奥様のテレワークがスムーズになりました。
「妻にとってはScanSnapが渡りに舟でした。会社であれば必要なときに複合機でコピーやスキャンができるのに、それができなくなってしまった。かといって書籍では100枚以上にもなるゲラをコンビニでスキャンするのも現実的ではない。それがScanSnapによって、より手軽に速くできるようになったのですから、これはすごいことです」
これを機に奥様は「iX1500」を購入し、白山さんが単身渡米したあとも日本でテレワークに積極的に対応しながら編集の仕事を続けているそうです。
「妻は自分で同人誌を発行する活動も長くしていて、スキャナーなど機器の情報に接する機会は多いはずなのに、ScanSnapを知りませんでした。そういう人が多いとしたらもったいないように思います。もっと多くの人がScanSnapのことを知れば、テレワーク対応に限らず、いろいろなことが変わってくるかもしれません」
エンジニアはみんな持ってる(要出典)ScanSnap、妻も在宅ワークでワイのを使って大ファンになりついに自分用のやつを買っていた☺pic.twitter.com/87JzKfkf7O
-- しろやま (@fushiroyama) December 15, 2020
こちらは2020年12月のツイート。ScanSnapの大ファンになった奥様が自分用の「iX1500」を購入したことを、写真とともに紹介してくれました。
これまでに「自炊」した本は500冊以上!ITの世界で「生き残る」ためにScanSnapが欠かせない
では、白山さん自身の使い方、「自炊」について。白山さんは技術書のスキャンをなぜ、どのように行っているでしょうか。
「『自炊』する理由は、どうしても本を読む必要があるからです。読まないとIT技術の世界で生き残れないので。5年ほど前にScanSnapを手に入れて以来、もう500冊以上はPDF化しています。もちろん電子書籍になるのを待てばよいのですが、今ですら紙の書籍より1~2か月は発行が遅れるのが常です。そのタイムラグが惜しくて紙の書籍を買ってしまうんですね。そもそもScanSnapを買ったのも『自炊』のため、読書のためです」
現在手元にある「iX500」は日本から持参したもの。これを使って白山さんは月に数冊のペースで技術書をスキャンしているそうです。新しい本がどんどん出るため、スキャンが間に合っていない本も少なからず溜まっている状況だといいます。
「内容はやはりプログラミング関係が多いですね。僕はオペレーティングシステムに近い層の開発を担当しているので、たとえば『C++』という言語でネイティブコードが書かれていれば、僕自身はあまり得意ではなかった『C++』もやらなきゃならない。そこで『C++』を仕様レベルで知りたい人が読む、1300ページもある分厚い専門書を買うわけです」
「最近では『C++』のようにネイティブコードを書ける『Rust』という言語が注目されていて、それに関する専門書も出てすぐに買いました。結果的には2か月後にKindle版が出ましたが、待ちたくなかったので。技術書以外では大学院の関係で、離散数学など数学の本が多いですね。僕はそのあたりがちょっと弱いので、本を買って勉強しています。この種の本は電子書籍にならないものも少なくありません」
具体的な『自炊』方法も聞きましょう。断裁機を使用しているのでしょうか。
「業務用の大きな断裁機ではなく、50枚くらいに対応しているものを使っています。専門書の多くは厚いので1回では断裁できませんが、そのあたりはノウハウがかなり確立されています。表紙の厚紙を剥がしてからカッターで50枚くらいずつに切り分けて、それから糊付けの部分を断裁機で落として、あとはScanSnapにセットしてどんどんスキャンしていくだけ。ごくシンプルです」
以下、白山さんの書籍スキャンメソッド。
1300ページある「C++」の本などの場合は十数回のスキャンを行うことになりますが、分解からスキャン終了まで1時間もかからないといいます。
「本の分解はあっという間に終わりますし、ScanSnapがとにかく速いので。僕はよく、テレビを観ているときなどのリラックスタイムにスキャンしています」
スキャンしたPDFにはOCRをかけ(ScanSnapでもできますが白山さんはAdobe「Acrobat Pro」を使用)、少なくとも1冊の書籍内で検索が可能な状態にしています。こうしてPDF化した書籍を、白山さんは主にAndroidの携帯端末を使って読んでいるそうです。
「僕はAndroidユーザーなので、Androidで読むことが多いですね。大きさからするとiPadのほうが読書に適しているので最近はiPadで読むこともありますが、iPadは重いので、僕としてはAndroid端末のほうが好みです」
「Androidで読むときには『EBookDroid』というソフトを愛用しています。メインストリームかどうかはわかりませんが、使っているのには理由があります。Androidには昔、SDカードなどの外部ストレージを入れられる端末があって、少なくとも当時はそれがないと書籍500冊分、計70GBほどになるデータを入れられませんでした。それで外部ストレージをサポートしている数少ないアプリの一つだったEBookDroidを使うようになって、今もそのまま使用しているという経緯です」
Android端末で本を読むシチュエーションは、たとえば移動中の飛行機の中。なかなか読めていなかった本を読むのに最適な機会といえます。また携帯端末に限らず、PCが手元にある環境であればPCで読み、数学の勉強会を開くときにはPCで読みながらiPadでノートを取るということをしているそうです。
ところで、スキャンした何冊もの書籍データを外部ストレージなどで一元的に管理したいという思いは「自炊」をする多くの人が抱くところだと思われますが、過去に読んだ本を引き出して再び読む機会は多いものなのでしょうか。
「まさに僕は書庫を持ち歩きたいタイプで、プライベートで読む漫画も含めて全部入れていますが、そのご指摘はもっともで、すべての本を頻繁に再読するわけではありません。もともと技術書自体、わりと旬が短い傾向にありますから、流行りの技術を1~2時間で網羅しましょうといった趣旨の書籍を数年後に読み返すことはまずないでしょう。ただ、『C++』の仕様書のように根源に迫る本は色褪せることがないし、新しい本が出るにせよ基本原理はさほど変わらないので、読み返すことはけっこうあります。さらに数学の本になると原理が500年くらい変わりませんから、時代の移り変わりとは無関係にいつでも読むことができます」
網羅的な情報収集には書籍が便利。今後はクラウドサービス活用も視野に入れたい
ソフトウェアエンジニアという先端的な職種において、書籍という伝統媒体中の伝統媒体が重要な役割を果たしているのは興味深いことです。
「僕の場合は書籍がすごく便利なんですよ。情報を網羅的に集められるので。もっと深く集めようと思ったら論文を読んで一次情報に当たる必要はありますが」
「今読んでいるペースは、たぶん月平均3~4冊というところだと思いますね。それでも僕は少ないほうではないでしょうか。もっと読む人は読むと思います」
白山さんが「自炊」する書籍は、英語などの原書でしょうか、それとも日本で出版された書籍が多いのでしょうか。
「圧倒的に日本の本ですね。それに、先ほどの『C++』の本は翻訳ですが、基本的に日本人の著者が自分で書いた本を買うことが多いです。英語で読書することはあまりありません。大学院で読まなければならない論文は英語で読みますが、読書でそういう苦労をしようとまでは思いません」
「ただ日本では、しっかりした技術書が出にくくなっている傾向があるんですね。実は僕自身、技術書を出した経験があるので、それがどれくらい儲からない仕事か理解しています。今は紙の書籍から電子書籍への過渡期だと思いますが、このまま減っていくとしたらかなり由々しき問題だと思っています」
ScanSnapを読書以外に使うことはあるでしょうか。たとえば書類をスキャンする、何かプライベートで活用するなど。
「僕はほとんどありませんが、大学院の課題で記入を前提にしているものがときどき出るので、そういうときに使うことはもちろんあります。学業とScanSnapの親和性はすごく高いだろうと思いますね。妻に関しては、膨大な同人誌をスキャンして省スペースを実現するという使い方をしています」
では「自炊」に関して、クラウドストレージを利用する予定はあるでしょうか。 ScanSnapなら「ScanSnap Cloud」を経由して、PC抜きでスキャナーから直接、好みのクラウドサービスにデータをアップすることができます。
「なるほど、それはおもしろいですね。そうした機能があることは大まかに把握していましたが、データ量が大きいこともあって今まではPCにつないでスキャンする方法しか取ってきませんでした。でもデータをローカルだけで保持するのは大変なので、今後は有料のクラウドサービスに移行させるかもしれません」
その暁には、またぜひ使い勝手などをお聞かせいただきたいと思います。白山さん、リモート取材へのご協力、ありがとうございました。
※ 著作権の対象となっている新聞、雑誌、書籍等の著作物は、個人的または家庭内、その他これらに準ずる限られた範囲内で使用することを目的とする場合を除き、権利者に無断でスキャンすることは法律で禁じられています。また、スキャンして取り込んだデータは、私的使用の範囲でしかご使用になれません。
■取材協力
白山 文彦(しろやま・ふみひこ)さん
アメリカに出稼ぎに来たお父さん。
Twitter:@fushiroyama
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この記事を書いた人
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