2025.3.21 |
請求書のペーパーレス化・電子化の進め方を解説!メリットから注意点、成功事例まで

見積書や請求書、納品書などの証憑を電子データに変換して、紙を使用せずに保存・管理する「ペーパーレス化」は、紙媒体を多く取り扱う経理業務において急速に進められつつあります。経理業務のペーパーレス化は、電子データでの一元管理による業務の効率化やコスト削減とともに、企業が課題とする「環境負荷低減(SDGs)」や「働き方改革の実現」に対しても、効果が期待される施策の1つです。
今回は、請求書の電子化にともなう、ペーパーレス化のメリットや導入の際の注意点、スキャナーを利用したペーパーレス化の成功事例をご紹介します。
1. 請求書の電子化およびペーバーレス化とは。推奨されている背景
まず、請求書の電子化とは何かについて、また、電子化およびペーパーレス化が推奨されている理由について、その背景とともにご紹介します。
1-1. 請求書の電子化とは
企業が受け取る請求書には、
- 「電子請求書」「Web請求書」などと呼ばれ、オンラインで取引先から送付されてくるボーンデジタルの電子データによる請求書
- 従来通り、紙に印刷・押印され、郵送されて送られてくる請求書
の2種類があります。
ここで取り上げる「請求書の電子化」とは、紙で受け取った請求書を複合機やスキャナーでスキャンし、そのイメージデータを電子データで保存することを指します。

1-2. 請求書の電子化が進む要因
現在、請求書の電子化、ペーパーレス化が急速に進んでいる背景には、次の2つの要因があります。
(1) 法律への対応(法令遵守)による、経理業務の煩雑化
2023年末までの改正電子帳簿保存法の宥恕期間が終了し、2024年1月から、電子データで受け取った国税関係書類は、電子のまま保存することが完全義務化されました。これにより、電子データで受け取った請求書を紙に出力して保存することは許されなくなっています。
そのため、「電子データの請求書はデータで保存し、紙の請求書は紙で保存する」方法では、電子データと紙の二重管理が必要になり、管理の煩雑化と業務負担の増加の要因になってしまいます。
これを解消するには、紙の請求書をスキャンして電子化し、電子データの請求書と合わせて一元管理・保存する方法がもっとも有効です。そのため、紙の請求書の電子化を進める企業が増えています。
(2) ペーパーレス化による、「環境負荷低減(SDGs)」への取り組み
今、企業には、DXの推進とともに持続可能な社会を実現する事業の在り方も求められています。紙の請求書を電子化して保管し、原本を廃棄(*)すれば、ファイリングするためのファイルやホチキスが不要となり、保管スペースが削減されれば、オフィスを縮小することができます。また、電子化により、PCなどからの検索性が向上するため、原本を探す目的で出社する必要がなくなり、公共交通機関や自動車の使用によるCO2排出量が削減できます。
*:原本を廃棄する場合は、改正電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たす必要があります。
2. 請求書のペーパーレス化のメリット
法律への対応とSDGsへの取り組みを背景に増加するペーパーレス化ですが、同時に次の3つのメリットが生じます。
2-1. 保管コストを削減できる
改正電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たせば、紙の請求書の原本は廃棄することができるため、紙書類の保管場所にかかるコストを削減することができます。

2-2. 業務を効率化できる
紙の請求書を電子化し、ペーパーレス化を進めることで、必要な書類をPCなどで検索できるようになり、紙の請求書のファイリングやその中から該当の請求書を探す必要が無くなります。また、データ化すれば、必要な情報を即座に確認・共有することが可能になるため、経理業務はもちろん、関連する他の業務の効率化にも寄与します。

2-3. リモートワーク&ハイブリッドワークを促進できる
請求書の受け取りは必要になりますが、担当者本人でなくとも、そのとき出社している誰かが受け取ってスキャンすれば、担当者は在宅のまま起票業務を進めることができます。また、経理担当者は出社しなくても確認・承認手続きが可能になります。業務を実行する場所の制限がなくなるため、リモートワークやハイブリッドワークを促進でき、通勤時間を削減し、ワークライフバランスの改善など、「働き方改革」の実現につなげることができます。

3. 請求書のペーパーレス化を実現する3つの方法
では、実際にペーパーレス化を実現するためには、どのような方法があるのでしょうか。
ここでは、請求書処理業務のペーパーレス化をするための具体的な方法を紹介します。
3-1. 紙で受領した請求書を、複合機やスキャナーで電子化して保管する
まず1つ目として、紙で受領した請求書を複合機やスキャナーで電子化して保管する方法があります。ただし、その場合は、改正電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たしている必要があります。例えば、「検索機能の確保」があり、「取引年月日」、「勘定科目」、「取引金額」を条件にしてデータ検索できることです。「検索機能の確保」に対応する方法は、以下記事の2章にて解説しています。
その他のスキャナ保存の要件について、詳しく知りたい方は「電帳法お役立ち情報」の「スキャナ保存の保存要件」をご参照ください。
3-2. 取引先から電子発行された請求書を受領する
2つ目としては、取引先から送ってもらう請求書を、紙ではなく、メール経由やEDI取引などの電子データで受領して保管する方法です。
電子取引データを電子保存する際も、「真実性の確保」「可視性の確保」といった法律で定められた要件を満たす必要があります。「真実性の確保」とは、書類データの訂正や削除を行った場合に履歴が残るシステムか、訂正や削除を行えないシステムを利用し、やり取りと書類の保存を行うことです。「可視性の確保」とは、前章の3-1. で取り上げた「検索要件」などが、それに属します。
請求書を電子データで受領するためには、取引先の協力が不可欠です。そのため、「取引先から電子発行された請求書を受領する方法」だけでは、完全にペーパーレス化できる可能性は低いといえるでしょう。したがって、「紙で受領した請求書を、複合機やスキャナーで電子化して保管する方法」と併用する方法を採用することが現実的です。
3-3. 請求書の受領・保管を外部に委託する
上記以外でペーパーレス化を実現する3つ目の方法としては、請求書の受領・保管を外部に委託する方法があります(請求書受領サービス)。このサービスでは、紙の請求書の受け取りから、その電子データ化、システムへのアップロードや保管まで、請求書に関する業務全体を効率化できます。
4. 請求書のペーパーレス化の進め方と注意点
請求書のペーパーレス化を進めるにあたってのプロセスと注意点を紹介します。
4-1. 電子化のための、ITツールの導入
紙で受け取った請求書を効率的に電子化するには、大量の書類を高速で読み取ることができる、ADF(自動給紙機構 : Automatic Document Feeder)を備えた業務用スキャナーがおすすめです。「ADF付き業務用スキャナー」は、原稿台に原稿を1枚ずつ置いてコピーやスキャンをする「フラットベッド方式スキャナー」に対して、自動給紙および連続してスキャニングすることが可能なタイプのスキャナーで、「シートフィードスキャナー」とも呼ばれています。
業務用スキャナーはスキャン機能に特化した「専用機」のため、読み取り品質や使い勝手など、作業を効率的に行い、手間を削減できるいろいろな機能や特徴を備えています。
複合機とスキャン専用機の違いについては、次の記事で詳しく解説しています。
さらに、請求書の情報を業務システムにデータ入力する作業を効率化するためには、画像データから文字情報を抽出するAI-OCRの導入をお勧めします。
4-2. データ消失リスクやセキュリティへの対策
重要書類のデータ消失リスクへの対策としては、DLP(Data Loss Prevention : データ損失防止)ソフトの導入やバックアップ環境の整備が必要です。DLPは、あらかじめ設定したポリシーをもとに機密情報や個人情報などの重要データのみを特定・判別し、それらを常に監視する、情報漏えいを防ぐためのセキュリティ対策システムです。ユーザーではなく、データを中心にしたシステムである点が特徴で、機密情報の持ち出しの可能性が検知された場合には、アラート通知の発信や、重要データと認定された情報の送信、コピーの制限、あるいは操作をブロックすることで、機密データの流出を防ぎます。
4-3. 社内浸透と業務フローの見直し
最後に、ペーパーレス化のための請求書の電子化に向けた準備として、上記を実施するための新たな管理ルールの制定とそれを社内に浸透させる必要があります。具体的には、スムーズかつ正確に請求書を電子化するための社内フローの見直しと整備をして、従業員や部署によって、保存や管理方法に差異が発生しないように、社内でルールを統一することなどが挙げられます。
5. スキャナ保存で、請求書のペーパーレス化を実現した成功事例
5-1. 証憑のスキャンで電帳法「スキャナ保存制度」に対応し年間415万円の書類管理コストを削減【サッポロビール株式会社様】
サッポロビール株式会社では、書類の配送や保管にまつわるコストが発生していただけではなく、起票や承認にも工数を要しており、全国の営業拠点で発生する大量の紙の伝票に対する処理業務で、大きな負担が生じていました。
それに対して同社は、改正電子帳簿保存法「スキャナ保存制度」への対応を機に、2022年から株式会社PFU(以下、PFU)のADF付き業務用スキャナー「fi-7160(販売終了済。後継機:fi-8170)」を全国の営業拠点に配置。請求書のデジタル化ならびにワークフローシステムと連携することで、改正電子帳簿保存法に準拠したペーパーレス化を推進しました。これにより、伝票保管の業務工数、紙代などの物品費、配送費、倉庫移出作業工数の削減を実現。加えて処理速度が迅速になり、営業担当者や内勤社員による起票、上長の承認、製本、経理部の確認の工数を削減しただけでなく、営業・経理担当者のテレワークでの起票や承認が可能になったことで、働きやすさが向上し、支払処理漏れリスクも軽減しています。
5-2. 経費精算の証憑を「fiシリーズ」でデータ化、スムーズな電帳法対応を実現【株式会社サカタのタネ様】
株式会社サカタのタネでは、間接費の経費精算を改正電子帳簿保存法に対応させるため、同社が所有・管理する農場を含めた各事業所で発生する証憑のデータ化が急がれていました。そこで、PFUのA4コンパクトスキャナー「fi-8040」計23台を、本社と各事業所に導入するとともに、各自が受領した領収書や請求書をスキャンし、イメージデータをワークフローシステムに連携する運用を構築。これにより、証憑のスムーズなデータ化が可能になり、改正電子帳簿保存法に対応した運用の実現に成功しています。ほかにも申請ワークフローの効率の向上や証憑の保管スペースの問題も解決し、生産性の向上とコスト削減でも成果を上げています。
6. 社内ワークフローのペーパーレス化を強力に支援する、業務用イメージスキャナー「RICOH fi Series」
PFUが提供する業務用イメージスキャナー「RICOH fi Series」は、ADF機能により、請求書をはじめとする紙の証憑を、高速・両面読みで大量かつ短時間に処理するだけではなく、優れた給紙搬送性能で、薄紙や折りたたまれてシワがついた証憑、非定形サイズの証憑も、安定して読み取ります。

また、高度な「自動二値化技術」により、画像データをシンプルにすることで、文字の視認性が高い画像を生成し、後工程のOCRやAI-OCRの文字認識精度の向上を支援。

さらに、異なるサイズ・向きの原稿をまとめて読み取った場合、自動で最適なイメージデータを出力する「画像処理機能」や、バーコードの認識結果をファイル名やフォルダー名に指定して自動的に保存する「ファイル・フォルダーの自動仕分け機能」により、紙の証憑を、業務で活用可能なデジタル情報へとすばやく正確に変換して、社内のワークフローのペーパーレス化を支援します。

電子帳簿保存法スキャナ保存に対応するには、「法的要件を満たして正しく保存できること」「スピーディかつ効率的にスキャンできること」「書類を受け取ったらすぐにスキャンできる環境であること」などのポイントを踏まえて適切なスキャナーを選ぶことが重要です。次に紹介するホワイトペーパーでは、「RICOH fi Series が電帳法スキャナ保存に最適な5つの理由」およびPFUがお勧めするモデルについて詳しくご紹介しています。
7. まとめ
請求書の電子化が急速に進んでいる背景には、「法律への対応」「ペーパーレス化による環境負荷低減(SDGs)」の2つの要因があります。
ペーパーレス化のメリットは、「紙の保管・管理コストの削減」「業務の効率化」「リモートワーク・ハイブリッドワークの促進」であり、それを実現するためには、請求書の電子データでの受領の促進と並行して、紙で受領した請求書をスキャナーなどで電子化し、保存・管理する方法が現実的だといえるでしょう。
ただし、スキャンした請求書の電子データの保管においては、改正電子帳簿保存法の保存要件に則っている必要があり、不備とならないよう注意が必要です。
PFUは、業務用イメージスキャナー「RICOH fi Series」のご提供を通して、お客様のビジネス変革の実現をサポートいたします。
- 請求書を電子化し、ペーバーレス化を促進したい
- 業務用イメージスキャナー「RICOH fi Series」について、もっと詳しく知りたい
- 文字認識精度やレイアウト解析精度の高い「AI-OCR」について、もっと詳しく知りたい
といった関心をお持ちの方は、お気軽にPFUへご相談ください。