ScanSnap

スキャナー + iPad + Google Classroomが授業に部活に生徒自身の学びをサポート。デジタル採点で校務効率化も推進中

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PFUの「ドキュメントスキャナー ICT教育支援プロジェクト」に応募した石川県の金沢桜丘高校は、「いしかわニュースーパーハイスクール」の指定校でもあります。コロナ禍にも学びの提供を止めることなくオンライン授業に切り替え、休校が明けた現在も、多くの先生方が授業に部活動に、スキャナーをはじめGoogle Classroom、ロイロノートを積極的に活用しています。

ICT担当の教員が一人でリードしていくというのではなく、皆で意見を出し合いながら、学校全体で積極的にICT活用を進めているという雰囲気が感じられます。

金沢桜丘高校の永山皓貴(ながやま こうき)先生に、同校のICT環境と、スキャナー導入によるデジタル採点や授業、さらには部活動への効果について、お話を伺いました。

目次

    紙の情報を、もっと自由に 情報整理に長けたスキャナーScanSnap

    全教員にiPadを配布。職員会議のペーパーレス化で便利さを実感。そしてICT活用が加速した。

    「金沢桜丘高校では、2016年時点で全クラスにプロジェクターとスクリーンが設置されました。2年後の2018年にはiPadが教員全員に支給され、これを受けて職員会議が完全ペーパーレスになりました」

    それまでiPadを使ったことがなかった先生方も、「使わないとついていけない」という状況になり、使ってみると「意外と便利だな」と実感。そのあとは自然にICT授業への取り組みが多くの先生方によって加速していったそうです。

    環境面の整備はさらに進められました。

    「現在の桜丘高校では、プロジェクターとiPadをスムーズに連携させるためにApple TVが各教室に1台ずつ設置されています。先生方は、教室に入るとiPadをプロジェクターに接続し、すぐに授業を始められるようになっています」

    各教室に可動式スクリーンとプロジェクター、Apple TVが常設されています。

    また石川県の県立学校では、2020年度に高速大容量のネットワーク環境が整備されるなど、ICTを活用した教育環境の整備が一気に進んでおり、校内でWi-Fi環境が使えることも追い風のひとつといえそうです。

    実は永山先生は個人的にScanSnap S1500(2009年発売)のユーザーでもありました。

    「ScanSnapは"簡単で使いやすい"という印象がありました。学校で紙媒体をデータ化するのは手間がかかるというのが一番のネックだったのですが、校長から今回のプロジェクトに応募したいといわれたときも、ScanSnapがあればスムーズにいくな、とイメージできました」

    「できそうな教科から」試してみたデジタル採点。やってみたら「いいね!」となった。

    2020年11月にPFUが実施した「ドキュメントスキャナー ICT教育支援プロジェクト」では、ScanSnap iX1500と業務用スキャナーfi-7160が、採点ソフト『デジらく採点2普通紙対応版』(以降、『デジらく採点』)とともに提供されました。

    ※現在ScanSnap iX1500は販売終了しており、現行の後継機種はScanSnap iX1600です。

    ――いずれもA4サイズ用紙の高速スキャンを得意とするスキャナーですが...。

    「高校のテストの様式はB4サイズが多いんです。『デジらく採点』を今回提供してもらったモデルのスキャナーで使用するには、答案用紙をA4サイズに変えないといけない。それだと生徒の解答欄が狭くなって書ききれないんじゃないか、という懸念がありました」

    うまくいかないかもしれない、という心配がある一方、できるなら効率化を進めていきたいという現実も。多忙な先生方にとって時間は何よりも貴重です。無理はしたくない、けれども、効果があるならば新しいことも試していきたい。

    話し合うなかで「できる教科からやってみましょう」という声があがり、まずは1教科、"社会と情報"で試してみることになったそうです。

    ――試してみた教科について、採点時間はどのくらい短縮されたのでしょう?

    「最初は分からない部分もあったので解答用紙の作成に時間がかかりました。採点は効率化されたのですが、トータルでは同じ時間、という結果でした。

    それに対して、「初めてやって、かかった時間が同じということは、作成に慣れてスムーズになったら時間短縮できるよね?」という意見が出まして。

    「じゃ、他の教科もやってみようか」となり、次は家庭科、保健、と試していくうちに「いいね!」ということが分かってきました。

    教科によっても変わってきますが、まる1日かかっていた採点を半日ほどで終えられるようになったという感覚です」

    自由に意見を出し合いながら、自然に柔軟に取り組みが進められていく、この空気感。先生同士の風通しの良さが感じられます。

    ――『デジらく採点』の使い方に関しては、皆さんスムーズでしたか?

    「最初に使った先生が、どんなところでつまずいたかをメモしておいてくださり、他の先生方はそのメモを確認しながら使うことができたので助かりました。

    さらに分からなかったことについて、先日スキャネットさん(『デジらく採点』の開発会社)の講習を受けることができました。疑問点も解消されたので、ぜひ今後も使っていきたいと考えています」

    ――答案をデータで保存できるメリットは何でしょう?

    「あってはならないことなのですが、万が一にもテスト後の不正が起きないように、また生徒に答案を返した後にも点数を確認できるように、答案用紙をコピーして年度の最後まで保管する、という先生が多かったんです。

    しかし使わないかもしれない紙をたくさん持っておくのは非常に無駄です。

    『デジらく採点』の場合は一度に採点できるという効率の良さもありますが、データとして答案を持てるという点がいい、という意見が増え、どんどん使うようになったら「いいね!」となっていきました。

    今後、さらに他の教科にも活用を広げていけたらと思います」

    生徒の手書きプリントをiPadに直接送信、「ここがいいね!」を書き込んで簡単に共有。

    「ScanSnapには、スキャンしてパソコンを経由せずに直接iPadにデータを送れるアプリ(※)があるので、自分のiPadにスキャンしたデータを入れて、ちょっと編集したり加工したりしてからGoogle Classroomで共有しています。パソコンを経由するよりも直感的に操作できるのでそんな運用にしています」

    ――Google Classroomで共有する前にiPadではどんな目的で編集されるんですか?

    「たとえば、図に説明を書き込みたいときがあります。iPadではペンシルで自由に書き込みできますし、簡単なアプリがあるので編集もできます。

    また生徒が授業でプリントに書いた答えのなかに、他の生徒にも参考にしてほしいものがあったりします。そんなとき、スキャンしてからデータ上で「この部分のまとめ方が上手なので、みんな参考にしてね」というふうにコメントを入れ、それを共有することがあります。

    添削&コメントは数学科教諭 神林良治先生です。味のあるコメントが嬉しいですね。

    生徒のプリントにそのまま直接手書きで書いてしまうこともないですし、他の生徒と一緒に見ることができます」

    授業に、部活動に、ロイロノートやGoogle Classroomで生徒自身による学びをサポート

    金沢桜丘高校では、休校が明けた現在も、ロイロノートやGoogle Classroomが積極的に活用されています。具体的な場面を紹介していただきました。

    「授業で使ったプリントをスキャンして、生徒があとで見直しができるようにGoogle Classroomにあげています。

    授業では、説明の途中や解答部分を空欄の状態で配布しますが、空欄部分を解答で埋め、その日の授業内容について先生が手書きでコメントを入れたものをスキャンして、授業後に共有するようにしています。

    先生の解説が書き込まれたプリントを家で確認することで、生徒はその日の授業についていけなかったとしても、「あぁそういうことだったのか」と自分で復習できますし、欠席した子も、その日の授業内容を知ることができます」

    ――部活動にもGoogle Classroomを活用されているそうですね。

    「大会に出場するときの健康チェックなど、提出する書類の様式が決まっているものがいろいろあります。顧問の先生は開催元から紙の資料をもらっていますが、それをコピーして生徒に配布するのではなく、スキャンして共有しています。

    生徒は必要な書類を紛失することもないですし、どんな紙が配布されているか、いつでも確認できます」

    ――確かに部活動でも書類を配布する場面は多いですね。ほかにはどのように活用されていますか。

    「これまでの部活動において、先生からの指導は、"言葉"では行ってきたのですが、"見せる"部分があまりできなかったと思います。

    それが現在では、お手本となる動画や、生徒本人の練習風景をiPadで撮影して共有する、ということが可能になりました。生徒は家に帰ってからも、フォームや試合運びなど、何が良くて、何が悪かったかを自分で分析・研究することができます。

    また、競技に関する技術的な解説やトレーニング方法に関する資料をスキャンして共有しておくことで、その日の練習の意図を前もって伝えることもできます。

    授業だけでなく、部活動でも、生徒とのコミュニケーションをとるという点において、今までにないほど効率の良いツールであり、発展した活動ができるようになったと思っています」

    担任が変わっても、その生徒を深く理解できるように

    学校でスキャナーをこんなふうに使えたら......のイメージそのままで活用されているのですが、さらに将来的に実現できると良いと思われることについて、fiスキャナーの活用アイデアをお聞きしました。

    「fiスキャナーに標準添付のソフトでは、QRコード等を使って生徒ごとのフォルダに自動的に仕分けすることができますが、そういった仕分け機能を使って一人の生徒のいろいろな紙の記録をスキャンして生徒ごとにフォルダに集められないか、ということが頭に浮かびました。

    たとえば1年生のときの定期テストの答案を3年生になってから見たときに、どの分野のどんな問題を間違えていたかが分かります。

    また高校生活の間には学校の成績だけでなく、部活動でもらった賞状や、振り返りとして書いた作文などもあります。

    高校1年生から、2年生、3年生へと学年が上がったときに、それぞれの生徒が今までどんなことを頑張ってきたかという記録を1つのフォルダにまとめてデータで残しておくことができるなら、学年が上がり、担任が変わっても、その子のことをより深く理解してあげられるんじゃないか、と。

    実現するには課題もありますが、そんなことができたらいいなと思います」

    永山先生、ありがとうございました!

    創校から100年を超える伝統を守りつつ、常に新しいことに挑戦し続ける金沢桜丘高校。GIGAスクール構想以前から「教える側」の環境整備が進められていた同校では、スキャナーの導入により「紙のデジタル化」という最後のピースも埋まりつつあります。ICT活用に前向きな風土がすでに醸成されていたからこそ、新しい取組みも先生方自身によって柔軟に進められていくのでしょう。

    校務を効率化し、生徒自らによる学びの機会を支える事例として、ぜひ参考になさってください。

    ■取材協力

    永山 皓貴

    永山 皓貴(ながやま こうき)先生
    石川県立金沢桜丘高等学校 進路指導課 教諭(保健体育)。
    陸上競技部顧問。

    石川県立金沢桜丘高等学校

    石川県立金沢桜丘高等学校。

    2020年に創立100周年を迎えた伝統校。大正時代に建てられたという三桜会館が歴史を感じさせる。
    「桜丘」の名前のとおり、校舎へ続く坂道には桜並木が続き、毎年その季節には校舎のある丘全体が多くの桜の花に包まれる。卒業生は30,000名を超え、各分野で活躍。

    ※ 「QRコード」は、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
    ※ その他の社名、製品名は、一般に各社の商標または登録商標です。
    ※ 著作権の対象となる教材をスキャンし、授業の範囲で配布することは「授業目的公衆送信補償金制度」に"準ずる範囲"で権利者に個別の許諾を要することなく利用可能です。詳細は文化庁ホームページをご参照ください。
    ※ 著作権の対象となっている新聞、雑誌、書籍等の著作物は、個人的または家庭内、その他これらに準ずる限られた範囲内で使用することを目的とする場合など、著作権法で定められた例外を除き、権利者に無断でスキャンすることは法律で禁じられています。なお業務利用では、著作権者の許諾が必要となることがありますので、著作権法、およびご利用になる企業や団体で定める利用規則等に従って利用して頂くようお願いします。

    ScanSnap_iX1600

    ScanSnap iX1600

    毎分40枚・80面の両面高速読み取りを実現し、簡単操作のタッチパネルを搭載。Wi-Fiの5GHzに対応し、原稿サイズ、色や両面・片面を自動的に判別。 驚くほど簡単、スピーディーに電子化します。

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