ScanSnap

カレー沢薫のなりゆきデジタル化ぐらし〜Vol. 9〜

カレー沢薫のなりゆきデジタル化ぐらしVol.9

目次

    ScanSnapがオフィス、または自宅で仕事をしている人の家などにあれば間違いなく便利だろう。

    逆に一般家庭で仕事以外に使うとしたらどんな時に有用だろうか。

    まず提案されたのはお報せなどが記載されたプリント類のスキャンである。

    確かに私の部屋は奥多摩橋と並ぶ神隠しスポットとして有名なのでプリント類は当然のように消えるし、そもそも回覧板でのお報せは手元に書類が残らない。

    私は今の家に引っ越してきて10年以上になるが、その間、近隣住民と接した総時間が30分以下、99%がファミリー層、この空前の少子高齢化ブームの中、子どもの数が増加傾向という逆張り集合住宅地に二階建ての家を建てて中年二人で住んでいる謎の家なので当然近所に連絡先を交換しているような知り合いはいない。

    よって、町内清掃の日時など、重要なお報せの内容を失念してしまうとなすすべがなくなってしまう。

    学生時代、教科書などを忘れると借りられる友人が皆無なため即詰んでいたが、まさかそこから20年経っても同じ状況とは思わなかった。

    そういう失敗が許されない人間にとってScanSnapは重宝するだろう。

    回覧板を回す前にScanSnapで書類データを取っておけば安心だ。他のプリント類も手にしてすぐスキャンしておけば原本をなくしても内容を確認できる。

    ただ部屋で神隠しを起こす人間はパソコンも異世界に繋がっている率が高いので、データがどこに行ったかわからなくなる可能性もあるが、スキャンしたデータは決まったフォルダに保存されるので、そこから無駄に動かさなければ大丈夫だろう。

    またScanSnapでスキャンすれば後から検索でも発見できるので、スキャンしたこと自体を忘れてなければ大丈夫だ。

    しかし、学生時代、借りる友人がいないから教科書を忘れないように細心の注意を払っていたかというと、むしろクラスの誰よりも忘れていたような気がする。

    プリント類も「手にしてすぐスキャン」などというマメなことができる奴は、原本紛失もしないし、近所に知り合いもたくさんいそうである。

    つまり私と対照的に几帳面な人間はScanSnapによって、几帳面な生活がさらに捗ること間違いなし、ということである。

     

    他に仕事以外でScanSnapを使うとしたら、前にもスキャンした「写真類」だろう。

    私がキッズのころ、写真はまだデジタルではなくフィルムで撮影しそれを紙に現像したものが主流だった。

    それらは劣化するし、災害などでアルバム類が全滅し、家族の思い出が一切失われたという例もある、そうなる前にデータ化&クラウド保存しておいた方が良いだろう。

    そんなわけで、今回再び写真をスキャンするのだが、今回先方からスキャンしてみてくれと言われたのは「チェキ」である。

    おそらく若人からは「チェキってなんですか」という質問が飛んでくるし「インスタントカメラの一種で」と言ったら、インスタントカメラについて問われるのだろう。

    こういった古のアーキファクトの話を若にしてしまい「何それ」と言われて爆散したという老のトホホ話はよく聞くが、よく考えたら無知は恥の一種である。

    なぜ知らない若が堂々として、知っている我々が恥じ入らなければいけないのか、若はもっと魔法のiランドなどを知らないことを恥じてほしい。

    しかし、レトロブームによりインスタントカメラ人気が再熱しているとも聞くし、アイドルライブなどでは、メンバーのチェキの販売や、一緒にチェキが撮影できるサービスがあったりと、とにかくチェキが現役大活躍らしいので、意外と若者も知っているのかもしれない。

    だが、実は私はチェキを使ったことがないし、もちろんチェキで撮影された写真ももっていない。

    平成をフル完走している世代のくせに何故だと思われるかもしれないが、我々世代がJKの時全員ルーズソックスを履いていたわけではないのと同じ理屈だ、あれは当時のJKの中でもカースト平均以上が身に着けるものであり、それ以下は白のハイソックスで3年やりすごしている。

    同様に、チェキは記録に残したいと思える青春を送った者のみが手にとったアイテムだ。

    そもそも私は、常に今が一番輝いていると思っている人間だ、逆に言えば1秒前がすでにドブネズミ色に変色しているということなので、そんなものをわざわざ記録して見返そうとは思わないのである。

    よって、スキャン用のチェキサンプルは先方が用意したのだが、そのチェキに何が映っていたかというとScanSnapである。

    担当の推し、もしくは指ハートしている担当の写真が送られてきたらどうしようとは思っていたが、まさかScanSnapの自撮りが送られてくるとは思わなかった。

    どうやらScanSnapは自分大好きのようである、確かに自分に自信がない製品を買ってもらおうなどとは客を舐めているとしか言いようがない。

    ScanSnapが写ったチェキをScanSnapにスキャンさせている姿は合わせ鏡のような不気味さがあり、深夜2時にこれをやったら呪われそうだが、スキャン自体は手差しで簡単にできて、怪異が写り込んでいるということもなかった。

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    カレー沢「自信がありながら手前にPCを置く奥ゆかしさを感じさせる自撮り」

    チェキに縁がない人生だったので知らなかったが、チェキはかなりミニサイズの写真である。

    だがスキャン時にScanSnapが自動リサイズしてくれたので、むしろデータの方が大きくて見やすい、特にチェキ世代は老眼がはじまるころなのでちょうど良い。

    ネット調べだが、チェキで撮影された写真の寿命はそんなに長くないらしい、思い出や推しの顔が消える前に早めにデータ化しておいた方がいいだろう。

    劣化が早いというのはチェキの欠点だが、チェキで10代特有のイキリ写真をクソほど撮ってしまった者にとっては早めに消えてくれるというのはメリットなのかもしれない。

    digiup258-02.jpg

    ScanSnap_iX1300

    ScanSnap iX1300

    毎分30枚(A4カラー/300dpi)の高速読み取りが可能な「Uターンスキャン」と、一般的な紙からA3までの大きな書類、厚手の原稿等の読み取りも可能な「リターンスキャン」2つの読み取り方法を備え、仕事環境や家庭に発生する多様な書類をすばやく電子化します。

    この記事を書いた人

    漫画家・コラムニスト カレー沢薫

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    元気な漫画家、まだまだ成長中。文章をかきます。

    karezawakaoru