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"道具使いの名人"として知られる「文具王」こと高畑正幸氏。Macを使いこなし、また以前からScanSnapに注目していたという文具王が語る、S510MとS300Mのクリエイティブな使い方。
高畑正幸 たかばたけ・まさゆき
1974年、香川県生まれ。本職は文房具メーカーのデザイナー。さまざまな媒体を通して、本当に実践できる便利な仕事術を提案している。
第1回から第5回までは、比較的ビジネスシーンに適したScanSnapとスキャンデータの活用方法を取り上げてきましたが、第6回は少し趣向を変えて、プライベートな楽しみ方をご提案します。ScanSnapと組み合わせるツールは「デジタルフォトフレーム」です。
デジタルフォトフレームは、デジタルカメラで撮影した写真などを液晶画面で表示する「電子写真立て」です。最近は家電量販店のデジカメ売り場にコーナーができるほど種類が増えていますが、どれも基本的にはプラグを家庭用電源に差し、SDやCFなどのメモリカードを差し込むと、中に入っている画像を表示するというものです。自分で選んだ画像の他に、一定時間ごとの順送り表示やランダム表示ができる機種、またネットワーク接続機能を持つ機種もあります。1万円~3万円程度の機種を中心に、画面の大きさや解像度、機能によって幅広い選択肢があります。
思えば写真をデジカメで撮影するようになってからというもの、撮った写真はパソコンの画面で見ることが多くなり、プリントの機会はめっきり減りました。自分で鑑賞したり、パソコンを使い慣れた同世代の仲間に見せるなら、パソコンで十分でしょう。でも家族みんなで楽しむには、ちょっと不便な気もします。そうかといって自宅のプリンタやショップの機械でプリントするのは面倒ですし、費用もばかになりません。その点デジタルフォトフレームなら、メモリカードのデータを書き換えればいくらでも画像を表示でき、操作も簡単ですから、家族で写真を楽しむのにうってつけです。
ここで私がおすすめするのは、画面が大きめのデジタルフォトフレームです。価格もそれなりにしますが、このご時世に家族全員で楽しめるツールの存在は貴重です。デジカメをテレビ画面に接続するだけでも再生はできますが、実際のところ面倒です。こういう場合には、プラグを差し込んでスイッチを入れれば勝手に再生される、その簡単さが大きな力を発揮すると思います。ちなみに私のお気に入りはランダム再生。容量の大きなメモリカードにたくさんの画像を入れておけば、シャッフルして再生してくれます。多くの写真は撮影後しばらくすると忘れられる運命にありますが、昨日の写真の次に一昨年の旅行の写真が表示されたりと、普段ならまず見ない画像が時間を超えて表示されるのは、とても楽しいものです。
文具王愛用のデジタルフォトフレーム(ドリームメーカー株式会社製 DMF150W)。液晶パネルは15インチ(1024768ピクセル)と大きめ。額に入れた写真を飾って鑑賞する感覚。
カードスロットに各種メモリカードを挿入して画像を表示する仕組み。 本体のコントロールボタン。リモコンによる遠隔操作も可能。
部屋に置いてみると、ちょっとリッチな写真立てという佇まい。
さて、デジカメの画像もさることながら、問題はさらに古い銀塩写真時代のアナログのプリントです。それらの多くは、比較的ずさんに扱われているのが実情ではないでしょうか。プリントすると付いてくる簡易アルバムに入れてあればまだいいほうで、ネガ保存用の横長の袋に一緒に突っ込んであったり、裸の状態で箱に放り込まれていることもあります(私の実家がまさにそう)。
あるとき私は思い立って、これらの未整理プリントをScanSnapでかたっぱしからスキャンしてみました。設定はスーパーファインかエクセレント。サービス判はA4書類などと比べると小さいため、一枚あたりのデータ量は比較的小さく、スキャン時間もそれほどかかりません。プリントがどんどんデータ化される様子に、自動給紙方式の便利さを実感しました。ここでの留意点は、この方式の性質上、プリント表面にローラー跡などが付く場合があるため、プリントのスキャンはユーザの自己責任の範囲で行う工夫の一種という位置づけになることです。しかし、どうせ忘れられて傷んでいくだけならば、デジタル化してみんなで楽しんだほうがずっと写真が活きるだろう、というのが私の考えです(少なくともデジタル化しておけば"それ以上の画面の劣化"がありません)。
こうしてデジタル化したアナログ写真をデジタルフォトフレームに表示すると、懐かしいという言葉では足りないくらい新鮮な、今まで感じたことのない感覚に驚きます。特に、数十年にわたる時間を飛び越えたランダム再生の楽しさは格別です。また大きな画面で見ると、集合写真のみんなの表情や背景の建物や看板など、さまざまなことに気がつき、再発見の大きな喜びを味わえます。紙のアルバムにきちんと整理し直すのも素晴らしいことですが、ScanSnapによるデジタル化も、選択肢の一つとして考える余地が充分にあるでしょう。
この方法は、子供よりも成年、成年よりも老年と、生きてきた歴史の長い人のほうがより楽しめます。私は昨年、写真好きの祖父からプリントを借りて1,000枚近くスキャンし、デジタルフォトフレームに入れてプレゼントしました。すると祖父は画面に見入り、それぞれの写真にまつわるエピソードを鮮明に、いきいきと語り始めました。ランダムに再生されていく写真にどんどん乗っていく"おじいちゃんのグルーヴ感"といったら!
ものすごい勢いで記憶が連鎖し湧き上がってくる状態が、端から見ていてもありありとわかります。しかも祖母や母まで話に加わり、互いに共有した経験を再共有しています。改めて写真の持つ、経験を呼び覚ます力の強さを実感せずにはいられませんでした。これは本当にすごい。高度なデジタルツールの組み合わせが、アナログなコミュニケーションを強力に促進します。間違いなくおすすめです。
箱や引き出しに入ったまま、忘れ去られようとしているプリントの束。どこの家庭にも一つや二つはあるはず。
思いきってプリントの束をScanSnapでスキャン。自動給紙方式の便利さを実感。
デジタルフォトフレームのお話は、デジタルとアナログのハイブリッドな活用のわかりやすい一例ですが、「大量のデータをデジタル化することで、紙の持つ物理的な制約から自由になる」という点で、第1回から第5回の内容と共通しています。
資料室まるごと一室分の書類をカバンに入れて持ち運び、何十年分、何十万ページにもおよぶ画像から、あるときはピンポイントに、またあるときはランダムに取り出せる。
紙では絶対に不可能な活用が個人レベルでできるのも、「デジタル化>保存>閲覧」の全段階に高性能なツールが存在し、それらをうまく連携させたからこそです。
特にその入り口において、楽に短時間で、しかも美しく紙をデジタル化できるツールとして、ScanSnapの威力は絶大です。
そしてMac。私は15年来のMacユーザーですが、特に最近のOS10.5 LeopardやiPhoto、iPod
touchなどが、以前にも増して強力かつ直感的な整理・閲覧ツールとして機能することも、かなり確かめられたように思います。
情報をデジタル化することは、何となくアナログに対して味気のないものだと思われがちです。
でも、この「ScanSnap徹底活用術」で私が伝えたかったのは、皆さんが思っているよりもずっと楽しく直感的に、きっとデジタルを使いこなせるということです。
ScanSnap S510MとS300Mの登場は、これまでの事務的な階層管理の枠を超えた、新たな形の情報処理・活用の世界につながって
いるのではないでしょうか。 私の実践している方法や考え方が、何かのきっかけになれば幸いです。 あとは皆さんのアイデア次第。もっと楽しく、もっと便利な活用法を、どんどん編み出してほしいと思います。
大量スキャンといえば雑誌のバックナンバー。そのランダム再生もおすすめの使い方。思わぬ順番から新しいアイデアが生まれるかも。 1024768ピクセル(XGA)の大型フレームなら雑誌の見出し程度までは判読可能。
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