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"道具使いの名人"として知られる「文具王」こと高畑正幸氏。Macを使いこなし、また以前からScanSnapに注目していたという文具王が語る、ScanSnap iX500の給紙性能。
高畑正幸 たかばたけ・まさゆき
1974年、香川県生まれ。TVチャンピオンで3度優勝し「文具王」の異名を持つ。文房具の企画デザインからマーケティング、執筆、販売など様々な活動を行なっている。また、さまざまな媒体を通して、本当に実践できる便利な仕事術を提案している。
大量の書類や書籍の自炊などをガンガン行っていると、ドキュメントスキャナーは結局のところ、給紙や読み取りのエラーをいかに減らして確実に読み取るかにつきる、ということがわかります。 もちろんデザインや、他の機能や便利なアプリも重要です。しかし、それらは全て確実に安定したスキャンを行うという性能を満たしていての話。全てはそこからです。
ドキュメントスキャナーを比較しようと思ったら、普通、一分間に何枚、といった比較になりがちですが、この数字はあくまで理論上うまくいっているときの数字。
今回S1500からiX500に変わって、1分あたり20枚から25枚へと25%程スキャンスピードがアップしましたが、実はこの数字は、実質作業を考えると正統な評価とは言えないと思います。
スキャナーの実質的な作業時間には、アプリを立ち上げる時間や、給紙台に紙をセットする時間、読み取った後の保存作業など全てが含まれますし、当然紙詰まりやエラーで中断したり、それをなおしたりする時間も含まれるべきです。
実際、束になった書類や断裁した書籍などをスキャンしている途中に、重送(複数枚の紙が同時に給紙されるエラー)などで一度でも止まると、その後がめんどくさい。どの紙で止まったのか、どこまでは読み取り済みなのかをチェックして、最後の読み取りは捨てるのか、続けて読み取るのかなどを決め、本体を開いて紙を取り出し、ページ数を確認しながら原稿を重ねなおし、本体を閉じてもう一回トレーに戻してスキャンボタンを押す…。こんなトラブルが起きた時点で、1分当たりのスキャン枚数なんてもはや関係なくなってしまうのがスキャンの落とし穴です。
どんなにラップタイムが速くても、想定外のピットインを繰り返したらレースには勝てないように、スキャンでもエラーを起こさずに読み取り続けることは非常に重要。
iX500を実際に使ってみてわかるすごいところはまさにそこ。1分あたりの読み取り数が20枚から25枚に増えたことはもちろん歓迎すべきことですが、それ以上に、重送エラーが確実に減少したことによって実質的な作業スピードが極端にアップしたことがわかります。
その点に置いてiX500の信頼感は、前作に比べて、あくまで個人的感想ですが軽自動車と高級セダンほどの違いがあります。ではこの差は何なのか。
ScanSnap iX500は単純にスキャンスピードがアップしただけではなく、重送エラーの減少によって"実質的な作業スピード"が極端にアップしたと文具王は言います。
実は給紙関係の足回りが全く違う。ワンランク上の業務用シリーズの技術を転用しているとのこと。なかでも最大の違いはブレーキローラーの採用。
S1500では原稿トレーに載っている紙束からゴムローラーが回転して一番下の紙を取り込む時に、二枚目以降の紙が一緒に引き込まれないように、引き込まれ始めた紙をヘラ状のゴム板が押さえ、二枚目以降を摩擦で制止するようになっていました。
これでもほとんどの場合には有効で、問題なく一枚目だけを分離して取り込むことができますが、紙によっては摩擦や静電気などの効果で、どうしても複数枚重なったまま取り込まれてしまうことがありました。
iX500ではその押さえのかわりに、紙を制止する側にもゴムローラーを採用。紙を押し戻す方向に回転をかけ、ちょうど重なった紙を親指と人差し指で擦って分ける動作と同じように、確実に分離していきます。
おかげで重送エラーはほとんど無くなりました。
※iX500やS1500は超音波センサーによって重なりを検知できるので、再度さばいたり個別に読み取ることで、重送エラー後も続けて読み取りを完了することはできます。
世界トップシェアの業務用スキャナーで培った給紙技術を継承し、ブレーキローラーを採用。重送による読み取りエラーを抑止します。
給紙ローラーのゴムの性能も上がっているようです。特に耐久性は、従来の10万回交換から、20万回へと増加。別売のゴムローラーをわざわざ買ってきて交換するのはめんどくさいので、できるだけ頻度は少ない方が助かります。 従来の倍の20万枚って、比較的よく使う人でもそう簡単には達成しない枚数ですが、普段メンテナンスをあまり意識しなくて良いのは嬉しいポイント。
iX500の消耗品である「ブレーキローラー」、「ピックローラー」は、交換周期(目安)が20万枚ごとに増加しました。
iX500はS1500に比べて、全体的に静かになった印象があります。音がなくなった訳ではありませんが、全体的に平坦になったというかずっと安定して同じ音なので、バタバタ慌ただしく頑張っている印象から、黙々と確実に仕事をこなす感じになってきました。これも安心感のひとつではあります。
ストレートパスの採用などにより、「静かな事務所」として定義される50dBを超えないように設計しています。
ドキュメントスキャナーの用途のほとんどは書類などあまり厚みのない紙がほとんどですが、使っていると欲が出てくるもので、たとえばちょっと分厚いショップカードやグリーティングカードとか、そういうものも読み取りたくなりますが、これまで分厚くて硬いものは給紙できませんでした。
今回のiX500は、0.76mm以下のプラスチックカード、要するにクレジットカードまで取り込むことができます。私の場合だと、買った文房具などの厚紙のパッケージなんかも直接スキャンしてしまうことがありますが、薄手のボール紙程度なら問題なく給紙できるのは、非常に便利でありがたい機能です。
と、あれこれ語りましたが、どれもドキュメントスキャナーとして最も重要な性能のひとつである足回りが洗練、強化されたことで、見た目以上に信頼できるスキャナーへと大きく前進したモデルと言えます。これらが総合した状態で、1分当たり20枚から25枚へのスピードアップは、ただ5枚の差ではなく、それ以上に大きな意味のあるスピードアップなのです。
これまでドキュメントスキャナーを使ったことの無い人はもちろん安心して使っていただけること請け合いですし、これまでS1500を含む他のパーソナルドキュメントスキャナーを使っていた方には、ワンランク上の使い心地を実感していただけると確信しています。
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